ちょっとTea Time!? 0〜24Vの可変電源を検討しよう、の巻き! 2022.12.30

この年の瀬に、何をとち狂ったのか・・・・・大掃除もしないといけないのに(笑

とはいえ、この冬休みに24V8Aのスイッチング電源を元電源につかった可変電圧電源を作っておこうと思っています。
いま手元にある実験用の電源はKIKUSUIの物ですが、最大電圧18Vとそこそこですが、電流が1Aと貧弱です。
スイッチング電源をつかうので、多少のノイズはでてしまいますが、電流容量がとれるのでパワーアンプの実験でも重宝するはずです。

回路は簡単に

回路は簡単に済ませます。出力段にMOSFETをつかってOPアンプで電圧制御を行います。
本来は保護回路も必要でしょうが、省略します。というのもスイッチング電源には保護回路が入っているはずなので、
万が一、過電流が流れても元電源側で防御できるはずです(他人まかせです。


可変電源の回路は簡単にしましょう。

出力段にMOSFETをつかうことで、終段のトランジスタは1個で済みます。バイポーラをつかうと
最大8Aの電流をあつかうとなると、少なくとも3段のダーリントントランジスタが必要になるでしょうから、
部品点数が多くなってしまいます。そしてMOSFETはON抵抗が低いので、電圧降下が小さくて済みます。
1A程度ならほとんど電圧降下はでないでしょう。8A流しても0.3V程度で済むはずです。
バイポーラの3段ダーリントンだと、それだけで1.8Vは電圧が小さくなってしまいます。

最大の課題はOPアンプ電源か?

さて、可変電圧回路はいいのですが、最大の課題はOPアンプの電源をどうするかです。
一番簡単なのは、元電源の24Vをつかうことですが、そうすると出力電圧の最大値が大幅に小さくなってしまいます。

というのもOPアンプには単電源で動作するLM358を使う予定ですが、このOPアンプは電源電圧の-1.5Vより低い
電圧しか出力できません。24V電源なら最大出力電圧は22.5Vです。そして、MOSFETの駆動には最低でも4V
必要なので、さらにそこから4Vを差し引いて22.5-4=18.5Vしか出力できないことになります。
折角の24V電源を準備しても、最大電圧が18Vちょっとというのは寂しいです。

最大出力が24Vまで出せるようにするにはOPアンプの電源電圧Eは

E=24V(元電源電圧)+4V(MOSFET駆動電圧)+1.5V(OPアンプ降下電圧)=30.5V

が最低でも必要です。 LM358の絶対定格が32Vなので少し低い31Vを狙って電源を準備する必要があります。

昇圧型のDCDCコンバータを採用するかな?

OPアンプの電源を準備するのに24Vの元電源から昇圧型のDCDCコンバータで電圧を上げてやるのが簡単そうです。 
ただ、今手元にはそれができそうな素子がありません。 駆動するのはOPアンプ1個だけなので、
おそらく10mAもあれば十分なはずです。あまり凝った回路でなくてもなんとかなるはずです。
 ということで、まず昇圧型のDCDCの回路を調べてみると、原理的なものがいくつもヒットします。


www.vicorpower.com/products/dcdc

大体は上図のような原理図です。 SWをMOSFETに置き換えてやれば、コイルとダイオードとコンデンサ
をそれぞれ1個用意すれば昇圧DCDCができあがるはずです。

最初、この原理図をみたときにスイッチがONしたときにスイッチに大電流が流れそうな気がしましたが、
コイルのインダクタンス成分があるので大丈夫なのでしょう。 ちなみに手元の47uHのコイルを使うとして
スイッチング周波数を150kHzくらいに考えるとコイルの抵抗は約44Ω程度になるので、24Vの電源をつかっても
MOSFETに流れる電流は2A程度になるはずです。

早速実験!

早速ブレッドボードで想定通りに動くか試してみましょう。
ついでにOPアンプ用の電源も生成しておきます。
それには24Vの3端子レギュレータをつかって、5VのツエナーとLEDで約5+2.2V=7.2Vの下駄をはかせています。
これでレギュレータの出力は31.2V程度になるはずです。
負荷には10kΩの抵抗をいれました。約3mA流れることになります。

この状態で1次側の電圧が35V以上になってくれれば成功です。


昇圧DCDCコンバータと、あわせてOPアンプ用の電源を追加しています。あ、回路図のツエナーの向きが反対だ。


ブレッドボードで早速テストです。

PICには、昔によくつかったPIC16F88がまだ部品箱に何個かあったので、これを使用です。
内部発振は8MHzなので少し遅いですが、これで十分でしょう。ちなみに最近よくつかう同じサイズのPICは
PIC16F1827です。こちらは内部のPLLで4倍速になるので最大32MHzで動作します。こちらをつかいだすと
PIC16F88は全然つかわなくなってしまって、もう部品箱の肥やしです。 


部品箱の在庫整理もかねて、古いPICを使います。


パルス周波数はとりあえず

パルスの周波数はとりあえず100kHzを目標とします。そしてMOSFETのONのDUTYは約10%になるように
プログラムを作成です。 プログラムといっても、ひたすらI/OをON/OFFするだけのルーチンを並べるだけの
簡単なものです。


プログラムです。 とても簡単です。


パルスの実績として周波数102kHzで、パルス幅は約11%です。

を!いい感じです。

さて、おもむろに24Vの電源を加えて、昇圧DCDC部の電圧を観測です。
オシロでみて見ると約40Vくらいの出力になっているようです。
いい感じですね。ちゃんと昇圧回路として動いているようです。

最初のテストでDCDC出力は40Vになっていました。

ちなみに出力のリップルは結構あります。1.5V程度のパルスがでていますが、
これは仕方ないでしょう。

出力はあまり綺麗ではないですね。

最終電圧出力も31.17Vなので計算(31.2V)通りです。


出力電圧もOKです。

たまたま?
現時点ではパルス幅は11%にしていますが、DCDC出力電圧が40Vとすこし高い気がしたので
DUTYを半分に減らしてみましたが、電圧が30V以下に落ちてしまってダメでした。
たまたま11%という値で良かったようです。
ただ、実際のOPアンプを実装してみて1次側の電圧が小さくなるようだったら、もうすこしパルス幅
を大きくする必要がでてくるでしょう。

全体の回路図を書いてみましょう

さて、DCDC回路の確認ができたので、まずは全体の回路を書いてみましょう。OPアンプの電源をよりクリーンにするために、追加でLCフィルターを入れました。


全体の回路図です。



新春初半田! 2023.1.1

さあ、新春初半田です。 もう、お神酒も大量に入っているので手元がおぼつかいないし、
目の焦点も合わないです(笑。 こうなったら心眼で勝負です!

まずは回路図にしたがって組み立てました。
小さい基板でも余裕で大丈夫かと思いましたが、それぞれの部品のサイズが大きいので
結構窮屈になってしまいました。

まずは小さい基板で作成です。もう、頭フラフラ〜。

いい感じです

周辺の部品を取り付けて、まずは動作確認です。
電圧調整用のボリュームを最大にしたら、出力電圧も24Vがキープできました。
なかなかいい感じです。

最大出力電圧も元電源と同じ24Vが確保できました。

今度は電子負荷装置を繋いで、すこし酷使してやりましょう!
で、すこし多目の電流を流してみましたが、24Vからすこし下がって程度でした。
この低下はMOSFETでの損失もあるかもしれませんが、おそらく元電源の電圧抵抗もあるでしょう。
それと、配線での電圧降下もあるでしょう。
でも、この程度の低下なら問題なしです。


電子負荷装置を接続です。


出力電流4.9Aでは出力電圧が23.76Vになりましたが、予想通りの値です。
MOSFETでの電圧降下より元電源の電圧低下が支配的でしょう。

代替できるかな?

電圧制御のMOSFETには2SK1380という、パッケージの大きなものをつかいましたが、
同じ程度の容量のものでTO-220サイズの小さいものがあるので、jこれが使えるか試してみました。

K100E08です。100Vで80Aまで流せる低ON抵抗のMOSFETです。秋月で140円です。

さっそく、入れ替えて動かしてみました。
結果としては、問題なく動くのですがパッケージの温度上昇が大きいです。というのもTO-220サイズなので
放熱板に熱を逃がす前に、自身のパッケージの温度が上がってしまいますが、2SK1380の大きなものに比べて
かなり温度上昇の程度が大きいです。 触ると熱く感じます。 この程度の熱は問題ないとは思いますが、精神安定上はちょっとよくありません。

やはり、電圧制御用で熱損失の大きいMOSFETは大き目のサイズのものを使いましょう。


2SK1380の代わりにK1000E08に変更してみました。小さいためかパッケージの発熱が大きいです。
ちょっと精神衛生上よくないようです。


ということで、このK100E08は出力のON/OFFのスイッチにつかうことにしました。
実はうっかりしていいましたが、10Aクラスのトグルスイッチは手元になったのですが、
かなり大きなものであったのと、動作に力が必要なので、出力のON/OFFには使いにくいです。
そこで、小さいトグルスイッチで電源出力がON/OFFできるように低On抵抗のMOSFETをスイッチ
代わりにつかうことにしたというところです。

単なるスイッチとしてつかいますので、ほとんど発熱しませんから放熱板もありません。
ON抵抗が数mΩですから、8A流れても発熱量は0.4W程度です。

K100E08は出力のOn/OFFスイッチとしてつかうことにしました。
発熱は小さいはずなので、放熱板はとりつけません。


最終回路

最終的な回路は下図のようになりました。出力にスイッチ用のMOSFETがとりついています。
出力切りのときにはMOSFETが確実にOFFになるように750kΩの抵抗でゲートをGNDに落としています。

最終の回路図です。

回路図も決まったところで、同じ回路でもう1枚作成です。
スイッチング電源を2個つかうので、それぞれの制御回路として必要です。


同じ回路で2個作成です。

ここからが山場!

さて、制御基板も出来たところで、全体をケースに組み込んできます。
でも、ここからが山場です。

なんせ、ケースがありません!

手元にある材料とつかってケース作りから行います。
さてさて、冬休み中に出来上がるかな?

あ、このケースに日和ってみようか・・・・でも、 2023.1.1.2

押し入れの中にタカチ電機のYM-250がみつかりました。これ、ちょうどいい感じの大きさです。
スイッチング電源と制御基板をいれてちょうど収まりそうです。
ただ放熱板が入りませんので、外付けになりそうです。でも、そうなるとファンが取り付けられないな〜。
発熱が大きい使い方はしないつもりですが、それでも100Wくらいは消費する可能があるので、
気付いたときにチンチンに熱くなっているのも怖いな〜。

一瞬、このケースに日和ってしまおうかとおもいましたが、やはりファンが取り付けられるように
したいものです。

ということで、このケースはお預けです。


タカチ電機のYM-250が見つかりました。サイズ的には良さそうです。


必要な基板類は過不足なく収まりそうです。でも、放熱板は入らないなあ〜。


放熱板は外付けにできそうですが、ファンが取り付けられないとちょっと心配です。
とりあえず、このケースは一旦お預けかな〜。


新春初加工! 

やっぱり、ここは当初考えていたように、必要なケースを作っていきましょう。
手元にあるアルミ板とLアングルを加工してケースをつくっていきましょう。
新春初工作です。

アルミ板の切断はCNCを使います。簡単に切ろうとしたらジグソーですが、端面が汚くなるので
ここはCNCを使用です。 Lアングルについては端面が見えるわけではないので、ジグソーで切断です。


アルミ板の切断にはCNCをつかいました。


こんな感じでやっつけ仕事のケースです。側面が開いているのは放熱のためです(言い訳・・・。


剛性を上げるために、片側には中央付近にステーを設けています。

部品配置を確認

ケースができたので、部品配置を確認です。

部品配置を確認です。


次は、必要なスイッチや端子などの穴を加工して行きましょう。
これについてはCNCで行うので、まずはCAD図面を作成です。

明日にでも、行いましょう。

CAD図面作成 2023.1.3

さっそく部品配置を考えてCAD図面を作成していきましょう.ポイントはエンドミルの通過する位置を設定するのですが、
エンドミルの直径を考えながら図面を書くところです. エンドミルの直径を間違えようものなら、全然使い物にならない
加工物になってしまいます.


CADをつかって取り付け部品の穴を作図です。エンドミルの直径(2mm)を頭に入れて、実際のエンドミルの通過位置を描いていきます。


CAD図面ができあがれば、あとは切削するだけです。切削はエンドミルの動きを眺めながら、異音がしだしたら切削油の供給です。


パネルの穴加工が終わったら、部品を取り付けてです。段々と出来上がりに近づくのでテンションも上がっていきます。



あとはケース内の穴加工です。さらに放熱板の取り付け穴の加工も進めます。

あとは組み立てるだけ!

加工が終われば後は組み立てて配線するだけです.ここからは結構スピードアップです.


加工が終わったら配線です。 今回の電源は独立した2回路になりますので、まずは1回路分を配線です。



続いて、2回路目を配線です。

大体イメージ通りかな

内部の配線が終わたら、あとはフロントパネルの文字入れです.自家用なので文字入れがばなくても
機能はわかりますが、年も年なので文字入れをしておかないと何を作ったか忘れてしまいます(笑.
といっても文字入れはテプラですので簡単です.

全体の配線が終われば、テプラで文字入れをして完成です。



今回の電源装置のパネルです。独立した電源を2回路分実装しています。並列接続も可能ですし、
直列接続すれは±24V電源や、最大で48Vの電源を構築することができます。




放熱板の冷却のためのファンです。ファンの左右のアルミ板は放熱板に強制空冷の空気流を誘導するためのものです。


念のため、電子負荷を接続して各回路の動作チェックです。

冬休みの工作完成


これで、予定していた冬休みの工作は完成です..
といっても宿題ではないので学校に持っていったりはしませんが(笑.

常設かな〜

サイズ的にもいいので、並べちゃいましょう〜。


BEFORE


AFTER いい感じに収まりました。

(おしまい)