ちょっとTea Time!? フォトリレーを試してみる。 2021.2.19

リレーはオーディオアンプやスピーカ切り替え器などで随分お世話になっています。リレーと言えば電磁石による機械式のものが多いですが、
MOSFETをつかった電気的なリレーもあります。これについても色々と作りました。


Renew MOSFET MUTE の巻き。

  
MOSFETリレーを調べてみる!の巻き

で、いまさらながらMOSFETリレーの長所を挙げると下記のようなところです。でも、本音もチラチラ。

(MOSFETリレー長所)
@MOSFETを適選すれば大電流が流せる(大出力アンプに向く)
 (本音)確かにパワーMOSFETを使えば数10Aを流すことができますが、私のアンプでは5Aもあれば十分。
      5A流れれば4Ω負荷のスピーカでも50Wの出力をになりますから、必要十分です。

A寿命が長い
 (本音)機械式リレーの電気的寿命はおよそ10万回だが、1日1に10回開閉するとしても30年もつかえるので、
      機械式といっても寿命はあまり考えなくてもいいでしょう。

B実装高さが小さい
 (本音)機械式リレーは高さがあり、パワーリレーだと30mm近くありますが、電解コンデンサの方がよっぽどでかいのでリレーの
      高さってあまり関係ないでしょう。

C小電流駆動ができる(電圧も5Vあれば十分動く)
 (本音)パワーリレーでも5Vあれば動くものもあります。ただし、電流がたくさん流れるので電源は厳しいですね。それにMOSFETリレーだと
     3.3VのPICでも十分に駆動できるので、駆動に関しては有利でしょう。ここはMOSFETの有利なところです。

D開閉速度が早い
  (本音)1ms以下で開閉できますが、こんな速度オーディオでは関係ないです。

E無音で動く
  (本音)これが最大のメリット。リレーの動作音はどううも安っぽく感じてしまいます。感じだけなのですが・・・・・
       リレー自体が安いものだという先入観があるようです。

まあ、その他いろいろありますが、短所を挙げると

(MOSFETリレー短所)
@高い
  機械式リレーだと2回路のものが100〜150円で買えますが、容量の大きなMOSFETリレーだと2回路だと1000円以上かかります。

A実装面積が広い
  とくにディスクリートで組むと、フォトカプラや2個のMOSFETが必要でかなりの面積を必要とします。

ということで、普通に長所と短所を並べると機械式リレーでもよさそうな気がしてきます。
でも、MOSFETリレーを使う最大の利点は「無音で動く」ということでしょうか。機械式リレーのようにカチカチいうのも
動作しているのがよく分かっていいのですが、無音で動作してくれるほうがなんとなくスマートな感じがします。
これは主観以外のなにものでもないですが、オーディオなんて主観そのものですからね。


MOSFETリレーのいいところはなんといっても無音で動くところかな〜。

フォトリレーを買ってみた
 秋月の通販ページをみていて、すこし開閉電流の大きなフォトリレーがあったので買ってみました。連続2A、ピーク6Aとあるので
小さなパワーアンプでも十分つかえそうです。またON抵抗も150mΩと比較的小さいです。ただしステレオには2個必要なので260円かかります。
機械式リレーよりすこし高いです。


これを買ってみました。


比較的大きな電流を流すことができます。またオン抵抗も低いです。

特性を調べておきましょう 2021.2.20

MOSFETをつかったリレーで気になる特性は「OFF時にどれだけ音が漏れるか」です。
耐電流や抵抗ロスなんかはデータシートでわかるのですが、音の漏れの原因となる内部容量については
データシートには記載がありません。人間の耳は非常に敏感なので、音漏れが大きいようだとスピーカ等を
切り替えても、音が漏れているのがわかります。まあ、MUTE目的なら気になるレベルではありませんが、
スピーカを全てOFFにしても音が聞こえるのは、あまり気持ちのいいものではありません。

音漏れを調べてみましょう!

測定回路は下記のようにしました。負荷抵抗は適当に20Ωとしました。ちょうどヘッドホンの負荷程度です。

測定回路です。これでE1とE2の比率を計測します。



測定の様子です。小さいフォトリレーの回りにクリップが一杯です。

測定結果
 音漏れの原因はMOSFETの寄生容量なので周波数が高くなると大きく漏れます。
下図は20kHzでのオシロ波形ですが、そこそこ漏れているのがわかります。ただ、20kHzとなると
聞こえない領域でもあるので、実際にほしい値はもっと低い周波数です。でも、周波数を小さくすると
オシロでは測定が難しくなるのでロックインアンプをつかって測定します。

20kHzでの波形観測です。高い周波数ならまだ観測できますが、
これより低い周波数だと厳しいです。


ロックインアンプをつかっての測定結果は下図になります。
MOSFETの寄生容量起因での漏れになりますから、周波数に比例して漏れています。
漏れ量をみてみるとおもったより小さいです。MOSFETの容量が小さいので、寄生容量も相対的に小さいためでしょう。
パワーMOSFETをつかったものなら、もっと漏れてきます。

具体的に見ると、100Hzでは約-110dBですから無音といってもいいでしょう。
1kHzでも減衰量は-90dBありますので聞こえないと思います。
10kHzになると-70dBくらいになるので聞こえる領域ではありますが、年寄りは高い周波数の感度が低い耳なので反対に
周波数起因で聞こえないでしょう(笑。

ということで、このフォトリレーを小型アンプのスピーカ切替につかったときは音漏れはあまり気にする必要がなさそう
という結果になりました。


ロックインアンプをつかって測定です。測定範囲は100Hz〜20kHzです。

寄生容量はどの程度か?
10kHzで約-70dBなので、リニアにすると1/3200です。ということで負荷抵抗の約3200倍ですから10kHzでの抵抗値は
64kΩということになります。容量に換算すると250pF程度ということがわかりました。

今度ヘッドホンアンプを作るときには、このフォトリレーを使ってみましょう!

音質を確認してみましょう

ヘッドホンアンプにこのフォトリレーを接続して音質の確認をしておきました.
で、結果としてはフォトリレーの有無による差はわかりませんでした.
まあ、耳の問題もあるかもしれませんが(笑.

駆動回路としてはフォトリレーの発光部は2個直列にして1kΩの抵抗を電流
制限抵抗にしています.フォトリレーに加える電圧を上げていったときに、
リレーがONする電圧は2.65Vで、そのときの電流は360uAでした.
かなり低い電流でONにできるようなので機械式リレーに比べると低消費電力化がはかれます.

ヘッドホンアンプの出力にフォトリレーをいれてみました.音の違いは分からないです.

残念だったのは

フォトリレーをOFFにした状態で、ヘッドホンアンプのボリュームを最大まで上げたら
小さく音が聞こえました.もちろんかすかに鳴る程度なのですが音楽としては十分認識できます.
低音がでていないのでシャカシャカと鳴っています.
予備実験ではほぼMUTE状態になるかと思っていましたが、やはり聞こえちゃいますね.
人間の耳ってやはり感度高いです.

 完全にMUTEにしようと思えば、もう2個フォトリレーを追加して出力のショート回路も組んだほうが
いいでしょう.
 しかし、そこまでやるなら機械式リレーをつかったほうが簡単かもです.


完全MUTEを狙うなら出力の短絡回路も必要ですね.

(おしまい)