ちょっとTea Time!? V-RegS(LT3045)の発熱を調べてみる。 2020.4.19

先日に3端子レギュレータのノイズを測定してみたときに、番外でLT3045をつかったレギュレータ基板のノイズを測定して、
その低さをあらためて認識することができました。その中で、ふと発熱についてはあまり定量的に調べたことがなかったので、
ついでに測定してみることにしました。
 LT3045はV-RegS基板に実装していますが、電圧は3.3Vとしています。この電圧はロジックやDACのICでの主流の電圧
になっているからです。

LT3045をつかったレギュレータ基板です。3.3V用に設定しています。

負荷はできるだけ高く!

LT3045の最大出力電流は500mAなので、できるだけそれに近い値に設定します。
出力電圧が3.3Vになっているので、負荷抵抗としては6.6Ωあればいいのですが、手持ちの
抵抗から7Ωとしました。ちょうど10Ωの抵抗を2つ並列につなげて5Ωにして、それに2Ωの抵抗
を直列につないでいます。これで流れる電流は約470mAになります。


負荷抵抗は7Ωにしました。LT3045の定格ギリギリの470mAが流れます。

まずは、負荷抵抗をつないででの入力電圧と出力電圧の関係を測定しておきました。
LT3045は低ドロップ型でデータシートでは260mVの差で動作するとありますが、
実測では200mVでもほぼ実用的に動くことがわかりました。まあ、実際に使うときはギリギリを
狙うことはありませんが・・・・。
 通常は5V電源から3.3Vを生成するのに使いますから、ドロップ電圧は1.7Vありますから十分です。



LT3045は入出力電圧差が0.3V以上あれば動作するようです。優秀ですね。

測温方法

 測温にはMCP9701をつかいました。これはマイコン直結ができる素子で19.5mV/℃の感度があります。
5V単一電源でつかえる便利な素子です。これを小さいLT3045に密着させるわけですが、
基板が小さいこともあるのでクリップで押さえ込みました。一応、絶縁のためにテープを張っています。


測温にはMCP9701をLT3045の上面に押し当てます。シリコングリスを塗っています。



基板が小さいのでクリップで挟んでやりました。


温度を測定してみよう!

測定の条件は以下の通りです。

 入力電圧:5V
 出力電圧:3.3V(実測は3.28Vくらい) 
 負荷抵抗:7Ω(電流は470mA)

LT3045の消費電力はおよそ(5−3.3)*0.47=0.8Wになります。結構な発熱量です。
で、電源ONからの温度上昇は下記のようになりました。およそ通電後数分で平衡状態になり、
室温から+28℃となりました。室温がおよそ20℃なので素子温度は48℃ということになります。
この値ならまったく問題ないですね。


電源投入後からの温度特性です。室温20℃くらいなので、約48℃まで上昇しました。
このくらいなら問題ありません。


ということで、このV-RegS基板をつかって、5V入力で3.3V出力にした場合には、最大定格まで電流を流しても
問題ないということが確認できました。

TYPE-N基板はどうだろう?

V-RegS基板では5V入力で3.3V出力のときに、470mA流すと+28℃の温度上昇がありましたが、
もっと大きな面積のTYPE-N基板だったらどうなるのかな?と思って調べてみることにしました。
測温にはおなじくMCP9701を使いますが、基板が大きいのでクリップで挟むことができません。
ということで、測温のときにMCP9701を綿棒で押さえつけて測定するこにしました。

大きめのTYPE-N基板でも測定してみました。


こちらは測温素子を綿棒で押さえつけて測定します。

測定結果は???

で、通電後に10分たって温度を測ってみると+26℃の上昇です。え????
V-RegS基板で+28℃なのに、2℃しか低下していないの????
ちょっと不思議です。もっと低い温度を期待していたのですが・・・・・
 
 想定される原因は、LT3045の半田付け不良なので、EXPOSED PADの半田を半田吸い取り網で
吸い取ってみました。そうすると、見事にEXPOSED PADに半田が届いていないことがわかりました。
ということで、半田のやり直しです。フラックスを十分に塗って、容量の大きい半田ゴテを用いて、十分に
加熱したのちに、細い半田をつかって確実にEXPOSED PADに半田いきわたったことを確認してから、
最後に半田を盛り付けます。


EXPOSED PADに半田が付いていなかったです。再度半田付けです。

再測定結果は

 半田をやり直して、再度測定した結果は+22℃の温度上昇でした。V-RegS基板より6℃低くなりました。
もうちょっと低くなることを期待していましたが、こんなものなのかもしれません。

ついでに入力電圧を6.6Vまで上げてると+37℃でした。すなわち素子の表面温度は57℃くらいまで上がっています。
まだ大丈夫ですが、触るとかなり熱く感じます。

ということで、表面に小さい放熱板を載せてみました。こうした場合の放熱板の温度上昇は+23℃に抑えられました。
やはり放熱板の効果は大きいですね。
 

温度を抑えるなら放熱板も有効です。かなり効果があります。

すこし整理

測定結果をすこし整理しておきました。基板の熱容量が導出できたので、LT3045を用いたときの熱設計につかえるでしょう。

使用基板 入力電圧
(V)
出力電圧
(V)
負荷抵抗
(Ω)
消費電力
(W)
温度上昇
(℃)
熱容量
(℃/W)
備考
V-RegS 5.0 3.3 7 0.8 +28 35
TYPE-N 5.0 3.3 7 0.8 +22 27.5
6.6 3.3 7 1.55 +37 24
6.6 3.3 7 1.55 +23 15 小型放熱板設置


いづれにしても、LT3045は低ドロップでもあるので、入力電圧と出力電圧の差は最小(0.3V)になるように狙って設計するのが
いいでしょう。なにより素子が大きく発熱すると、周辺の部品を含めた寿命への影響もありますし、なにより精神的にもよくありません。
それに、これから気温が上がってくるので暑苦しいです(笑。

(おしまい)