ちょっとTea Time!? DCDC(YDS-205)の並列運転を検討してみる! 2023.5.14

ことの発端 

 すこし大容量の実験用電源をつくっておこうとおもって頭の体操をしていました。出力はOPアンプが動作できる電圧と
ディジタルが動く電圧です。ちょうど12V6AのSW電源が2個あるので、これで±12Vの電源が準備できます。
問題は5Vです。5V10A程度のSW電源なら、通販で2000〜3000円程度で購入できますが、あえて新品を購入するのも勿体ない。
手元の部品でなんとかならないかを考えていたところ、大量に5V2AのDCDCがあることを思い出しました。
 ちょうど去年に4個ほど必要だったので、秋月でYDS−205(@250円)を買おうかとおもっていましたが、
同じものが共立電子の通販で50個2500円でラインアップにあるのを発見。秋月で買うと250円x4=1000円だけど、共立だと2500円。
倍以上、共立の方がかかってしまいますが、これからもこの手のDCDCって使いそうだし、10個以上使えば断然お得だなあ〜と、
危険な思考に満たされてしまいました(部品箱が肥やしになる、もっとも悪い考え方です。わかっちゃいるけどを〜)。
#ちなみに先日、店頭ではYDS205ばばら売りで1個50円で売ってました。

お得とおもって買いましたが、まだ5個しか使っていません。こりゃ、頑張って消費しないといけない想いでいっぱいです(笑。

そこで、これを5個ほど並列で動かせば、5V10Aでつかえないかなあ〜という、超短絡な考え方がでてきました。
ということで、ちょっと検討してみることに。  


秋月で取り扱っていた5V出力のDCDC。1個250円です。


共立電子の通販で購入。50個で2500円でした(@50円です)。まだ5個しかつかっていません。


YDS-205のデータシートをみてみると

電源を並列運転させようと思ったら、まず出力電圧が等しいことが前提です。
データシートをみてみると、最低4.9Vで最大5.1Vが保証されているようです。
単体で使うなら問題のない値ですが、並列となるとちょっと差が大きい気もします。
しかし、データシートはあくまで保証値ですから、実力的にはもっと誤差が小さいかもしれません。
というのも、YDS-205では電圧調整は抵抗をレーザトリミングしています。
おそらく保証値の3倍以上の精度で調整しているはずです(でないと、保証値を超える確率が
無視できなくなってきます)。
 まずは、電圧精度の実力をみてみなければなりません。


電圧はかなりの精度で調整してあります。実力はどうだろう?


中身をみた状態です。右下にレーザトリミングの跡がみえます。


レーザで焼いた溝がみえます。


つぎに並列運転しようとしたら負荷に対して出力電圧が漸減する状態がいいです。
というのも、負荷電流が上がったときに、わずかにでも出力電圧が下がると負荷分散しやすいのですが、
データシートをみると出力電圧は一定のようになっています。そりゃ、データシート上ではそのように書くだろうけど、
実際には僅かにでも変動あるはずです。これについては調べてみる必要がありそうです。
ただ、一番懸念するのは負荷電流の増大によって、出力電圧が増大するバターンです。
実際に、スイッチング電源ではそのような特性を示すものもあります。
そうなると、並列動作させても、特定の電源に負荷が集中してしまって、まともに動かないでしょう。


この図だと出力電圧は定格出力では変動ないようにみえるなあ〜。

まずは調べてみよう!

机上で色々と考えてもはじまらないので、まずが現物を調査です。
適当に10個選んできて調べてみることに。

まずは10個とりだしてきました。

調査その1:無負荷時の電圧
10個の無負荷時の電圧を調べてみました。
 最低値:4.93V
 最大値:5.00V
 平均値:4.967V
 標準偏差 0.0195V


となりました。標準偏差はこんなものでしょう。ただ気になったのは、平均値自体が5Vから2σだけ下回っています。
平均値自体はほぼ5Vだと思っていましたが、なぜ下側に振れているのだろう?
でも、この原因は次の負荷電流と出力電圧特性をみてわかりました。

無負荷時の電圧を貼っておきました。

調査その2:負荷電流と出力電圧の関係

適当に1個選んで、負荷をかけたときの電圧の関係を調べてみました。
で、わかったことは負荷電流をかけると出力電圧が上昇傾向にあることです。
無負荷時にほぼ5Vだったものが、5.1Vを超える値となってしまいました。
おそらく、電圧調整はある負荷をかけた状態で行っていると思います。
だから、無負荷時の電圧は平均値でも5Vより下側になっているんだあ〜。


電子負荷装置に接続して負荷電流を流します。電圧は別途テスターで測定です。


負荷電流と出力電圧の特性はマクロはデータシートの通りです。


ミクロにみると、負荷をかけると無負荷時から電圧が上昇しているようです。
定格電流においても無負荷時電圧より高くなっています。



単純並列は無理だろうなあ〜


上記の特性の測定結果から、おそらく単純な並列運転は無理でしょう。というのも、
まず一番電圧の高い個体に負荷が集中しますが、負荷電流があがるとその個体の電圧が上昇することから
ますます負荷が集中します。そして、さらに電流が増大してリミッタがかかったころに電圧が急降下して、
他の個体に負荷が移りますが、負荷の遷移が微妙すぎます。ひょっとすると、出力電圧が振動しかねません。
こりゅあ、安定動作にはちょっと部品追加が必要だなあ〜。

0.1Ω程度の抵抗を直列に繋いで結合かなあ〜

簡単な方法は0,.1Ω程度の抵抗を出力につないで、結合するのが良さそうです。
0.1Ωなので1A流れると電圧降下は0.1Vになりますが、このDCDCが無負荷時から0.1V上昇すること
を考えるとちょうどいい感じです。そして、たとえば1.5Aまで流れると電圧降下は0.15Vになりますが、
そうすると出力電圧は4.85Vになりますから、他のDCDCに負荷が分散される形になります。

均一な負荷分散にはほど遠いですが、各DCDCが定格内での安全な領域での運転になりそうです。
ただ、DCDC5個で10A流したら、出力の合成抵抗は20mΩあるので0.2Vの電圧降下が生じます。

まあ、5V電源で4.8V出力ならギリ許してもらえるかなあ〜。

さてどうしよう?

まずは3つでテストしてみましょう! 2023.5.15

いきなり5個つかって基板に組んで失敗するとダメージが大きいので、まずは3個程度でバラックで組んで
テストをしてみましょう。比較的、無負荷時の出力電圧が揃ったものを選んで使用です。
抵抗は0.1Ωがなかったので0.22Ωを2本並列としました。たぶん、これはかなり昔にデジットで
100本300円で売っていたものです。これも部品箱の肥やし状態です。


まずは3個並列で動かしてテストです。部品は再利用できるようにリード線はそのままつかいます。


再度、電子負荷に接続して評価です。

いい感じかも!

まず負荷電流を徐々に上げたときの出力電圧を測定です。なんとなく素直な特性のようです。
個々の定格が2Aですが、その3個分である6Aも問題なく出力でます。ただ、抵抗で合成しているので
6A出力時には4.8Vになっていますが、これは想定内です。

負荷電流と出力電圧の関係です。なかなか素直な特性です。


つぎは、個々のDCDCからの出力電流を測定です。測定は抵抗の両端の電位から換算です。
その結果ですが、やや出力が低いものもありますが、極端に低くはなっていないようです。
この程度なら、ほぼ負荷が分散されているといってもいいでしょうね。

個々のDCDCの電流値ですが、意外と均等になっているようです.

ということで、まずは3個だけですが抵抗合成での並列運転をさせてみて、問題なさそうなことが確認できました。

さて、次はどうする? 2023.5.28

YDS-205は端子のとりつけピッチがインチのユニバーサルとの相性が悪いので、
変換基板をつくっておくことにしました。どこが相性が悪いかといえば、電気端子は
相性がいいのすが、放熱板の固定ピンがもの凄く中途半端な位置にあるからです。


DCDC用の変換基板をつくっておきましょう。



(つづく?)