PSRRを調べてみる! 2020.7.27

ネットをみていたら、こんな素子に目がとまりました。旭化成のAK1110という電圧レギュレータです。

これに目がとまりました。

特徴としては出力が5Vに固定されています。おそらく旭化成のDACのアナログ部分の電圧が5Vなので、それを目的にしてリリースされているのではと思います。
アプリケーションにも高精度DAC、RF,PLLとあるので間違いないところでしょう。

でも、その性能がすばらしいです。
まず、低ノイズで2つある5V出力のうち、LDO2は1uVrmsです。これは、いままでつかった超低ノイズといわれるものよりも半分以下です。
また、目を引いたのがPSRR(電源電圧のリップル除去率)です。1MHzの領域で70dBとあります。

ラズパイのIOボードをつくるときに、レギュレータに7805を使いましたがDCDCコンバータからの高周波数ノイズが素通しなので困りましたが、
これをつかえばもっとノイズが落とせた気がします。

AK1110は5Vの出力が2つあります。どちらも低ノイズです。とくにLDO2は1uVrmsと超低ノイズ!



さらにPSRRも優れた値です。1MHzで70dBもあります。


他のレギュレータのPSRRを調べてみよう!

1)7805
 まいどおなじみの7805です。7805ではSVRという書き方になっています。値は68dBとそこそこなのですが、周波数は120Hzの値です。
残念ながら高周波数でのPSRR値はカタログではわかりません。


7805のカタログスペックです。

2)TPS7A47
TPS7A47は超低ノイズLDOの1つですが、1kHzで78dBです。AK1110に比べると5dBほど低い(悪い)値ですが、これについては流す電流も全然違うのと
5dB程度の差なので、ほとんど同じと思ってもいいかもしれません。


TPS7A47のカタログスペックです。

3)LT3042

LT3042も超低ノイズLDOの1つです。1MHzでみると79dBとあります。AK1110に比べると9dBほど良い値ですね。


LT3042のカタログスペックです。

LT3042のスペックをみて120Hzだと117dBと驚異的な値です。7805が68dBなのに対して50dBほど高いです(1/300以下)。

レギュレータというものは周波数が高くなるほとPSRRの値が悪くなります。LT3042の場合だと120Hzで117dBが1MHzだと79dBと40dB悪化します。
この関係に類似性があるとすれば、7805での1MHzでのPSRRは約28dBになってしまいます。下手をすると素通しかもしれません。

なんといっても!
AK1110のいいところは性能の良さにもありますが、なんといっても値段に魅力があります。DIGIKEYで1個160円ほどです。
このくらいなら、手ごろにつかえそうです。ちょっとパッケージが小さいですが・・・・、まあそれはなんとでもなります。
5V専用なので7805の置き換えにしかできないかもしれませんが、いいかもしれません。
旭化成DACのアナログ段の電源にしてもいいかもです。

ちょっと、買ってみましょう!


部品到着! 2020.7.30

さて、部品が到着しました。早速使ってみましょう。
サイズはLT3042と同じなので小さいです。0.5mmピッチの3mm角のICです。
できたら、メーカさんには老眼バージョンもつくってほしいものです。
DIPとはいいませんから、せめて1.27mmピッチでお願いします(笑。

部品が到着しました。あいかわらず小さい部品です。


裏面で気づいたのは、どうやら端子は金メッキのようです。
さらに中央にすこし穴があいていて、銀色のものが見えます。おそらシリコンウエハーでしょう。
ということはICのダイが見えているということかな?

裏面の様子は他のICと異なっていました。

どの基板に実装してやろうか?

LT304Xと同じパッケージなので、TYPE-OあるいはTYPE-N基板が良さそうなのです。
とくにこれらの基板は、色々な機能が試せるようにLT304Xのすべての足から配線できるようになっています。
ただ、これらの基板をつかうには1つ難点があって、ICのPIn1,2のパターンを分離するのがとても大変そうです。
ということで、残念ながらこの基板をつかうのはパスです。


TYPE-N基板を流用使用と思いましたが、Pin1,2の分離がむずかしそうなので諦めました。

V-regSをつかいましょう!

ICから直接のジャンパー線が発生してしまいますが、ここはV-RegS基板をつかうことにしました。
これだと、Pin1,2の分離ができます。それに、小さく仕上がるので7805の代替としても使えるでしょう。

実装の方法についてすこし備忘録代わりに詳しくのせておきます。

1)パターンの切断
下記の青○の中の赤線が切断箇所です。計6箇所あります。70umの銅箔ですが細いところはあまり力必要ないので、
そろりときります。さもないと、となりの線まで切ってしまいそうになります。

切断箇所です。


パターンを6箇所切断しました。ちゃんと切れているかはテスターで確認です。


2)ICの実装とチップコンデンサの実装
 IC1(AK1110)とC1、C2,C3(いづれも10uF)を実装します。このとき、ICのPin2,3,4はすべて共通接続なので半田を盛っておきます。


3)ジャンパー
ジャンパー箇所はトータルで5箇所です。チップコンデンサを搭載してからの方がやりやすいでしょう。
なお、ICのランドから直接配線するところもありますが、端ピンなので難しくありません。これが中ピンだった難易度が急にあがります。

ジャンパー箇所です。パターン上にジャンパーをつける場合は勿論レジストを剥がします。

3)追加部品の実装
LDO1.2の電圧出力のデカップリングコンデンサ(10uF)を実装しjます。チップコンデンサはいずれも2012サイズのものがいいでしょう。
なお、基板の出力(OUT)はAK1110のLDO2出力になっています。LDO1の出力をつかうときは、R2の端子がLDO2出力になっています。


最後に追加のチップコンデンサを取り付けます。

仕上がりました
 一部順番を間違えたところがありますが、こんな感じで出来上がりです。

出来上がりです(倒立状態)


出来上がりです(こちらが正立です)

評価してみましょう!
さて、さっそく手持ちのDCDCコンバータをつかって、その出力を観察してみましょう。比較したのは汎用の78N05です。
DCDCコンバータはLM2596を用いた降圧タイプのものです。入力電圧15V、出力電圧8.5Vに設定です。
なお、負荷抵抗は100Ωにしました。5V出力のときは負荷電流50mAになります。


テストの様子です。

実際測定してみて、かなりノイズの測定はむずかしいです。オシロプローブのGND線と先端を負荷抵抗の同じ位置に接続しても、ノイズが観察されてしまいます。
電磁誘導をうけるのでしょうね。ということで、オシロプローブの先端の接続を変更して、わずかな差ですが観察です。

 結果としては、DCDCの生出力は150mV程度の盛大なリップルが生じます(周波数は60kHz程度)。
それをレギュレータを通すと78N05も、AK1110も大幅に減少します。予想以上に78N05でも落ちるものです。
ただ、気のせいかもしれませんが、78N05では高周波数のパルス状のノイズが残っているようにも見えます。
やっぱりAK1110の方が優秀かな?でも、この結果だけでは、なんとも明言しにくいなあ〜。
もうちょっと、実験方法を検討したほうが良さそうです。

オシロプローブ先端を負荷抵抗のGND側に接続した場合。 オシロプローブ先端を負荷抵抗の+側に接続した場合。
DCDCコンバータの生出力

(出力電圧8.5V、負荷抵抗100Ω)

DCDCの生出力は約60kHz間隔で150mV程度のリップがあります。
78N05の場合


負荷抵抗:100Ω
78N05の入出力には0.1uFのパスコンあり。


すこし高周波パルスが残っているようです。気のせい?
AK1110の場合

負荷抵抗:100Ω

78N05で残っていた高周波波パルスは消えています。


あ、評価失敗!

考えれば、とてつもなく78N05に不利な実験でした。78N05にも発振止めに0.1uFのコンデンサをとりつけていますが、
AK1110基板には、入出力に10uFのコンデンサをとりつけています。こりゃ、コンデンサの容量を考えても、平等な比較にならないですね。
でも、どうやって比較したらいいだろう?

失敗その2)
 ファンクションジェネレータがあるので、1MHz:0.5V振幅に5Vのオフセットを乗せた信号を作成し、それをオペアンプで2倍に増幅して
ちょうど10V電源に1Vの1MHzの高周波ノイズがのっているような電源を模擬させました。それで78N05とAK1110を評価したところ、
78N05では各レギュレータ基板に乗せたコンデンサのおかげで、発振するやら、AK1110では10uFのコンデンサをドライブしきれずに
振幅が落ちてしまうなど、こちらもうまくいきませんでした。

評価そのものも難しいです。まだまだ修行が必要です。

ひょっとしてパスコンをすべて取っ払って評価したらいいかも・・・また、明日チャレンジしてみましょう。


久しぶり・・・ 2020.8.20

評価をつづけようと思っていたら、このレギュレータ基板はRasPiのIO基板に徴用されてしまいました。
maa16BitのDACとADCの性能を活かそうと思えば、やはり低ノイズのレギュレータは必要ですからね。

で、評価を再開するにあたりもう1枚のレギュレータ基板を作成です。
作成方法は記録にとどめてあったので、なにも考えずに、図の通り作成です。
なんせ、晩酌のあとで考えなら作業しても間違うだけですからね(笑。


もう1枚のレギュレータ基板を作成しました。

簡単に評価してみましょう!

簡単にノイズ成分だけの評価をしてみました。
レギュレータの出力にHPFをとりつけて、その出力を1000倍のアンプで増幅して計測します。
配線がループなどしているので、あまりうまい測定方法ではありませんが、まあそのあたりはご愛嬌です。
なお、計測にはオシロをつかわずに、最近作成したRasPiのIO基板をつかいました。
こちらのほうが、ADCに一定のフィルターも入っているので、低周波に関しての計測には適しているかもしれません。

まずはこんな感じでノイズ成分を評価してみることにしました。

AK1110 Vs 7805

まずは、AK1110での測定結果です。測定が簡易なのでレギュレータ以外のいろいろなノイズも入るので、真のレギュレータの実力
ではないと思いますが、だいたい5mVppくらいのノイズの感じでしょうか。ということは1000倍のアンプ後なので、レギュレータのノイズは
5uV程度ということになります。


AK1110の測定結果です。5mVくらいかな?実機換算だと5uVになります。

次は、7805です。こちらは60mVppkらいかな? 1/1000にすると60uVくらいになります。
まあ、この測定条件ではレギュレターにパスコンを入れていないので、あまりフェアーな比較ではありません。


7805の測定結果です。パスコンはいれていません。60mvppくらいなので60uVくらいでしょうか。

今度は、AK1110と同じだけの0.1uFのパスコンを出力に入れました。気持ち減ったような気がしますが、あまり変わらないですね。
パスコンはノイズをとるというより発振防止の役割の方が大きいのでしょう。
 この結果から、レギュレータのノイズって、内部の基準電圧元のノイズが支配的になるのかな〜という印象を持ちました。


7805の測定結果です。AK1110と同じ0.1uFのパスコンを入れました。ちょっと減ったけどあまり変わらない?

他の7805は?
 念のため、他のメーカの7805に差し替えて比べてみましたが、あまり大きな違いなさそうです。


他の7805の測定結果です。メーカはかわれど、あまり大きな差はないようです。


さて、PSRRの評価はどうやってやろうかな?


これをつかいましょう!

前回の実験では降圧型のDCDCをつかいましたが、それはしばらく実験につかっていなかったので
どっかに徴用されてしまいまいました。そこで、しばらく探してみると、ちょうど昇圧型のDCDCがありました。
これは、劣化したバッテリーのサルフェーション除去の実験につかったもので、出力側のコンデンサをわざと
外してパルスがよくでるようにしていたものです。
 今回の実験では、流石に出力にコンデンサがないのは不味かろうということで、10uF程度の小さいコンデンサを入れました。
もとともは100uF/50Vのものがついていました。


実験には昇圧型のDCDCコンバータを使いました。

DCDCの入力電圧は5Vとして、出力電圧は8Vに設定です。そして、負荷として100Ωの抵抗を接続です。
まずは、生出力を確認してみましたが、盛大にパルスがでています。降圧タイプより昇圧型のDCDCのほうが、
結構パルスは高そうです。これのほうが実験しやすいかもです。


昇圧型のDCDCの出力です。

さて、今回の測定もプローブ先端をGNDに接続した場合と、負荷(100Ω)に接続した場合の両方をとっています。
なんせ、プローブ先端をGNDに接続した状態でも信号がでてしまいます。また、プローブの当て方というかプローブの
配線の取り回しだけで、出力が結構かわるので、まあ参考程度に取り扱いましょう。

プローブ先端をGNDに接続した状態 プローブ先端を負荷側(正電圧側)に接続
7805
(比較用)


左の図とはスケールが違うことに注意。左側は50mV/divで
こちらは200mV/divです。差でみると、150mV程度の振幅の
パルスがでているように考えられるかもしれません。

AK1110

(出力は200mA側)

(比較用)

左に比べると、すこし増加していますが、この程度の差はプローブの当て方
で簡単に変わる差なので、この差がノイズかどうかはわからないです。
LT3045
(3.3V出力に設定)

(比較用)

左に比べると、すこし増加していますが、こちらもAK1110と同様に、
この程度の差はプローブの当て方で簡単に変わります。


一応、7805よりはかなりPSRRは良いように思えますが、定量的に評価できるような測定結果にはならなかったですね。
でも、LT3045と同程度の性能なら安価な分、使いやすいでしょう。電圧が5Vに限定されてしまいますが、
、いまだにアナログICについては5Vが多いですから、そこにつかうにはいいかもしれません。
まずは7805置き換え用の基板があると便利に使えるかもです。


パターンを描いてみましょう! 2020.8.25

7805との置き換えを念頭に2つのパターンを描いてみました。

@チップコンデンサをすべて部品面に配置。裏面に放熱板を取り付けられるようにしたもの。
Aチップコンデンサをすべて半田面に配置。AK1110に直接に放熱板を取り付けられるようにしたもの。


Aは、AK1110に放熱板をとりつけようとしてもチップ部品の方が背が高いので、邪魔になってしまいます。
ということで必要なチップコンデンサはすべて裏面に追いやりました。おかげで、部品面に放熱用の銅箔面を
広くとることができます。Aは面白そうですが、AK1110にどうやって放熱板をとりつけたらいいだろう?
ほとんど豆粒みたなチップなので色々と工夫が必要になりそうです。


部品面のパターンです。左側が@、右側がAです。


半田面のパターンです。左側が@、右側がAです。

サイズとしては22mm×11.4mm程度なので1枚づつ作るのは効率が悪いので、
いつものように回数券みたいに何枚かの綴りでつくりましょう。
サイズ的には8枚綴りとか10枚綴りかな?ほんとに回数券みたいです(笑。

もう1種類・・・・

7805置き換えだけじゃなくて、整流回路も含めた電源基板も面白そうです。AKシリーズのDACのアナログ段に
うってつけです。となると、サイズとしてはSTDサイズになるけれと、ちょっと大きいな〜というより部品がスパース
な配置になってしまいます。まあ、基板面積がとれればAK1110の放熱にも余裕ができるでしょう。

 整流回路直後の電圧って結構高いので、AK1110でそれだけの電力消費をさせるのは結構酷です。
一段はLM317あたりを挟んだほうがいいかもしれません。LM317で6.5Vまで落とせば、AK1110で最大電流(100mA+200mA)
を流しても、消費電力は0.45W程度に済みますから基板の銅箔面でも十分に放熱は足りるでしょう。
 ただし、そこまで流すとLM317が結構きついかも。12V入力で6.5Vまで降圧するとして電流300mAだと、
1.65Wです。16mm幅の放熱板だと熱容量は24℃/Wなので室温から40℃の上昇です。
 冬場ならまだしも、夏場はちょときついかも。クーラーをガンガンに効かせる必要がありますね。

まあ、そこまで電流をとることはないとは思いますが・・・・それにAKシリーズは意外と省電力です。

さて、明日からまた3日間、上京です。関西より涼しそうかな?


基板ができました。 2020.10.16

DAC4499の再製作とあわせて、AK1110レギュレータ基板もつくりました。
小さい基板なので、異なる2つのタイプの12枚綴りです。
机の角などにあてて、バキバキと1枚ずつに割り折ったあとは、バリをハサミで切り落とします。
ハサミの根元をつかえば、結構バリが切り取れます。さらに成形するなら、紙やすりでゴシゴシです。

こんな感じで基板ができました。


一枚ずつ割り折ったあとは、バリをハサミ等で切り落とします。

完成!

部品はAK1110が1個とチップコンデンサ5個だけなので簡単です。一番時間がかるのは、
ICの位置あわせですね。こればかりは、老眼が進んでいるのでジュエリールーペを使いながら
慎重にあわせます。最初にフラックスを塗っておくと滑り防止にもなります。
 
チップコンデンサは3216サイズ(3.2mm×1.6mm)をとりつけましたが、1608でも2021サイズでも
なんでもいいでしょう。1608か2012サイズがランドにも余裕ができるので、やりやすいかもしれません。
見た目は3216が綺麗かも。

まずは完成しました。一応シルクのあるほうなので、部品面になります。


こちらは半田面です。


高さは7800レギュレータとほぼ同じです。

動かしてみましょう!

付加電流がOUT1,OUT2とも約100mAになるように、51Ωの抵抗と接続して動作確認です。
抵抗は1/2Wの炭素皮膜ですが、100mAも流すと定格一杯の1/2Wの消費電力ですから、
抵抗はすぐにチンチンに熱くなります。
 負荷時の電圧はどちらもOUT1が5.02Vで、OUT2が5.00Vでした。
元電圧は8Vとしましたが、レギュレータ基板は暖かくなりますが放熱板まではいらないようです。


OUT1,OUT2に51Ωの負荷抵抗を接続して動作テストです。

リリースは

基板1枚だと12枚つづりになって多い気もするので、半分の6枚綴りも設けましょう。

半分だと6枚綴りです。

簡単に製作マニュアルも作りました。

(おしまい。リリース開始しました。 2020.10.16)