ロジックIC調査??せっかくなので・・・の巻き 2010.5.8

高速アイソレータは実現するか?で色々なインバータロジック(7404)買ったのだけれど、
結局速度を評価するには手持ちのオシロの性能が貧弱で、まともな測定ができなかったことも
あり、ほとんどテストしていないけど、手元に残ったのは多種なIC。このまま、また部品箱
の肥やしにするのもちょっとしゃくに障るので、内部抵抗を測定してみることにしました。
周波数特性とは少し違うけれど、ドライブ力という点では一つの参考になるでしょう。
直流での測定なので、ブレッドボードや他のユニバーサル基板で適当に組んでも測定精度も
十分に確保できるでしょう。


色々買った7404インバータ。

ということで、まずは手元にあるインバータを変換基板にそれぞれ半田付け。そして、端子には
接続ピンも取り付けておきました。これで、下準備は完了です。


下準備完了。これから料理するぞ〜


まずはゲート毎の内部抵抗値

こんな回路で、内部抵抗を測定(推定)してみました。測定した結果は下表の通り。


評価時の回路


測定の様子

測定結果(シングル時)

Highレベル時 Lowレベル時
電位差ΔE(V) 内部抵抗推定値(Ω). 電位差ΔE(V) 内部抵抗推定値(Ω).
Vcc(V) IC R=1k R=500Ω R=1k 500Ω R=1k R=500Ω R=1k R=500Ω
5 74AC04 0.046 0.091 9.2 9.2 0.037 0.075 7.4 7.6
3.3 74LCX04 0.038 0.076 11.7 11.7 0.039 0.078 11.9 12.1
3.3 74LVC04 0.044 0.088 13.5 13.7 0.036 0.072 11.0 11.2
5 74LVU04 0.119 0.237 24.5 24.8 0.078 0.157 15.8 16.2
5 74AHCU04 0.160 0.317 33.1 33.8 0.108 0.217 22.2 22.7
5 74HCU04 0.166 0.330 34.3 35.4 0.156 0.318 32.2 34.0
3.3 74LVX04 0.131 0.257 41.2 42.2 0.096 0.190 29.9 30.5


74ACおよび74LCX、74LVCが良好ですね。マニュアルでは24mA出力を謳っている実力もあり大したものです。

パラにして見よう。
7404は6回路ありますが、折角なので3回路パラにして内部抵抗が下がるかどうか調べてみましょう。
本来はロジックICの出力はつなげちゃいけないのだろうけど、まあ気にしないで起きましょう。

測定結果(3パラ時)

Highレベル時 Lowレベル時
電位差ΔE(V) 内部抵抗
推定値(Ω).
シングル比 電位差ΔE(V) 内部抵抗
推定値(Ω).
シングル比
Vcc(V) IC R=1k R=1k 向上倍率 R=1k R=1k 向上倍率
5 74AC04 0.016 3.3 2.8 0.013 2.6 2.8
3.3 74LCX04 0.013 4.0 2.9 0.013 4.0 3.0
3.3 74LVC04 0.015 4.6 2.9 0.013 3.8 2.9
5 74LVU04 0.041 8.3 3.0 0.028 5.6 2.8
5 74AHCU04 0.055 11.2 3.0 0.038 7.7 2.9
5 74HCU04 0.058 11.7 2.9 0.053 10.7 3.0
3.3 74LVX04 0.045 13.7 3.0 0.033 10.1 3.0

かなり低くなりますね。おおむねパラ数の効果通りで1/3程度に下がってきています。
やはりパラの効果は大きいです。

そういえば・・・・
ロジックICの内部抵抗はずいぶん前ですがR−2RラダーDACのときに測定した覚えがあります。
R−2Rの誤差の1つの要因がロジックICの内部抵抗にあるわけですから。今回測定した結果からいけば、
パラ化することでロジック自体の内部抵抗は下がりますから、これでR−2Rを作ればそれなりの精度が
得られるような気がしてきました。でも、また数100本の抵抗の選別もあるので、それだけがちょっと・・・・。

世の中には精密抵抗があるわけですから、これらを使えば選別の手間は省けそうです。
でも、そのような精密抵抗っていくらくらいするのかな?と思い調べてみました。

いわゆる薄膜抵抗からピックアップです。digikeyで誤差0.1%、抵抗値10kΩで、形状は2012サイズのチップ抵抗とすると
101品目もでてきました。なかでもバーンズの物が価格的にも入手しやすそうです(CRT0805-BY-1002ELFCT-ND)。
100個買えば@13円。16ビット分解能でステレオ分を揃えるには約100個必要ですからね。ちなみに、
R−2Rを組むのはR−(R+R)とすれば1種類の抵抗で済みますので、16ビット分だと16×3=48個で、ステレオで
約100個になります。
でも、いまさらとういう感も・・・・・

リニューアルR-2Rは実現するのかな? 2010.5.21

しばらく出張が続いてなかなか音楽を聴く暇はなかったけど、頭をあれこれ巡らす時間は
十分にできて、R-2Rをつくろうという気になってきました。 夏休みの工作かと思って
いだけど、少し前倒しになりそうです。

R-2R DACは抵抗の選択や、MSBの調整も必要で、作るのが面倒な割に一般のDACーICに比べて
性能を出しにくく、やや使いにくいところがありますが、まずはディスクリート構成
となるため素子の特徴を出しやすいことと、いまでは少ないマルチビットDACを実現できること、
そしてなにより自作の楽しさが得られるDACです。

こんな素子も発見

ちなみに、世の中にR−2RのDACがあるかを探してみると見つかりました。
18ビット分解能のものです。これっていいのでは〜と思いましたが、
パッケージが小さい!これって実装に絶対失敗しそうです。
ちょっとあきらめ。


パッケージサイズ。ちいさいな〜

リニューアルR-2Rのコンセプト

また、どういったコンセプトで作るか色々と案を列記。

ケース1
 必要最小構成の16ビットとして、1枚の基板でステレオ構成としたもの。
 DAIも搭載して、これ1枚でDACとして動作するように構成です。
 できるだけシンプルをモットーに考えた場合。

ケース2
 24ビット構成として、1枚の基板では片チャンネル分。
 2枚でステレオとなるが、4枚で差動で使えるようにする。
 もちろんパラ化もこだわる(最大8パラくらいにする)。
 いわゆるR-2Rのハイエンド?

いづれにしても、使う素子なんかは決まって来そうです。

抵抗器

 チップ抵抗と通常の抵抗器も使えるようにする。チップ抵抗器については
抵抗値1種類で済むようにするのが便利です。またチップ抵抗は0.1%のバーンズのものが使える
サイズとするのがよいでしょう。

ドライブIC
 ロジックICの基本は74HCでしょうが、ドライブ段はインピーダンスの低い74ACを使いたいところです。
あるいはLXCシリーズかな。HCでも十分速度的に間に合いますが、折角なので低インピーダンス化をねら
いましょう!

基板サイズ
 電源基板やRenewASRCと同一サイズにすると2段、3段重ねができるので便利そうです。

動作電源
 基本は5V単一としましょう。

差動アンプ
 これは搭載せず、外付けとするのが簡単です。差動アンプ自体も簡単な回路なので、ユニバーサルで組んでも
しれているでしょう。あるいはミニアンプでもいいかな?

調整方法
 MSBの抵抗値誤差を吸収するためのVRは搭載可能にするが、聴感のような定性的な調整方法だけでなく
テスターで簡単に設定できるように、前作と同様の工夫を行う。

こんな感じでしょう。

具体的なアートワークにかかる!

と、その前に

こんな提案がありました。パラもいいけど、低ON抵抗のドライバー段をかますのも1つの手段です。
いっそのことオペアンプをつなぐという手もありますね。そうすれば、ほとんど出力抵抗はゼロです。
でも、実装できるかな〜

ドライバー段のMOSFETはハーフブリッジタイプのものやHブリッジタイプのものがあります。とくに
Hブリッジドライバはモータドライブを想定したものでしょう。

  

PNが両方入ったタイプ(ハーフブリッジ用?) FDS8958B

HブリッジタイプのIC(ZXMHC6A07N8DITR) これなら2回路とれる。

そして、具体的なアートワークにかかる!
必要な部品が搭載されるか確認してみましょう。
比較的余裕はありそうです。でも16bitステレオ構成(一番右)の場合ではDAI回路まで載せるのは難しそうです。

24Bitモノ構成:              24Bitモノ構成:               16Bitステレオ構成
バッファーOPアンプを使用        バッファーにMOSFETを使用       (DAI無し)


試作の前にちょっと確認しておくことがあるので、まずは部品を入手しないと!

なぜか、2SC97Aを購入!

私はメタキャン信者じゃないけれど(笑)、高周波がよいとのことなので購入してみました。
R-2Rの出力には差動アンプの接続が必要になる場合がありますが、
ついでなので、A7−betaアンプをリニューアルしてみようかとも思っています。

2SA97A いまでは珍しいCANタイプ


リニューアルするA7-Betaの回路案

上図のNPNトランジスタはすべて2SC97Aにしてみるかな?

まずはこんなパターンをつくりました。回路図とは部品番号が違うけど、回路図を別途修正。
基板サイズに余裕があるので、部品配置が楽です。

NEW A7基板

回路図を書き直しました。
今回の回路は初段Q1,Q2の定電流源としてFET、ツエナー、LEDの3パターンが使えるように
してみました。でも、2SJ103って秋月から消えてしまったんですね。


部品類到着!
DIGIKEYに注文していた確認用の部品が到着しました。週末は少しテストをしてみましょう。
 MOSFEが3種類とDUAL オペアンプが1種類です。
オペアンプについてはFET入力とスルーレート、さらに価格を考慮してTL072を選びました。


購入したチップ類

まずはMOSFETの評価
今回購入した3種のMOSFETのスペックは下表の通りです。値段が安いFDS8958は
多少ON抵抗が高めですがゲートチャージは小さいですね。

型 番 SI4511 FDS8858 FDS8958
メーカ VISAHY FAIRCHILD FAIRCHILD
ON抵抗(mΩ)
Nch
Pch
(4.5V時)
17
50
20
34.5
39
80
ゲートチャージ(nC)
Nch
Pch
11.5
17
17
33
4.1
7
価格(円)
Digikey
@206 @108 @69

確認事項について
ひとつはMOSFETを外付けドライバーとして使用したときに低ON抵抗になっているかどうかを確認することです。
というのもそういった用途でつかったことがないので、まずは不安があります。さらに、MOSFETのゲートの入力容量も
大きいので、ロジックICで駆動した場合に、どのような波形になるかも気になります。
価のための回路はこんな感じです。出力抵抗をGNDに接続するか、あるいはVccに接続するかの2パターンにて分けています。
なお、on抵抗測定時の負荷抵抗は100Ωと低い値をつかいました。有る程度低い抵抗値にしないと、テスターで測定できる
レベルの電圧がでそうにないですからね。


評価回路

まずは評価が出来るようにICをそれぞれ変換基板に取り付けます。
適当に割り折ったのでバリがいっぱいです(笑)。

変換基板にとりつけたMOSFETとオペアンプ


評価の様子

ON抵抗の評価結果

下表のような結果になりました。74AC04の出力電圧差を含めたネットの測定値なので
多少カタログ値とはことなりますが、ほぼ同様の値でしょう。どれも0.1Ω以下が実現
できそうなので、かなり期待ができそうです。

型 番 SI4511 FDS8858 FDS8958
Nch-ON
電位差(mV)
ON抵抗(Ω

1.4mV
28mΩ

1.4mV
28mΩ

1.9mV
38mΩ
Pch-ON
電位差(mV)
ON抵抗(Ω)

1.7mV
34mΩ

1.8mV
36mΩ

3.3mV
66mΩ

波形を観察してみる!

今度は、入力に44kHz程度の信号をいれて波形をみてみましょう。
綺麗な矩形波になればいいのですが、結構ドキドキしたりします。


評価回路はこんな感じ。

これは結構面白い結果になりました。
CASE1はロジックICにAC04を用いて負荷抵抗100Ωとした場合ですが、SI4511ではかなりリンギングが発生します。
これは負荷の問題かと思って負荷抵抗値を1kΩに変更してみましたがかわりません(CASE2)。
このリンギングはロジックICの出力ででているようなので、MOSFETの負荷容量が大きいために発生しているようです。
ということもありロジックICをもう少し出力がマイルドなHC04に変更(CASE3)したところ、かなり綺麗な波形になりました。
波形の点からいけばFDS8958が一番よいようです。内部抵抗だけで評価すると他の2種に劣ります(それでも優秀)が、
総合的にはFDS8958を使うのが一番よさそうです。

SI4511 FDS8858 FDS8958
CASE1

ドライブロジック
74AC04

負荷抵抗
100Ω

リンギングが発生
CASE2

ドライブロジック
74AC04

負荷抵抗
1kΩ

リンギングは負荷抵抗値
の影響ではなさそう。
CASE3

ドライブロジック
74HC04

負荷抵抗
1kΩ

ドライブのロジックIC変更で
改善です


データ取り直し!!

あまりにも評価基板がやっつけ仕事だったので、少し綺麗に配線しなおして再測定してみると、
全然波形が再現しません。どうやら、さきほど測定した結果ではパスコンなども測定毎に変わって
いたところもあるので、再度測定し直してました。とくに、電源部に容量のある電解コンデンサを
いれておかないと電源が振られて、それだけでも悪い特性になるようです。良い勉強になりました。
きちんとした配線をしないと!!

評価基板を作り直し!

再評価結果
最初に測定したような大きなリンギングはなくなっています。
CASE1はロジックICに74AC04をつかい45kHz程度の周波数で波形を観察しましたが、SI4511では立ち上がりにやや乱れがみられます。
CASE2では周波数を10倍程度に上げて測定しましたが、波形的にはFDS8958が一番綺麗です。
CASE3はロジックICを74HC04に換えましたが、周波数が高い領域では駆動力がたりずSI4511では波形がかなり鈍ります。
こうなるとMOSFETのPchとNchが同時にONになる時間帯が増えてしまって、貫通電流でMOSFETが加熱(あっちっち)になってしまいました。
CASE3でもFDS8958が良好のようです。

結論的にはFDS8958をつかってロジックは74ACシリーズなどの高速タイプを使うのがよさそうです。
最初の実験とは結論が異なってしまいましたが、再試験して良かったです。

SI4511 FDS8858 FDS8958
CASE1

駆動ロジック
74AC04

周波数
約45kHz

立ち上がりに乱れがある。

波形は綺麗

波形は綺麗
CASE2

駆動ロジック
74AC04

周波数
約443kHz

周波数を上げると乱れが顕在化する。

やや波形に乱れ

3種類の中では波形は一番素直
CASE3

駆動ロジック
74HC04

周波数
約443kHz

この直後にICは加熱。
スイッチング速度が遅く貫通電流過大。

波形の立ち上がりがやや鈍い。

波形の立ち上がりはいい。


つぎはOPアンプ!0

オペアンプをボルテージフォローアーの形で使用してバッファーとしています。

OPアンプのテストの様子


使用したのはTL072(DUALです)

評価結果!


まずOPアンプなのでオフセットが生じますが、このオペアンプの場合は入力をショートしたときに
5.4mVのオフセットがありました。

(a)入力Hの場合: 出力電位差は-5.3mVでした。すなわちオフセットを考慮した実質の出力抵抗値は2mΩ
(b)入力Lの場合: 出力電位差は5.5mVでした。すなわちオフセットを考慮した実質の出力抵抗値は同じく2mΩ

ということでオフセットをさっ引いた場合のON抵抗はMOSFETより1桁低く数mΩを確保できることになります。

(c)スイッチング特性
下図に示してますが40kHz程度なら綺麗な矩形波になりますが、400kHzになるとスルーレートがよくわかります。
あまり高速動作には向かないですね。低速オンリーなら良い成績がでそうですが・・・・


さて、MOSFETとOPアンプのどちらを作るかな?それとも両方つくるかな?

MOSFETバッファー型にしましょう!

いろいろと理由はありますが
 1.速度的に良好
 2.OPアンプだとオフセットのばらつきが心配
 3.5V単一電源で済む
といったところがメリットです。オペアンプの方が素子としてのバリエーションは高いのですが、
同時に価格も高いので、ちょっと数10個を豪勢につかうのも大変です。

そうときまればアートワーク!
ぼちぼちと描いていきましょう。


長くなってきたので後編につづく