ちょっとTea Time!? ダンピングファクターあれこれ 2023.9.13

スピーカ配線は大丈夫?
家のオーディオシステムはアンプやスピーカが色々あり、それらをリレー切替で組み合わせすることで
色々な鳴らし方を楽しんでいます。ただ、結構リレー接点の通過回数が多いです。
アンプの切替で1、スピーカの切替で1の計2回、そして配線の正負側とも切り替えるので合計4回は
最低でもリレー接点を通過します。 リレー接点の接触抵抗は公称で150mΩとなっているので、
4回分で600mΩ、すなわち0.6Ωです。 これにケーブルの抵抗や端子台での接触抵抗などを
考えると、トータルのロスは1Ωはありそうです。 もっとも、リレー接点の接触抵抗については実力的には
もっと低いでしょうが、それでも結構なロスになります。
いまのままでも大丈夫かなあ〜?と思ったりです。

伝送ロスが1Ωあると
 アンプ自体は半導体アンプでNFBか深くかかっていることもあり、出力抵抗はかなり低いでしょう。
アンプ内部の配線等を含めても0.1Ω以下は余裕でしょう。となると、伝送ロスは前述のリレー接点やケーブル抵抗
のロスが支配的です。スピーカのインピーダンスが4〜8Ω程度なので、これから考えるとダンピングファクタ(DF)は
およそ4〜8とか一桁になってしまいます。これって十分なのかなあ〜。

巷のオーディオファンに「そりゃ〜、低すぎまっせ」と言われそうです。

それを考えてリレー接点をすべてMOSFETのSSRに変更使用かと考えましたが、かかるコストが大きいです。
現在、リレーの数は未使用を含めて60個あります。これをすべて変更するとなると、10万円近い出費になりそうです。
さらにケーブルを太いものにかえるとなると更なる出費です。

こりゃあ、もうちょっとDFの影響については勉強したほうが良さそうです。

さらにヘッドホンは?
 スピーカだけでなく、ヘッドホンについてもDFが気になります。というのは、ヘッドホンはパワーアンプの出力に
接続されていますが、ヘッドホン保護のためにアンプ出力に数10Ωの抵抗を入れています。常用のヘッドホンの
インピーダンス(約50Ω)を考えると、抵抗値を50Ωにしたとしても、DFは1になってしまいます。
これってやっぱり低いのかな?
でも、聞いていても全然違和感があるようにも思えません。
DFって本当に重要なのかなあ〜?
という気がしてきます。

一度、色々と調べてみましょう。

なお、以下ではダンピングファクターはDFと略します。

DF値を下げてもコーン紙の不要振動は抑えられないのでは?

DFがなぜ重要かを調べてみると、某メーカのQ&Aには、
十分に高いDFだとスピーカの再振動を抑制して、余計な余韻のないしまった低音を出すことができる
とあります。同様に
使用しないスピーカについてはコーン紙が動かないように端子を短絡すべし
という記事もみたことがあります。
まあ、定性的には納得できますが、どの程度の効果(影響)があるのか、疑問のあるところです。

もし、上記内容が納得のいくレベルなら、スピーカの端子を短絡してやればコーン紙を押したときに
大きな抵抗を感じるはずです。いわゆる電磁ブレーキというやつです。しかし、手元のスピーカで試して
みても、端子を開放した場合と短絡した場合との力の差なんて全然わかりません。

反対にDCモータだと、端子を短絡させると軸を手で回転させるのに多大な力が必要なのがわかります。
というのもモータなどは効率が70%前後ありますから、電磁ブレーキの効果が高いわけです。
これと同じことがスピーカでもいえるのかな?

スピーカなんて、かなりの低効率なはずですが、一体どのくらいなのかを探ってみました。

下記が正確な値かどうかの検証はしていませんが、92dB/W程度のスピーカで効率1%程度といった
ところのようです。残りの99%って、おそらく音響変換時のロス、スピーカのエッジやダンパーでの損失、
ボイスコイルの発熱などでしょう。

ということから、たとえスピーカ端子を短絡(DFでいえば無限大)だとしても、スピーカのコーン紙の振動を
抑える効果が有意にあるとは思えません。あったとしても、ごく僅かというところでしょう。

<以下はスピーカのエネルギー変換効率についての引用です>


(引用:Loudspeaker Energy Efficiency (fc2.com)

(引用:スピーカーの能率 (fc2.com)

DFの必要性はスピーカのインピーダンス特性の影響を抑制するためかな?

DFがコーン紙の振動抑制にあまり効果がないとなると、もう一つ重要なのはスピーカのインピーダンスの周波数特性の影響
を抑制するほうが主目的なのかもしれません。こうなったらDFというよりスピーカの配線抵抗の影響といった意味合いのになってくるでしょう。
スピーカは一般的にfoなどの共振点のややこしいところを除くと、一般に周波数が高くなるとボイスコイルのインダクタンスで周波数に
応じてインピーダンスが上昇します。高音だとスピーカの配線抵抗の影響は小さいですが、低音だと影響が相対的に大きくなり
出力レベルが小さくなります。すなわち、ケーブル抵抗によって、低音部ではケーブルでの損失が大きくなってスピーカの
出力レベルが小さくなってしまうということです。
 具体的に配線抵抗が1Ωとして、スピーカの100Hz時のインピーダンスが4Ωとすると、スピーカに加わる電圧は80%に分圧されます。
そして10kHz時のインピーダンスが10Ωになったりすると電圧は91%の分圧で済みます。これを電力の差として考えると2.3dBの差です。
でも、考えてみれば2.3dBの差なんて聞いてわかるだろうかという気がしないでもないですが、耳のいい人ならわかるのかもしれません。

こりゃあ、実際のスピーカのインピーダンス特性を測定してみる必要がありそうです。

インピーダンス特性を測ってみましょう!

ということで、ゲインフェーズアナライザをつかってヘッドホンやスピーカのインピーダンスを測定してみました。

1)ヘッドホン

まずは、いつも使っているヘッドホン2機種で調べてみました。
測定結果はどちらも、インピーダンスは50〜60Ωの間での変動に収まっているようです。
ということは、保護抵抗が50Ωあったとしても、周波数による出力レベル変動は1.5dB程度ということになります。
こりゃ、配線抵抗なんて気にする必要はなさそうですね。
もっとも、保護抵抗もなくて配線抵抗(例えば1Ω)だけだとする0.06dBの差ですから、完全に無視できます。

とりあえず、ヘッドホンの場合なら配線は適当で、保護用の直列抵抗があっても問題なしという感じですね。


audio-technica ATH-W10VTG
長年つかっている愛用品です。
インピーダンス特性はかなり平坦です。
これなら配線材の影響は無視できるでしょう。
極細配線材でも大丈夫ですね。


audio-technica ATH-M30x
ベッドサイドでつかっています。
インピーダンス特性はかなり平坦です。
これなら配線材の影響は無視できるでしょう。
極細配線材でも大丈夫ですね。

2)スピーカ 2023.9.14

つぎはスピーカを測ってみましょう。面倒なのは、机上にもってこれるものだけのものの測定になってしまいます。
重いスピーカについてはパスです(笑。
一応、ユニット単体や箱に入ったものを色々と測定です。

結論からいえば、配線抵抗1Ωがあっても、出力レベル差は大きくても2dB程度と小さいです。
それも、変わるところはほとんど音程の違いもわからないような高域レベルになります。
まあ、普通に聞いていたら判らないレベルでしょうね。


秋月で購入した10cmmフルレンジ。
マグネットも大きく1kgを超える重量級。


マグネットが大きいためか、foでのQがとても大きいです。
fo付近を除いた、常用範囲(<10kHz)でみると
インピーダンス変化は8〜20Ωですから、
配線抵抗1Ω時の出力レベル変化は1.2dB程度です。
たぶん、気が付かないレベルでしょう。

秋月で購入した10cmフルレンジ(@350円)
軽量級です(250g程度)。
上の同じ10cmスピーカですが、foのQが全然違います。
やはりマグネットの大きさで全然違います。

fo付近を除いた、常用範囲(<10kHz)でみると
インピーダンス変化は8〜17Ωですから、
配線抵抗1Ω時の出力レベル変化は1.1dB程度です。
たぶん、気が付かないレベルでしょう。


箱は以前にパナのスピーカ用に作ったものを流用しています.
上のスピーカをバスレフ箱にいれたものです。
スピーカ単体でのfo時のインピーダンスが少し落ちています。
そしてバスレフ共振点の80Hzあたりに山が見えるようになりました。
高域でのインピーダンスは変化無しです。
そのため 配線抵抗1Ω時の出力レベル変化は1.1dB程度です。
たぶん、気が付かないレベルでしょう。

秋月で購入した77mmフルレンジ(@300円)
防磁仕様になっています。
これはマグネットが比較的大きいためか、fo時のQ値が結構大きいです。
fo付近を除いた、常用範囲(<10kHz)でみると
インピーダンス変化は8〜20Ωですから、
配線抵抗1Ω時の出力レベル変化は1.2dB程度です。
たぶん、気が付かないレベルでしょう。


中華製のツイータです(@700円くらい)
ツイータ単体でも測定です。1.6kHz付近にfoの山があるようです。
ツイータですので2kHz以上でつかうので、常用範囲を20kHzまでに
広げても出力レベル差は0.6dB程度です。
まずもって判別困難でしょうね。

今年になって作ったスピーカです。
こちらは中音〜高音を担当する密閉箱です。
最近作ったスピーカの1つです。東京音工77mmフルレンジを密閉に入れています。雰囲気的に先に測定した同径フルレンジと同じような特性です。

今年になって作ったスピーカです。
こちらは低音を担当するバスレフ構造です。
最近作ったスピーカの1つです。東京音工77mmフルレンジを3個並列にしてバスレフにした部分です。インピーダンスがグッと低くなっています。バスレフの共振周波数は80Hzあたりです。このスピーカは低音専用(<200Hz)なので、出力レベルさは1.2dB程度におさまりますので、これも誤差範囲でしょう。

安価なSPをつくったオモチャ的なものです。
たぶんDAISOの300円スピーカと同じようなと同じような安価なものを、
バスレフ仕様にしたものです。小型のためなのか、高域でのインピーダンス
上昇が小さいです。常用範囲(<10kHz)でみるとインピーダンス変化は4〜5.5Ωですから、出力レベル変化は1.1dB程度です。


中華製ユニットによる2WAYです。
全部で1万円程度でペアが作れます。
中華製のユニットをつかった2WAYです。ネットワークが入っていますので、
インピーダンス特性は独特です。2つの山はウーハのf0とバスレフポートの共振点でしょう。常用範囲を20kHzとしても、インピーダンス変化は4〜8Ωですから、出力レベル変化は2dB程度です。

まとめ

スピーカへの配線抵抗が大きい(1Ωほど)ことが気になってDFについて、ちょっと調べてみました。
私なりの結論としては

 1.スピーカのエネルギー変換効率が極めて低いこともあり、DFを大きくしてもコーン紙の振動抑制への寄与は限定的(意味がない)。
 2.スピーカのインピーダンスの周波数特性により出力レベルが変動するが、それでも変化幅は最大でも2dB程度と限定的。


ということになりました。あまりスピーカの配線には気を使わなくてもよさそうです。
すなわちDFについては、あまり気にすることはなさそうです。

あ、勘違い!

移動中に、色々と考えているなかで大きな論理的間違いがあることに気付きました.
下記は間違っていますね!
 1.スピーカのエネルギー変換効率が極めて低いこともあり、DFを大きくしてもコーン紙の振動抑制への寄与は限定的(意味がない)。

すなわち、
 振動エネルギー = 投入電力 x α
 音のエネルギー = 振動エネルギー x β

とすると、スピーカのエネルギ変換効率はαxβになります.
そして、DFに関わる話はあくまでも振動エネルギーの抑制に関わる事象ですから、
スピーカのエネルギ変換効率が、振動エネルギーの抑制効率というのは間違っています。

やっぱり、コーン紙の振動を直接モニターできる手段があるといいなあ〜。
そういったセンサは世の中に山ほどあるけど、身の回りで置き換えることができるものはないかなあ〜。
頭の体操が必要だなあ〜.

(つづく?)