ちょっとTea Time!? AD1860(18Bit DAC)の精度はいかに? 2025.6.23

最近のオーディオ用DACは24Bit,32Bit分解能が主流ですが、いわゆるDACとしての精度についてはデータシートに記載はありません。
DACとしての精度として重要な指標は
微分非直線性誤差(DNL:differential non-linearity)
積分非直線性誤差(INL:integral non-linearity)
の2つですが、オーディオDACって実力的にはどうなんだろう?

これがよければ、オーディオ用DACもいわゆる普通(電圧出力用としての意味)のDACとして、気楽に使えるかもしれません。
なんせ、普通のDACって意外と高いです。16Bit(1LSB誤差)で2000円を越えたりします。
12Bitのものでも数100円だしなあ〜。

AD1860を調べてみる!
ということで、手元にあるDACであるAD1860の精度を調べてみました。
AD1860は往年のDACですが、R-2R方式で18Bit分解能のものです。

データシートには、一応精度らしきものが書いてあります。

AD1860のデータシートでDACの精度としての記述はこれくらいかなあ〜。単調増加性は15Bitということかな。

単調増加性だけでは、よくわからない性能ですが、総合的に14Bit程度もあれば、
かなりのみっけものという感じです。

さっそく評価!

最近作ったDAC8831(16Bit DAC)とADS8685(16Bit ADC)を搭載した基準電圧源をつかって、
評価です。これはDAC+ADCの総合精度でもほぼ1LSBに収まっていますから、それぞれの実力としては
0..5LBS以下でしょうから、ほぼ16Bitの精度があるとして扱います。

ADS1860は負電源(-5〜-12V)が必要にはなりますが、DAC内部にIV抵抗やOPアンプがありますので、
外付け部品なしに-3V〜3Vの出力を得ることができます。

なお、ADCの測定レンジを±2.56Vにしているので、DACの出力も1kΩ,200Ωの抵抗で10/12に分圧しています。
すなわちDAC出力は±2.5Vなので、ADCとほぼコンパラです。

AD1860の評価の様子です。AD1860には負電源が必要なので、-5VのDCDCを使っています。


AD1860です.16pinのDIPなので扱いやすいです.


-5VのDCDCです.共立で購入できます。通販だと70個単位になりますが、店頭だと1個単位で購入できます。@10円と格安です。

結果はいかに?

まずは単純にDACへの入力値とADCの出力値の関係です。これは、グラフにしたら直線です。
これが、目に見えてばらついているようだと話にはなりませんからね。
ADCについては100回の測定の平均値としています。
さて、ここから直線の近似式を計算して、そこからの誤差を導出です。


横軸はDACの値(20Bit).で、縦軸はADC(ADS8685の読み)の100回平均値です。
これが直線に見えるのは当たり前です。



誤差は2LSBかなあ〜

3つのAD1860で誤差を計算してみましたが、大きな誤差で2LSB程度な感じです。ほとんどは1LSBに収まっているかなあ〜。
となれば、評価測定しているADC(16Bit)の精度を基準とすれば、AD1860の実力精度としては14〜15Bit程度という結果になりそうです。
ほぼ、カタログと同じだなあ(←当たり前ですが)。
 すこし余裕をもたせて14Bit精度のDACとして気楽に使えそうな感じです。




3つのAD1860の誤差の測定結果です。結構、誤差の発生傾向が似ています(同じロットだからかな?)。
Bit16(65536)でやや不連続な誤差が発生しているのが特長かな。


結論

 AD1860は14Bit精度のDACとして使えそう!