ES9018SでDSDシフトパラは実現するか?の巻き 2012.2.5

前編はこちら

DSDの信号が容易に得られる環境になってきたので、ちょっとやりたいことがでてきました。
DSD信号は1ビット信号ですから、信号を少しずつシフトして加算することにより、
フィルターの役目を果たすことができます。さらに、加算処理で素子固有のノイズの平均化を
計ることもできそうです。
 この構想は最初にES9018を検討しだしたときにPCM信号でやることも考えてみましたが、
ちょっと大変そうだったので棚上げしてましたが、1ビットのDSD信号ならそれほど難しいことはありません。

0.5クロック、1.5クロック・・・・7.5クロックずらした信号と
1クロック、2クロック・・・・・8クロックずらした信号は
下記の回路図で作成することができます。

シフトレジスタの74164とインバータの7404があれば構成できます。


データシフトを実現するための回路

さて、この回路を組み込むとどんな感じの規模になるか、少し部品をレイアウトして検討してみましょう。
多彩な入力構成ができるように
 1.SPDIF入力
 2.PCM入力(I2S,RJ,LJ)
 3.DSD入力(単純パラ、
シフトパラ
を可能にすることを前提として部品を配置してみました。
IVステージはありませんが、DAC部分だけでは幅175mm程度の基板に収まりそうです。


基板の幅は約175mm程度。極端に大きくなることは避けられそうです。

このくらいの規模となると、おもわずDAC1704-4Dを思い出してしまいました。
結構作るとなると、思いっきりが必要になりそうです。

なんとなく頓挫しそうな予感(笑)。でも、考えることが楽しいです。


面白そうな石 2012.2.8

 福島の球使いさんからこんな石があることを教えてもらいました。



いつかのBBSでPCM(I2S)入力ではシステムクロックはfsの逓倍でないとLOWESTでロックしないという書き込みが
ありましたが、ちょうどこの石があれば実現できそうです。ちょっとマニュアルをみてみましょう。

すごくシンプルなIC

最初はマイコン制御でも必要かな?とおもっていましたがものすごくシンプルなICです。
入力クロックを与えて、S0,S1を設定すれば自動的に逓倍の出力が得られるものです。こりゃ便利です。
ただし、入力クロックの周波数に範囲があります。
最初はマニュアルをみて何の数字?かとおもいました。まったく表に単位が書いてありません。
MHzでしょうが・・・・技術屋の資料としてはちょっと失格です。


ちょっと計算
PCM入力では192fs以上のシステムクロックが要求されます(オーバサンプリングを使用しないなら24fs以上)。
マニュアルには>192fsとありますから、厳密には192fsを超える値が必要ですが、おそらく192fsでも大丈夫でしょう。

で、すこし計算してみました。
用はBCKは64fsなので、BCKの3倍以上のシステムクロックが生成できればよいことになります。
上の表からBCKを入力周波数として可能な逓倍数をみてみました。

fs(kHz) Bck(MHz) 必要クロック
(MHz)
BCKを入力として可能な逓倍数
(括弧内は出力周波数が100MHzを超える)
44.1 2.8224 >8.4672 ×4〜×32
96 6.144 >18.433 ×3〜×16、(×20)
192 12.288 >36.864 ×6、(×12)
384 25.476 >73.723 ×3、(×4、×6)

いずれの周波数でも使用可能な逓倍の組みあわせがありますね。
これは一度試したくなります。
ということで、買い物ついでもGETしてみましょう!

ICがとどきました。 2012.2.10


購入したのは3.3V版のICS570Bです。予備も含めて3個ばかり入手しました。
やっぱりDIGIKEYは早いです。


3個ばかり購入。さて、遊んでみましょう。

変換基板が必要ですが、なにかと使う機会も多いので基板の空きスペースがあったときに
つくりました。SOIC(1.27mm)とSSOP(0.65mm)の2枚つづりのものです。もちろん今回は
左側のSOICのものをつかいます。

いつか作った変換基板。結構このタイプのものは使います。

実装してみましょう!

変換基板にICを載せて、その他の配線をします。面倒なのでDAC9018SのICの上に基板をおいて
適当にやっつけました(笑)。入力確認はfs=192kHzでしますので、入力クロックは64fs=12.288MHz
になりますから、倍率は8倍(98.304MHz)にしています。パターンカットはしたくなかったので、
もともとついている100MHzの水晶発信器の1番ピンをGNDに落として出力をDisenableにしておきます。
こうすれば、ICS570との出力はぶつかりません。

DAC9018Sの上に実装してみました。

そしてPCM(I2S)入力に192kHzの信号を入れて動作確認の開始です。
まずは、正常に発振しているかどうかをオシロでみますが、CLK/2の発振周波数は
49.155MHzになっていますから大丈夫ですね。ES9018に入るクロックはこの倍になりますから
99.310MHzになります。少々の誤差はオシロの内蔵発信器によるものでしょう。

発振はもんだいなくしています。

入力データに正弦波を入れていますが、綺麗な波形がでています。
ロックがはずれると波形がとまった状態が観測されることになりますが、
そんなこともなく安定して出力がでています。

ロックははずれないようです。

ただし、液晶の周波数表示はかなり暴れます。液晶にはDPLLの値を表示していますが、このDPLLの値は
fs=(DPLL×入力クロック)/(2^32)
であらわされますが、書き直すと
DPLL=fs/入力クロック×(2^32)
すなわち
DPLL=(fs/fs)/(64×8)×(2^32)
となりfs/fsの項があります。この演算はかなり不安定になります。


周波数表示は暴れてしまいます。

表示は暴れますが、LOWESTでも問題なくロックします。
しばらくながめていても、外れることはなさそうです。

LOWESTでもロックが外れません。

バラックでくみましたが、アドオン基板なんかあると便利です。
周波数を判別して自動的に倍率を変更すれば、32〜192kHzおよびDSD64〜DSD256にも対応できそうです。


こんな石もありました。


Digikeyで探していたらこんな石もありました。
ジッタクリーナの機能と周波数乗算の両方があります。



探せば色々とでてきますね。

しかし、この石すこしお高いです。でもSPIあるいはI2Cで制御できるのでマイコンのピン数は少なくて済みます。
ICS570+Si5317の組み合わせはお財布にやさしいのですが、いかんせんSi5317はハードウエア制御なので、
制御のためにマイコンのピン数がたくさん必要です。いづれにしてもアドオンなんてできるのだろうか?

アドオンするなら

他の部品と干渉することのないエリアを確保しつつ、かつ各種の制御線を横取りしないといけないので、
結構エリアは決まってきます。

最低限必要になる石を考えてみると、ICS570のみをつかう場合だと、
ICS570(これがないとはじまりません)
PICマイコン(機能的には8PのPIC12F675で足りるかな?無理かな?)
7
4393(クロック分周用。1/256分周)
の3つでたりそうです。
なぜ74393がいるかというと、PICのカウンタに入る周波数は192kHz時で約12MHzになります。
PIC自体は最大周波数が約16MHz対応可ですが、これはあくまでも5V動作時の値なので3.3Vでは少し低くなること。
それと、384kHz時には25MHzになるので、完全にオーバしてしまうからです。
 マイコンが必要な理由は、入力周波数を判定して、それにみあった倍率を設定する必要があります。
まあ、この3つくらいなら搭載できるでしょう。

アドオンする場合のエリアです。

こんな感じのアドオンカードです。PICの内蔵の発信器の精度だと、すこし周波数の判別精度が落ちる可能性が
あるので、水晶振動子も搭載できるようにしました。


パターン面(部品面)


ベタアース面(半田面)

まずはアートワーク描いてみました。

どうしようかな? 2012.2.18

シフトパラをやってみたいところだけど、ES9018Sを4個つかって16シフトパラ(半クロックずらし)って、
かなり豪勢です。豪勢だけならいいけど、IV変換にOPアンプが使えない問題もあります(前編参照)。
音色を決める大きな要因はアナログ部分ですから、柔軟にアナログ部を変えられるようにしたほうが
面白そうです。となると、8シフトパラにしたほうが、自作の面では面白いかもしれません。
そうすれば2個のES9018で済みますので基板サイズとしても適度なサイズで収まります。
折角やるなら半クロックシフトパラと、全クロックシフトパラの切り替えもできるといいかな。
さらに、DAC基板を2枚組み合わせれば16シフトパラもできるような拡張性をもたせるのもいいかな?

なんか、構想ばっかり膨らんで全然前に進まないです(笑)。


そうこうしているうちに基板が到着 2012.2.28

いろいろな基板を試作している中に今回のDAC9018S用のアドオン基板をいれていました。
サイズはDIP-ICのサイズから判るように小さいです。

基板が完成しました。

部品点数も少ないの半田付け自体は10分もあれば終わるでしょう。
まずは表面実装部品をとりつけて、その後にスルーホール部品を取り付けて完成です。

完成したのでお出かけ用の写真をパチリ!

メイン基板と接続しましょう!

メイン基板と今回の基板との接続は部品のリード線の切れ端をつかって接続します。
電源ラインについてはメイン基板も大きめのスルーホール穴径なので大丈夫ですが、
信号線については小さい穴径なのでラッピング線などの細い線でメイン基板と接続します。
結構たくさんの線(電源線5本、信号線2本)で結合することになるので、
しっかりと取り付きます。
 
メイン基板と今回基板ドータボードとの接続の様子)

メイン基板との接続はP1,P3端子を使って水晶であるXT1に接続します。水晶のPIN1は出力制御端子になっているので、
この端子にドータボードから制御信号を送り込みます。

ドータボードと水晶との接続。

ソフトウエアは

基板自体のハードは簡単ですが、ソフトは少し複雑です。下記のシーケンスで動かすことになります。

1.入力ラインの判別
  これはメイン基板(DAC9018S)がSPDIF、PCM,DSDのどの入力モードで動いているか検知します。

2.周波数解析
  メイン基板がPCM,DSDで動いている場合はBCK信号の周波数を計測します。
  周波数計測の精度が必要なことからドータ基板には水晶発振子を搭載しています。
  このとき周波数が32kHz、44.1kHz、・・・・、192kHz、384kHzなどの規定値を外れる場合は
  既存の水晶発信器(100MHz)をつかうようにしています。

3.クロック逓倍の設定
  計測した周波数から100MHzにもっとも近くなる逓倍数を設定して、ICS570に設定信号を送ります。

4.1に戻ります。

こんな感じのプログラムを組みます。フラッシュメモリーの使用率は30%程度でした。

動作確認!
最後にFFASRCと接続して動作確認です。もともと動くことは確認済みですから、どちらかといえば
ハードの最終確認とソフトのチェックになります。

動作確認の様子。


LOWESTでもロックしますね。

ソフトのチェック確認も兼ねて、色々な周波数の信号を入れてDPLLがロックするかどうかを確認しておきましょう。
44.1〜192kHzで問題なくロックします。非常に安定しています。
ソフトは各種の周波数に対応できるように
 16、22.05、32、44.1,48,64、88.2、96、128、176.4、192,256,384kHz
を標準周波数として設定しています。逆にこれ以外の周波数が入った場合は内部水晶発信器に切り替えます。
しかし、これだけ変化のある設定はないでしょう(笑)。


44.1KHz時


96kHz時


192kHz時

お楽しみの試聴!

いつものようにIV基板に接続して、耳蛸ソースを試聴です。しかし、毎度のことながらバラックでの配線
も大変です。ほんとにそろそろケースに入れなくっちゃ(笑)。

おお!

プラシーボ全開!(笑)。これいいですね。やはりLOWESTでロックするという安心感がそう感じさせるのでしょうか。
とにかく細かい音がよく聞こえます。いつまでも音楽を聴きたくなる感じになります。
でも、なぜシステムクロックの逓倍ならLOWESTでもロックするのだろう?よく考えてみないといけないですね。

DSD入力は?

エレアトさんのUSB基板を再度接続してDSDでの動作も確認しておきました。
こちらも問題ないようです。表示は本来の入力値とはことなりますし、また表示も荒れますが
ロックが外れることはなさそうです。


DSDでの動作も確認しておきました。


DSD128での再生の様子。表示周波数は異なります。

備忘録

このドータボードの入力周波数(BCK)と出力周波数の関係を少し整理しておきましょう。
基板端子とあるのは、3本の端子があるので現在の受信周波数を分析して3ビット出力でだすようにしています。
44.1〜192kHzの主要な周波数では基板端子は1〜6に設定して、それ以外では7になるようにしています。
入力はSPDIFであれば、内部クロックをつかいいますので、このときはゼロ(0)になるようにしています。

Fs
(kHz)
BCK
(MHz)
逓倍率 SCK
(MHz)
基板端子
(A〜C)
1 16.00 1.024 32 32.7680 7
2 22.05 1.4112 32 45.1584 7
3 32.00 2.048 32 65.5360 7
4 44.10 2.8224 32 90.3168 1
5 48.00 3.072 32 98.3040 2
6 64.00 4.096 20 81.9200 7
7 88.20 5.6448 16 90.3168 3
8 96.00 6.144 16 98.3040 4
9 128.00 8.192 12 98.3040 7
10 176.40 11.2896 8 90.3168 5
11 192.00 12.288 8 98.3040 6
12 256.00 16.384 6 98.3040 7
13 384.00 24.576 4 98.3040 7

さて、そろそろリリースかな?



あ、ちょっと横着してました。実は上記の表は厳密ではなく実際には下表のようになります。
256kHzまでは正確に判定していますが、300kHz以上は大まかに判定しています。
なにが起こるかわかりませんので・・・・・。

Fs
(kHz)
BCK
(MHz)
逓倍率 SCK
(MHz)
基板端子
(A〜C)
1 16.00 1.024 32 32.7680 7
2 22.05 1.4112 32 45.1584 7
3 32.00 2.048 32 65.5360 7
4 44.10 2.8224 32 90.3168 1
5 48.00 3.072 32 98.3040 2
6 64.00 4.096 20 81.9200 7
7 88.20 5.6448 16 90.3168 3
8 96.00 6.144 16 98.3040 4
9 128.00 8.192 12 98.3040 7
10 176.40 11.2896 8 90.3168 5
11 192.00 12.288 8 98.3040 6
12 256.00 16.384 6 98.3040 7
13 300-390 19.2-25 4 76.8-100 7
14 >390 >25 2 >50 7

ちょっとお遊び 2012.4.7

Si5326を買ってみました。結構高いICなので、ジッタクリーナとしてつかうならSI5317を間違いなくつかうでしょうね。
でも、なんとなく面白そうなのでDIGIKEYに注文するときに併せて発注しました。
というか、どうしても送料無料(7500円以上)にならなかったので、無理やり押しこんだのですが(笑)。

こりゃ便利!

なにが便利かといえば、Si5326ってSi5317とピン配置に共通点が多いです。
ということは、ジッタクリーナ基板をつかって評価することができそうです。


          Si5317のピン配置                         Si5326のピン配置

ということで、いきなり実装していきましょう。
使用した基板は試作版のジッタクリーナ基板ですから、サーマルパッドの部分はリリース版とはちがって小さいパッド径になっています。


試作版でのサーマルパッドの穴径は少し小さいです。

半田付け自体はあまり難しいものではありません、裏面からの半田付けは容量の大きなコテをつかって
じっくり、こんがりと仕上げてやります。

半田付け完了です!

SI5317とピン配置に共通点が多いからといっても、もちろん異なるところもあります。
あるピンはGNDへの接続が必要だったりしますが、ラッキーなことに端ピンだったので
簡単にジャンパーを飛ばすことで対応ができました。これが中央のピンだったら、
結構難しいです。

必要なピンをGNDに接続しますが、端ピンなので簡単でした。


さて、動作に必要なソフトを書いていきましょう。うまく動くかな?


しかし、また日曜日から2泊の出張・・・・・ 最近全然趣味が進まなくてストレス溜まるナ〜。


さてさて

まずは必要最小限の部品をとりつけて動作評価です。またSi5326は内部の設定レジスターの数が多いので、
スイッチとLCDをとりつけて、任意のレジスタに任意の値を書き込めるようにして評価です。


必要最小限の部品を搭載して動作確認の準備です。

うまく動かない?
まず、LCDの表示や書き込みは問題なしです。ということはSi5326自体は動いているようです。
というのもデータ通信にはI2Cをつかうので、素子が動いていなければ通信エラーが生じます。

 さて、入力に適当な周波数信号を入れますが、なぜか有効な入力と判断しません。
で、入力周波数の範囲を変えてやると(高くすると)、入力信号が有効となることがわかりました。
 なぜかある入力の範囲なら入力は有効になります。ただし、DSPLLはロックしません。
つぎに入力が有効な範囲にしておいて、レジスターの設定値を変更するとDSPLLがロックする値があることがわかりました。
ん・・・・よくわからないな。
なにか設定しわすれているレジスタがあるのかな?もうわかんない。

動作チェックをこころみるも、うまく動きません・・・・

水晶を変えてみるかな?
これは苦戦するかも・・・・


シフトパラにもどる。
SI5326にはすこし見切りをつけました・・・、いや見切りをつけられたかも(汗)。
さて夜の夜長でようやく構想が固まってきました。まずシフトパラは行うとしてもES9018を4つつかうのは少し多すぎるので、
2個使ってモノラル使いで8シフトデータ入力がバランスがいいのではと勝手に思っています。それよりもクロック関係を
充実させた方が効果が高いかもしれません。ひとつは逓倍クロックでPCM入力でもLOWESTでロックすることはわかりましたので、
ICS570は搭載しましょう。

さて、まず基板サイズですがこれについてはDAC9018Sのサイズだとおさまらないので、もうすこし大きめのメモリーバッファー
などと同じサイズまで拡張しましょう。
搭載するマイコンですが、どのくらいのIOが必要になるか考えてみると
 LCD制御 6
 ES9018制御 I2C 2
         RESET 1
         動作モニタ 4
 ロジック制御        5
 入力、フィルタ切り替え   4
 BW切り替え        3
 予備            α
            計25+α


ということで28PのPIC16F886ではαがなければ収まりますが、無理はやめましょう。
ここは40PのPIC16F887を搭載した方がよさそうです。ということで必要になりそうなICを搭載してみて、
密度感をみてみましょう。


こりゃいっぱいだけどなんとかなるかな。

しかし40PのDIPの存在感が大きいな。これがもっと小さくなると配置に余裕ができるのですが、
QFPなどはマイコンのいライターがないので使いにくいです。

ちょっと欲をだして

ICS570をつかえばPCMでもLOWESTでロックすることは確認できていますが、ICS570自体の出力
はそれなりにジッタが乗っています(約200ps)。そこで、さらにジッタクリーナを通して(300fs程度と1/1000)、
供給すればもっとよくなるのではとの期待があります。さらにSPDIFについても100MHzの内部クロックで
ロックはしますが、なかにはしない場合もあるようです。ということはロックしている場合でもかなりぎりぎり
の状態でロックしているのでは?という懸念があります。そこで、SPDIFでもクロック周波数を抽出して、
それをベースにして逓倍クロックをつくれば、さらに安定してLowestでもロックするのは?という期待です。
で、SPDIFでクロック信号を取り出すためにはどうするか?これはもったいないですがCS8416などのDAIを
搭載します。もったいないといってもES9018に比べると随分安いですし、入力アンプの代わりになりますし、
それで性能があがるなら文句なしです。

 ジッタクリーナにはSi5326をつかいたいところですが、じつはこれが意外と高いのと、さきの検討でうまく
動かせていません。ということもあり、少し部品点数が増えるのですがSI5317をつかいたいと思います。
Si5317はハードウエアコントロールなので、制御のためのマイコンのピン数がより多く必要になります。
CS8416はI2C制御が可能なので、IOは増えません。SI5317の制御でどのくらい増えるか考えてみると、
12本程度増えそうです。となると40PのPIC16F887でも無理だなあ?

どうしよう?

1個のPICで納めるためるのは難しくなるので、クロックコントロールとDACコントロールを2つのCPUに
分けることが考えられますが、ソフトがかなりややこしくなりそう。ロジックICを追加してIO点数を増やすことを
考えてみましょう。いろいろと探しているとI2C制御が可能なIOエキスパンダがあることがあわかりました。
これをつかうとIOが簡単に増やせられます。さらによいことは、制御線はI2Cなので2本だけで済むので、
基板内の配線のとりまわしが簡単になります。40PのPICから各ICに配線を延ばすとなると、かなり配線のための
基板面積が必要になってきますからね。


こんなIOエクスパンダがあるんですね。便利そうなのでつかってみましょう。

具体的に基板配置を考えてみましょう。

IOエキスパンダをつかうので、思い切ってPICは28PのPIC16F886に変更しました。
これで基板の面積はだいぶ余裕がでます。

さて、ここいらで機能を整理しておきましょう。
入力は以下の4種類
 1.SPDIF入力(4ch)
 2.PCM入力(I2S,RJ,LJ)
 3.DSD(通常)
 4.DSD(シフトパラ)
こんな感じでしょうか。SPDIF入力についてはES9018での切り替え機能は使わずに、外部で切り替えるようにします。
その理由はSPDIF信号からクロックを抽出することを考えると、信号線は1つにまとめておいた方が便利です。
CS8416がSPDIFの入力切り替えの役割も担います。

クロックジッタ機能搭載
 これがICS570+SI5317をつかいます。PCM入力に加えてSPDIFでも、BCKの逓倍からシステムクロックを
生成できるようにします。もちろん外部入力がないときも考えて100MHz水晶も搭載します。

ES9018はモノラル使用。
 これに限定します。2枚使いも考えられますが、そこまで拡張することもないでしょう。

さて、ざっと部品を配置してみましょう。
部品はのりそうですが、配線できるだろうか・・・・・。
企画倒れにならないか心配になってきました。

こりゃ結構な部品点数になりそうです。配線できるかな〜。

なんとかなりそう!
コードネームはDAC9018Dです。

一通り完成?


いままでにない配線の密度です。メモリーバッファーを越えるかな?
さて、一通り見直して製作してみましょう!

来週は国内ロードに海外ロードに大忙し・・・・


基板到着してました。 2012.4.25

帰国したら基板が到着してました。

かなりの実装密度になりそうです。


半田面がベタGND面になっています。

ストレス発散(?)も兼ねて半田付けです。でも、ここは冷静にキーパーツとなるES9018S以外をとりつけます。
まずはこの状態で動作を確認していきましょう。
フィルムコンの一部は表面実装部品にも対応できるようにしたので、手持ちのSMDパーツをとりつけました。
基板の背の高さをできるだけ抑えようと考えています。

DAC素子以外は半田付け完了です。


この基板の特徴のひとつのシステムクロック用のジッタクリーナ部分です。

以下は備忘録です。

PICマイコンのIO定義

A0(AN0) I P21-EVOL      B0 O LCD-D6     C0 I BCK(1/64)
A1 IO AUX1 B1 O LCD-D7 C1 IO SCL(I2C)
A2 IO AUX2 B2 O LCD-D4 C2 IO SDA(I2C)
A3 IO AUX3 B3 O LCD-D5 C3 O ES9018S RESET
A4 O LCD-E B4 I P18 C4 O CS8416/IO-RST
A5 O LCD-RS B5 I P17 C5 N.C
A6 XTAL B6 I P16 C6 I ES9018S RIGHT LOCK
A7 XTAL B7 I P15 C7 I ES9018S RIGHT MUTE


IOエクスパンダ0のIO定義(adrs=0xea)

P00 O BCK-ON        P10 O SELECT DATA CONVENTIONAL DSD
P01 NC P11 O SELECT DATA SPDIF
P02 NC P12 O SELECT DATA SHIFT-PARA DSD
P03 NC P13 O SELECT DATA PCM
P04 I P11 P14 O SELECT BCK CONVENTIONAL DSD
P05 I P12 P15 O SELECT BCK SHIFT-PARA DSD
P06 I P13 P16 O SELECT BCK SPDIF
P07 I P14 P17 O SELECT BCK PCM

IOエクスパンダ1のIO定義(ジッタクリーナ周辺)(adrs=0xe8)

P00 IO SI5317 FRQSEL3 P10 I ES9018S LEFT MUTE
P01 IO SI5317 FRQSEL2 P11 I ES9018S LEFT LOCK
P02 IO SI5317 FRQSEL1 P12 IO ICS570 #6
P03 IO SI5317 FRQSEL0 P13 IO ICS570 #1
P04 IO SI5317 BW1 P14 O 100MHz XTAL CONTROL
P05 IO SI5317 BW0 P15 O SI5317 SFOUT0
P06 I SI5317 LOL(LOSS OF LOCK)     P16 O SI5317 RESET
P07 NC P17 O SI5317 LOS(LOSS OF SIGNAL)

DEVICE ADRS
ES9018 RIGHT CHANNLE 0x90
ES9018 RIGHT CHANNLE 0x92
CS8416 0x20


一気にくみたてちゃえ! 2012.4.28

大型連休に突入です。何日かは仕事の都合で出勤しないといけないけど、まあ出来るときに作業を進めましょう。
どうせES9018を実装しないど、最終の動作確認ができないので一気にとりつけました。


とりつけたES9018S.急いでいるとはいえ半田付けの確認は入念に。

基板が一通り完成しました。この基板は基本的には3.3Vの単一電源で動作します。
LCDも3.3V用のモノを用いたいところですが、手持ちに5Vのものしかないので、
3.3Vの電圧レギュレータを基板端子に接続して、LCDには5V、基板には3.3Vの電源を供給するようにしました。

一応完成した基板です。

動作確認!

どんどん動作確認をしていきましょう。まずはソフトで色々と項目が切り替えられるように
スイッチをとりつけました。あとは電子ボリューム用のVR,そしてLCD用のフラットケーブルです。

周辺のスイッチ類を取り付けて動作確認の準備が進行中です。

間違い箇所は一杯でるでしょうけど、まあそれは想定範囲内です。

間違いその1.
 偶然発見しました。基板の裏を眺めていてベタに接続されていないランドが固まってあったので、確認したら
水晶発振子に接続されるコンデンサ(22pF)の片側がGNDにおちていませんでした。
これは修正は簡単です。近くにあるGNDのパッドへ接続して修正しました。
 
修正前(2箇所がGNDに接続されていない)                          修正後

まずはSPDIF入力から
簡単なソフトを書いてSPDIF入力の確認です。簡単といっても、入力アンプ用につかったCS8416の制御コードもありますし、
IOエクスパンダやES9018の制御コードも含むので、結構なボリュームになります。
 プログラムを書いたPICを基板に差し込んで、電源ONです。いつでも緊張の瞬間ですね。
でも、波形がでたときはものすごくうれしいです。自作ならではの喜びです。

SPDIFの入力での動作確認できました。


無事に信号がでていますね。

つぎはPCM信号(I2S)での確認
PCM信号の生成にはFFASRCを活用します。このFFASRCですがBBSで出力周波数が1.5倍になるという報告もありました。
その動作の不安定さの解消にはPICマイコンのPIN21をGNDへプルダウンすることが有効なので、私の基板でもその対処をしました。
修正例を下記の2点にあげています。部品面から修正する場合はIC6のPIN1あるいはPIN2から47KΩ程度の抵抗で近くのGNDパターンに
接続します。裏面から修正する場合は、PICのPIN21から近くのGNDパターンへ抵抗を接続することで対応します。
  
FFASRCの修正例。部品面から行う場合。                 FFASRCの修正例。半田面(裏面)から行う場合。



FFASRCと接続してPCM入力の確認中の様子。

PCM信号入力での動作もあっさり確認できました。

DSDでの入力確認!
DSDの出力にはエレアトさんのUSB−AUDIOをつかいます。同様に、FFASRCから接続を変更して動作確認です。
こちらも無事、動作することが確認できました。
 
DSD入力での動作確認中の様子。                            DSD入力時でも動作確認できました(音楽信号入力)

最後はシフトパラDSDでの確認です。

左チャンネルはすぐに動作していることを確認できましたが、右チャンネルが音沙汰なしです。
あれ、何を間違えたのかな?調べてみるとシフトレジスタの74164の出力がでていません。
確認したら電源がきていませんでした。あちゃ、ボンミスです。

シフトパラDSDでは左チャンネルから出力がでない・・・・

でも修正は簡単です。74164のVCCから接続されているところを追っていって、簡単にジャンパーできそうなところを
探しし、そこでジャンパーしました。
 
修正前                           修正後。1本ジャンパー線が増えています。

これでシフトパラDSDも動作することを確認です。

つぎはシステムクロックの逓倍器とジッタクリーナの動作確認です。
ちょっとしたプログラムを書かないといけないので時間かかりそうです。
でも、どんどん進めましょう!


システムクロックのジッタクリーナ動作確認

なかなか、写真であらわしにくいので割愛(笑)。
ロックの有無の確認のためLCDに状態表示をさせるようにしました。
左下ののLL**はES9018の左右のロックの状態とMUTE状態を示しています。
おなじくLSはSi5317のLOCKおよびSIGNALの状態を示しています。

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さて、一気にソフトを組み上げましょう!

ちなみに、このDACはかなりおおぐらいです。3.3Vラインの電流は0.5Aを超えます。
ひとえにジッタクリーナがおおぐらいですね。

かなり消費電力が大きいです。

すこし長くなってきたのでPART2に続きます。

(後編へ)