理想の2WAYのネットワークとは?〜超高次ネットワークは意味があるか?〜 2020.1.24

現在、コストは全然かけていないですが2WAYスピーカを作ろうとしています。
このネットワークには中華製の12dB/Octのものを使う予定です。価格は2個で$13程度の
安価なものです。
 でも、ふと考えてネットワークの次数ってどのくらいがいいのだろう?という疑問が沸いてきます。

スピーカーネットワークの実際は・・・

スピーカのネットワークをみていると、簡単なものではツイータにはコンデンサだけ、ウーハにはコイル
だけといった6dB/Octのものが用いられています。やや高価なスピーカだと12〜18dB/Octが多いいようです。
それでも次数の高いものでも24dB/Octくらいでしょうか。

なぜ24dB/Oct程度しかないのか?これはコストとの兼ね合いできまるのでしょう。なんせ、
良質なコイルやコンデンサは値が張ります。とくに低域で次数の高いフィルターを構築しようとすれば巨大な
コイルとコンデンサが複数必要になります。とくにコイルが問題で、コイルのインダクタンスを大きくすると必然的に直流抵抗が
増えてしまいますのでスピーカのダンピング特性が悪くなります。かといって、巻き線の太いものをつかうと
コイルがさらに巨大になりコストがうなぎのぼりです。なんせ銅線が高い!
少ない巻き数でインダクタンスを上げるために強磁性のコアを入れるという手もありますが、
非線形性(ヒステリシス、磁気飽和)やへたをするとノイズ(BHN、磁歪)に悩まされるかもしれません。

 ということで、スピーカのネットワークはおのずと高くても12〜18dB/Octが主流になったのではないかと想定されます。
でも、コストを度外視するハイエンドスピーカはどうなっているのでしょうか?
実は色々としらべましたが、なかなか情報を得ることができませんでした。THILEなどは、無茶苦茶重たいネットワークを
つかっていた覚えがあるのですが・・・・。そういえばNHKのモニタースピーカ(3WAY)の開発を見せてもらったときは
ネットワークだけでまな板の上にテンコ盛のコンデンサとコイルだった覚えもあります。かなり次数高いのかな〜?

チャンデバ使用のマルチシステムだと・・・・

かたやチャンデバを用いたマルチシステムの場合はどうでしょう。
いま、使っているのはアナログのチャンデバは24dB/Octをつかっています。また、ディジタルでは48dB/Oct
設定しています。チャンデバのネットワークはスピーカに組み込むネットワークに比べると設計の自由度が高いので
次数は比較的容易にあげることができます。とはいっても、アナログで24dB/OctになるとOPアンプが2段になりますし、
BPFになるとHPF,LPFが並ぶので4段になり回路も複雑になってきます。

ディジタルについては、さらに設計の自由度があり12dB/Oct〜48dB/Octまで選択できるようにしていますが、
結果的には聞き比べて48dB/Octにしています。フィルターの次数が高いほうが音の分離がよかったのが理由です。

なぜ48dB/Octを最大にしたか?

これは、いわゆるスピーカ組込みのネットワークが最大でも24dB/Oct程度なので48db/Octもあれば十分ではないかということで、
あまり深くは考えていなかったです。それと、あまり高い次数にすると、低音と高音で再生周波数の分担がウーハとツイータで明確
に分かれてしまうと、スピーカのキャラの違いが明確になってしまうので、ある程度は交わりあったほうがいいのでは?
という、極めて定性的な思いもありました。

 でも、ふと考えるとウーハとツイータの音が交わるということは、物理的には音波が重なるわけですから位相が違うと、
大きくなったり小さくなったりとかなり急激な特性変化を及ぼす可能性があります。とくにクロスオーバの近辺は位相変化が急ですから
かなり特性が乱れることが想定されます。
 そのため、本来はできだけ次数の高いフィルターの方がいいのかもしれません。

 たとえば24dB/Octのフィルタは、スピーカのネットワークとしてはかなり次数の高いもので、1オクターヴ変化するとレベルは-24dBと
リニアにすれば1/10以下に振幅は低下します。それでも「ド」と「レ」の全音(1/12オクターブ)の差ではわずか2dBしか減衰しません。
人間の耳でも「ド」と「レ」では、かなり音程が違うように聞こえるので、その間に急激な振幅変動があれば、かなり音への影響が
大きいのではないかと思います。

狙いは、完全分離・・・
 こういうことを考えていると、ネットワークの次数はできるだけ高い方がいいのでは?とおもったりしてきます。
すなわち、周波数帯を明確に分離して、例えば3kHz以下はウーハ、それ以上はツイータで、クロス部分での重なりは極力排除です。

そうしたときに48dB/Octではとても役不足に思えていました。「ド」と「レ」の差では48dB/octとしても4dBしかありません。
たとえば96dB/Octにすれば8dBになります。さらに192dB/Octにすれば16dBになり、かなり明確に分離できると想定されます。

ここは実験的に192dB/Oct程度まで実現できるネットワークを試してみて、その効果を確認してみたくなりました。


どうやって実現するか?
 もちろん、アナログでは大変なのディジタルで行います。BIQUADフィルタは1段あたり12dBになるのでこれを16段並べられれば192dB/Octになります。
いまFESP5142では24段までBIQUADを並べていますが、再生周波数は96kHzまでが限界です。192kHzまで動かすこととアナログ出力も得られるようにしようとすると
PCM5142を2個直列に並べて1個目はフィルターのみで12素子のBIQUAD、2個目は8素子BIQUAD+DAC出力という形にするといいかもしれません。
DIV5142をすこし改造すれば、高次で動く2WAYのネットワークが構成できるはずです。なお、PCM5142を2個つかえば全部で20素子になりますから、
最大で240dB/Octの減衰率が実現できるはずです。あくまで理想的にはですが・・・。

高次フィルタの計算には
 192dB/Octのフィルターを設計するには、予め各段のQ値を計算しておく必要があります。
ネットをみると48dB/Octくらいまでは、表で見つかるのですが、それ以上はほとんと見かけません。
ということで、事前に計算しておくことにしました。
12〜192dB/Octまでのバターワースでの表はこのようになります。

バターワースでのQ値

計算はしてみましたが、考えたらこれだけ記憶するにはそれだけでメモリーは1kB程度必要になってきます。もったいない!!!
プログラムの中で計算させたほうが、容量的にはよさそうです。

DIV5142をプチ改造!

DIV5142はもともと、4個のPCM5142をパラで動かして4WAY用のチャンデバにしていますが、PCM5142をそれぞれ2個ずつ連結するようにして
2WAY用に改造してみましょう!

その前に・・・ 2020.1.27

高次のフィルターが実現できるか、確認しておきましょう。
というのもPCM5142のDSPの演算は24Bitで行っているのと、PICの計算も単精度でおこなっているので、
誤差が積み重なるのか心配です。

遮断周波数を1kHzにして、フィルターの次数を-24〜-240dB/octまで変化させて、
ゲインフェーズアナライザをつかって測定してみました。

測定にはソフトを組む必要がありますが、DIV5142ではなくFESP5142-Doをプラットフォームで行います。
FESP5142-DoにはAD入力があるので、アナログの発振器の入力をいれるのに適していますし、もちろん
内部にDSP(PCM5142)もあります。そして、いまのとところ480×320ドットのLCDが搭載されているので、
Q値の計算結果の確認等に便利です。なんせ、大量の数字が表示できますから。
ただFESP5142-Doにはアナログ出力がないので、SPDIFでDACに信号を送りこんで、DACでアナログ出力を
得ています。


テストプラットフォームにはFESP5142-Doをつかいました。表示が沢山できます。


すべてのQ値が正しく計算されているかチェックができます。

結果は下図の通り。-240dBでも動作はしていますが、192dB/octあたりから減衰曲線が
すこしギザギザしています。

 -192dB/octのあたりから、すこしギザギザしています。

fo=1kHzを「ド」として「レ」の音(1059Hz)での減衰量は下図のようになりました。
これだけみると、きちんと減衰はしています。


遮断周波数1kHz時の1059Hzでの減衰量です。これだけ見れば綺麗です。

減衰曲線のギザギザが、実際のDSPの特性なのか、あるいは測定系の問題なのか気になるところです。
もうすこし、周波数別に観察してみましょう。

-96dB/octの特性は綺麗です。


-144dB/octの特性はまあまあですね。


-192dB/octだと、肩のあたりですこし暴れています。


-240dB/octだと、暴れかたがすこし大きくなっています。

原因は計算系か、あるいは測定系か?

測定系で気になるのが、周波数が変わるときにパルスが被測定系に加わるので、そのときの
ハンチングがフィルタ次数が高いと若干のこっているようです。波形をオシロでみていてすこし乱れています。
その対策をしようとすれば、周波数を変更したときの待ち時間を多めにとればいいわけですが、
いまからゲインフェーズアナライザのプログラムをいじるのは怖いな〜。
たぶんどこを弄ったらいいか忘れているだろうし、下手に弄って動かなくなったら困るしな〜。

すこし違う方法で測定してみましょう。
滑らかなスイープ出力がでるWaveGenソフトをつかって、SPDIFでの入力に切り替えて測定です。
定量的には難しいですが、すくなくとも波形の滑らかさを確認できればいいでしょう。
出力はディジタルオシロで観測です。

測定結果は、滑らかです。減衰特性の最大値である-288dB/octでも行ってみましたが、
減衰曲線にはギザギザはでていません。


850〜1100Hzでスイープ。-192dB/octの特性。


850〜1100Hzでスイープ。-240dB/octの特性。


850〜1100Hzでスイープ。-288dB/octの特性。

やはり測定系の問題のようです。こりゃ、ゲインフェーズアナライザも、もうすこしパラメータをいじれるようにしておかないと
だめだな〜。
 すくなくとも、PCM5142とPICの冤罪は晴れたかな〜。

さて、どのように改造するかな?

ちょっと思案のしどころ。DIV5142のプチ改造はいづれしなくてはいけませんが、
コントロールソフトをDIV5142に持たせるか、それともDAIとして接続予定のFESP5142に持たせるか?
 
それより、PCM5142に書き込む命令コマンドが1段目のPCM5142と2段目とは異なりますから、
そのデータの容量がPICに乗りきるかな〜。

もう酔っ払いモードなので、寝ながら考えましょう(笑。


その前に、測定系の汚名挽回!

ゲインフェーズアナライザでの測定で、減衰曲線がギザギザになってしまいましたが、
周波数を切り替えた後でのデッドタイムを延長する変更を行いました。
現状は10mSとなっていましたが、50mSに拡大です。これで改善するかな?

ん!納得!

綺麗な減衰曲線になりました。50mSで十分か、あるいはまだ不足しているかの検証は必要かもしれませんが、
まずは良好な結果で納得です。ゲインフェーズアナライザーも汚名返上できました。

ディレイ値 測定結果
10mS
50mS


設計していきましょう! 2020.1.28

フィルタの減衰曲線の問題も解決したので、安心してソフト設計にはいりましょう。
プラットホームとしては、DIV5142にソフトを搭載することで進めてみましょう。

まずは現状のDIV5142ですが、8個のフィルターを搭載したPCM5142をパラで4つつかっています。
PCM出力もあれば、DAC出力もあります。

全体的な構成はこのようになります。

 現状のDIV5142の構成です。

これをチャンネル間を連結して2WAY用の高次のHPFとLPFに組み替えます。
1段目が12フィルタ、2段目が7フィルタになるので合計で19フィルターになり、
減衰は最大で-228dB/Octまで実現できるはずです。


目指す形です。

DIV5142のプチ改造
上記の構成とするために、改造をしておきましょう。
CH2の入力をCH1の出力からに変更し、CH4の入力をCH3の出力に変更です。
 まずは黄色の丸の部分のパターンを1本切断します。
それぞれ、右から2番目の線を切断です。ここを切れば、あとで接続することも簡単です。
まちがって隣のパターンを切らないようにしないといけません。

黄色の丸の部分で1本パターンを切断します。

  
それぞれ切断した状態です。右から2番目の部分を切断します。ちょうどDATAラインになります。

つぎは2本のジャンパー線を飛ばします。


このジャンパーを飛ばします。


CH1(CN2)のPIN1番をCH2のPCM5142のDTの部分にジャンパー接続です。


CH3(CN4)のPIN1番をCH4のPCM5142のDTの部分にジャンパー接続です。

これでDIV5142のプチ改造は完了です。

DSPの設計
 DSPの設計といっても、単純にBIQUADのフィルターを並べるだけです。
確認事項としては、命令サイクル数が256未満になることです。そうすれば192kHzまで対応可能になります。

1)1段目
 最大限にフィルターを連結します。12個までならサイクル数は256未満に納まります。

1段目のDSPの構成


サイクル数は247(<256)で、OKです。

2)2段目
 2段目はDAC出力もつかえるようにするために、フィルターは減らして7個にします。
ちょうとパラメトリックイコライザとほぼ同じ形ですが、ゲインを調整するスケールは一番最後にもってきています。
これは、ゲインを最初に設定すると演算値が小さくなるので誤差がでる可能性があるので、最後にゲイン設定を行います。

2段目のDSPの構成


こちらもサイクル数は238(<256)で、OKです。

さて、ソフトを組んで行きましょう・・・・

ちょっと懸念するのは、実行速度です。というのも、フィルター周波数を1つでも変更すれば、ほぼすべてのBIQUADフィルターの
計算と、I2C通信による設定を行う必要があります。64MHzでPICを動かしても、もたついてしまうかもしれません。
ということで、できるだけ高速に動かすために、DELAY関数は極力排除して、単純にループを回してCPUに無駄な処理はさせないように
する必要があります。
 ということで、ボリュームに必要なAD変換についてはその頻度をすこし落として、割り込み処理の中で実行。また、サンプル周波数を
計測するために、数mSの無駄時間を発生させている処理も割り込みルーチンとして、無駄な時間はないようにしていきましょう。

まずは骨子の部分から

色々と、付帯的なところを整備しないといけないのだけど、まずは必要最小限の機能を組み込んでみました。
DIV5142のIRバージョン(赤外線利用)のソフトをモディファイしましたが、ほとんど新規になりそうな勢いでの修正でした(笑。

肝心のフィルターの設定画面はこんな感じです。
フィルターの次数のORDER(−12〜-218d/B)、カットオフ周波数fc、そしてゲインが調整できるようにしています。

フィルター設定の画面です。2WAYなのでシンプルです。

これで、動くかどうか確認してみましょう。
簡単に、周波数スイープさせてアナログ出力を確認です。フィルタは最小オーダの-12dB/Octと
最大オーダの-228dB/Octで測定してみました。

まずは-12dB/Octの場合ですが、これが一般的なスピーカネットワークでの減衰特性でしょうね。
かなりオーバラップがあります。

-12dB/Octでの特性。上がHPF、下がLPF。20〜20,000Hzでスイープ。カットオフはfc=3kHz。

次は、最大の-228dB/octの場合です。ここまでくると、ほとんどオーバラップなしです。
見事なまでに役割分担ができそうな感じです。

-228dB/Octでの特性。上がHPF、下がLPF。20〜20,000Hzでスイープ。カットオフはfc=3kHz。

あ〜眠たくなってきた。明日もあることだし、今日はここまで。

ちょっと実験です 2020.1.29

1)ドレミの音の定位が変わるか?

オシロの波形だけを追いかけても面白くないので、ここいらでちょっと実験です。
DACの出力をヘッドホンに接続して、HPFならびにLPFの出力をそれぞれヘッドホンの左右のスピーカに接続します。
これで、「ドレミ」の音を出したときに、「レ」の音を中心にして「ド」」と「ミ」が左右に分離してて定位するかを試してみましょう。

こんな感じで実験です。DAIにはFESP5142を使っています。

ちなみに「ドレミ」の周波数は下記を用いています。ちょうど聞こえやすい音を選んでいます。
「ドレミ」なので「CDE」になります。
フィルターのカットオフ周波数は勿論、「レ」の音の587Hzに設定します。
なお、今回のソフトでは20〜20000Hzで1Hz単位で変更できるようにしています。
キーの長押ししで、加速して数値が変わるようにしています。でないと、20000まで数値を上げるのが大変です。


ドレミの音階の周波数です。 引用:http://gakusyu.jp/musictheory/frequencies_of_88notes.php


フィルタの設定の様子です。HB、LBの「B」はバターワースの意味です。

実験結果です。
フィルターはLinkwitz Rileyも搭載していますが、ここではバターワースに設定しています。

フィルター特性
(バターワース)
減衰特性 523Hz〜659Hzでスイープ
(縦軸はリニア) 上側:LPF出力 下側:HPF出力
聴感 「レ」に対して、
「ド」と「ミ」は左右に分離して聞こえるか?
-12dB/Oct 全然わかりません・・・・
-48dB/Oct 注意して聞いていたら、
すこし音源が移動していることがわかります。

ボーとしてたらわらないでしょう。

-96dB/Oct 音源の移動は明確にわかりますが、
目の前ですこし移動した程度な感じです。
-192dB/Oct これは音が右から左に流れます。
-228dB/Oct これも完全に音が右から左に流れます。
-192dBとの差はわずかかな。

結果としては、ピアノだとすれば全音の違いを分離しようとすれば少なくとも-96dB/Octの特性が必要で、
できれば-192dB/Octの特性が要求されるということでしょう。

2)スピーカを模擬?

今度はカットオフを2500Hzに設定です。ちょうど2WAYのクロスオーバに近いところです。
で、ヘッドホンの左右に低音と高音を振り当てて普通に音楽を聞いてみました。どんな感じに聞こえるかな?


フィルタの設定の様子です。カットオフは2500Hzに設定です。

フィルター特性
(バターワース)
減衰特性 20Hz〜20,000Hzでスイープ
(縦軸はリニア) 上側:LPF出力 下側:HPF出力
音の鳴り方

右:低音
左:高音

-12dB/Oct ぱっと聞いた雰囲気では左右同じ?
と感じましたが、確かに右が低音が強く、
左が高音が強いことがわかります。
でも、実験の内容を知らなかったら気づかないかも。
音楽の音域の中心がほぼ真ん中近くに
定位しています。ということは、普通のスピーカ
の12dBのネットワークでは、
ウーハとツイータの音が入り混じっているという
ことになりますね。
-48dB/Oct 今井美樹さんの曲を聞いていますが、音楽の中心が
中央からすこし右より(低音側)に感じます。
ボーと聞いていたら、単に右側のレベルが高いだけに
思うかもしれません。
-96dB/Oct 音楽の中心が完全に右(低音側)に寄りました。
そして、左からは高音成分のみがシャカシャカ聞こえます。
それでも、すこし左から低音の成分も鳴っているような感じもあります。
-192dB/Oct 音楽の中心が完全に右(低音側)です。
左からは純粋に高音成分のみが聞こえる感じです。
ツイータを純粋に高音だけ鳴らしてやろうとすれば、このくらい分離したほうがいいのかもしれません。
-228dB/Oct 流石に-192dB/Octとの差異はよくわからないです。

結果としては、2500Hzのクロスオーバで高音と低音を明確に分離しようとすれば-96dB/Octの特性が必要な感じです。
そして、ツイータには余分な低音を加えないようにするには-192dB/Octの特性があったほうがいいようです。
そして、ウーハからは余分な高音の音は出させないこともできそうです。

こりゃ、このネットワーク(チャンネルデバイダ)を使えば、とんでもない効果がえられるんじゃないかと期待できます。
獲らぬ狸の・・・にならなければいいですが(笑。

ただ、実機(メインのシステム)に接続するのは結構大変だなあ〜。それに、よかったときも困るな〜。自分のシステムは
3WAYだから、もう1枚DIV5142が必要になってきます・・・・。システムがだんだん巨大になってくる〜〜。

実機につなぐ準備をしましょう!

まずはスピーカに2WAYの構成でつないで試してみたいと思います。
その前に、準備です。

構成としては
CDP→ FESP5142(DAIとして) →
    → DIV5142(2WAY版) → DAC4499(4chモード) → DAC4499-IV(OPA)4chモード →
      → マルチアンプ → 2WAYスピーカ


とします。DAIはなんでも良かったのですが、発振器もつなぐ予定なので、AD入力もあるFESP5142にしました。
まずはステレオ出力になっていたDAC4499とIV基板を4chモードに変更です。
DAC4499はとくにボリューム操作しかしないので、シンプルファンクションモードで動作させます。
4chで動かすのでJP8はすべてOPENです。
 また、視聴室用のポータブル電源を作ったとこでもあるので、それと1本のコネクタケーブルで接続できるように
電源コネクタ部を変更しました。これで、電源の接続間違いの恐怖から開放されます。


DAC4499とIV基板を4ch構成に変更です。外見では違いはわかりにくいです。


電源の入力は4Pの複合電源と接続できるように変更。
これで、電源接続間違いの恐怖から開放されます。


まずはいつもの机の上で動作チェックです。
FESP5142の電源もポータブル電源から供給します。
電源供給がものすごくすっきりしました。

まずは机の上で動作確認です。


オシロで出力の確認です。問題なしですね。

実機につないでみましょう!

いよいよ、実機であるメインシステムにつないでみましょう。
3WAYのマルチアンプシステムになっているので、TWEETERとWOOFERのアンプの入力を外して、DAC4499-IVの出力を接続します。
そしてDAIである、FESP5142にはCDプレイヤーの入力を入れます。


このような形で実機に接続しました。電源を新調したおかげで、バラックの配線がとてもスッキリしました。


鳴らすスピーカはツイータ(SCAN SPEAK)とWOOFER(SEAS)のみです。
真ん中のミッドレンジ(ATC)はお休みです。


試聴してみましょう!
 夜も遅いのですが、我慢できずに小さい音ですが鳴らしてみました。
 こりゅや、いままでにない経験です。

 (書き出すと長くなりそうなので・・・また後日)


まずは手始めにこのあたりから。fc=2500Hzで-12dBとゆるい設定です。普通に鳴りますが、
あとで雑味がおおいことにきづきます。



 この辺りがよかったかな?。次数を上げるとクロスオーバの設定がものすごくシビアです。

印象から確信へ 2020.2.6

人間の印象なんて、ちょっと時間が経つと変化するものです。
フィルターの設定値を換えるのにも、何度かスイッチを押して変更するなどの手間が必要ですので、
時間もかかりますので(数秒ですが)、その間に前の音を忘れてしまう可能性もあるので、
瞬時に音がかわらないと、なかなか音の変化を確信することはできません。
ということで、最初の印象を確信に変えるためにも、設定値のSAVE/LOADができるコマンドを追加しました。


こちらはSAVEコマンドのメニュー。


こちらはLOADコマンドのメニュー。

扱うデータ数は少ないので、沢山記憶できるのでが、あまり沢山あっても仕方ないので
とりあえず8個までデータを記憶できるようにしました。

明日は出張なので、週末に聞き込んで行きましょう。

LOAD & SAVE コマンドはすこし改造 2020.2.8

フィルターの設定での音の変化を聴き比べるにあたり、ロード&セーブコマンドは必須なのですが、
どういった条件が記録されているかがすぐにわかるようにソフトを改造しました。

現状の記録されている情報がわかるようにしました。


試聴結果、まとめ

 JPOPからクラシック、合唱曲など週末なので色々と聴いてみました。ジャンルによって、フィルターを高次にする効果は
異なりますが、共通していえることは
「音楽が落ち着いた感じになり、とくに高音の一つ一つの楽器の音色が明確になった」
という感じです。一言で言えば、雑味が消えたということかな〜。

雑味があるということは

フィルターの次数をあげると、音の雑味が消えていくようなことを書きましたが、どういうことかを
考えるためにも、色々なパターンで聞いてみます。

まずは、ツイータだけを鳴らしてボーカルのJPOPを聞いてみると
fc=2000Hzで-12dB/Octだと、ツイータからは歌声がはっきり聞こえてきます。
そして-48dB/Octにすると、だいぶ歌声が小さくなります。
さらに-192dB/Octにすると、ほとんど歌声はわかりません。
2kHzというのは、声としてはほとんど出ない音域なので、2kHzでカットすれば声が聞こえないのは
あたりまえのことです。
 ということは、フィルターの次数が低いということは、無理やりツイータに低音を再生させていることになります。

反対に、ウーハだけを鳴らして、同じくボーカルのJPOPを聞いてみると、
-12dB/Octだと、簡単にいえば高音が出にくいスピーカで音を聞いているようです。
そして-48dB/Octにすると、あきらかに高音がカットされているのがわかりますが、ハイハット(?)のアタック音は残っています。
さらに-192dB/Octにすると、ハイハットのアタック音はほとんどのこりません

すなわち、フィルターの次数が低いと、高音部ではウーハからの減衰しきらなかった音が混じり、
低音部ではツイータからの減衰しきらなかった音が混じることになります。これが雑味に感じるのだと思います。

問題はウーハの高音再生の残りか

問題なのは、前者である、ウーハの高音残りでしょうか。
もともと、ツイータそのものは小径なので低音はでませんが、低音部は比較的正確に振動板が動くので
ツイータの音が混じったとしても、あまり問題にならないと思います。
それに対して、ウーハは無理に高音をださそうとすると分割共振など歪みの成分が結構でてきます。
すなわち、高音を出すと付帯音が生じてくると思われます。

そのため、高音部だけで考えると、本来はツイータだけに再生させたいところが、ウーハの音が混じって
なぜかスッキリとしないざわつきを感じるのだと思います。

ただ、このことは必ずしも悪いことではなくて、音のざわつきは、音の華やかさとも感じる場合もあるので、
なんとなく音が活き活きとする雰囲気もでてくるかもしれません。

 これが顕著に現れるのがクラシックを聞いたときです。

クラシックでは大きな問題?

フィルターの次数が低いと、とくに高音部(弦楽器など)の音は華やかに聞こえます。ただし、音がすこし平べったくも
感じます。それに対してフィルターの次数を上げると音の雰囲気はすこし落ち着いたような感じになりますが、
反対に音の芯がきっちりとでてくるような感じです。そして、音の立体感が増してきます。
楽器の数が多い、クラシックではその効果がよくわかるような気がします。

本当にいいの?
じゃあ、どちらがいいかというと・・・・
比べるまでもないような気もするのですが、どちらがいいかは、好みの影響もおおきいかな〜という感じです。

POPSを主体に聞くなら、華やかな音のほうが気持ちがいいと思うので、フィルターの次数はあまり高くなくても

いいのではと思ったりしました。ウーハもツイータも元気一杯なってくれるのがいいかな〜っと。音の混じりも
音のアクセントの一つでしょう。

それに対して、クラシックなどの各楽器の音やそのハーモニーを楽しむなら、できるだけフィルターの次数を上げてスピーカ間で
余分な音がまじらないようにした方がいいのかな〜と思ってしまいました。

(私なりの)結論
・POPSを主体に聞くなら、フィルターの次数はあまり気にしなくてもいいかもです。-48dB/Octもあれば十分でしょう。
 スピーカ間の音の混じりも音楽のうち。明るい(?)音調で、楽しく聞くにはいいでしょう。

・クラシックを主体に聴くなら、音の純度をもとめてフィルターの次数を上げて、スピーカ間の混じりは極小にすべきと思います。
 そうすれば楽器の音の輪郭を楽しむことができるのではないか。

ちょっと、荒っぽい結論かな?でも、結局は音楽が楽しめればいいわけなので好みによるのだろうな〜。
それに、色々とチャンレンジするにはコストもかかるし・・・。

ひょっとして3WAYの方が必要かも・・・・

2WAYでのクロスオーバは、ほとんどが2kHz以上であり人間の耳にすればかなりの高音部です。
それに対して、3WAYでのウーハとミッドレンジのクロースオーバは300〜700Hzで音量のボリュームゾーンです。
この部分での、音の混じりはかなり敏感にわかってくるかと思います。そう考えると、2WAYより3WAYでの(下の)クロスオーバ
のフィルターの方を高次にすべきなのかもしれません。
 こりゃ、いろいろとトライすることが増えそう!

ちょっと実験
いきなり3WAYに展開することは無理なので、2WAYの構成を変えて、
ウーハとミッドレンジの組み合わせの2WAYで鳴らしてみましょう。
ここでのMIDレンジはかなり低い領域まで再生できるので、400Hzあたりに
クロスオーバをもってきました。

ウーハとミッドレンジの2WAYで実験です。


クロスオーバは400Hzとかなり低めの設定です。

いままで何をやっていたんだろう・・・・

この実験結果は、自分自身にかなりの衝撃となってしまいました。
クロスオーバを400Hzにすると、高めの声の女性ボーカルはほぼミッドレンジが担当します。
フィルターの次数が低いとウーハからもボーカルが聞こえますが、高次の-192dB/octまであげると
ほとんどウーハからは漏れ聞こえてきません。で、この状態で低次と高次のフィルターの違い
を比較すると一目瞭然でした(試聴CDは大黒摩季さん)。

 低次から高次に切り替えると、一気にボーカルの透明度があがります。もともとボーカルの音に
魅せられてこのミッドレンジを導入することになったのですが、このミッドレンジの良さが前面にでてきます。
反対に低次にすると、ボーカルに滲みを感じます。いままでは、それがいい音だと思っていたのですが、
いまとなっては単に雑味だったんだな〜という気です。ひどく言えば、ボーカルが時間差のある状態で
音が重なっているようです。
 あ〜、今まで何をやっていたんだろう?という気持ちになってきました。

まあ、今までの音もよかったんだけど、どこまで拘るかだなあ〜・・・・・
それに、女性ボーカルだけを聞いているわけではないし・・・・・
それに今のシステム(EVC72320Tとアナログフィルータを内蔵した3WAYマルチ)を新調したのはつい最近だしな〜・・・・・
と、必死に現状のシステムを肯定したくなる自分がいました・・・(汗

3WAYにするなら・・・

今回の改造でDIV5142は2WAY用になっていますが、ソフトを変更することなしに3WAYのミッドレンジ用の
BPFにも簡単な改造で、できそうです。すなわち、DIV5142には4つのDSP(PCM5142)が乗っていて、2WAY
用には2つを連結してHPFとLPFに用いていましたが、4つのDSPをすべて連結してやればHPF+LPFのBPFに
変更することができるはずです。



DIV5142を2枚つかえば超高次の3WAY用のチャンデバになるはずです。

どこまで突き進むのだろう?(笑

あ、だめだわ! 2020.2.9

3WAYにするには、上図のようにすればいいかと思いましたが、たしかに3WAY用にはなりますが、
ミッドレンジ用のBPFの信号がすこしずれることになりそうです。すなわち、TWEETERとWOOFER用の
フィルターは全部で19個のBIQUADを通ることになりますが、MIDRANGEではその倍の38個を通過
することになります。そうなれば、19個分の遅延が余分にかかるので、出力信号がずれてきます。
どの程度ずれるかはわかりませんが・・・・おそらく、100クロック程度かな?でも、44.1kHzで100クロックだと
2.3msになるので、音速から距離にすると780mmほどになります。これは無視できません。
 ちょっと目論見がはずれました。

まずは、2WAY用の機能を整理 2020.2.10

2WAY用に作成したソフトの機能を整理しておきましょう。

製作マニュアルとしてまとめました → DIV5142_2WAY_Manual.pdf

DIV5142 2WAY版としてリリースします。PICのみのリリースもあります。

(後編)
DIV5142をBPFにつかう検討もしてみました。

(おしまい)