ちょっとTea Time!? DAC1704-4D逝く? 2022。5。25

左チャンネルの音が小さい!

長年愛用しているDAC1704-4Dだが、最近左チャンネルの音が小さくなったようです。
最初はBGM程度で聞いていたので、あれ?と思う程度で気のせいかと思い、そのままにしておきましたが、
ヘッドホンで聞くとやはり左側が小さいです。 ひょっとして左耳が劣化した?と最初は思いましたが、
同じ曲を違う装置で聞くと正常です。 耳は大丈夫のようです(ここですこしホットしました。

で、たまたま端子の接触等が悪いのだろうから簡単に直ると思っていましたが、色々としても以前左側が小さいです。
ここは、DACを取り出して調べてみる必要がありそうです。


愛用のDAC1704-4Dです。ちょっと左チャンネルの出力が低いかもしれないので調べてみましょう。

やっぱり小さかった!

最初はDAC以外のアンプとかの問題かと疑いましたが、色々とやってみてやはりDACが一番怪しいです。

そこで、ラックからDACを引っ張り出して出力をオシロに接続して確認です。
その結果はやっぱりDACが問題で左チャンネルの出力が小さくなっています。なぜだろう?

すこし小さくなった量を詳細に調べてみると、右に比べて約39%低下しています。
この39%という値ですが、分母を8とする分数で考えると3/8がもっとも近いです。
このDACには片チャンネルあたりPCM1704を4個差動で計8個使っていますが、
39%という数値は左チャンネルの5個のDAC素子が壊れたこととほぼ同じです。

でも、DAC素子が左チャンネルだけ5個も壊れることってあるの?
おそらくそれは最悪の事態で、おそらくアンプかなにかの問題でしょう。

でも、一度DACの蓋をあけて調べてみる必要がありそうです。


やっぱり、左(上)が右(下)に比べて半分程度の出力でした。
DAC1704-4Dが原因でした。



もうちょっと出力差がどの程度あるか調べるために拡大です。
右の出力は左の約39%くらいかな。 これって、分数にすると3/8が一番近い
感じです。いやな予感がするな〜。


あれ?

ほんとに久しぶりにDAC1704-4Dの蓋をあけましたが、なぜか想像と違います。
ディスクりIVと差動アンプ基板が搭載されています。全然覚えていないなあ〜。

で、HPをチェックすると改造を行ったようですね。

ひょっとしてこのIV基板が調子がわるいのかもしれません。


久しぶりにDACの蓋をあけてみました。 そういれば、ディスクりIV+差動アンプ基板を追加していたんだ!

原因はDACか?

4パラになっているPCM1704の出力は20Ωの抵抗を介してIV回路に接続されています。
PCM1704からの出力は正負1.2mAなので4パラだと4.8mAですから、20Ω抵抗の両端電圧は正負96mV、。
すなわち約0.19Vppとなるはずです。
 調べてみると、右側はほぼその値になっていますが、左側の差動増幅前の+側は70mVppと小さいです。
どうやらアンプでは無くDAC素子の問題のようです。こりゃ参ったなあ〜。
  
IV回路前に接続されている20Ω抵抗の両端の電圧を測定です。 結果としては左チャンネル(写真左)
のレベルが右チャンネル(写真右)に比べて小さいです。原因はDAC素子にありそうです。


どのPCM1704が不調なのかを調査

では、一体どのPCM1704が不調なのか? それも一気に何個も壊れるのも違和感があるので、
一度、PCM1704の動作状況を調べてみることにしましょう。 まずは、電源電圧を調べますがすべてOKです。
さらに、PCM信号が正常に供給されているかもチェックしましたが問題ありません。

こうなるとひとつづつPCM1704を調べる必要がありそうです。 まずは、ディスクリIV基板があると
邪魔なので、オリジナルのOPアンプをつかったIV回路に戻します。


まずはIV回路をオリジナル回路のOPアンプに戻しました。

IV抵抗は680Ωにしていますから、PCM1704が4パラだと出力電圧は6.5Vpp程度になるはずです。
で、それぞれのIVアンプ回路の電圧を調べてみました。
その結果、右チャンネルは正常ですが左チャンネルのA側はPCM1704が1個のみ、B側は2個のみしか
動いていないようです。 すなわち4パラの内でA側は3個、B側は2個の合計PCM1704が動いていないことに
なりそうです。5個もダメかあ〜.

 
左チャンネルA側は2個のPCM1704が正常。    左チャンネルB側は1個のPCM1704が正常。
 
 
右チャンネルはA、B側とも4×2=8個のPCM1704はすべてOKの様子です。

さて、不調なPCM1704の個数がわかったところで、デバイスを特定していきます。
PCM1704の出力を順番に切り離していって、出力信号が小さくなったらそのICは正常ということになります.

IOUT出力ひとつづつ切断して、どのPCM1704が動いていないかを
特定していきます。


不調なデバイスの場所は固まっている!熱が原因か!

調べた結果は、どうやら不調なPCM1704の場所は固まっていることがわかりました。

ここまでくると、なんとなく原因がわかってきました。
すなわち熱による損傷です!

まず基板の建て付けとしては、かなり密度が高くて基板を4枚重ねにしています。
下から、右チャンネルDAC, 右チャンネルIV、左チャンネルDAC,左チャンネルIVの順番です。

で、出力が低いのは左側すなわち上側の基板です。 ケースには放熱用の穴はありませんから
対流で上側の基板の温度が上がっていることが想定されます。 さらに、調子の悪いPCM1704が
固まっていますが、この上下にIV基板が配置されています。 すなわち発熱体が近くにあり、
さらに閉塞された空間に配置されているため熱がこもりやすい状態になっていたということです。


ラベルのついているPCM1704は正常に動いているものを示しています。
調子の悪いPCM1704の位置は固まっています。 原因は熱でしょう!
8個中で3個のみ正常なようです。 すなわち3/8ですから出力電圧は約38%に低下することになります。
最初の悪い予感的中です。

さてさてどうする?

15年以上はつかっているDAC1704-4Dなので、お疲れ様ということで退役させてもいいのですが、
これだけOSコンを投入したDACもこれしかありません。 それにPCM1704は大好きな音なので、
なんとかして直したくなります。で、色々と対策を考えます。

1.放熱対策
 まず発熱を減らして放熱を上げることが必須です。
 そのため、下記の対策を取りましょう
  (1) IV回路はオリジナルに戻す
    ディスクり回路は発熱が大きいので、もとのオリジナルに戻して発熱を下げます。
  (2) 天板に放熱用の穴をあける
    穴をあけて中に熱がこもらないようにしましょう!
  (3)アルミの保護シールを剥がす
    アルミ板には厚めの樹脂シートが傷防止のために張ってありますが、これも取り払いましょう。
   樹脂シートは断熱効果もあるので、それを剥がせば放熱効果もあがるでしょう。

2.DACデバイスの交換

 これが悩ましいところです。 手元には新品のPCM1704は1個しかありません。
 といいうことで、修理の方策は下記のどれかになりそうです。
 (1)PCM1704は交換せず、IV抵抗値を変更する。
   すなわち4個のうち2個壊れていところについてIV抵抗値を2倍にするという手です。
  4個のうち3個壊れていところについてIV抵抗値を3倍にします。 でも、これって
 DAC1704-4Dに看板に偽りありになっちゃいます。

 (2)遊休のDAC8D SUPER(PCM1704)から4個を剥がして交換する
  8Dでなくなっちゃいますが、いまは使っていないので仕方ないかもしれません。
  それにしても、交換なんてできるだろうか? 結構ICの回りはコンデンサやなにやら半田ゴテが入りにくいことが予想されます.

さてさてどうしよう?

まずは1個交換してみる!

まずは新品のPCM1704が1個あるので、それと不調なICと交換してみましょう!
ひょっとしてICではなく、OSコンの不調の可能性もありますからこれでわかるでしょう。
ちなみに、OSコンの電圧はすべて計って、とくに問題はないことを確認しているので、
基本的にはPCM1704の問題と考えています。

問題はすぐ近くにOSコンもある状態でPCM1704が外せるかどうかです.

で、やってみると一部パターンを剥がしてしまいましたが、なんとかなりました.
剥がれたパターンもGNDに接続する部分なので修正は簡単です.


まずは取り外すPCM1704に半田をてんこ盛りです.
我慢強く両サイドを温めつづけたら、なんとかはずれました.


はずれた跡は、吸い取り線で余分な半田を吸い取ります.


新しいPCM1704を実装しました.

さて、ここで一度通電して出力レベルが変るかを確認です.
結果としては出力が2倍になりましたから、やはりPCM1704が不良だったようです.

 
BEFORE(1個のPCMのみ動作)    AFTER(1個PCMを交換した)

不良なPCM1704を全部交換するか?

さて、PCM1704が不良なのがわかりましたが、DAC8Dから部品取りするかな〜?
まずは、部品取りできそうな実装かどうかを調べてみましょう.
で、さっそくDAC8Dの蓋をあけてみました. モジュールを1つ取り出して、
ICが外せるかみてみました. 取り外しはできそうですが、 なんか完成しているものを
わざわざ壊すのも気が滅入りそうです.


久しぶりにDAC8Dの蓋をあけてみました.こちらも中の実装密度が高いです.


これがPCM1704のモジュールです.ほとんどチップ部品なのでICの取り外しはできそうです.
でも、なんかこれを壊すのはためらわれます.

ここはDAC8Dには手を付けずにおきましょう!

苦肉の策

とりあえず、苦肉の策として、右チャンネルは4パラ差動のままですが、左チャンネルは2パラ差動で動かすことにしました.
そのため、左チャンネルのIV抵抗値は右に比べて倍にする必要がありますので、680Ωの抵抗を追加でいれました.

さて、方針が決まったところで元に戻します.

ディスクリ基板をとりつけるときに取り外したスチコンも部品箱にあったので、それをもとに戻します.

フィルター用のスチコンがありました.


左チャンネルのIV回路+差動増幅回路です.
2パラ動作なのでIV抵抗は680Ωを2個直列して電圧を稼いでいます.

さて、この状態で出力を確認しておきましょう.
で、オシロに接続してLRともに同じレベルになっていることを確認しました.
よかった、よかった!


ようやくLRが同じレベルになりました.

ケースの天板にスリット加工

ケース内に熱がこもらないように天板に放熱用の穴を加工です.
最初はドリルで穴をあけようかとおもいましたが、 家外でドリル回すと
結構音がでるので夜は近所迷惑です. でも、はやくケースに蓋をしたかったので
ここはCNCをつかって天板にスリットをあけるようにしました.

6mmのエンドミルでスリットを30本ほど加工です.
CNCも結構五月蠅いですが、モータ回転は高速で外に漏れるような音ではないので、
家族の白い目を気にしなければ大丈夫です(笑.

ただ、アルミ板を削ると結構あとあとの掃除が大変なんだよなあ〜.


スリット穴をどんどん削っていきます. こういった用途にはCNCはとても便利です.


削り終わりました. もうアルミの切削粉だらけです.

さて、天板の加工が終わったらビニールの保護シートを外して、石鹸で洗って切削油を落として
あとは取り付けです.

修理完了!

スリット加工して天板を取り付けて修理完了です.
スリット穴も結構、様になっていますね(自己満足です.


ようやく修理が完了しました. これで、ようやくラックに戻せます.

まとめ
 DAC1704-4Dの片チャンネルの音が小さくなりましたが、PCM170の不調が原因でした.
 不調の原因は、ケース内の温度上昇と思われます.
 ICは以外と高い動作温度では故障するのかもしれません.
 消費電力の小さいDACなどでも、放熱用の穴はあけておいたほうがよさそうです.

今度は右かあ〜! 2022.5.30

修理が完了して暫くは問題なく動いていましたが、今度は右チャンネルがおかしい。
 電源投入直後は問題ないのだが、数秒すると右チャンネルの音が少しだけ小さくなる。
それに、たまに音楽が途切れることがある。 音楽が途切れるのはBluetoothの影響かと思っていたが、
他のDACをつかった場合は音の途切れは発生しない。
やっぱり右チャンネルのPCM1704も不調なものがありそうです。

そりゃ、左チャンネルのPCM1704が5個も死んだのに右チャンネルが全部生きているというのも
流石に基板の上下関係が違うからといっても不自然です。

こりゃ、壊れる前兆かな〜。

本格的に修理を行うか、それとも引退させるか、悩みどころだなあ〜。

(つづく?