ディスクトップオーディオ(?)の巻き 2009.3.29
ちょっとTeaTime(その2:PCM2702)ではPCM2702をつかった基板を描いてみましたが、
USB-DACというものは基本的にはPCが音源であり、
ディスクトップオーディオ系ではないかと思っています。でも、ディスクトップオーディオも充実させたいと
ふと思って、いくつか基板をつくってみました。
1.PCM2702 USB-DAC
これは先の”ちょっとTeaTime(その2:PCM2702)”でも描きましたがPCM2702を使ったUSB-DACです。
BB社のラインアップでは高いS/Nが得られますので、高音質が期待できます。基板の左側に有る
ユニバーサル部は外付けクロックが搭載できるようにしています。
2.リニューアルお気楽HPA
USB-DACだけではヘッドホンやスピーカを鳴らすのは少し難しいので外付けアンプが必要です。
まずはヘッドホンアンプ用です。これはお気楽HPAと回路は同じですが、パワーTRは放熱板を
とりつけられるようにしました。また、取り付けられる抵抗のサイズも大きくしています。
これで、ヘッドホン用なら十二分ですし、スピーカも有る程度の出力では鳴らすことができると思います。
3.お気楽ミニパワーアンプ
基本構成はお気楽HPAと同じですが、出力をダーリントン接続として、アイドル電流も可変することが
できるようにしています。パワーTRは外付けになりますが、そのため数Wの出力は得ることができるでしょう。
電源電圧を17V程度にすれば出力は10Wは得られると思います。ディスクトップの小型SPを鳴らすには
十分な出力が得られるはずです。
4.A7ベータ版
ディスクトップオーディオでもプリアンプが必要になる可能性もあります。そこで
A7基板(MJ掲載のアンプ回路)をダブルで載せられるアンプ基板もつくってみました。
大きめの抵抗が取り付けられるように、600milサイズとしています(通常は400mil)。
1Wクラスの大きめの抵抗も取り付けられるはずです。また帰還抵抗も取りけられる
ようにしました。
では、一つ一つ組み立ててみましょう!
1.DAC2702 USB-DAC
部品点数はDAC1242-1.5より少ないので組み立ては簡単です。5Vのレギュレータ(写真左側の
放熱板ついているもの)は、放熱板は不要ですが外付けクロックに何をつけるかわからないことも
あって、有る程度の電流がとれるようにするために放熱板をとりつけました。
DAC2702の完成写真
組み立ては1時間もあればできるので、早速組み立てて動作確認をしてみました。
接続はトランスとUSBケーブルのみです。オシロのプローブをたてて波形をモニターします。
動作確認の様子。
PCM2702のアナログ出力は後段でオペアンプを通して送り出しのインピーダンスが低くなるようにしています。
オペアンプの入力の接続はNINV(非反転)とINV(反転)端子のどちらかを選べるようにしてみました。
INV(反転)の場合
文字通り出力は反転しますが、出力レベルはPCM2702の出力そのままになります(理由は後述)
反転バッファーを選択した場合(半田ブリッジで選択しています)
NINV(非反転)の場合
こちらも文字通り、出力は非反転です。出力レベルはPCM2702の出力の1/2になります(理由は後述)
非反転バッファーを選択した場合(半田ブリッジで選択しています)
反転と非反転で出力ゲインが異なるのは、アンプの構成が下図のようになっているからです。
INV側に接続すると、一般的な反転アンプでゲインG=R1/R2で構成されます。従って、
もう少し出力レベルを大きくしようと思えばR1を大きくすればいいことになります。
反対にNINV(非反転)側に接続すると、下図のアンプはボルテージフォロアとして動作するため
ゲインは1になります。そして入力信号はR3とR4で分圧されるので、出力ゲインが1/2になってしまいます。
反転と非反転、どちらを選ぶかは考えてしまいそうですが、人間の耳には位相はわからないようなので
非反転を選択した方が、ゲイン変更などの自由度が高いでしょう。ただし、波形がひっくりかえるのも
ちょっと気になるかもしれませんね(笑)。
バッファーアンプの回路図
いづれにしてもDAC2702 USB-DACは問題なく動くことが確認できました。
2.リニューお気楽HPA
こちらもあらかじめ部品を揃えておけば1時間もあれば組み立てることができます。
500mil以上のサイズを想定した基板なので、全体に配置に余裕があります。
オペアンプにはOPA2134を最初は搭載しました。
リニューアルお気楽HPAの完成
早速電源と発振器をつないで動作確認です。
動作確認中のリニューお気楽HPA
今回の製作ではゲインは11倍にしていますが、問題なく動いているようです。
まだ無負荷の状態ですが、今後負荷テストなどをしてみましょう。
波形で動作を確認(どっちが入力で、どっちが出力だったろう????)
3.ディスクリアンプ A7ーbeta
抵抗サイズは600mil(約1.5cm)としているので1/4Wの抵抗では間が抜けてみえてしまいます。
でも、このくらいのサイズなら1Wクラスの抵抗でも余裕ではまるでしょう。
まずは、部品を実装します。回路はA7に帰還抵抗と入力のコンデンサ+抵抗をつけた構成です。
今回、信号入力部分の抵抗の片端をGNDに落とすのを忘れてしまったので、1本ジャンパーを飛ばしています。
これはご愛敬です。
一本ジャンパーを飛ばしました。
こちらも電源と発振器、オシロプローブを繋いで動作確認をしてみましょう。
こちらも無事動きました。下のオシロは上:入力、下:出力です。
100kHzなので、多少波形が鈍っていますが、周波数特性はかなり良い部類です。
動作確認時の波形チェック
4.お気楽ミニパワーアンプ
これは放熱板等の加工も必要になりそうなので、週末に組み立てることにしましょう。
まずは基板から作成。すこし面倒なのはコイル作成です。φ1mmのエナメル線を
1cm程度のサインペンに巻き付けて4回巻き程度のコイルをつくりますが、
その被覆を剥く作業がちょっと面倒です。カッターの刃で被覆をこそぎ落としていきますが、
全周くまなく削るのはちょっと手間がかかります。
できあがった基板。作成時間は40分程度。
放熱板をどうしようか考えましたが、テストと割り切って手元にあった0.5mm厚程度の
銅板にとりつけることにしました。TO-220サイズのトランジスタが3個ずつ綺麗に
隙間無く並ぶ予定でしたが、部品箱にNPNのTO-220がなくて、仕方なくバイアス電圧
発生用はTO-192(2SC3421)を使用することにしました。これはBCEではなく、ECB配置
なので裏返してとりつけることになります。フルモールドでなければ沢山TO−220がある
のですが、非絶縁だと、シリコンをはさんで、絶縁スペーサを取り付ける必要があるので
ちょっと横着しました。
銅板にとりつけたアンプ基板。
使用したトランジスタはバラバラ(コンプリではないはず)。
バイアス用のTRは裏返し。
電源ON!
電源配線も済んで、とりあえず電源ON! すると電源の出力電圧が急に低下します。
あれ〜?動かないよ〜!!!
どこが悪いのでしょう?といっても回路は簡単なので、もう一度全体を見渡してみると
ミスを発見しました。一カ所でTRの”B”と""E"の接続箇所を間違えていました。
ということで、ちょっとパターン修正。表と裏で2カ所をなおします。
修正1;パターンカットの場所2カ所
修正2:バターン追加2カ所
これでOKのはずです。再度、電源ON!無事動き出しました。
アイドル電流はあまり流したくないので、10mAに設定しました。
無事動作! 下:入力(ch2)、上:出力(ch1)
テストの様子です。
組み合わせで遊んでみよう!
さてこれらの基板をどのように組み合わせるか、ちょっと遊んで見ましょう。
DAC2702 USB-DAC+リニューお気楽HPA
リニューお気楽HPAは外部電源が必要ですが、横着してDAC2702から横取りすることにしました。
DAC2702にはアナログ電源を横取りするランドを追加しているので、ここから配線しました。
DAC2702よりアナログ用の電源を借用
DAC2702より借用した電源をリニューお気楽HPAに接続して、両者の入出力を
接続すれば完成です。ヘッドホン出力もとりつけました。なお、DAC2702の出力は
直接HPAにとりつけています。というのも、音量調整はPCでできるので、あえて
ボリュームは取り付ける必要はないだろうと判断したからです。ただし、PCからの
出力の既定値がわからないといきなり大音量がでる可能性もあるので、あまり
ゲインを高く設定しない方がいいかもしれません。PCの出力を100%になったところで
少しうるさいくらいがいいでしょう。
DAC2702とリニューお気楽HPAとの組み合わせ
この組み合わせで試聴してみますが、なかなか音楽を楽しめます。もっとも、
通常のCDP+DAC+AMPの組み合わせに比べたら物足りなさを感じるかも
しれませんが、あくまでも狙いはディスクトップオーディオです。目的に対しては
十分なクオリティです。
SPを繋いでみる。
もともと、ヘッドホン用の設計ですが、有る程度のレベルではSPも鳴らせると思うので
ちょっと繋いでみることにしました。SPを繋ぐには出力の保護抵抗が邪魔なので
これをジャンバーしておきます。ジャンパーがし易いように、裏面にはジャンバー用パッド
をつけています。
ヘッドホン用の保護抵抗。通常は10〜100Ωくらいだけど、SP用には不要。
保護抵抗の裏面側のジャンパー用パッド 半田を盛ってジャンパー完了。
でもって、スピーカを接続して鳴らしてみました。
を、意外と結構な出力がでますね。この構成でも十分なような気がします。
でも、あまり大きな音を出そうとすると音が歪んできます。
この理由は、単純にSPの耐入力不足かな?
それとも出力段のエミッタ抵抗が大きい(現在10Ωをつけている)ので、出力電圧が足りないのかな?
パワー段が1段なので、出力電流が足りないのかな?
一度、最大出力についてはダミー抵抗をはさんで詳しくしらべて見ましょう。
DAC2702とリニューお気楽HPAとの組み合わせでSPを鳴らす。
DAC2702 USB-DAC+お気楽ミニパワーアンプ
つぎはお気楽ミニパワーアンプを接続してみましょう。こちらはパワーアンプ用に設計しているので、
出力は十分あるはずです。さっそくSPに繋いで鳴らしてみると、
をををを、やっぱりHPAとは鳴りっぷりが違うようです。
出力を上げても、余裕があります。
DAC2702とお気楽ミニパワーアンプの組み合わせ。
DAC2702 USB-DAC+A7-beta
まずはA7-Beta基板を組み立てましょう。ヘッドホンアンプに使えるかもしれないので、出力段はTO-220
のトランジスタを使用しました。
いくつか実装していない部品がありますが、これは初段のトランジスタの定電流回路をFET1個
で済ませたパターンにしたからです。電流値はFETのIDSS値に依存してしまいますが、
部品数が少なくなるのが魅力です。
部品はすこし少な目です。 定電流の回路はこんな感じ。Q5のみ実装。
基板の裏にはジャンパーを2本飛ばします。
FETを初段TRの定電流につかうときはR7をジャンパするのですが、基板裏面に
ジャンパー用のパタンを作っておいたので、ここで半田ブリッジさせます。
半田ブリッジ前 ブリッジ後
ヘッドホンを鳴らすようにバラック配線をしてみました。
試聴!
ヘッドホンはインピーダンス50Ωのものですが、まったく余裕で鳴らしてくれます。
低域も豊かな感じです。ひょっとしてスピーカもOKかな(笑)。
PART2へ続く