新ディスクリートオペアンプ基板構想!

ここではディスクリートアンプ基板A1,A2の次のバージョンをみなさんと一緒に考えて製作できれば面白いだろうな、と企画しています。おもしろい回路やコメント等があれば、BBSにどしどしお寄せください。

R.さんから2つの回路をいただきました(2005.4.12)

<コメント>
R.さん
片方は高負荷時にも低歪になるよう終段を強化しましたが、回路規模が大きくなりすぎました。
それと、当方のPspiceの評価版では、トランジスタが多すぎて計算が出来ませんでした。
両方とも広帯域、ハイスピードに振った回路構成なので、オープンループゲインの稼げて
低歪にできる別構成の回路のA4基板なんかと使い分けると面白いかと思います。
と、話を大きくしてみたりして・・・。
A3_OPAMP
A3_OPAMP3

R.さん
A3基板の案は、DACのIV変換回路を想定しての構成です。
ビデオ信号用の高速オペアンプやマランツのHDAM回路のパクリです。
初段にgmの低い石を使ってローノイズよりもスルーレートを優先しています。
A1、A2基板と比べスルーレートは数倍になっていると思います。
欠点はオープンループのゲインが高くないので、NFB量は少なくなり歪率がよくならないことと、初段のFETに結構な電圧をかけているので、ゲート漏れ電流が多くなることです。(数百pAオーダー?)

ヒロ。
私も簡単な回路の方をSPICEに入れてみました。
なぜか、オフセットが0.25Vのって、ゲインも正確に1になりません。オフセットは初段に流すFETの電流を落とすと改善しますがゲインは1にならず。TR,FETは標準のものなのですが、これが悪さをしているようには思えないのですが・・・・
SPICEでこんなに違うとも限らないし・・・・・
もうちょっと悩んでみます。
amp-a3.pdf へのリンク


R.さん
ちなみに、A3基板は2SK30を前提に定数を決定しているので、標準デバイスだとgmが高くなり、C1が2pでは足りなくなるかもしれません。
でも、こんなの関係ないですね・・。
A3基板の回路でNFBをかけても、ゲイン1にならない件ですが、NFB量が少なく出力インピーダンスが高いことが影響しているように思います。
NFB量が多い別の構成の回路で、出力に13オームくらいの抵抗を入れると同じような感じになりました。
A3基板の回路でNFBをかけても、ゲイン1にならない件ですが、NFB量が60dBにも満たないことも原因ですね。
増幅率=-A(1-β)/(1+Aβ)でA=300、β=0.5を代入すると、増幅率は0.993くらいになります。
残りの影響は出力インピーダンスが原因でしょうか・・。

ヒロ
増幅率は0.993なら問題ない範囲でしょう。
私の方もFETの種類を変えれば、動作しました!(2SK30ではないのですが、適当なやつです)
回路図で終段のバイアス電圧を得るためにダイオード3連結されていますが、終段TRのエミッタ抵抗が小さくなるとアイドリング電流がかなり流れてしまいます。ヘッドホンアンプとかのターゲットを考えると、TRと抵抗をつかったバイアス電圧発生の方がよいかもです。あるいは、ダイオードを2連に押さえるか。

R.さん
汎用性を考慮するとTRでバイアス作った方が良いですね。
Pspiceの評価版は10石の制限があるので、提案の回路はとりあえずダイオードでバイアス作ってます。
バイアス回路はスピードアップコンデンサをパラにすると立下りのスルーレートが改善するようです。
ディスクリートの構成で、ゲイン1の厳しい条件としては結構高速に設計できていると思います。
問題はこの回路構成が汎用用途に向くかですね。
クローズドループゲインが欲しい場合には、高gmのFETにしないとオープンループゲインが稼げずNFBがかなり少なくなってしまうので、欲しいゲインに応じて推奨する帰還抵抗の大きさとFETの品種、位相補正の容量を指定した方がよいかなと思います。

ヒロ
実際に作ってみないと分からないところはありますよね。
ところで、FET入力をBIPOLAに変えるとゲインエラーが低くなりましたよ。一度おためしください。

R.さん
1段増幅回路は、初段の石のgmとカスコード回路のTRの出力抵抗の積で大体オープンループの増幅率が決まります。
2SK30は1.5mAで動作させて、gmが2.5mS、TRはICにgmがほぼ比例し1.5mAで60mSくらい。 オープンループの増幅率で、20倍以上の差が出てくるのでゲイン誤差は小さくなりますね。
ゲイン誤差は良いのですが、困ったことはユニティゲイン周波数一定の条件の場合、位相補正の容量をgmに比例させる必要があることです。
スルーレートがその分下がってしまうということです。
クローズドゲインが10倍くらいの用途なら位相補正はそれほど必要ないので、TRの方が良さそうですが 問題はバイアス電流の大きさですね。
程よいgmのFETを必要なゲイン別で推奨した方がよいというのは、このような理由からです。
ここら辺は、一般的なディスクリートアンプが抱えるトレードオフなんで他の構成の回路にするにせよ バランスが難しいところです。
といいながら、別構成のA3の回路図を描いていたりします。

ヒロ。
私も回路を書いてみました。オーソドックスにFET入力4パラです。ローノイズ狙いです。
A6.pdf へのリンク




まずはR.さんのA3基板(その1?)



こちらはFET4パラ入力アンプ(まだバグ修正前)


ヒロ.
FETですが、高いものは使いたくないので2KS30,68,117あたりを考えていますが、だめでしょうか?

R.さん
全然問題ないです。2SK117でローノイズに仕上げることができますね。
オフセットの調整方法なんですが、ソース側に入れると局部帰還でgmが下がって、位相補正が小さくできますが、 ノイズ性能が低下します。
私の回路の場合、2SK30ならドレン側の抵抗に半固定入れた方がよいかもしれませんが、 2SK117を使用するならあのままのパターンでいけそうです。 ちょっと検討が必要ですね。
A3基板の件ですがA1、A2と基板サイズ共通だと、10〜12石の縛りで設計が必要そうですね。 私の回路を候補として検討した場合
・オフセット電圧の調整方法
・パスコンの入れ方(A1、A2より広帯域なため)
・出力のトランジスタの放熱板の有無
について考察が必要そうです。 特にヘッドホンアンプへの適用が多そうなので、出力電流に注意が必要かなと思っています。
ちなみにこんなのも売ってますね。
バイアスがLEDで初段の電流の折り返しに定電流回路を使用しているみたいです。
仕上がりゲインは10倍くらいでしょうか?結構低ひずみです。
http://www.audiodesign.co.jp/FlatAmp-Feature.htm

ヒロ.
取り替えることの利便性を考えると、サイズとピンは共通の方が いいとは思っています。
(ヘッドホンアンプへの適用で)終段トランジスタのアイドリング電流をどこに設定するかですが、5mA以下にするなら放熱板はなくても大丈夫と思います。 いっそのこと、放熱板を取り付けることを前提とした回路で、ヘッドホンアンプ用として大きな基板サイズを設定するのもいいかもしれません。

R.さん
ところで、A3基板の件オフセット調整を入れた回路(A3_OPAMP-v2.pdf へのリンクを送りました。
A5_OPAMP.pdf へのリンク(入力段がブートストラップ)
A6_OPAMP.pdf へのリンク(電流帰還)
2SK117を使用してゲインを持たせれば、同じような性能になりそうですが、歪率はあそこまで低くなるのか少し疑問です。
あの基板の放熱板は出力のトランジスタ用みたいですね。 どの程度の出力電流を取り出せるようにするもんなんでしょうか?
低インピーダンス(100オーム以下)のヘッドホンをつなげることを想定すると100mAくらいは出力を取れた方がよい感じもします。

ヒロ.
オーディオテクニカのカタログを眺めていますと、インピーダンス48Ωで最大許容入力2Wになっています。単純に考えると必要電流は実効値で約200mA、電圧は約10V必要です。電圧に関しては15Vもあれば十分そうですが電流は300mAは必要になります。トランジスタのPcとしては、最低で1Wくらいは必要ですが余裕を見ると10Wくらい必要でしょう。ただ、実際の発熱はB級動作になりますから、300mA×0.6(Vce)×0.5(半周期)ぐらいであまり大きく放熱板は不要な気もします→小さいトランジスタでもOK?

R.さん
短絡保護の抵抗も電源電圧を有効に使うにはあまり大きくできないですね。
短絡時の連続電流の処理が難しいです。
オペアンプ基板で利用可能なヘッドホンのインピーダンスの推奨値を決めて、ある程度割り切る方がよいかもしれません。
100オーム以上推奨とか・・・。


ヒロ.
>10Wクラスで放熱板なしというパターンでしょうか?
2SA1358/C3421でよいかと。放熱板もアルミ缶から切り出した板を取り付ければそれなりに放熱効果も上がります。
>このくらいまで負荷が低くなるとバイアス電圧を調整して → やっぱりバイアスは可変にする必要があるでしょう。
>ヘッドホンアンプは設計の幅が広くて意外に難しいです。 → ちょっと中途半端な出力ですからね。思い切ってパワーアンプと同じ考えで設計(放熱板もきちんとつける)すると気楽かもしれません。
ところで、Rさんから頂いたA3基板のオフセット調整(あとでHPに上げます)回路A3_OPAMP-v2.pdf へのリンクですが、VRが120Ωの抵抗に2個並列に入る形ですが、その部分をすべて省略して200Ωあるいは500ΩのVRを1個に置き換えることはできますでしょうか?


R.さんおA3のオフセット調整回路付加したものです。


とりあえずLTSPICEでのR.さん設計回路図です(2005.4.18)。
A3_OPamp.pdf
A6_OPamp.pdf


A6回路のアートワークを描いてみました。


ここらで一旦整理です。

ディスクリートOPアンプ基板回路
A1 差動入力2段増幅のスタンダード回路 ヒロ
A2 対称型増幅回路(ハイスルーレイト)  ヒロ
A3 FET入力型(ウルトラハイスルーレイト) R.さん
A4 4パラFET入力(ローノイズ、低歪)   ヒロ
A6 電流帰還型(ウルトラハイスルーレイト) R.さん


特性解析をR.さんとともに進めてきましたが、やっぱり最終的には実機でないとダメなのでまずは試作に突入。
試作なので、色々な基板を面付けして試作に出しました。
できあがりは連休をはさむので、たぶん5月14日くらいでしょう。

OPアンプ基板の評価をしやすいように、マザーボードもつくっています(2005.5.7)


回路図はこれ。非反転増幅回路を組めるようにしています。



試作基板製作完了!

部品を実装してディスクリOPアンプ群できあがり。


A1,2,3,4,6基板の矩形波に対する応答をみてみましょう。矩形波といっても単にロジックICの出力を入れただけです。
アンプの条件は2倍の非反転増幅器(抵抗値は510Ω×2)。

周波数100kHzの場合

A1基板 f=100kHz(1us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=47pF


A2基板 f=100kHz(1us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=100pF



A3基板 f=100kHz(1us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=47pF

   
A4基板 f=100kHz(1us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=220pF   右図:2uS/div


A6基板 f=100kHz(1us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C 無し

周波数500kHzの場合

A1基板 f=500kHz(0.2us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=47pF


A2基板 f=500kHz(0.2us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=100pF


A3基板 f=500kHz(0.2us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=47p


A4基板 f=500kHz(0.2s/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C=200p


A6基板 f=500kHz(0.2us/div)  上:入力、下:出力(2V/div) 位相補償C無し

こうやって見ると、特性差が大きいことがわかります。しかし、テスト波形が100kHzあるいは500kHzの矩形波なんて聴覚とは関係ないだろうな〜。物理的な特性差は判りましたが、音の違いはどうなるのでしょう?(簡単な比較試聴結果はNOSDAC2-LITEのところにあります)。

(つづく・・・・かな?)