DAC1704は復活なるか? 2010.8.1
今年も早いもので、8月に突入しました。年々、時間が過ぎるのが早く感じるのは歳のせいかな〜。
そういえば近くのものが見えにくくなってきたので、さらに歳を感じるようになってきています。
体力的にはまだまだ元気なんだけど、衰えるところは衰えてくるんですよね。
さて、R−2Rの検討を再開していると、やっぱりマルチビットのPCM1704の存在をふと思い出してしまいます。
なんといっても、現状のマルチビットとしては最高性能ですからね。でも、今や生産はほぼ中止しており
在庫のみの流通のようです。
最近のDACはデルタシグマ型のものが大半で、私自身もPCM1794を愛用していますが、
やっぱりPCM1704の繊細な音づくりはPCM1794では得られないものがあります。
なぜメーカはPCM1704、マルチビットをラインアップからはずしているのか?
これは、勿論「儲からないから」の一言につきるでしょう。
@DFを内蔵したPCM1794等に比べると、構成する素子が増えるのでセットメーカが嫌がる。
A正負電源が必要なのでセットメーカが嫌がる。
BDAC素子のトリミングにコストがかかり、素子自体が割高なのでセットメーカが嫌がる。
CハイエンドDACなんて、所詮数が少ない。
等々、理由をあげればいくらでもあがりそうです。
でも、個人の自作の楽しみくらいは少し残しておいて欲しいものです。
すでに、PCM1704をつかったDACについてはDAC1704-4DやDAC8D SUPERなどがあるのですが、
最近作ったディスクリ型IVアンプ差動合成基板と合わせたらどんな音になるだろう?という興味がでてきました。
また、DF1706をつかったDAIも作ってあるので、これと組み合わせてDAC1704を再度作ってみたくなりました。
いまや稀少となったマルチビットDAC
どんな構成にするか?
IV基板はいくつかあるので、DACのみを搭載するのがよさそうです。そして、DAI基板もあるので純粋にPCM1704のみを
搭載した基板にするのが汎用性が高そうです。基板サイズをいつもの電源基板等と合わせるとすると、無理すれば8個程度
は搭載できそうですが、少々大きめのコンデンサを載せることも考慮して4個にしましょう。
そして、DAC素子の接続方法としては
@ 単純2パラのステレオ構成
A 単純4パラのモノラル構成
B 2パラ差動のモノラル構成
これらがジャンパーで変更できるようにすれば色々と遊べそうです。
まずは、さくっと描いてみましょう。
まずはさくっと描いてみました。
若干変更!
DAIとしてASRCやメモリバッファーとも直結できるとさらに遊べるので、WCLOCKの立ち上がり、立ち下がりの
どちらでもDACがラッチできるようなジャンパーを設けることにしました。このためインバータの7404が一つ増えています。
これで完成かな?
若干パターンを変更して、よりフレキシビリティを持たせました。
夏休み?2010.8.3
基板屋さんに試作を発注しました。WEBでは納期8/7となっていたけど、あとからメールが飛んできて、
「しかしながら、誠に申し訳ございません。
下記日程で、生産工場が夏休みの連休を頂いており、それに伴って
納期が、遅れてしまいます。
◆7月31日(土)〜8月5日(木)」
だそうです。ということで、試作完成はお盆休みに突入しそうです。
まあ、その間にゆっくり部品を調達することにしましょう!
基板&部品到着 2010.8.14
試作したRenew DAC1704
Kマークがいい音を予感させます。
PCM1704は1.27mmピッチのSOPなので、いつものPCM1794にくらべて基板の実装密度が低く感じます。
いや、わざとゆったりスペースにしたのですが、この理由は直径が大きめのOSコンを使いたかった
からです。以前に袋で買ったものですが、全然消費する機会がなくて、この基板でつかってやろう
というわけです。これって幾らでかったんだろう?(全然覚えてない)。
16V 100uFのOSコン。いつ買ったんだろう?
さて、PCM1704は結構高価なので、基板にバグがあるかどうかわからない状態だから、1個だけ
半田付けして動作確認をしようかな〜と思っていましたが、折角の夏休みのリラックスモード
なので、一気に4つとも半田付けです(意味不明・・(笑))。
ICと表面実装部品を取り付けたところです。
IC周辺を拡大。
一部のコンデンサは表面実装タイプもとりつけられるパターンにしているので、
秋月の22uFのタンタルコンデンサをとりつけました。これは10個で100円で
コストパフォーマンスがとてもよいです。メモリーバッファーにもつかうことがあります。
秋月のタンタル 10V22uF品。
あ、忘れ物!
ディジタルの電源供給はインダクタを入れる予定ですが、うっかり買うのを忘れてしまいました。
ジャンパーにしてもよいのだけど、折角なので日本橋に買いに行きましょう。それまで、ちょっと
作業は中断です。
電源はどうしよう?
電源基板のTYPE-DでPCM1704用の電源を作ろうと思っていましたが、あいにくに在庫切れ。
まずは動作確認だけでよいので、適当な電源基板があればいいのですが、
部品箱をごそごそ探していると、これがみつかりました。lm317/337をつかった電源基板ですが
これ1枚で5V、±5V、±15Vの電源が得られます。RA40トランスとベストマッチです。
部品箱の中から発掘した電源基板
さて、あとはインダクターを買うだけです。
日本橋へGO!
お盆だというのにデジットは開いていました。ご苦労さまです。
朝一番に訪れて、お目当てのインダクター(トーキンの80uH。10個200円)
を買ってそそくさ帰ってきました。しかし、これだけを買いに高速代にガソリン代に・・・・
結局高い部品になってしまいました(笑)。
デジットで調達したインダクター
必要な部品がそろったので、あとは残りの部品を半田付けして完了です。
これで一応は完成!
PCM1704周辺のアップ
動作確認!
動作確認はDAIと電源をつなぐ訳ですが、DAIとDACは同じサイズなので2階建てにしています。
動作確認の様子。
出力の確認はDACが電流出力ということもあり抵抗を出力とGND間につないで、ここからオシロプローブ
で波形を観測することにしました。抵抗値は130Ωです。なぜ130Ωかというと、部品箱のなかでほとんど
使われずにあったからです(笑)。E24系列でも、こういった中途半端な値ってほとんど減らないんですよね。
出力とGND間に抵抗をつないで出力電圧を得ます。
修正個所発見!
動作確認をしていると、色々と修正個所が見つかってきます。
なぜか今回はパターンの引き回しを忘れている箇所が多かったです。
暑いから集中力が落ちているのかな?でも、修正自体は簡単で助かりました。
これがSSOPパッケージから線を引き出すとなったりしたら、かなり難易度が高くなってしまいます。
DAC基板の修正個所は1カ所ありました。
DAI基板も追加で1カ所の修正を発見!
基板の修正も終わり一通りの動作は確認できました。
今回はDAC基板が色々なモードに対応できるようにジャンパーをいくつか設けているので、
それらのチェックをメインにおこないましたが、無事完了です。
音だしにはこの1枚のDAC基板でもいけますが、折角なのでもう一枚も作りましょう!
物には勢いが大切です!
もう一枚も作るぞ!
DAC1704基板は意外と短時間に作れます。大体1時間くらいで作れるかな。
時間がかかるののはディスクリIV変換差動合成基板です。部品の種類はあまり多くありませんが、
なんせ半付けの密度が高いので、リード線を切りつつ半田付けする必要があるので、
時間がかかってしまいます。
今回使用した部品は初段には2sk246(GR)をつかい、その他は2SC1815/A1015の組み合わせです。
初段には2SK246(BL)をつかいたかったのですが、秋月電子では在庫切れのようなので、GRランクにしました。
完成したもう一枚のRenew DAC1704
一気に作ったディスクリIV変換差動増幅基板。これ結構つかれます。
最終音だし確認!・・・
の前に、オシロで波形を確認しておきましょう。ディスクリIV変換差動合成基板に用いた
FETはまったくペアリングしませんでしたが、ほとんどVRは中央付近でゼロ調ができました。
これって、日頃のおこないがいいからかな〜(笑)。
まずは全体を動作させるために組み立てます。同じ基板サイズなので4階建てにしました。
下からDAI(withDF1706),Renew DAC1704×2、ディスクリIV基板になります。
全体の動作確認のために組み上げ。
なお、ディスクリIV変換のIV抵抗値は620Ωにしました。
この値だとPCM1704はシングルで1.2mAの出力なので、パラで2.4mAですから
620Ω×2.4mA=1.488V
差動回路を通ると出力が倍になりますから1.488×2=2.976Vです。
実効値だと2.976/1.41=2.1Vですからちょうどいいくらいです。
(目標値は2Vrmsでしたが、E24系列の中で一番近い値の抵抗は620Ωでした)。
振幅は約3Vです。
意外にDF1706っていいかも!
今回、波形を観測してものすごく意外な結果でした。通常ではディジタルフィルターを通すと、かなりリンギングがでるのですが、
このDF1706の波形出力はものすごく素直です。
以下に、その波形の比較を示します。なお、このDAI基板にはNOS(Non-Oversampling)への切り替えも可能なので、そのときの波形を示します。
そして、以前(DAC8D Superを検討したとき)にDF1704での観察波形があったので、それも併記しました。
DF1706って、ものすごく優れものだったりして!!!!
DF1706出力(Renew DAC1704) | NOS出力(Renew DAC1704) | DF1704出力(DAC8D SUPER) | |
矩形波 | ほとんどリンギングなし。 |
見慣れたリンギング波形 |
|
パルス | こちらもほとんどリンギングなし。 |
見慣れたリンギング波形 |
ちなみにASRCをとおすと、下図のような波形になります。
ASRCを通した場合のパルス波形。
念のため・・
メモリバッファーとも接続できることを確認しておきました。今回のDAC1704はいろいろなタイプのDAIと
接続できるようにジャンパーを工夫しています。
メモリーバッファーとの組み合わせもOKです。
いよいよ、アンプに接続!!
手元にあったFOUR PLAY とラフマニノフを聞いてみました。
PCM1704の音は今までに、しこたま聞いていますが違います。これはDFの違いかな?
それともIVアンプの違いかな。
いづれにしても、PCM1704の繊細な音づくりに、さらに王者の貫禄が加わったよう感じでしょうか。
またPCM1794とは違う側面があります。
とはいえ、いまは完成直後のプラシーボ100%の状態ですから、こんなコメントあてになりません(笑)。
いづれにしても、どのようにケースに納めて完成させるかを考えていきましょう。
久し振りにタカチのケースを購入するかな?
#部品屋.comでいつものタカチのケース(OS70-37-23)を注文してしまいました!
久し振りにDAC1704-4Dのご開帳!
今回つくったDAIが念のためDAC1704-4Dと接続できるかを確認しておきました。
ラックに収まったDAC1704-4Dを取り出すのは骨がおれますが、久し振りのホコリ払いも兼ねて
おこないました。久し振りに中を見ますが、密閉したケースなので内部にはホコリもなく綺麗です。
そして、おもむろに今回製作したDAIを接続して動作の確認をおこないました。
無事動くようです。
こりゃDAC1704-4Dの192kHz対応計画も進めたくなりますね。
久し振りにDAC1704-4Dをご開帳!
新しいDAIでも問題なく動作することを確認しました。
早とちり・・・ 2010.8.21
そういえRenew DAI for DF1706はフィルターの切り替えができるようにしてました。
デフォルトはSlow設定ですが、Shapepに設定したらどのようになるか確認だけでしおきましょう。
フィルターの設定ジャンパー
みの虫ワイヤーで簡単に切り替えられるように、ジャンパーのところにプルアップ抵抗をつけました。
この抵抗の端子を開放にするか、GNDに接地するかでフィルターのモードが替わります。
フィルターのジャンパー設定部にプルアップ抵抗をとりつけました。
下の図はフィルターのモードの切り替えによる波形の違いです。ShapeにするとDF1704の場合と同じですね。
早とちりでした。なお、下図の波形はRenew R-2Rを用いて測定したものです。
Slow roll off の場合 | Shape roll off の場合 | |
矩形波 | ||
パルス波 |
ようやく暑さも峠を越えたかな? 2010.9.11
しかし、まだまだ暑いな〜。昼間は冷房なしでは過ごせません。
こんな時は部屋に引きこもって半田ゴテを握るのが一番かな。
ケースの加工はもうちょと涼しくなってからやりましょう。
Renew DAC1704とあわせて、お気楽に使えるIV回路も作ってみました。
同じ回路を単純に2つ並べただけです。
パターンはきわめてシンプル。
回路構成はDAC1704-4Dとまったく同じです。
完成! 部品は少ないので短時間で組み上がります。
話かわって 2010.9.20
3連休のはずが、結局ほとんど仕事で潰れたな〜と思いながら最後の休日。
でも、秋月で面白そうな新製品がでていたので買ったブツが届いていたので開封してみた。
買ったのは2Mピクセルの拡大鏡みたいなもの。
秋月のHPより。http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-04049/
お値段も6800円と手頃だし、失敗してもいたくない程度。で、早速つかってみました。
最初に感じたのがスタンドが貧弱。ふところが狭いのでちょっとつかいにくです。
まあ、この値段ですべてを要求するのは無理です。
付属のスタンド。ふところが狭くてつかいにくい。
また、フレームレートもそれほど早くないので、画像の調整には手間取るところもありますが、
拡大図は結構きれいにとれます。老眼の進む小生には強い味方になりそうです。
SSOPの半田付けの様子をパチリ。このカメラでは低倍の撮影です。
メモリバッファー+DAI for DF1706の組み合わせ検討
DF1706をメモリーバッファーで動かすことを検討してみましょう。
ここで考えないといけないのが、DF1706のシステムクロックをどのように与えるかです。
メモリーバッファーは128fsの動作速度を基準としていますが、DF1706は192kHzは128fsですが、
それ以下、すなわち32〜96kHzでは256〜768fsになります。すなわちメモリーバッファーのシステムクロックを
DF1706に入れるだけでは、32-96kHzでは周波数不足になります。
したがって、メモリーバッファーのシステムクロック出力を少しいじらなくてはいけません。
具体的には次のような改造になるでしょう。
メモリ-バッファー | DAI for DF1706 | |||
fs | オリジナルの システムクロック (128fs) |
改造後の システムクロック |
×4端子 (無改造) |
XTI入力 (システムクロック入力) |
44.1kHz | 5.6448MHz | 16.934MHz(384fs) | 0 | 16.934MHz |
48kHz | 6.144MHz | 24.576MHz(512fs) | 0 | 24.576MHz |
96kHz | 12.288MHz | 24.576MHz(256fs) | 0 | 24.576MHz |
192kHz | 24.576MHz | 24.576MHz(128fs) | 1 | 24.576MHz |
DAI for DF1706の改造は大したことはないのですが、メモリーバッファーは少し工夫が必要です。
一つロジックICを追加する必要があるでしょう。使用していないロジックの活用も考えられますが、
入力端子がフロートしないように、GNDあるいはVccに接続しているので、それらのカットは面倒です。
ロジックICといってもおそらく7400を1個で足りるでしょう。
いや、やっぱりIC47(74AC153)の空きロジックを利用するのが簡単かな?
IC47を流用しましょう。
そうすれば新たに部品を用意する必要はありません。
改造のポイントは次の通りです。切断箇所3カ所とジャンパー3本です。
切断箇所は3カ所。少し細かいところです。
ジャンパーは3本。
切断前の状態
パターンを切断しました。勢いあまって他のパターンを切らないようにしなくっちゃ。
jジャンパー線を飛ばしました。これでメモリーバッファー側の改造は完了。
Renew DAI for DF1706の改造
こちらの改造はジャンパー線だけで済みます。またCS8416は使わないので、
周辺の部品に加えて、ロジックICも一部実装しません。
まずはジャンパー線は下記の通り4本を接続します。すべてランドからランドへの配線なので
細い線をつかえば簡単です。
ジャンパーは4本。
改造例です。配線はラッピングワイヤーをつかっています。
実装する部品はこれだけ。すこし勿体ないです。
RenewDAIは単なるDF用ボードです。
動作確認!
まずは改造箇所が正しいかどうかを確認していきましょう。
接続するDACはR-2Rをつかいました。これは5V単一電源で動くので接続が簡単だからです。
接続の順は
ASRC → メモリバッファーDAI(CN1) → (CN1)RenewDAI for DF1706 → RenewR−2R
になります。
動作確認の様子。
動いているかは波形で確認しました。192kHzモードにしていきなり実験です。
無事動きました。
DF動作モード(12kHz正弦波) ノンオーバサンプリングモード(12kHz正弦波)
192kHzサンプル時 192kHzサンプル時
つぎはいよいよDAC1704との接続をしていきましょう。
その前に、ケースに収めることも考えて電源基板をいくつか作りましょう!
作成した電源基板は全部で3枚。左から+5Vディジタル用、±5VDAC用、±15Vアナログ用です。
完成した電源基板
電源基板が完成したので、トランスに接続して電圧が正常にでているkどうかを確認しました。
その後に、各種の基板と接続していきます。基板は3階建てになっています。
今回はIV変換基板にはOPアンプをつかった基板をつかってみました。
バラックで動作確認中!
動作確認に無事すみました。それぞれすでに動作確認が済んでいるので、
ここでこけることはないでしょう。しかし、これだけの基板とトランスはケースに収まるだろうか?
試聴してみる!
(つづく)