ちょっとTea Time!? お前は本物か?(OPアンプのスルーレイトを調べてみる) 2022.6.21

以前にこんな記事があるとBBSに投稿いただきました.
かなりの割合で偽物が出回っているようです.
OPアンプなんかでも、リマ―クした偽物もあって、
スリューレイトなんかを調べると惨憺たる結果だったりするようです.


「偽半導体」が大量流通 民間調査で3割超 メーカー名書き換えなど | 毎日新聞 (mainichi.jp)

手元のOPアンプは大丈夫かな〜

OPアンプは色々と持っていますが、オーディオ用によくつかうのはOPA134あるいはその
DUAL版のOPA2134です. 今はだいぶ高くなりましたが、買ったときはかなりリーズナブルな値段
だったと思います.
 購入先は大半がDIGIKEYだと思いますが、たまにRSコンポをつかったりあるいは秋月だったりします.
でも、これらの購入先であれば偽物を掴まされることはないとは思いますが、一度調べてみましょう.

知らぬが仏で、不都合な真実にならなければいいですが---..


使いやすく音も気に入っているOPA134です.


スリューレイト(SR)を調べてみましょう!

5Vで動作させたPICで1us程度の矩形波を生成して1/5に分圧したのち、ゲイン11倍に設定した
非反転回路のOPアンプの出力を観測です.


こんな形でテストです.

手元の代表的なOPアンプを調べてみました.
カタログ値に近い値のSRであれば本物、極端に違えば偽物と考えます.
調べた結果では、どれも本物のようでした. よかったあ〜

OPアンプ 波形
(上:OPアンプ出力 G=11倍、 下:入力)
判定
OPA134 その1



オーディオ用のお気に入りです.
実測スリューレイト
約25V/uS


カタログ値
20V/us


本物!
OPA134 その2




オーディオ用のお気に入りです.
実測スリューレイト
約25V/uS


カタログ値
20V/us


本物!

OPA627A その1


オーディオ用には勿体ないです.
計測用につかってその真価が発揮されます.
実測スリューレイト
約50V/uS


カタログ値
40-55V/us


本物!

OPA627A その2


オーディオ用には勿体ないです.
実測スリューレイト
約50V/uS


カタログ値
40-55V/us


本物!

NE5534


オーディオ用に定評があります.
バイポーラ入力なのでハイインピーダンスで使う場合は
入力オフセットに注意が必要です..
.
実測スリューレイト
約12V/uS


カタログ値
13V/us


本物!

LM7171


超高速. ビデオアンプです. 入力バイアス電流が
大きいので、低インピーダンスでしか使えません.
実測スリューレイト
入力とほぼコンパラなため読み取り不能



カタログ値
4100V/us


本物?
(秋月で買ったと思う)

OPA27

以前はこれをよく使いました.
でももう古いICかなあ〜..
実測スリューレイト
約3V/uS


カタログ値
1.9V/us(G=1)


本物?

とりあえず抜き取り的に調べてみましたが、本物のようです.
やはり、電子部品は信頼できるところから購入した方がよさそうですね.

それにしても高くなったなあ〜


ふとOPA627の値段をみるとOPA627APですら1個5000円を超えるようです.. 
以前は3000円くらいだったような記憶があります.
円安だからかな?


円安のせいか、高いなあ〜.

ちなみに、44000個の在庫ってDIGIKEYが自社で購入して持っているのかな?
そうしたら1個2000円としても、その品番だけで約9000万円の在庫かあ〜.
ちょっと信じられないなあ〜.


数日前に 2022.7.5

こんなやり取りを行いました.



ということで件のブツが届きました.

4つのOPA627BPがあります.全て同じロットの様子です.


裏面をみると、すべて台湾でパッケージされています.でもパッケージの記号がF07,K07,D09,D17とバラバラです.
ロットが同じでパッケージがバラバラというのはあるのだろうか?さてさて真偽のほどはいかに!


まずはスリューレイト比較


 手元のOPA627との比較を行いました. 最初はこの段階で大きな違いがでるのかな〜と思っていましたが、
頂きものの4つのOPA627BPと手元のOPA627のスリューレイトは同じでした.
こりゃ、本物かな?


手元のOPA627AP


頂もののOPA627BP
 
 

ほとんど手元のOPA627APと立ち上がりは同じです.
本物っぽいですね.

次はオフセット測定

下記のようなゲイン100倍で入力抵抗2.2MΩをGNDに接続した回路で、出力電圧Eを測定してみました.
理想OPアンプならゼロ電位出力になりますが、オフセット電流やなんやかんや出力電圧がずれてきます.
この値で勝負です(なんの勝負?


このような回路でオフセットを測定してみましょう!
あ、回路図の1kと100kが逆になっています。

測定結果は下表の通りです. 手元のOPA627にくらべてかなり出力電圧Eが大きいですね.
本来はBPの方が小さいはずですが、そういう結果になっていないようです.
参考にOPA134とも比較してみましたが、それとは同等あるいは小さい感じですね.

出力電圧E
手元のOPA627AP -1.1mV
 1.5mV
頂もののOPA627BP -24.5mV
-30mV
-12.5mV
 +6.0mV
手元のOPA134
(参考)
 30mV

結果としては、スリューレイトは本物だけど、オフセット関係は偽物という感じでしょうか.
オフセットが悪いといってもOPA134程度ですから、かなりいいラインだとは思います.

ここからは推測です.これがまったく別のOPアンプのリマーク品だとして、OPA627のような
スリューレイトが50Vもあるような高級品をわざわざ使うだろうか?という気がします.
もっと安物の数V程度しかないものでもいいはず.
 だとすると、本来は本物のだけど検査ではねられた不良品の横流しでは?という線がありるかも.
半導体検査装置にかかわる人から聞いた話では、ウエハー段階で検査して、正常品のみをパッケージ
するが、残った不良品が廃棄されず横流しされるケースがあるとのこと.とくに某国ではそういったことがあり、
メモリーだと本来の容量より小さいメモリーが出回ったりすることもあるとのことでした.
まあOPアンプなのでウエハ段階だけでなくパッケージしたときの応力などで特性がかわるでしょうから、
製品になってからの検査でもはねられるものもでてくるでしょう.
 スリューレイトは基本的には回路と構造で決まってきますが、オフセットとなると出来栄えで変化しますから、
本物と同じスリューレイトだけど、オフセット特性が悪いということは、基本的にはリマークされたものではなく、
出来が悪い本物ということになるのかもしれません.
ただ、そのまま流通してしまうとロット番号とパッケージ刻印からどの工場のどのラインから流れたがわかってしまうので、
巧妙にリマークされているかもしれません.

さてさて
 とりあえず混ざらないように(といってもOPA627BPなんか持っていませんが)、
封をして部品箱にしまっておきましょう. 一度OPA134と差し替えて音の聞き比べでもやってみましょう.

(おしまい)