高速アイソレータは実現するか? 2010.4.23

アイソレータとは何をアイソレート(絶縁)するかといえば,CDプレイヤとDAC間のティジタル信号の転送
において、互いの筐体のGNDを絶縁するために用いられるもので、そのメインパーツはパルストランスだが、
そのトランスを駆動するロジックICも重要です。ロジックICによくつかっているのが、74HCU04のアンバッファー
タイプのインバータです。なぜHCタイプをつかうかといえば、それほどスピードが必要ではないので、
できるだけノイズの少ない素子を選んでいるということです。なかにはVHC,ACなどをつかう場合もありますが
高速になると消費電流も増えるし、ノイズもまき散らしやすいのでこのあたりはトレードオフです。

でも、出来るだけ高速なロジックICをつかってみたい気もします。

懐かしのロジックIC
ロジックICといえば74シリーズが業界標準みたいなもので、最初にでたのはノーマルのTTLの7400など。
どうしようもなく消費電流が大きくて、いまではほとんど見かけなくなりました。すぐにLS(ローパワーショットキー)に
変わっていったような気がするのですが、なかなかノーマルの7400なんかは懐かしい響きです。

昔はよくつかったTTLロジックIC

いまでは74HCや74ACシリーズなどのCMOSがメインです。
でも、アンバッファータイプのICって、どんなのがあるのかちょっと調べてみました。
少なくとも、digikeyで入手できることが必要なので、WEBから”U04"というキーワードで調べてみました。
その中からロジックICをピックアップして何種類かマニュアルをダウンロード。
特性と合わせてみると、こんな感じです。やはり74HCU04はtp値(遅延時間)が大きめです。
それでも、20nS程度ですからまったく問題ない範囲です。

tp(nS) 備考
型番 動作電圧 TYP MAX
74HCU04 5V 8 20 Vcc=4.5V
74AHCU04 5V 3.5 6.5
74VHCU04 5V 3.5 6.5
74LVU04 5V 2.2 6.5
74LUVC04 3.3V 3.8 5V入力可

一番早いのが74LVCUです。これは電源電圧が3.3Vまででしか使えませんが、
いい感じです。ドライブ力の関係もあるでしょうかいくつか買ってみましょう。
このあたりのロジックICになると、DIPというのがあまりなく、ほとんどが表面実装品になります。
こういったときに必要になるのが変換基板です。この基板は、なにかのタイミングで適当につくった
ものです。でも、今回つかうのが初めてになりそうです。


SOICの変換基板。いつ作ったんだろう?

いくつか発注
ロジックICをいくつか発注しました。もちろんいつものDIGIKEYです。7500円を超えると
送料がただになるのと、10000円以下なら消費税もかからないので、7500〜10000円での
買い物がお得です。
さて、届いたロジックICはこんなものです。
アンバッファーでない普通の”04”も少し買ってみました。

買い込んだU04と04ロジックIC。

評価の回路ですが、こんな感じで行きましょう。折角なのでさらに多パラにするのもおもしろいかな?

評価の為の基本回路。ロジックIC(04タイプ)1個を使用。


パラにしてみた。ロジックIC(04タイプ)2個を使用。

さらにパルストランスをプッシュプルで動かすのはどうだろう?ということでこんな構成も考えられるかもしれません。


プッシュプル。ロジックIC(04タイプ)2個を使用。

回路図を書くのはいいのだけど、考えてみたらこれをすべて変換基板をつかってユニバーサル
で組むのは大変そうです。かといって、ブレッドボードだと配線長が長くなって、回路の
評価をしているのか、それとも配線長によるインダクタンスをみているのかわからなく
なってしまいます。やぱり基板をつくって評価した方がいいかな〜?

どんなパターン?
単純にロジックICとパルストランスの組み合わせですが、パルストランスを何回も巻くのも
大変だし、個体差もでるだろうから、いつもの空芯コイルのパターンも作成しました。
今回の空芯コイルは前作のお気楽アイソのときとちがって巻き方を変えています。
前作では、部品面に1次コイル、半田面に2次コイルを巻いていました。そのため、
基板の厚さ(1.6mm)がコイルの結合を弱めてしまいます。そこで、今回は1次と2次をパラ巻き
にしてみました。これだとコイル線の間隔は約0.15mm程度に縮まりますのでより強い結合が
得られるはずです。

ということで、こんなパターンを描いてみました。


空芯タイプのアイソレータ


パルストランスを使ったアイソレータ

一応パルストランスも試せるように2つの回路パターンも描いています。
簡単な回路なので、チェックもあまり必要ないでしょう。


回路図も書いてみました。(クリックするとPDFが立ち上がります)。


普通のインバータの速度は?

アンバッファーでない普通のインバータの04シリーズも速度を整理してみました。
やはり74HC04は遅めで、74LVC04が高速です。アンバッファータイプの方が早いのは、
回路がシンプルだからかな?

tp(nS) 備考
型番 動作電圧 TYP MAX
74HC04 5V 9 24 Vcc=4.5V
74AHC04 5V 3.8 6.5
74VHC04 5V 3.8 6.5
74AC04 5V 4 7.5
74LV04 5V 3.6 6.5
74LVX04 3.3V 4.1 8.5
74LVC04 3.3V 2.5 4.5

試作基板到着!

GWに間に合うように製作した基板が到着しました。
空芯タイプとフェライトコアを使うタイプを2枚綴りで発注しました。


完成した試作用基板。

動作確認は簡単に終わりましたが、評価のためには高周波のパルス発生器が必要です。
今回はASRCのBCK出力を少し間借りして使用します。出力周波数は約3MHzなので
ちょうど良いくらいでしょう。

評価の様子。クロックはASRCから間借り。


まずは74HCU04を1個のみ使った場合。

74HCU04×1個(シングルエンドで駆動)

次は74LVCU04に取り替え。取り替えるには半田を大量に盛って全部のPINを半田で一体化させて
取り外すので、周辺の部品にも熱影響がでてしまいます。ちょうど、チップコンデンサが傾いてしまいました。

今度は74LVUC04に取り替え。

74LVCU04をつかうときは3.3Vに電源電圧を下げる必要があります。
そのため、波形の振幅も少し小さくなっていますが、波形の形はあまり変わらないようです。
波形の立ち上がりをもっとよく観察したかったのだけど・・・・・
しかし、20MHzのオシロでは評価自体が無理なのかも(汗)。

74LVCU04×1個(シングルエンドで駆動)

評価が無理なら、いっそのこと4個ICを載せて完成させてしまいましょう!


完成したPowered Isolater基板

波形出力も、概ね1Vppになるように抵抗値を調整してみました。
パルストランスを使った方が矩形波に近い形をしているのがわかりますが、
4個使うことで、2パラのプッシュプルになるので駆動力が増したせいか
波形が落ち着いているようです。これなら、問題ないしょうで。

 
74LVAC04を使用したフェライトコア版           741AHC04を使った空芯コイル版

さて、このPOWERED ISOLATERはリニューアルしたASRCの出力段につかってみたいと思います。

(つづく?)