ちょっとTea Time!? 24Vスイッチング電源を評価してみよう。 2021.4.14

電子ボリュームROHMのDACなどが実装をほぼ終えているので、動作確認にはいれるのですが
#毎度のことながら、電源を投入するのがちょっと怖いです。 ということで、すこし現実逃避です(笑

24V電源は好都合

24Vの電圧というのはモータや電磁リレー、近接スイッチなどのセンサ類の電源として工業分野で非常に多く使われています。
そのため、24Vのスイッチング電源というのは世の中に数えきれないほどでています。

またこの24Vという値はパワーアンプを作る上でもとても都合の良い値です。
というのも、
 24Vも有れば実用上のパワーは十二分
  電圧ロスが7Vあるとても、17Vあれば8Ω負荷で18W、4Ω負荷で36Wもの出力がだせます。
  数値的には小さく見えますが、通常使用している出力なんて1W程度です。

 小信号用トランジスタが使える
  パワーアンプ回路では正負電源が多いですが、24Vの2倍は48Vです。この値であれば、
  多くの小信号用トランジスタの耐圧を満たします。小電流のところは汎用の2SC1815/A1015が使えると便利です。

 電解コンデンサも耐圧が低くて済みます
  24Vなので25V耐圧でもいけるでしょう。まあ、余裕をみて35Vを使うと、耐圧の68%になりますがらちょうどいい感じです。
  電解コンデンサは耐圧の85%でつかうのがいいと、どこかで読んだ気がします。

 安価購入できる
 24Vの電源が多数市販されているということで、型古になったものや、商社の在庫放出品・倒産品の類のものも
比較的多く出回る様で、格安で入手することができます。たとえば共立電子で120Wの医療機器仕様のものが2200円
で販売されていました。これの定価はしりませんが、monotaroでは同じものが15,000円ほどしていました。
 また、AMAZONを覗いてみると某国製の100Wのものが1000円前後で買えるようです。試しに2個買っているので、
届いたら評価予定です。

心配なのは性能
 安価なのは助かりますが、性能があってこその話です。重要な性能はいくつかありますがスイッチング電源をオーディオで使うとしたら
ノイズがどのくらいあるかが最も気になるファクターです。それも、実際に負荷をかけた状態での値が欲しいところです。

負荷をどうやってかける?
 電源に負荷をかけるのはセメント抵抗などをつなぐのが簡単ですが、最大で100Wや120Wの負荷をかけようとすると、
 何個も抵抗を接続しなければなりません。ホーロー抵抗などがあればいいですが、結構値段するのと負荷電流にあわせて
 何個も買うのは勿体ないです。
  ということで、簡易ですがまずは簡単な電子負荷装置をつくってみることにしました。

電子負荷装置を作る!
 回路は簡単です。下図の様に1個のOPアンプと1個のMOSFETで構成します。定電流の負荷装置になります。
 
電子負荷装置の回路図です。

電流を検出するシャント抵抗(R2)には0.1Ω5Wのものを使いました。なお、実測は0.0962Ωでした。
0.1Ωの抵抗に最大5Aの電流を流しても、電力は2.5Wなので定格内です。

使用したMOSFETはIRFP140で、よくパワーアンプに使っているものです。
これはID=22A(100℃)、PD=180Wなので5A24Vで120Wの負荷をつなぐのには余裕があります。PD=180Wで
120Wをかけるのは、若干心配がありますが長時間つかうわけではないので大丈夫でしょう。

あと、D1は0.6Vの基準電源代わりです。電源電圧で多少値が変わりますが、どうせ電流値は実測するので変動があっても大丈夫です。

作ってみよう!
 上記の回路程度なら、風呂上りにビールを呑みながらでも組めます(笑。

 
 放熱板はCPU用のヒートシンクにつかっていたものです。ラグ板(懐かしい!)と
 MOSFETをとりつけるために、φ2.5mmの穴をあけてM3のタップをたてておきます。


こんな感じで完成です。ヒートシンクの冷却用にファンも配線をしておきます。



以前はこんな感じで電子回路を組んでいましたよね。ICは使わなかったけど・・・・


動作確認・・・あれ?

まずは電子負荷装置ができあがったので、動作の確認です。回路動作用の12V電源をつないで、負荷には120W24Vの
スイッチング電源を接続します。

電源スイッチを入れて、徐々に負荷電流をあげていきます。シャント抵抗の両端の電圧をボリュームを上げながら観測です。

1A・・・・2A・・・・・3A・・・・・4A・・・・・0A ?あれ?

4Aを超えたところで、いきなり電流が0になってしまいました。えええ?電源壊れてしまったの? ちょっと焦りがでてきます。
120Wの電源なので5Aまで出るはずなのにな〜。一旦電源を入れなおして再トライですが、今度は一向に電流が流れる気配がありません。
最悪の事象は電源の破損ですが、電源単体で動作させたら24Vの出力はありますし、セメント抵抗で1A程度の負荷をかけても問題ありません。

電子負荷装置がどうやら壊れてしまったようです。

原因を探るとMOSFETが壊れたようで、ゲート・ソース間の抵抗が0Ωになっています。通常なら絶縁状態になっているはずです。

なぜ壊れた?
流した電流も4A程度だし、電力消費も100W程度です。定格内ですが、なぜ壊れたのだろう?
考えられる原因は、放熱がうまくできていなくて熱破壊したことくらいです。でも、ちゃんとMOSFETはネジで締め込んだのだけどな〜。
ひょっとして、もっと容量に余裕のある素子を使わないといけないのかな〜??

秘蔵品登場!

IRFP140は持っているMOSFETでも容量の大きいものだけど、もっとでかいものということで勿体ないのですが、秘蔵(?)の
2SK1380に変更してみることにしました。これはID=60Aと大きく、PDも200Wあります。これなら大丈夫でしょう。


これを使ってみましょう。ID=60A、PD=200Wです。

しかし、交換するのはいいのだけどまだIRFP140が壊れた原因がよくわからないな・・・・。
まあ、とりあえずは交換です。IRFP140の足を切って外して、2SK1380に交換です。
で、ネジを緩めてIRFP140を外したら簡単に取れて、絶縁シートがポロリと落ちました。
絶縁シートでMOSFETと放熱板が密着しているならび取るのに力が必要になってきますが、簡単に取れてしまいました。
ひょっとして、この絶縁シートが問題だったのかもしれません。劣化しているのかな?

絶縁シートはMOSFETに密着していませんでした。
これが原因だったのかな?

ということで、2SK1380を取り付けるときは絶縁シートを挟まず、グリスを塗って直接ネジ止めすることにしました。

原因が分かりました!

交換したMOSFETのネジを締め込んで、さて半田付けをしようとしたら、なぜかMOSFETがぐらつきます
あ、そうか!!!! どうやらタップを切った深さが短かかったのか、ネジが長かったために、ネジは締まったけど
MOSFET自体を締結するには至らなかったようです。それで、絶縁シートが簡単に取れてしまったんだ!!!

MOSFETが壊れた原因は、ヒートシンクへの取り付け不良による熱破壊でした。

そりゃ、放熱板なしでMOSFET単体に100W近くも消費させたら、あっという間に昇天するわな〜。

原因が分かったので、ネジをすこし短いものに変更して締め込みました。今度は、ちゃんとMOSFETの締結を確認しました。
塗りこんだグリスもはみ出してきていますので、大丈夫でしょう。
おそらくIRFP140でもきちんと放熱板に締結しておけば、問題なかったことでしょうね。

とりあえず一つ勉強になりました。ああ〜IRFP140さん、ごめんなさい。


2SK1380に変更です。今度はネジでの締め付けも確認です。

さて、MOSFETの交換も済んだので再度動作確認です。今度は5A120Wの負荷をかけても大丈夫なようです。
さて、これで負荷装置の準備はできました!

スイッチング電源を評価してみましょう!
とりあえず、某国製の超安価な電源が到着したら、手持ちのものと比較評価してみましょう。
予定では週末までに届く・・・はず?

おもったより早く到着です。 2021.4.15

一応AMAZONの到着予定が4/16までとなっていましたが、あまり信じていませんでしたが予定通り到着です.

いつものプチプチにくるまれて配送されました.


とりえず箱に入っているので安心です.


比較評価してみましょう!

今回比較したのは2種類です.1つはイータ電機製でKMS120(120W)と、もう一つが今回購入したメーカ不明のXK-2412(100W)のものです.
主要な諸元を下表に示します.
 一番大きくことなるのは回路の複雑さ、すなわち部品点数の違いです.とくにインダクタ―の数は7対2と全然違います.トランスの数も2対1です.
もちろんKMS120の方が多いです.

型番 KMS120-24 XK-2412-24
メーカ イータ電機 不明
定格出力 120W 100W
出力電圧、電流 24V5A(ファンレス)
24V8.5A(ピーク10秒)、強制空冷、
24V4A

ピーク時で6Aと思われる。
サイズ 35.3H×76.2W×127D 10.65x5.7cm
価格 11,800円
(メーカカタログ)
購入価格 2200円 1160円
部品面
半田面
(反転させています)

まずは出力電圧比較

KMS120は出力電圧の調整用のVRあり、すでに調整の上固定されています.出力は24.0Vです.
対してXK-2412は調整箇所はなく、素子の精度だけなので24.5Vとやや高いです.まあ、気にしない範囲ではあります.

電流に対する電圧の比較については、ほぼ定格の電流内では大きな変化はなさそうです.
XK-2412は4A負荷で約0.15V降圧していますが、問題となる値ではないでしょう.
なお、両社ともピーク電流の負荷では試していません.壊れるのが怖いので.......


 負荷電流と出力電圧の関係です.どちらもいい感じです.テスターで測定しています.

つぎは負荷時の出力電圧を観察してみましょう.

1)KMS120の場合

 測定はスイッチング波形が見えるように横軸を5us/divにした場合と、商用周波数の飛び込みを観測するために2ms/divで測定です.
スイッチング周波数はどうやら65kHz程度のようです.スイッチング電源ですから、スイッチング時に細いひげがでますが、これはうまく観測
できませんでした.しかし、65kHz毎に発生する細かいひげは可聴域の外です.それよりは、商用周波数の飛び込みというか、漏れです.
これは、もろ可聴域(120Hz)です.
 結果としては120Hzの変動幅が定格一杯でも約20mVpp程度に納まっています.. 

KMS120-24
負荷電流 出力電圧波形(横軸は5us/div) 出力電圧波形(横軸は2ms/div)
無負荷

縦軸:20mV/div
1A
縦軸:20mV/div

縦軸:20mV/div
120Hzでの変動幅は約10mVpp程度でしょうか?.
2A
縦軸:20mV/div

縦軸:20mV/div
3A
縦軸:20mV/div

縦軸:20mV/div
120Hzでの変動幅が約20mVpp程度ありそうです.
4A
縦軸:50mV/div

縦軸:50mV/div
120Hzでの変動幅が約20mVpp程度ありそうです
5A
縦軸:50mV/div

縦軸:50mV/div
120Hzでの変動幅が約20mVpp程度ありそうです

2)XK-2412-24の場合

 こちらは横軸2ms/divのみの測定として、商用周波数の漏れのみを観測です.結果としては、4Aの定格一杯だと120Hzでの
変動幅が500mVpp発生しています.さらに、定格を超えると急激に増大するようです.3Aでは100mVpp、2Aで40mVpp程度発生しています.
KMS120に比べて大幅に大きいです. このあたりに性能の差がありますね.

XK-2412-24
負荷電流 出力電圧波形(横軸は2ms/div)
無負荷時
縦軸:20mV/div
1A
縦軸:20mV/div

120Hzでの変動幅が約40mVpp程度ありそうです
2A
縦軸:20mV/div

120Hzでの変動幅が約40mVpp程度ありそうです
3A
縦軸:50mV/div

120Hzでの変動幅が約100mVpp程度ありそうです
4A
縦軸:100mV/div

120Hzでの変動幅が約500mVpp程度ありそうです
4.3A
縦軸:200mV/div

120Hzでの変動幅が約900mVpp程度ありそうです

結果
 商用周波数の漏れ状況をみると、どちらの電源も定格一杯で動かした場合にはKMS120が20mVppに対して、XK-2412が約500mVppと
大きな違いがありました.しかし、1A程度の負荷であれば、それぞれ約10mVppと約40mVppなので、差は大きいですが絶対値としては
それほど大きくないような気もします..
 どちらにしても、スイッチング電源としてはKMS120の方が良い結果となりました.

 まあ、負荷がどうあれアナログアンプに組み込めば、NFB(負帰還)で完全に吸収されてしまうので、これらの差があってもどうなることでしょう?.
実際に聴いたときにどの程度が分かる(聞き分けられる)かですね. 残念ながら私の耳では判別できそうにありませんが.


ノイズは減るかな? 2021.4.17

XK-2412にすこしの改造でノイズが減るならみっけもんです。
気になるノイズは商用周波数の倍周波数での電圧変動と、スイッチングに伴う高周波変動です。


減らしたいノイズは電圧変動と高周波変動です。

1)高周波変動は減るかな?

 まずは簡単に出力にLCフィルターを追加してみました。結果は心持ちよくなった程度でしょうか。
この程度のLCの値だと効果は薄いようです。

出力はそのまま
(負荷3A)
出力にLCフィルタ追加
(負荷3A)

L=10uH
C=330uF

心持ちよくなったとうな気がします。


2)電圧変動は減るか試算

電圧変動はAC100Vを整流したときのリップルに起因するはずなので、
平滑コンデンサの容量を増やせば減るはずです。ただ、耐圧の高い電解コンデンサなどは持っていないので、
まずはSPICE上で試算です。効果がありそうなら、コンデンサを買って試してみましょう。

 負荷は模擬的に24V×3A÷0.8(効率)=90Wがかかるように負荷抵抗を設定です。

結果としては、コンデンサを200uF程度追加すれば電圧変動は60%低減、すなわち半減以下になりそうです。
ここまで減れば、オシロで見ても違いがわかるでしょう。

ちなみに、200uFの追加にかかるコストは秋月の100uF/200Vコンデンサ(70円)を2個なので140円です。
これくらいなら、まあ許せる範囲でしょう。

オリジナルの回路

整流用の電解コンデンサは
82uFです。
オリジナルの回路に
100uFのコンデンサを
追加した場合。



リップルは30%は減りそうです。
オリジナルの回路に
200uFのコンデンサを
追加した場合。

リップルは60%は減りそうです。

安い! 2021.4.19

AMAZONで高耐圧の電解コンデンサがないか探していたら、いいものが見つかりました。
最初みつけたときは「1個440円だからそんなもんかな〜」という感じでしたが、商品説明に4個の値段だったので
1個あたり110円です。これは安いです。おもわず購入してしまいました。
 ちなみに、購入後に値段が上がっていました。ひょっとして購入者が増えると値段が上がる仕組みになっているのかな?

購入時は4個で440円でした。送料無料で翌日到着です。

とりつけは置き換えがむりなので、基板の裏面に増設という形でとりつけます。

増設は基板の裏側におこないます。

結果はいいですね〜

・想定される効果は電圧変動1/5以下
 SPICEの結果では、電圧変動は1/5以下に押さえられそうです。

・ラッシュカレントも許容範囲内
 大容量のコンデンサは効果があるのは分かっていますが、あまり容量が大きいと電源投入時のラッシュカレントでダイオードが
 損傷する可能性があります。SPICEの結果では20Aまで増えることが分かりました(コンデンサのESRを10mΩとした場合)。
 SW電源のブリッジをみるとKBP307とあり、平均3A、パルス80Aとあったので、大丈夫そうです。

・実測の結果はバッチリ!
 負荷3Aかけたときの出力の電圧変動はほとんどわからなくなりました。
 あとは、出力にLCフィルターをつければ、かなり上質な電源になりそうです。

コンデンサ容量 82uF (オリジナル) コンデンサ容量 82uF+680uF
整流後電圧
(負荷3A)




整流後のリップルが1/5程度に低減しています。
ダイオード電流
(負荷3A)





ピーク電流は20Aと大きくなっていますが、
ダイオードの許容値以下です。
出力電圧波形
(負荷3A、実測)




出力電圧変動もほとんどわからなくなりました。


隠れた懸念は

 中華SW電源の保護回路はフューズになっています。アンペアまではわかりません(読めない)が、コンデンサを増強することで
電源投入時に切れてしまわないか心配です。まあ、実際に切れたらすこし容量の大きなものに交換しましょう。


(こんどこそおしまい)


(おしまい)