ちょっとTea Time!? コンデンサの瞬発力を調べてみよう! 2021.3.25
コンデンサにチャージを貯めてから、端子をショートさせるとパチと火花が飛び散ります。
コンデンサが電源につかうような大容量のコンデンサだったら、それこ「バチ」といって、盛大な火花が発生します。
このときにどのくらいの電流が流れているのだろう?というよりかは、コンデンサが急な電流供給を要求されたら、
どのくらいの電流を流すことができるのだろう?
オーディオに使うなら、急な大信号にもスピーカに十分な電流が供給できるのかが気になります。
ここで重要になるのはESR値(等価直列抵抗)で、大容量の電解コンデンサの場合は120HzでのESR値が
カタログに載っている場合があります。なぜ120Hzかといえば、商用電源の平滑コンデンサとして想定しているからですね。
で、最近デジットの閉店セールで買ったコンデンサについては、メーカのカタログをみてもESR値が記載されていません。
ということで、どのくらの値になるか調べてみました。実のところ、容量の計測では問題無かったのですが、他の特性が
経年劣化してないかな〜という心配があったからです。
とりあえず簡単に測定!
測定方法としては多少の誤差が発生するのは目をつむって、できるだけ簡単におこないます。
手順は
@コンデンサに下図の放電回路を接続する(MOSFETはOFF状態)
Aコンデンサの端子に実験用電源(10V)からのクリップを付けて、電荷をチャージする。
B電荷チャージが終わったら、 実験用電源をクリップを外して、つぎにMOSFETのゲートを咥える(MOSFETをONさせる)
C下図のR2(0.1Ω、セメント抵抗)の両端の電圧をオシロのシングルトリガーモードで観測する
となります。
コンデンサの放電回路です。MOSFETをスイッチにします。
ここで使うMOSFETは電流が100A以上流せて、できるだけON抵抗の低いものが必要です。
手元には秋月のお正月福袋を買ったときに大量に入っていたIRFW540Aがあったので、それを使うことにしました。
ただ、IRFW540Aは
ID = 28A
Ron = 58mΩ(最大値)
なので、すこしスペック不足です。そこで、この素子を並列にして使うことにします。
数がたくさんあるので10個ほど並列にすることにしました。これで、最大電流280AでRon=5.8mΩ
になるかな〜っと.
まあ単純に良くなるわけはないですが1個よりかはよくなるでしょう。
ということで、できるだけ配線抵抗が小さくなるようにφ1.2mmの銅線をつかって並列接続します。
スイッチにつかうMOSFETはIRFW540Aを10個並列にしてつかいます。
10個まとめて万力で挟んで半田付けです。
φ1.2mmの銅線をつかって並列結合です。
測定してみましょう!
コンデンサとセメント抵抗を取り付けて実験の開始です。
実験用電源は10Vにセットしてコンデンサにチャージをおこないます。
1秒もかからずチャージは完了です。
そしてコンデンサに繋いでいるクリップ(+側)を外して、それをMOSFETのゲートに接続です。
どうしても、クリップを繋ぎかえるのに時間がかかるので、コンデンサの電圧が多少低下してしまいますが、
そんなことは無視です。
MOSFETのゲートをクリップで繋ぐときに、チャタリングがでるとうまく測定できないので、
一気に挟みこむようにします。
実験の様子です。
測定結果
測定結果は下図のようになりました。
測定のコンデンサは2種類試してみましたが、ESR値には大きな差はなかったです。
コンデンサの種類 | 4700uF/35V | 4700uF/63V |
外観 | ||
放電時の電流 R2(0.1Ω) の両端電圧 |
200us/div,2V/div ピーク電圧は約7.2Vでピーク電流は約72Aと想定 |
200us/div,2V/div ピーク電圧は約7.4Vでピーク電流は約74Aと想定 |
計算したESR | 約33mΩ | 約29mΩ |
測定課題は色々
今回の結果でおよそ30mΩという値が得られましたが、実際のところ15mΩ程度を想定していたので、ちょと大き目の値でした。
もうすこし丁寧に測定することを考えて、誤差要因を整理です。
@コンデンサのチャージ抜け
10Vまでチャージしても、放電開始時までに電圧が下がっていると大きな誤差になります。たとえば10Vでチャージしても
測定時が9Vになっていると、29mΩ(10V計算)の結果は21mΩ(9V計算)になってしまいます。
対策としては、チャージを放電を瞬時に切り替える必要があります。
Aセメント抵抗の誤差とインダクタンス
セメント抵抗はそもそも10%程度の誤差があります。それと、巻き線になっているのでインダクタンスがあります。
とくに抵抗値の誤差は直接、測定結果に加わってしまいます(セメント抵抗の値が10mΩ違えば、測定結果も10mΩことなります).
抵抗値やインダクタンスは事前に評価しておく必要がありますが、精度がよくインダクタンス成分が無視できる
電流計測用のチャント抵抗に変更したほうがいいでしょう。
BMOSFETのON抵抗誤差
これもなんらかの方法で実測しておく必要があります。
C配線抵抗
φ1.2mmの銅線をつかっているとはいえ、多少の抵抗はあるのでこれも考慮が必要かもしれません。
まあ、また休日に時間があれば遊んでみましょう。
(今日はこれでお開き)。
ついでに他のコンデンサも調べてみよう。 2021.3.27
よくつかうコンデンサを調べてみました。1000uF/50Vは4700uFのコンデンサと比較できるように5個並列です。
結果としては、コンデンサを並列化したものがESRが低い結果になりました。
秋月で買った(?)3300uF/50VはすこしESRは高目でした。
コンデンサの種類 | 1000uF/50V(LXZ)のコンデンサを5個並列接続 | 3300uF/50V(KMG) |
外観 | 以前にデジットで1個20円で買ったもの。 |
秋月で4個100円で売ってたやつかな? |
放電時の電流 R2(0.1Ω) の両端電圧 |
200us/div,2V/div ピーク電圧は約8.4Vでピーク電流は約84Aと想定 |
200us/div,2V/div ピーク電圧は約6.6Vでピーク電流は約66Aと想定 |
計算したESR | 19mΩ | 51mΩ |
ちなみに
こんなコンデンサでも試してみました。SPのネットワークにつかっていたもので33uF/50Vのものです。
これでも測定してみましょう!
いままでと同じ条件で測定したら、現象が急峻過ぎてよくわからないです。
横軸:200us/div,縦軸2V/divではよく分からないです。
ということで、時間軸を短くして再測定です。
あれ、最初は増加する傾向になっていますね。
横軸:1us/div,縦軸2V/divで再測定です。最初はピークが立たずに、だんだん電流が増加して行きます。
どうやらMOSFETのゲート電圧の立ち上がりが遅いためでしょう。MOSFETはゲート容量が結構ありますし、
さらにそれを10個パラにしていますからね。念のために、ゲート電圧の波形を観測しておきまししょう。
オシロのGNDポジションが異なるので、同一画面では測定できませんがまあいいでしょう。
横軸:1us/div,縦軸5V/divでMOSFETのゲート電圧を測定です。
なるほど。最初の電流値の立ち上がりの部分はMOSFETのゲート電圧の立ち上がりに依存している部分のようです。
白枠の部分はMOSFETのゲート電圧の立ち上がりが遅いために、
電流値が徐々に増えているのでしょう。
そして、その後の部分はセメント抵抗などの放電回路のインダクタンスによる部分でしょう。
この部分の遅れは、放電回路のインダクタンス成分によるものでしょう。
そのように考えると、このコンデンサでも短絡時には70A程度の電流を流せるのでしょう。
ここから想定されるESRは約42mΩになります。
最大放電電流を外挿すると70Aくらいでしょうか。
この42mΩという値はどこまであっているかはよくわからないですね。
なかなか、過渡応答からESRを求めるのは難しいのかもしれません。
まあ、電解コンデンサの瞬発力の比較には使えそうです。
(おしまい)