レトロアンプを作ってみる?の巻き 2019.11.

部品箱を整理していたら、すこし(だいぶ?)前にヤフオクで落札したパワーアンプのICがみつかりました。
東芝のTH9013Pというものです。なぜ、落札したかといえば、あまりの懐かしさのあまりです。
というのも私が最初につくったパワーアンプときにつかったICがこれです。いまから40年以上も前だな〜。
 当時は「トランジスタ技術」も最盛期で、厚さも今の倍以上ありましたが(といっても、2/3は広告ですが)
その別冊(*)で実体配線でのアンプ製作の本があり、それに載っていたのがこのIC。お年玉かなんかで買ったと思います。
ちょうど同じシリーズでプリアンプ用のモジュールTH9014もあり、それをつかってイコライザアンプ・フラットアンプとして
いました。2つあわせてプリ・メインアンプの出来上がりです。もちろんトランスはTANGOです。

(*)ひっとして「初歩のラジオ」の別冊だったかな?


すこし前にに懐かしさのあまりにヤフオフで落札したパワーアンプ用のIC。

当時に組み込んだケースはこれ(下図)です。摂津金属のものですが、かなりしっかりしています。
そのかわり、加工が結構大変。フロントパネルはアルミですが、フレームが鉄でできているので
リア部分(鉄板)の加工は、かなりヤスリがけしたのを覚えています。なんせ、電動ドリルくらいしかないので、
たくさん穴をあけて連結して大穴をあけて、あとはヤスリで修正を繰り返しました。
 ちなにみ、このケースは子供のときなので自分では買えず親父が調達してくれました。

これに組み込みましたが、リアの加工が結構大変でした。
引用: https://www.settsu.co.jp/catalogs/midsrcb/14

折角なので動かしてみましょう!
 懐かしさのあまり買ったものですが、折角なので通電して命を吹き込んでやろう!といことで
バラックですが回路を組んでみることにしました。それにしても、すでに端子はかなり酸化してます。
この調子だと、内部もだいぶ怪しいかもしれません。動くかな〜?
 まずは、表面の酸化部分を削ぐためにヤスリでゴシゴシです。


経年のために端子の表面がだいぶ酸化していました。



#400の紙やすりでゴシゴシ。これなら半田付けできるでしょう。

回路は簡単!
 このパワーアンプの回路は簡単です。8個しかトランジスタがありません。というか、当時はトランジスタも高かったんですよね。
というのも「6石ラジオ」というと、6個のトランジスタを使ったものですが、当時はかなりトランジスタをつかったものでしたから・・・。
いまでは、カレントミラーやなんやかんやで、やたらめったらトランジスタを消費します。まあ、それがいいのか悪いのか・・・。

パワーアンプの回路図です。極めてシンプルな構造です。

組む回路は、一応データシートを参考にして1電源構成で組みます。
ICの内部にはすでに帰還回路も組まれている(ゲインは31.5dB固定)ので、外付けに数個のコンデンサをとりつけるだけで
動作できるはずです。



このような回路で組んでみました。


組みあがった状態です。

動かしてみよう・・・、ああ・・・・・

電源をつないで、動作の確認をしてみます。電源はRA40トランスのAC18-0-18Vの整流後の出力をつかいました。
直流電圧で48Vくらいありますが、このICではちょうといい電圧です。
 電源と入力を接続して、入出力はオシロで観察です。

動作確認の様子です。

動いている?
 電源を入れて、おそるおそる入力信号のレベルを上げていきますと、出力が振れてきます。
入力電圧を100mVに設定したときに、出力電圧は4.5Vくらいになりました。増幅率でいえば45倍でしょうか。
dBに換算すると33dBなので、ほぼICの設計どおりの出力がでています。

下:入力、上:出力 ゲインは33dBくらいかな?

だめだなあ〜
で、どこまで出力がだせるか確認するために、入力信号をさらに上げていきますが、
すぐに出力がクリップしてしまいました。レベルでいえば5Vを超えたところあたりです。
全振幅でいえば10Vくらいでしょうか。電源電圧が48Vくらいあるのに、この振幅は低すぎです。
これだと、3W程度しか出力がでません。
 やっぱり、ICの内部が経年で壊れているのだろうな〜ということが予想されます。


出力振幅が全然あがりません。5Vを越えるとクリップしてしまいました。

もう一個はどうだろう?

ちょっとがっかりですが、もう1個の方も試してみました。同じ結果になれば、ひょっとして接続や評価の仕方が
悪かったのかもしれないからです。
 で、もう1個のを組み立てて、確認してみましたが・・・・・こちらのほうが重症です。
さきのICでは負側がクリップしていましたが、こちらの法は正側がクリップしています。
さらに、そのレベルが無茶苦茶低いです。


もう1個の方はさらに重症。ほとんど動かない状態です。

内部をみてみよう!

 動かないICとなると、懐かしいといってもゴミみたいなものです。捨てるしかないのですが、
折角なので内部を確認してみることにしました。それに40年以上も前のICの内部が気になります。
ひょっとして修理の可能性もあるかも・・・・・

 内部を開けるのは簡単で、ケースのカシメ部分をドリルで削ってやれば簡単に蓋がはずれます。
で、早速中身をみてみましたが、おもったより中身は綺麗でした。
 おそらく、配線等には問題はないでしょう。となるとトランジスタがやられてしまっているのでしょう。
 リード線と樹脂のすきまから水分が浸入して、半導体がやられたのかもしれません。


内部をみてみました。意外と綺麗です。

ちなみに、内部はセラミックの薄い基板に抵抗が膜形成されて、パターンが引かれています。
いわゆる厚膜ハイブリッド品です。さらに、基板の表面がどうなっているかを
覗きこむと、いわゆるリード品のトランジスタやセラミックコンデンサが見えます。
この頃はまだチップトランジスタなるものがなかったのですね。


横から覗き込むと、リードタイプのトランジスタがみえます。

ここまで分解したら、後にはひけない・・・というか元には戻せないないので、
セラミックの基板も引っぺがしてみました。そうするとトランジスタが4個にセラミックコンデンサが3つ、
そしてダイオードが2つばかり見つけることができました。回路図通りです。
 それにしても、これが40年以上前のICだったんだな〜と思うと、今の技術って
やっぱりすごいな〜と関心してしまいます。

内部の様子です。これが40年以上前のICなんですね。

このままでは終われない・・・・

せっかくレトロなアンプをつくろうと思っていたのすが、すこし腰を折られました。
こままでは終われません・・・・。そういえば秋月でもハイブリッドのパワーアンプICがあったな〜
ということでHPをチェックです。
 サンヨー製のものがいくつかラインアンプされています。これから1つ選んで遊んでみましょう!


秋月からハイブリッドタイプのパワーアンプがいくつかでています。どれにしようかな〜。

選択したのは
リストの中からSTK408を選択しました。その理由は、3ch分の回路があるのでお徳そうなためです(笑。
3Dシステムをつくるのに適しているし、今のメインシステムの3WAYのマルチチャンネルなので、このICなら2個で済むからです。
 さっそく購入です。
 このパワーアンプはヤマハのYST-MS55Dに使われていたようです(生産中止品)。
スペックとしてはサテライト用が20W+20Wで、ウーハ用が40Wのようです。
20Wの出力なので、電源電圧は20V程度でしょうから電源部も製作が簡単そうです。


このディスクトップシステムに採用されているようです。

部品が到着しました!


これを選びました。3CH分のパワーアンプ内蔵です。

さて、動かしてみようとしましたが、すべてユニバーサルで組むのもちょっと手間そうです。
ということで、基板のパターンを描いてみました。できるだけ小さく作りたいので、結構密度高く
部品を集積しました。


こんな形でパターンを描いてみました。

他の基板を注文するときに、同時に頼んでみましょう!

基板到着!

注文していた基板が到着しました。

やっぱり細長いな〜!

ん?違和感・・・・
基板をみていて、なにか違和感。電源部の一部シルクを間違えたようです。
入力のところの正負が反対になっていますね。まあ、通電するまえに気づいてよかったです。


電源のシルクが逆になっていました。

組み立てよう!
基板自体の回路図は、メーカでの測定回路とほぼ同じにしています。
出力に接続する位相補償回路については、基板サイズが大きくなるのでとりつけていませんが、まあなくても問題ないでしょう。


データシートの回路図です。


上の回路図だけをみると3チャンネル分あるのでゴチャゴチャしてみえますが、1CH分に直すととてもシンプルです。

データシートにあった測定用の回路図。極めてシンプルな回路です。


基板ではスピーカの位相補償回路部分を省略しています。

実際の組み立ては
おそらく帰還抵抗にパラについている3pFはいらないだろうし、入力の470pFも不要じゃないでしょうか。
もし、不具合がでたら取り付けるということで、最初は無い状態で動作させていきましょう。

組んだ回路です。ゲインはおよそ20倍に設定しています。


こんな感じで組みあがりました。


STK408をとりつけてお出かけ用の写真をとりました。

動かしてみましょう!
実験用の15V電源を用いて動かしてみましょう。

動作確認の様子です。

まずは周波数特性ですが100kHz帯域でも問題ないことが確認できました。

f=10kHz、上:出力(2Vレンジ)、下:入力(200mVレンジ)



f=100kHz、上:出力(2Vレンジ)、下:入力(200mVレンジ)

無負荷のときの消費電流はおよそ20mA程度です。AB級だと思いますが、
バイアス電流は数mAといったところでしょう。

無負荷時の消費デンリュウです。

負荷をかけてみましょう!
10Ωの抵抗を2個パラにして5Ωの負荷を接続して動かしてみます。
無負荷時ではあまり電流がながれなかったので、放熱板は不要でしたが、
今回は念のため放熱板をとりつけます。横着して輪ゴムでとりつけです(笑。

負荷を接続して動作です。


念のために放熱板をとりつけます。

どこまで出力がでるか試してみましたが、15Vの電圧レンジでおよそ11Vくらいまで
出力がでることがわかりました。電圧降下は4V程度です。

f=100kHz、上:出力(10Vレンジ)、下:入力(200mVレンジ)

負荷をつないでいるので消費電流も上昇します。5Ωの負荷に11V振幅の交流が流れるので
電流は約2.2A振幅ですが、実効値は1.56A。さらに正負で振っているのでその半分なので消費電流は780mA程度
になります。あれ、パネルの電流値とちょっと違うな〜。まあ、ちょっとぐらい誤差はあるでしょう。


およそ700mA程度の電流が流れいます。

試聴してみましょう!

構成は
 普通のCDプレイヤ → 10kΩ(A)可変抵抗 → 今回のアンプ → 10cmフルレンジSP 
です。
 アンプの電源はいままで実験用につかっていた15Vのスイッチング電源です。
 全体が仮配線みたいなものなので、蓑虫クリップケーブルのそこらじゅうに這い回っています(笑。

まず、スイッチング電源をつかっているからかもしれませんが、電源のON/OFFにポップノイズはほとんどありません。

音質はといえば、まずは普通のパワーアンプですね。とくになにか特色があるというものでもなさそうです。
まあ、アンプなんて普通が一番かもです。

それよりも、これだけコンパクトでありながら3ch分のアンプを内蔵しているのは便利です。

試聴時の構成です。


音量調整用のVR(A::10kΩ)

 TH9013をつかったレトロアンプをつくろうとして、最後はSTK408をつかったパワーアンプになってしまいました。
非常にコンパクトながら3ch分のアンプが実現できるのは便利そうです。ICだけなら1chあたり200円です。
LM3886よりお得かもしれません(笑。 
 
データシートは?

STK408のデータシートを探しているのですが、おそらくこれでしょうか。→ STK408-090E.pdf
型番の枝番が一致しませんが、回路図も同じなのでマッチするでしょう。
どうやら50Wもでるアンプのようです。電源回路としては4Ω負荷のときで最大定格が42Vとかなり高いです。
安全をみて30V以下でつかえば良い感じのICでしょう。





回路図も描いておきましょう


製作マニュアルを作成しました。 2019.11.17
PASTK408Manual.pdf

頒布も開始しました。

(おいしまい?)