LM3886のパラアンプを調べてみる!の巻き(後編) 2021.3.31
(前編はこちら)
ようやく基板が出来上がってきました。
さて、どんどん進めて行きましょう・・・とはいえ、他の基板も同時にできているのでどれから手をつけようかな〜。
基板が出来上がってきました。
まずはICを差し込んでの寸法確認です.IC取り付け面と基板のクリアランスについては
以前のLM3886基板よりすこし大きくしました. そのため1mm程度の隙間があります...
まずはICを差し込んで基板とIC取り付け面とのクリアランスチェックです.
製作準備をしていきましょう
1)電力バーを作ってみる
この基板の電源ラインやSPラインはパターンを極力太くしていますが、さらに電気抵抗を低減させるために
電力バーも取り付けられるようにしています。電源バーとしては、できるだけ直線状の銅線が必要になります。
が、大抵手元にある銅線は輪っかになっているので、巻きほぐしただけではまっすぐにはなりません。
そこで、一工夫です。電動ドライバードリルに挟み込んで、数回回してやればまっすぐになります。
加工歪がはいりますので少し硬くなるので取り扱いも楽になります。
100均で買ったφ1.2mmの銅線です。巻きほぐした状態では曲がっています。
電動のドリルドライバーで端を咥えます。きちっと咥えられない場合は
銅線の端をすこし折り曲げればいいでしょう。
片方の端をペンチで押さえておいて、数回捻じれば銅線はまっすぐになります。このとき捻じり過ぎには注意です。
ただ、あまり回しすぎる(ねじりすぎる)と歪が入りすぎるので、電気抵抗が少しですが大きくなってしまいます。
まあ、焼鈍すれば元にもどりますが、焼鈍なんてできる人はほとんどいないだろうな〜。それに焼鈍すると熱歪で
必ずといっていいほど曲がるはずです。
2)基板の寸法図を整理
LM3886を多数取り付けることになるので、取り付け寸法を確認しておきましょう。
基板の寸法図です。LM3886は29.2mmピッチで配置されています。
3)LM3886の仮止め板作成
LM3886を直接放熱板に取り付けるならばこれは不要なのですが、まずは基板単体でのテストをおこなうので、
LM3886が整列して取り付けられるように仮止め板を製作です。できるだけ曲がりにくいものがいいので、5mm厚の
アクリルの端材をつかって29.2mmピッチでφ4mmの穴をあけます、
LM3886の穴径は図面上はφ3.81なのでおそらくM3でのネジ固定を想定しているかと思われますが、
φ3の穴ではLM3886の固定時に遊びがかなりでてしまいます。LM3886の穴をみると、M4のネジがぎりぎり
入るようなので、M4ネジで仮固定できるようにしました。M4をつかうとほとんど遊びがありませんから、
LM3886の配置がより正確になります。
LM3886の取り付け穴はφ3.8と大きいのでM3で取り付けると遊びが大きいです.M4がかろうじて通ります.
LM3886の仮止め板です。
M4のネジをつかってこのような形でLM3886を半田付けしようかと思っています。
製作にかかりましょう!
まずは電圧レギュレータを含むOPアンプ周辺部を組み立てです。まずは、ここまで組み立てて
動作確認をおこないます。最後に一番背の高い電解コンデンサを取り付ける前に、電源ラインの
電力バーを取り付けましょう。
一部、バーの他のランドと接触する可能性があるのでポリイミド絶縁テープを貼っておきます。
もともと電力バーは浮かして取り付ける予定だったのですが、面倒になってベタ取り付けすることに
したためです。
最後の電解コンデンサを取り付ける前に電力バーを取り付けます。その前に
接触しそうなところにポリイミドテープで養生です。
ちょうどこの部分が接触の可能性があるところです。
最初はφ0.5mmの銅線をつかって少し浮かして電力バーを配置しようかと
思いましたが、結構面倒なのでベタ取り付けすることにしました。
電力バーを配置した様子です。
電力バーを半田付けするときの注意点は、かならず一方向に順番に半田付けするということです。というのも、半田の熱で銅線が膨張するからです。
そのため、銅線の両端をまず半田付けしてしまうと、その時点で銅線がたわんでしまい、後の半田付けがしづらくなってしまいます。
OPアンプ周辺が完成! 2021.4.2
さて、OPアンプ周辺の実装が終わったので、まずこの段階で簡単に動作チェックをしておきました。
チェックのときに、R49の片端がGNDに落ちていないバグと、OPアンプのパスコンの配線が間違っているのを発見です。
OPアンプのパスコンは、高周波を使うこともないので必要なものでもないので、取っ払いました。
OPア
OPアンプ周辺の実装が済みました。バグを一部修正して、動作を確認です。
面倒な事前準備、その4
さて、製作上でもっとも面倒な準備があります。それが抵抗器の選別です。LM3886をパラで使うので、
ゲイン誤差はできだけ抑える必要があります。そのため1%精度の抵抗を0.1%で選別をおこないます。もともとの
1%抵抗の実力は0.3%程度はあるはずなので、そこまで大量に測定する必要はないのだけれど・・・・・どうだろう?
で、実際には抵抗を10本ずつ測定です。なお、本来は帰還抵抗には1kΩと20kΩをつかう予定でしたが、
よく使う値ということもあり抵抗の残数も少なかったので、ここでは910Ωと18kΩを使いました。
まずは10本ほど測定です。その結果は910Ωについては909,910Ωとかなり精度はよさそうです。
対して18kΩは17.87〜18.05Ωでばらつきました。でも考えたら、それぞれの抵抗値の誤差を0.,1%以下にする
必要はなく、抵抗の比のバラつきが0.1%以下に収まればいいので、抵抗器の組み合わせで0.05%以下のものが
6ペアとることができました。
ペア取りした抵抗は、無くさないうちに実装です.
LM3886の取り付け
そろそろLM3886を取り付けます.LM3886を基板に差し込み、仮止め板に固定したのち基板と直角になるように調整です.
あわせて、LM3886の取り付け位置高さもそろうように調整です.
調整が終われば、速やかに半田付けです.半田付けが終われば仮止め板を取り外し、後のテストのために小さめですが
放熱板と取り付けておきます.
LM3886の仮止め板と基板が直角になるように当て板をあてています.
仮止め板を外したところです.だんだん、出来上がりに近づいてきました.
あとのテストの為に放熱板と取り付けておきます.
オフセット調整
さて、ここから調整に入ります.まずは6個のLM3886のオフセット調整です.
オフセット調整のときはOPアンプを外して、LM3886の入力ラインをGNDに落としておきます.
そうしないと、OPアンプのオフセットがかかった状態だと、なにを調整しているのか分からなくなりますからね.
オフセット調整のためにOPアンプを外して、LM3886の入力をGNDに落とします.
まずは、オフセット調整のためのVRを取り付ける前に、どの程度のオフセットが発生しているかを測定してみました.
その結果は
CH1: 5.6mV
CH2: -14.0mV
CH3: 11.3mV
CH4: 10.6mV
CH5: 8.4mV
CH6: -6.0mV
となりました.想定していたより大きな値です.LM3886を反転アンプとして使っているので、
入力バイアス電流の影響がでているのでしょう.
もともとのオフセット調整回路では±5mVの調整範囲を想定したのですが、それでは調整しきれません.
なので、調整回路の定数を見直しです.
下図のように変更しました.これで、±20mVの変更が可能になるはずです.
オフセット調整回路の定数を変更して±20mVまで変更できるようにしました.
オフセット調整のVRは1回転のトリマーと使いました.できれば、10回転型のトリマーを使いたかったのですが、
秋月で買うのを忘れてしまいました.でも、実際に1回転のトリマーでも十分にオフセット調整を追い込めるようです.
まあ、安定性は10回転タイプに軍配が上がるでしょうが値段も高いですからね.
なお、一度オフセット電圧を全チャンネルで±0.1mV以下に追い込んだのち、しばらくしてから再測定すると
CH1: -1.0mV
CH2: 0.6mV
CH3: -1.8mV
CH4: 0.0mV
CH5: 1.1mV
CH6: 0.7mV
となっていました.大きくずれたところだけは修正しましたが、この程度の値なら問題なしです.
2mVずれたとしても、0.5Ωを介して流れる電流は4mA程度です.
さて、オフセットの調整ができたところで、最後に合成抵抗のとりつけです.
勿論、合成抵抗を取り付けたあとでオフセット調整をしても大丈夫ですし、電圧が測定できるように
チェックランド(P1〜P6)も設けています.
さて合成抵抗用に基板のパターンとしてはMPC74の金属板抵抗が取り付けられるようになっていますが、
今回は面白そうなので1%精度の1Ωチップ抵抗を使ってみることにしました.秋月で10個150円で売っています.
1Ωではすこし大きい気もするので、2個並列にして0.5Ωで使います.
合成抵抗は白いMPC74を使えるようにしていますが、今回は見送りです.
今回は精度の高い1Ω1%のチップ抵抗を使います.2Wの容量があります.
2個重ねて取り付けています.これで0.5Ωになります.
完成!
合成抵抗も取り付けて、ようや基板が完成です.お出かけ用の写真の為に一旦放熱板を取り外しました.
基板の実装が完了です.お出かけ用の写真をパチリです.
出力をみてみましょう
まずは、LM3886の3パラステレオ構成として、周波数特性をみておきましょう.
まずは無負荷での測定です.100kHzまではフラットで、800kHzまで上げると
-3dBになりました.周波数特性はまったく問題ないですね.
f=1kHz 下が入力信号(100mV/div)、上が出力(2V/div)
f=100kHz 下が入力信号(100mV/div)、上が出力(2V/div)
f=800kHz 下が入力信号(100mV/div)、上が出力(2V/div)
オフセット再測定 2021.4.3
一晩経ったこともあり、オフセットを再測定してみました。すでにOPアンプ(OPA134)が実装されているので
OPアンプのオフセット込みになってしまいます。
Lチャンネル(CH1)
OPアンプ出力: -0.4mV
IC1出力: 10.1mV
IC2出力: 8.8mV
IC3出力: 10.0mV
Rチャンネル(CH2)
OPアンプ出力: -0.2mV
IC1出力: 4.0mV
IC2出力: 5.3mV
IC3出力: 4.6mV
このような結果でした。LM3886は反転アンプでゲイン19.8倍ですからOPアンプのオフセットが
ちょうどゲイン倍されている形になっています。但し、値のバラつきをみるとL、Rチャンネルともに
±0.65mVですからオフセットも安定しているでしょう。
この程度のオフセットなら問題ないのですが、折角なのでOPアンプ込みでのオフセットも調整しておきました。
それそれのICの出力の電圧チェックポイントを設けています(P1〜P6)
備忘録
オフセット調整の定数について試算です。オフセット調整範囲は広ければ、トリマーの調整が微妙になりますし、
反対に調整範囲が狭いと、調整しきれない場合がでてきます。ということで、オフセットの調整量と回路定数について
試算しておきました。
オフセット調整回路は黄色の枠の中です。
ゲイン20倍の回路定数での場合です。
もちろんこれ以外の組みあわせでも大丈夫ですね。
基本的にはオフセット調整範囲を広げるにはR10を小さくし、オフセット調整範囲を狭くする場合はR10を大きくするのが簡単です。
オフセット調整範囲 | VR1 | R10 | R11,12 |
±7mV | 5kΩ | 1MΩ | 100kΩ |
±10mV | 680kΩ | 100kΩ | |
±22mV | 680kΩ | 47kΩ | |
±44mV | 330kΩ | 47kΩ |
BTLで動かしてみよう
この基板では6個のLM3886を使いますが、下記の3つのモードで動かすことができます。
@3パラでのステレオ構成
A6パラでのモノラル構成
B3パラBTLでのモノラル構成
OPアンプ周辺の回路は下図のようになっていますが、それぞれのモードでの動作方法を整理です。
OPアンプ周辺の回路
JP1 | JP2 | JP3 | 入力 | 実装上の注意 | |
@3パラでのステレオ構成 | 開放 | 開放 | 開放 | IN1,IN2 | R44は不要(あってもよい) R45はジャンパー(0Ω) |
A6パラでのモノラル構成 | 開放 | 開放 | 短絡 | IN1のみ | IC10(下側のOPアンプ)は実装せず。 周辺の素子(R33,R45、IC10、C10,R46)は不要 |
B3パラBTLでのモノラル構成 | 短絡 | 短絡 | 開放 | IN1のみ | C10,R46は実装不要(あってもよい)。 R45はR44と同じ値とすること(10kΩ程度) |
おそらくこの基板を使うならば@3パラステレオ かB3パラBTLモノ になるような気がします。
さて、次はBTLで動かしてみましょう!
JPの設定をおこなって、出力をオシロで観察です。
BTLでの動作時の設定はJP1,JP2が短絡で、JP3は開放です。
CH1,CH2の出力はそれぞれ反転しています(GND基準)。
CH1(COLD)、CH2(HOT)でのBTL出力では振幅が倍増です。
試聴してみましょう
メインのシステムに接続して試聴してみましょう。動作モードは@3パラステレオとします。
電源は、これ用に揃えた24Vの医療用のスイッチング電源を使いました。まだ共立電子にあるなか?
で、この電源ですがスイッチング電源としては珍しいと思うのですが、100Vを投入してから24Vが出力
されるまでに約3秒程度の遅れがあります。おそらく医療用ということで電源の立ち上がりを確保するために
あえて内部電源が安定化するまで待っているのかな?という気がしました。
最初電源を投入して電圧が出なかったので少し焦りました。
電源は24VのSWレギュレータを2個直列にして±24Vで使用します。
電源の準備ができたので、いよいよメインシステムに接続です。
メインのシステムは機器の評価がしやすいように、SP入出力端子やライン入出力力端子などをラック前面に設けていますので、
そこに接続するだけです。
オシロで波形を見るのと違って、音出しでは不測のトラブルが発生するとスピーカを飛ばしてしまいますから、
接続するスピ―カはとりあえず壊れても我慢できるものに接続して、問題がなければメインスピーカに接続です。
同様に不測時に原因対処がすぐにできるようにオシロも持ち出しました。デジタルオシロは滅多につかいませんが、
軽いので持ち運びが楽でこういったときは便利です。
メインのシステムに接続です。
試聴CDは・・・・
軽快な曲を選んできました。FripSideという2人ユニットでアニソンによく登場していたようです。
私は知りませんでしたが、最近NETFLIXで「とある科学の超電磁砲」というアニメをみて、そこで使われている曲が
ノリがよくていいな〜ということで、歌っている人のベスト盤を買ってみました。
これが試聴CDです。年甲斐もないなんて言わないでね!
音は安心感一杯!
音はICアンプということで、安心して鳴らせます。 自前の回路だと何がおこるかわかりませんからね(笑。
まあ、それは冗談としても、3パラ出力ということでなにか余裕を感じます。まあ、プラシーボ全開ですが。
でもハイエンドメーカに使われるような素子ですからLM3886の素性はいいはずです。
でも、ちょっとお高いんですよね・・LM3886って。以前は600円くらいで買えたような気がするのですが、
最近は1000円近くします。これって、円安のせいかな〜?
しばらく聞いていましたが、放熱板がかなり暖かくなってきました(熱いほどではない)。やはり現状の放熱板では
小さすぎるようです。はやくケースに入れたいところです。
マニュアル書き書き 2021.4.7
だんだん手抜きになってきましたが、製作マニュアル書きました。
PA3886P_Manual.pdf
(つづく)