LM3886のパラアンプを調べてみる!の巻き。 2020.7.1

暑い!
 だんだん夏の季節になってきました。マスクをしながら歩くと、自分の熱で倒れそうです。
でも、これからさらに暑くなるんだよね〜。家にいるときは冷房をガンガンにかけて〜、いや、まだ勿体無いか?

自分の部屋は2階なので、どうしても熱気があがってきて1階に比べる暑い。さらに、自室は2台のディスクトップが
ほぼつけっぱなし。パソコンの後ろからは熱風は吹き出ています。冬場なら暖房がわりになりますが、夏場は
勘弁してほしいな〜。さらにオシロの電源をいれようものなら、さらにヒートアップです。

リスニングルームも同様。アンプ類のスイッチをいれておくと、それぞれの機器がほんのり熱を帯びてきます。
とくにパワーアンプが暖かい。アイドル電流はあまり流すほうではないのですが、それでも結構暖かくなります。
アンプが合計5台に、DACやチャンデバなどを通電しだすと、もうちょっとした暖房機です。

で、やっぱりこれからアンプを作るとすれば、ひんやりとしたアンプがいいです。

ひょっとして、アンプも冬用と夏用で分けるのもいいかもです(笑。

涼しいアンプは?
 電力効率のいいアンプとしえば、Dクラスなどのディジタルアンプになりますが、ICアンプも比較的省電力です。
涼しいアンプなのでLM3886あたりをつかったアンプを作ろうかな〜と思ったりしましたが、いままでにLM3886は
色々な使い方をしたので、今回はパラ化をすこし考えてみようかと思いました。折角涼しいアンプをつくろうと思って
いたのでパラ化とはすこし主旨からはずれそうですが、LM3886をつかうと部品が少ないのでパラにしても、
ディスクリートにくらべたらスッキリとした涼しい感じになるかな〜と思っています。

これは涼しそう!
 LM3886をパラで使用したアンプは市販品でもあり、JEFFのMODEL10というが5パラのBTL構成になっているようです。
写真を探してみてみましたが、さすがにICアンプだけあってアンプの中は涼しそうです。
なによりアルミブロックがひんやり感があります(笑。

JEFFのMODEL10です。このまま冷蔵庫で冷やしたら冷たくなりそう。


ICアンプだけあって、中は涼しそうです。


なぜかチップ部品を多用してますね。大量生産するのかな?
大電流をあつかうためにバスラインが使われています。

色々と回路図を集めてみる!

パラアンプといっても、色々な回路をみてみると、単純に加算したパラアンプがほとんどですね。
パラ化した場合の注意点は、それぞれのアンプの出力を揃えることにありますが、アンプのオフセットならびに
ゲインを一致させるような工夫があります。
 あとは出力が大きいので、それを支える電源ライン、出力ラインが強化されています。


これはゲインを決める帰還抵抗は0.1%の精度のものが用いられています。


これは、すべてのアンプでオフセットが調整できるようになっているのかな?


電源と出力ラインは太い銅線で強化されています。

さて、色々と検討すべき詳細がありますが、ボチボチと考えていきましょう。

暑くなると、すぐにビールなどに手が伸びるので、その時点で思考回路はシャットダウンです(笑。

さらに 2020.7.2

こんな情報もいただきました。


さっそくアプリケーションレポートを眺めていると、各ICにDCサーボをかけてオフセットを抑えている回路例も載っています。

各ICにDCサーボとなると、結構大変だなあ〜。

出力ばらつきを調べてみましょう。

各ICのの増幅率にばらつきがあったらどのくらいの影響がでるかを調べてみましょう。
まあ、わざわざSPICEするまでもありませんが、暗算は面倒なので・・・・。

条件としては、1%誤差の抵抗を用いた場合として、2つのアンプの出力差がそれぞれ最大(+1%)、最小(−1%)のばらつきをもつ場合として、
各アンプに流れる電流を計算しています。スピーカのインピーダンスは8Ωにしています。

合成抵抗 等価回路
2つのアンプの出力にそれぞれ最大1%の誤差がある場合。
各アンプから流れる電流

1Ω


各ICの出力電流にばらつきがでています。合成抵抗1Ωは、ダンピングファクターを
考えるとすこし大きいので、もうすこし小さくしてみましょう。
0.5Ω

合成抵抗を0.5ΩはJEFF MODEL10でも使われた値です。で、アンプの増幅率に
1%の誤差があるとアンプの出力には倍、半分程度のばらつきがでてしまいます。
0.1Ω

なにも考えずに合成抵抗を0.1Ωにしてみると、ICの出力の電流は互に反転してます。
すなわち、パラにしているつもりが、互いに足をひっぱりあっていることになります。

上の結果から、ダンピングファクターを大きくするためにも合成抵抗は小さくしたいですが、アンプの増幅率のバラ付きが大きいと、
パラの効果が出ないどころか、逆にパラをすることで悪化していしまいます。

アンプの増幅率誤差は0.1%は必須?

アンプの増幅率誤差を0.1%にできると、合成抵抗を0.5Ωにした場合、ほとんど各ICの出力電流が揃います。
このくらい揃わないと寂しいですね。

合成抵抗 等価回路
2つのアンプの出力にそれぞれ最大0.1%に抑えた場合
各アンプから流れる電流
0.5Ω

アンプの増幅率誤差を0.1%に抑えると、かなり各ICの出力電流が揃ってきます。

さて、0.1%の抵抗はどうやって調達するか?これは人によって色々と考え方があるでしょう。

1)素直に0.1%の抵抗を購入する
 抵抗器の誤差として0.1%のものは、そう特殊ではありませんが店売りで求めるのはかなり難しいでしょうね。
 それに0.1%となるとチップ抵抗がほとんどです。それもあってJEFFのアンプにはチップ抵抗がつかってあったのでしょう。

2)抵抗器を選別する。
 アマチュアだと、これが一番のような気がします。そういえば、以前にR−2RラダーDACを検討したときに、一杯選別したことがあります。
 これをすれば0.1%程度で揃えることはそう難しいことではありません。根気がいりますが・・・・


以前にはこんなものをつくって選別もしたりしました。

3)抵抗器を組み合わせる
 これも現実的な選択かもしれません。ただし、低い抵抗値を用いた場合に、誤差補正用の抵抗の選択は難しいかもです。

4)可変抵抗器を用いる
 これが一番細かく調整できるかもしれません。10kΩの抵抗に100ΩのVRをとりつければ1%の範囲で調整ができます。
 ただ、VRの怖いのは接点の信頼性であったり、VR自体の温度特性だったりします。
 まちがっても、下のような接続にしたNFBの抵抗をつかったら、接点不良がおこったらアンプが暴走してしまいます。

 こんな接続したら、怖くて寝られません・・・


 少なくともこの接続でしょうね。

そのほかにも方法はいろいろあるでしょうけれど、スッキリ(部品点数を減らす)するなら、
やっぱり選別かなあ〜?

次はオフセットを考えてみましょう!
 と、いいつつビール片手にして、思考回路がほぼ10%くらいまで低下中・・・・。


低いぞ? 2020.7.4
どのくらLM3886のオフセットがでているか、まずは手元も実機で測定してみました。
入力をショートして、出力電圧を測定してみると右0.4mV、左0.2mVでした。
想像していた値よりかなり低いです。
 ちゃんと測定できているの?という気もしましたが、再測定しても変わらずです。
これならば、オフセット調整は不要な気もしますが・・まあ、個体によって差があるんでしょう。

まずは実機でLM3886の出力オフセットを測定。右0.4mV、左0.2mVでした。

データシートを確認してみると、入力オフセットは標準で1mVで最悪値でも10mVのようです。
これは優秀ですね。でも、最大で10mVのオフセットは覚悟しないといけないということのようです。

10mVの影響は?
 オフセット10mVが発生しても、とくに問題ないような気もしますがどうなんだろう?
極端な例だけみておくと、6パラとして5つが-10mVのオフセット、そして1つだけが+10mV
のオフセットとして、合成抵抗を0.1Ωとちょっと低めにして計算してみます。
 すると、仲間はずれの1個は常時170mA程度の出力を強要されることになってしまいます。
まあ、バランスの点ではあまり好ましくありません。
 気分的にも、そろえたほうがいいという感じでしょう。

かなり極端な例ですが、オフセットが1個だけ仲間はずれの場合です。


1個の出力だけ、大きな出力電流を強いられることになります。

さて、狙いの構成は

つくるとしたら、6パラ構成かな〜と思っています。4パラだと結構作例もありそうだし、ちょっと多めに(笑。
6パラ構成にしておいて

1)アンプ基板2枚つかいで6パラ×2のBTL
2)アンプ基板1枚で素直にシングルエンドの6パラ
3)アンプ基板1枚で、3パラ×2のBTL

4)アンプ基板1枚で、3パラの2chステレオL

こういった形で使えるようにしておけば、色々な用途にもつかえるでしょう。
私の場合は3WAYマルチなので、ウーハのみ3パラのBTLで動かして、ミッドレンとツイータはシングルエンドの3パラ出力
という感じでしょうか。
 さすがに6パラ×2のBTLとなると、ICだけで1個600円くらいしますから12個必要です。それをステレオにすれば24個
になるので、14400円! 結構な散財になってしまいます。 まあ、昔にPCM1704−Kを8パラ差動で32個つかったことを
考えれば、大したことないのですが、ケースの加工が大変です。

あと
気になるのは、パラにすると電源を入れたときのポップ音がどの程度になるかも心配です。
1個だと、ほとんど気にならないのですが複数になると干渉したりして大きくなってしまうかもです。
MUTE用のリレーはあったほうがいいでしょう。大出力に耐えることを考えるとメカニカルリレーより
MOSFETリレーを採用すべきかもしれません。

LM3886の配置ピッチはどう考えるか?


おもむろに電源から準備 2020.9.5

基板のアートワークも全然出来上がっていませんが、LM3886パラ構成になると試作用としても電源は強力なものが
要求されるので、スイッチング電源を購入しました。共立電子で購入した安価なものです。さらに安いものがありましたが、
医療用規格対応という言葉にそそのかされて、高いほうを購入です。医療規格品は、絶縁性能などの信頼性がよいようです。
24V5A(ピーク8.5A)のものを2台直列に並べて正負24Vの電源をこれでつくろうと思っています。
 実験が終われば、汎用の20V程度までのトラッキング電源にしようかとおもっています。


日本橋に寄ったときに120W(24V5A)のスイッチング電源を2個調達しました。


イータ電機製です。


医療規格対応ということですが、AC100V入力部のインダクターも多いような気がします。


思い出したように再開です。 2021.3.14

ほぼ半年ぶりに再開です。なぜ、中断してたかというと・・・単に他に興味が移ってしまっただけです(汗。
で、またこのページを見返しながら色々と考えて下記の方針で進めることにしました。

@ゲイン設定は0.1%抵抗をつかう。
 0.1%を買うと高いので、基本は1%の抵抗を選別します。1%の抵抗も実力的には0.3%程度以上の精度はありますから、
 選別すれば0.1%で揃えるのは難しいことはありません。

AオフセットはVR調整とする。
 OPアンプをつかったDCサーボもありますが、そこまでは回路が大変です。そこで入力にオフセット電圧を加える方法としました。


LM3886の基本的な駆動回路です。反転アンプで使うことにします。

回路構成は3パターンに

下記をジャンパー設定でできるようにしましょう。
2枚使いで6パラのBTLもやろうと思えば、若干の改造でできるでしょう。

1)アンプ基板1枚で素直にシングルエンドの6パラ
2)アンプ基板1枚で、3パラ×2のBTL

3)アンプ基板1枚で、3パラの2chステレオL


これらの回路構成は下記のようになります。1)のケースだとOPアンプは1回路しか使わないので、
シングルのOPアンプをつかうことにしましょう。


1)アンプ基板1枚で素直にシングルエンドの6パラ


2)アンプ基板1枚で、3パラ×2のBTL


3)アンプ基板1枚で、3パラの2chステレオL

配置は考えどころ
 配置といっても悩むのはLM3886の間隔をどうしようかということです。放熱板のフィンピッチに揃えると、
取り付け用の穴が開けやすいはずです。でも、どの放熱板を基準にしようか悩むところです。
そこで、タカチ電機の放熱板ケースに取り付けることを想定しました。
 ケースの図面とみると、どうやら放熱板のフィンピッチは(2.5+4.8=)7.3mmになっているので、
LM3886の取り付け間隔はその倍数である29.2mm(=7.3*74)にしました。


タカチ電機の放熱板ケースにとりつけることを標準にしておきましょう。

また、このケースにとりつけるのは基板の最大幅は180mm以下に押さえる必要がありそうです。
そこで、基板の幅は670mil(170mm)に押さえることにしました。

なんとか乗りそうかな?

 反転アンプも必要なのでOPアンプを搭載しますが、そのため基板上で15V電源も生成する必要があります。
これは簡単に3端子レギュレータを使おうかと思いましたが、ややノイズのことも考えてLM317/337をつかうことにします。
そうなると、抵抗が増えるのですがなんとか載せましょう。
 また、電源ラインややスピーカラインはバスバーで増強できるように一直線で配置できるようにしておきましょう。


ラフに部品を配置してみました。結構電源ラインがスペースをとってしまいます。


大分部品の配置が決まってきました.

結合抵抗はどうしよう?

LM3886のSP出力を束ねる抵抗はどれにしようか悩みどころです.これもある程度の精度が要求されます.
オーソドックスなところであれあb、金属板抵抗でしょうか.これは誤差は5%です.


オーソドックスにはこれでしょうか.

この金属板抵抗器は2Wと5Wのものがありますが、実際には2Wもあれば十分でしょう.
あるいは、こんなものもいいかもしれません.
0.1Ωと少し小さいですが精度が0.5%と高いです.そりゃ電流計測用ですから、精度はいいわけです.


これは1Wあるので3Aまで流せられます.

あるいはこれなんかいいかもです.1Ωなので2個並列にしてつかえば0.5Ωになるのでよさそうです.

これを2個重ねて取り付ければ0.5Ωになるのでちょうどいい感じです.


いづれにしてもMCPもチップ抵抗もどちらも取り付けられるパターンにしておきましょう!

ほぼ完成かな〜

あとはベタGNDを塗れば完成です.

あと一息かな〜.


一応完成! 2021.3.15


部品面シルク


部品面パターン


半田パターン+シルク


回路図

さて、これで製作にかかりましょう。

ところで、 2021.3.30

LM3886のアンプにはどのくらいの電圧を加えればいいのだろう?
LM3886の動作範囲は品質限界の範囲では±10〜±42Vとなっています. 電圧をやたら上げても、発熱処理が
大変になるだけなので、簡素な放熱で済まそうと思えば、できるだけ低い電圧にしたいところです.
そのため、まず電源電圧に対してLM3886がどの程度の振幅まで出るかを確認です.


LM3886基板をつかってテストのためにアンプを実装です.

電源電圧は±15.3Vとして、負荷に5.6Ωのセメント抵抗を接続してテストです.
この条件だと、およそ振幅としては12Vまでは出るようです.ということで、電源電圧から
約3〜3.5V差し引いた電圧まででるということになりそうです.

15V電源では12V振幅までは歪なく出力できるようです.


12Vを超えると最初に負側のピーク点が歪みだします.


さらに振幅を上げると、正側のピークもクリップです.

電源電圧はいかほど必要?

パワーアンプに求めらるパワーは使うSPの能率や、普段聞く音量にも依存するので、
一概にはいえませんが、小生の場合はピーク電圧で数Vあれば十分なレベルです.
そこで電源電圧を15Vとすれば、振幅としては少なくとも11Vまででます.
 このときのスピーカの電力は8Ω負荷だと約7.5W、4Ω負荷だと15Wまで出せます.
ここまででれば近所迷惑の大音量です.

ただ、実用的には十分でも数値的にはちょっとさみしいところがあります.
ということで、このLM3886用のアンプに調達した24Vの医療機器用スイッチング電源を
つかうことすると、最大振幅は20Vまでは得られるでしょうから、8Ω負荷で25W、4Ω負荷で
50Wが得られることになります.この値ならオーディオアンプとして威張れる数値です(笑.
 4Ωで50Wの出力をだすのは1個のLM3886で限界に近いですが、すくなくとも3個パラに
すれば余裕でしょう.

 ただ電源電圧は15Vにするか、24Vにするかで放熱対策が随分と違ってきます.

簡単に試算
 スピーカは8Ωとして、最大印加振幅は11Vとすると、スピーカの出力としては最大8W弱まで
でます.このとき電源電圧が15Vでは、アンプ側の損失は最大でも7W程度です.それに対して、
電源電圧が24Vになると18Wまで上がります.15Vと24Vを比べると、電源電圧は1.6倍しか増大
しませんが、アンプの損失は2.6倍まで増えることになります.


 アンプの電源電圧を上げると、放熱対策が厳しくなってきます.

これだけみると、15Vにしたいところです.それに、これから夏に近くなってくることだし.ひょっとして
冬場に向かっているときなら24Vを選択するのかな???.

まあ、実際には常に7Wもの電力でスピーカを駆動することはまずないでしょう.普通に聞いている分には1W以下なはずです.
ということで、放熱対策は簡単に済ますとしても電源は24Vにしましょう.

単に、もう24Vの電源を買ってしまっているので、自分を納得させているだけです(笑.

さて、明日にでも基板が到着する予定です.

#そろそろページも長くなってきたので、後編をつくったほうがいいでしょう.

後編につづく