LM3886BTL-2も実現するか? 2007.5.4
LM3886-BTL(お気楽アンプ2)を検討しだしたのは、昨年である2006年5月頃。
私はDAC63S-miniと組み合わせて、お気楽につかるDAC内蔵アンプとした。
きになる点はみなさんからの作例で片chより僅かにハムが乗っているという事例をいくつかいただきました。
私の場合は、ボリュームを最大にしてスピーカに耳をあてると僅かに聞こえる状況ですが、
事例の中にはボリューム位置によらずハムがでる場合もあるとのこと。
そのため、改善版についても検討をしようと思っていたが、なかなか腰が上がらずちょっと先延びになってしまっていました。
ハムの原因は、OPアンプをつかった反転アンプの入力インピーダンスが高いため、電源ラインからの
誘導をうけているのでは?とのR.さんの指摘もあり、じつはかなり前に新しい回路図の提案はありました。
LM3886BTL-2の回路アイデアを送ります。 今回は入力バッファの後で、反転側に一つ余分に反転アンプを追加する構成で どうでしょうか? メーカー製アンプはこの回路が多いです。 パターンの設計によって、反転アンプを非反転で入力に直結できるように すれば、BTL構成ではなく、パラ構成のアンプにもできます。 私の使用しているスピーカーは4オームなので、こちらの方が動作上は 有利になりそうです。 |
R.さんから提案された回路
回路的にはU1がバッファーになっていて、U2が反転アンプになっています。
U1を電源から離しておけば、その出力は低インピーダンスなのでノイズの影響が小さくなります。
ちなみに前回の回路はこれ。上段がゲイン1の反転アンプで、 下段がゲイン2の非反転アンプですが、入力レベルが1/2になっているという、 構成になっています。 |
さて、提案のあった回路は少し弄るだけでステレオ構成、BTL(MONO)、パラ(MONO)に変更できます。
あえて書くほどのことではないのですが、ちょっと列挙してみましょう。
ステレオ構成 | |
BTL構成 (MONO) |
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パラ構成 (MONO) |
構成三変化?
難しいのは部品の配置構成!
回路構成を変更できるようにパターンを描くのはさほど難しいことではありませんが、一番悩むのは基板上での実装方法です。
色々なパターンが考えられますが、どうしよう?
BTLやパラを考えるとCASE3が良さそうな気がしています。
配置案 | 特徴1 | 気になる点 | |
CASE1 | 基板の幅を100mm以下にすると、 お気に入りタカチケース(実質幅210mm) の中で、横に並べて配置できるので 放熱板にとりつけやすい。 |
OPAを含む回路の面積が小さく、 どうしても入出力が接近してしまう。 |
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CASE2 | 基板の幅を100mm以下にすると、 お気に入りタカチケース(実質幅210mm) の中で、横に並べて配置できるので 放熱板にとりつけやすい。 ステレオ構成(基板1枚のみ)にするには コンパクトに収まる。 |
OPAを含む回路の面積が小さく、 どうしても入出力が接近してしまう。 BTL構成にする場合には、 信号線が電源ラインを交差する。 |
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CASE3 | 入出力間距離があり、比較的余裕をもった配置が可能。 | 基板の幅が100mm以上になるので、 ケースの中で対向してとりつける必要がある。 電源の給電ラインがすこし長くなる。 GNDラインが引き回しにくい。 |
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CASE4 | 入出力間距離があり、比較的余裕をもった配置が可能。 ステレオ構成(基板1枚のみ)の場合ならコンパクト。 見た目のバランスも良さそう。 GNDラインが引きやすい。 |
基板の幅が100mm以上になるので、 ケースの中で対向してとりつける必要がある。 BTL構成にする場合には、 信号線が電源ラインを交差する。 |
妥協点は?
性能を十分に出すためにはGND線の配線が重要であることは、R.さんからよく指摘されます。
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プリント基板だからといって、ジャンパーレスにこだわる必要はないので、最大で3本程度のジャンパーを許容すれば、
意外とスッキリするかもしれません。
妥協点としてこんなパターン構造を考えてみました。
GNDラインは綺麗に分離できるのではないかな、と思います。
ジャンパー前提で描いてみました。
しかし、電源とアンプ回路をジャンパーで接続するなら、わざわざ電源部を同じ基板にする必要もないような気がしてきました。
一緒にさせればケースの取り付けが楽ですが、BTLで2枚実装するときには電源部も必然的に2回路になってしまいます。
電源を1回路で共通にしたい場合などにはちょっと向かないですね。
こんな意見をいただきました。
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電源を分離すれば、いけそうですね。ということで方針をやや変更しましょう。
LM3886アンプと電源は分離しよう!
こうすれば自由度が高くなります(反対に自由度が高いということは配線数が増えるということでデメリットにもなります。
究極の高い自由度はユニバーサル基板ですね(笑))。
さて、分離して描いてみたパターンはこんな感じです。案外、最終版に近い形状を想定しています。
アンプ基板はこんな感じ。
電源基板はこんな感じ(上:レギュレータ有り。下:レギュレータ無し)
電源は色々なサイズのコンデンサが実装しやすいように蛇の目パターンにしてみました。
しかしレギュレータ無しの基板って、ユニバーサルで組んでも大した手間でないので、これは恐らくボツでしょう。
基板パターン btl2-b-all.pdf 全体 btl2-b-bot.pdf 半田面 btl2-b-top.pdf 部品面 btl2-b-silk.pdf シルク |
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グッドアイデアですね。意外と大容量のものが安価にはいることもあるようです。
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いや〜R.さんのはなかなか難しい注文ですが、気になるところは修正していきましょう。
修正パターン。
細かいところを見るには全体のPDFファイルが適しています→btl2-c-all.pdf
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あちらをたてれば、こちらがたたず。
よくあるケースですが、ピン間通しで切り抜けましょう。
修正パターンはこちら→btl2-d-all.pdf
試作基板待ち。
納品は5月15,16日くらいだけど来ても作る暇は当面なさそう。
でもその他の部品は着々と集まりつつある。
LM3886。DIGIKEYだと数量を買うと安くなる。 秋月のブロックコンデンサ。4700uF/50Vで@100円
試作基板到着! 2007.5.15
試作ですけれど70um銅箔+金フラッシュメッキバージョンでつくりました。
試作基板群
いつ組み立てられるかわからないけれど、ちょっと雰囲気を味合うためにスナップ型のコンデンサを挿してみました。
穴サイズもピッタリでホッ!
日本橋に買いだし! 2007.5.26
ひさしぶりに日本橋に行きました。何を買いに行ったかと言えば16VのツエナーD。
デジットで0.5Wのものが@15円だったけど、20本ほど買うつもりが16本しかなく、残りは1W(@30円)のものを購入。
でも、これだけだと高々400円弱の買い物。そのために往復高速料金出して、ガソリン代に駐車料金代も何なので、
ちょっと足りなさそうそうな部品も併せて購入しておいた。それでも合計で3000円弱。
やっぱり通販の威力がよくわかりました。
本日のデジットでの買い物!
今回は久々にφ1mmの銅線も買いました。しかし、高いな〜。たった10mで365円です。
重さにしたら70gでっせ! 1kgあたり5214円、 トンあたり500万円です。
こうなると合金レベルでっせ。って、買う量が少ないから仕方ない話しです。
たった10mで365円です。銅線て結構高い!
コイル作成!
SPの位相補償用のコイルは適当なモノに巻き付けつくります。今回はちょうど目の前にボックスドライバがあったので、
それをつかいました。直径はφ8.5mmです。これに6巻きしたくらいでいいでしょう。このあたりは適当です。
なお、コイル巻くときには硬いモノにまかないといけません。柔らかい鉛筆なんかに巻くと銅線が食い込んで、
離れなくなってしまいます。
今回はボックスドライバーを利用して巻きました。
コイルを作成で面倒なのが、端部の処理です。被覆を削りとって、半田仕上げをしますが、
コイルに巻いた状態だと被覆がともて剥きにくいです。そこで、一旦巻いて形を整えた後に、ほぐします。
そして、その長さに合わせて銅線を切断します。そして、銅線を直線の状態で端部の被覆を剥くと比較的楽です。
被覆を剥くのは紙ヤスリだと、必要以上に向けてしまいますので、カッターナイフでこそぎ取る方法とつかっています。
でも、最近は横着して被覆を燃やす方法をとっています。ガスコンロなどで、端部の過熱すると被覆が燃えると、
オレンジの炎がでるのですぐにわかります。そして、その炎が消えたら被覆は燃えています。
そのすれば、その上から直接的に半田あげができます。
同じ長さに銅線を揃えて準備すると被覆剥きが簡単です。
コイルはこんな感じで仕上げます。今回はとりあえず4個つくりました。
必要な長さは1個あたり20cmです。10mあるので50個は作れそうです。
コイル作成完了!
コイルができたので基板に部品を実装していきましょう。
いっても、実装する部品はさほど多くはありません。すぐに完成してしまいます。
これがICアンプのお気楽なところです。
今回の基板での間違いはBBSでもご指摘いただきましたが、電源入力の正負表示が間違っていました。
これは実装する前の基板。
すべての部品を実装した状態。記念写真をパチリ!
動作確認!
電源は同じく、今回つくったものですが安定化電源は組んでいません。まずは簡単な平滑Cのみの構成です。
このLM3886基板はステレオ構成にもBTL構成にもできます。テストですが、LM3886には放熱板を取り付けました。
テスト準備を着々と進める!
ステレオ構成時 MONO(BTL)構成時
試聴!
試聴といっても、LM3886の音質はわかっているので、前回のBTL基板で発生したハムが出るかどうかがメインのチェック事項です。
スピーカにはONKYOのD202Aを接続。アンプは電子ボリューム式のプリをつかい、ソースにはORIGINAL
NOSDACをつかいました。
まずはステレオモード! ボリューム最大で耳をSPにくっつけてもハムはありません。
音楽をならしてみても、ICアンプとは思えない、開放的な音がでてきます。
次はBTLモード! こちらもボリューム最大で耳を澄ませてもハムはありません。
どうやら成功のようです。
放熱板があたたかい!
今回は電源電圧は無負荷時に22.3Vでしたが、このくらいの電圧になると放熱板はほんのり暖かくなります。
大出力を得ようとすれば、結構大きめの放熱板が必要になりそうです。
波形も確認しておきましょう。
BTL出力ですから、正負出力は逆相になているはずですが、オシロでも確認しておきましょう。
結構大変だったのは、この写真をとること。こういった比較的間延びする波形がなかなか取れなかったのです。
もっとソースを選べばよかった。
BTLの出力。正負は互いに逆相になります。
電源基板3種!
ちょっと話題変更(かな?)。今回の試作の中でで、電源基板をいくつかつくりました。
あまり凝ったものですはなく、基本はNON-NFB(NON Negative FeedBack)タイプのものです。
NON−NFBとかけばちょっと響きはいいのですが、なんのことはなく単純なツェナーをつかった
もっともシンプルの定電圧電源です。オーディオではこれが音がよいとも言われていますが、
電圧レギュレーションが良くないので、ディジタル回路やDAC回路など、
電圧精度が必要な箇所には使いにくいものがあります。アンプとかなどにはいいでしょう。
1つ目(トランジスタ外付け用)
これはLM3886のテストにつかったもので、トランジスタを外付けにすることを前提としたものです。
電流を多く流そうとすると、大きめの放熱板が必要になりますから、こういったものが便利です。
トランジスタ外付け用の電源基板
まずはバイポーラTRで試してみる。
手元にあったTRということで、2SC5200/A1943をつかいました。
回路の基本型はこれと同じですが、R2は100Ωにしています。これで2mAがツエナーに流れます。
トランジスタの取り付けは、下の写真のようになります。
バイポーラTRを取り付けた場合。
ツエナーに使ったのは公称値17.2Vのものですが、このときの電圧はこんな感じです。
ツエナー電圧もばらつきがありますから、出力も同じ電圧になることはないのですが、
まあ誤差範囲です。
無負荷時 | 200Ω負荷時 | |
正電圧 | 17.03V | 16.34V |
負電圧 | -17.26V | -16.58V |
ダーリントン接続にしているので、ツエナー電圧より出力電圧は1.2V程度低いはずですが、
無負荷って結構高い電圧がでているような気がします。おそらく有る程度負荷がかからないと
正規の電圧がでないのかな?まあ、このあたりはNON-NFB電源ゆえ仕方がないところです。
さて、バイポーラをつかった場合はどれだけ電流を流すことができそうでしょうか。
これは、ひとえにTRの増幅率にかかってきます。初段のTRのhFE=150、2段目=50程度で
総合hFE=7500としてみましょう。初段のTRのベースに流せる電流をツエナー電流の1/2くらいに
見積もれば最大電流値は3.75Aになります。まあ、これだけ流せれば十分ですが、使用するhFEに
よっては前後するので、注意が必要です。
つぎはFETで試してみる。
回路的にはFETへの変更は簡単です。FETは電圧入力ですから、ダーリントン接続は不要で、
ツエナー電圧出力で直接的に駆動できます。下図のように、変更してみました。
初段のTRを取り外し、ベースとエミッタ間に100Ωの抵抗を入れます。これは発振止めのおまじないです。
R1(1kΩ)も不要なのでとりはずします。FETをつかう方が回路的にはシンプルになります。
ただしFETの方がバイポーラに比べて一般的に高価な面はありますが・・・・
FETを使用する場合の回路変更。
FETを使用した場合の部品の取り付け状況
今回つかったFETは2SK1529/J200です。以前にデジットにいったときにハムさんに「安いよ」と言われて
思わずゲットしたものです。東芝のFETはGDSの並びですからそのまま使えますが、日立のものは配置が違うものがあるので
注意が必要です。
FETをとりつけた状態
同じように電圧を測定してみましょう。
無負荷時 | 200Ω負荷時 | |
正電圧 | 16.29V | 15.49V |
負電圧 | -16.76V | -16.06V |
ほぼ同じ回路構成ですがバイポーラとFETでは出力電圧が違います。これは、FETのVgs電圧が2V程度
とバイポーラ(Vbeに相当。0.6V程度)と高いためで、仕方がありません。使用する素子の特性値を把握して、
ツエナー電圧からどのくらい電圧が低下するかを、よく見積もっておかなくてはいけません。
といっても、相手はアンプですから、1〜2V変わってもほとんど関係ありません。
2つ目(トランジスタ内蔵用)
これは、OPアンプをつかったminiディスクリ電源の置き換えを考えてつくったものです。
回路的にも部品点数もこちらが少ないので、あっという間に出来てしまいました。
完成した様子。
こちらも負荷をつないで、電圧を見てみましょう。なおツエナー電圧は16Vをつかいました。
というのはオペアンプをつなぐことを考えていたので、出力電圧は15V狙いが妥当です。
負荷抵抗(200Ω)をつなぐ。あまり長い間つなぐとアッチッチになるので注意。
無負荷時 | 200Ω負荷時 | |
正電圧 | 14.9V | 14.17V |
負電圧 | -14.99V | -14.27V |
無負荷時ではちょうど良い値です。負荷時でも14VありますからOKですね。
3つ目(ただの平滑回路)
パワーアンプにはシンプルに平滑回路だけというのも良いかもしれませ。秋月の4個100円の
3300uF/50Vコンデンサが使えて、なおかつスリムな基板もつくってみました。
4個並べるので容量は3300×4=13200uFと大きいです。
これは単なる平滑回路のみ。
ケースに入れるにはこのくらいの電源基板の方が収めやすいかな?
しかし、平滑回路だけだったらわざわざ基板を使うまでも無いような気が・・・・って感じです。
スリムな基板だと実装時に面積を取らずに済むかも!、です。
(つづく)