お気楽DAC3の巻き?2007.8.8

DAC63S-miniが完売しました。有り難うございます。

企画を開始したのが昨年である2006年3月くらいで、最初にリリースしたのは多分5月くらいだったと思います。
同時期にリリースしたはずのDAC64-4Sなどに比べると趣味性も低いですが、
電源込みで基板サイズも小さく部品点数も少ないので、初めてDACを作られる方に、
支持されていたような気がします。

完売御礼のDAC63S-mini

DAC63S-miniは小型のALL-IN-DACとして定番にしたい気もありましたが、
大半の部品がディスコンという状況下ではそうもいきません。

まずは肝心のPCM63Pですが、もともとこの企画自体が偶然的にもタカさんから譲ってもらった
PCM63P(それもKランク)ことから始まったので、今後流通在庫等からまとまって入手するのはむずかしそうです。
同様にDAI(Digital Audio Interface)であるTC9245ですが、これも秋月電子や日本橋から姿を消して久しい状態です。
ディジタルフィルタであるPD00601も安価で、まだ秋月から入手できますが、これもいつまであるかどうかわかりません。

同じものを再生させることは上記の様な問題もあり難しいのですが、
ALL-INのDACはお気楽につくるにはもってこいですし、なにか魅力を感じます。
ここは、ひとつ現有品のみでALL-IN-DACを考えてみましょう。

やっぱりPCM1794?

いつも電子部品の調達に利用しているのはDigiKeyですがどんなDAC-ICがあるか
みてみましょう。
キーワードで"DAC”といれると一杯でてきます。いや〜ホントに沢山あるものです。
リストの中から
デジタル-アナログ(DAC) (5,983 items)
を選択して見ましょう。そして分解能を24Bitに絞ると、それでも200件くらいでてきます。
メーカでいえば、BBとADそしてCirrusLogicがあります。ここでさらに出力が電流タイプのもののみに限定します。
電圧出力タイプはどうも廉価版で音がいまいちという印象があります。
というのも一度PCM1716(電圧出力)をつかったDACをリリースしたことがありましたが、散々でした。
もっともIC自体が悪いのはなく企画が悪かったのが原因ですが・・・・
世の中にはPCM1716をつかった製品も色々とあります。

メーカへの直接リンクじゃないですが、PCM1716をつかったメーカ品です。→Product Review

さて、電流出力に限定すると20件くらいに絞れます。
色々とサフィックスがありますが、大別するとこんなところです。

Burr Brwon (TI) PCM1704
PCM1738E,PCM1730E,DSD/PCM1792,1794,1796,1798
Analogue Devices AD1955,
Cirrus Logic CS4361,CS4364,CS4384

ちょっとスペックを比較してみましょう。CS4384は8ch分も出力があります。
おそらくHOME THEATERに特化したようなDACなんでしょう。
残る2つは2ch差動出力と同じ構成です。S/Nが少しちがいますが、120dBを越えたあたりから
差があっても関係ないような気がします。

PCM1794 AD1955 CS4384
出力数 2ch差動 2ch差動 8chシングル
D-range
(A-weight)
127dB(2Vrms)
129dB(4.5Vrms)
123dB(mono) 103dB
S/N
(A-weight)
127dB(2Vrms)
129dB(4.5Vrms)
123dB(mono) -
価格(digiKey) 2147円 1394円 1236円

PCM1794もAD1955も現状のDACの中では最高レベルの性能でしょう。
どっちを選ぶかとなると、あとは好みの問題です。気分的にはやっぱりBBのPCM1794かな(笑)。

安価で選べば・・・
DACも電圧出力で選べば安価なものがあります。
PCM1744あたりだと400円弱で買えます。それもステレオ!さらにSOPパッケージですから、
半田付けも容易です。S/Nも97dBくらいですから、実用上は問題ないでしょう。

このようなチップをつかって、CS8416あたりと組みあわせれば2000円くらいで基板も含めてDACが組めそうです。
それこそお気楽DACかな?

安いDACも探せばたくさんあります。


DAIはCS8416?

DACと同じくBB社のDIR9001を使う手がありますが、今回はCS8416をつかいましょう。
ジッタ性能の点ではDIR9001の方が優れていますが、SPDIFを入力できるように回路を別途用意しないといけないので、
部品点数が多くなってしまいます。CS8416ではC,Rをつなげるだけで、容易に4chの入力が実現できます。
それに、ピン間1.27mmのSOPパッケージですから半田付けも簡単です。SSOPの半田付けはPCM1794だけで十分お腹一杯です。

電源回路は?
DAC63S-miniのように3端子レギュレータがもっとも簡単ですが、ちょっと面白みに欠けます。
かといってディスクリート構成にしてしまうと、一気に回路も複雑になりますし、基板サイズも
大きくなります。簡単なディスクリート構成としてはツエナをつかった定電圧電源も考えられますが、
DAC用途にはすこし電圧精度に不安がのこります。
3端子レギュレータより性能向上を狙ってLM317/337をつかってみようと思います。

アナログ回路は?
ここはDAC1794Dの回路を踏襲しましょう。OPアンプがやはり便利です。
ちなみにディスクリ構成とOPアンプを比べて、ディスクリ構成の方が回路規模が大きいと思われる方が多いようです。
たしかに部品点数や面積はディスクリ構成の方が大きいのですが、回路の複雑さでいえば
OPアンプ内部の方がはるかに複雑だと思います。OPアンプの中には、それこそ多数のカレントミラー回路や
保護回路などがくみこまれていますから、TRの数だけで換算しても、すくなくとも20〜30個は入っているのでは
と想像してしまいます。

まずはパターンをかきかき
というわけで、パターンを書き始めましょう。コードネームはDAC1794D-2としました。
DAC1794-3の後に-2というのも変ですが、どちらかといえばDAC1794DやDAC1794DwoDAIの後継機になるので、
このネームの方が個人点にしっくりきます。

さて、早速パターンが完成しました。PCM1794周辺とアナログ部分はDAC1794DwoDAIを流用しているので、
意外と早く書き上がりました。

完成!

こんな感じです。サイズは145×175mmですから、DAC1794-3などに比べると一回り小さい感じになります。
反対にDAC63S-miniに比べると1回りほど大きくなっています。

電源部は単一トランスで可能にしようかと思いましたが、さすがにPCM1794をつかうとなると
セパレート電源にしたくなりそうなので、ディジタル、DAC、アナログの電源は独立させました。
またまたRA40-072トランスの出番が出そうです。

あまりひねりを入れた点はありませんが、ASRCやメモリーバッファーが簡単に接続できる端子を
設置しました。あと、ASRCやメモリーバッファー基板が簡単に搭載できるように基板のネジピッチは
合わせてあります。とくにメモリーバッファーと組み合わせればジッターフリーが実現できるので、
面白いかもしれません。
ASRCと接続する場合はDAC1794D-2に搭載したDAI回路は使用しなくなりますが、
メモリーバッファを搭載する場合は、配線次第ですがどちらのDAIを使わないかは選択できそうです。
どちらかといえばメモリーバッファーのDAIをカットする方がよさそうです。

しかしこうやってみているいると、あまりにも教科書的なDACだな〜という感じです。

まずは取り急ぎ試作?
基板屋さんのカレンダーを見ていると、盆休みがないようです。景気が良くなって休みが取れないのかな?
ならば、盆休みの間に基板の製作が進むようにとりあえず試作にだしちゃえ!


頂き物!

最近、ja1wbyさんからコンデンを頂きました。Panasonicの2200uF/50Vのものです。
φ16×31.5mmサイズです。じつはこのコンデンサがお気楽DAC3の製作のトリガーにもなっています。
というのは、それに搭載するコンデンサのサイズがちょうどこれに合わせているからです。

頂きものです!


規格で探すとちょうどこれのようです。沢山頂いたからアンプにつかうのが良いかな?



その2へつづく)