ちょっとTeaTime!!? 古いADCのデータシートはどこだ? 2020.9.2

部品箱を整理していたら、ものすごく古いADCがでてきました。
古いですが記憶によると12Bitのものなので、まだまだ使えそうです。
使うにはデータシートが必要なので、探してみましょう。


古いADCが見つかりました。12Bitなのでまだまだ使えるでしょう。

ADCはDATELという会社のものです。昔は、性能もよくて結構重宝していたメーカでした。
1970年に創立された老舗です。

色々と探しまわったら、HDAS-76MCのデータシートは見つかりました。変換速度は80kHzと普通です。電源に+5Vと正負15Vが必要ですが、
バイポーラ電圧が入力できるのと、INL(非直線性誤差)が最大1LSBなので性能も良好です。


HDAS-76MCのデータシートは見つかりました。

ADS-835Aのデータシートがみつからない・・・・
 ADS-835Aのデータシートは・・・見つかりません。素子自体は世の中に流通しているようなのですが、データシートがまったくヒットしません。
DATELのHPの中にも見つかりません。製造元のメーカからも見つからないって、駄目じゃん?
かれこれ探し出して1時間ほどたちますが、もう駄目っぽいです。
 

面倒だけどリーバスエンジアリング!
 ADS-835については、以前につかった基板が残っていたので、そこからピン機能を割り出していきましょう。
残っていた基板は電子ボリュームです。構成としてはADCの出力ビットでアナログスイッチを動かして、減衰率を変更します。
12Bitのうちの上位6ビットのみをつかって、前段3ビット(粗調整)、後段3ビット(微調整)の2段構成となっています。
 なぜ、この電子ボリューム基板にADS-835をつかったかといえば、このADCが電源を入れれば、あとは勝手にどんどんと
AD変換をおこなって出力を垂れ流ししてくれるタイプのものだったからです。通常のADCだと、AD変換のスタートパルス等を
入れる必要がありますが、この素子はそういった類の面倒なものが必要ありません。
 そういった使い方ができるADCは同時では珍しかったと思います。

大昔に作った、電子ボリュームです。


外付けの変換開始パルス等は不要で、勝手にAD変換をどんどんやってしまう便利な素子です。

回路を起こしてみましょう。

基板を眺めながら、どのような回路になっているかを書いてみました。
まず、確実にわかるのはアナログ入力(AIN)とディジタル出力のD6〜D11です。

あと、Pin24に5Vがつながってて、Pin12がGNDなので、対角線上に電源が配置されていることから
これがディジタル電源だと思われます。

まずは回路図を起こしてしました。

次に、つかっていないPINがかなり多いのですが、どういった機能になっているのかまずはオシロのプローブをあててみました。
 すると下図のような波形が観測できました。

PIN1・・・約28kHzのパルスがでています。これがAD変換完了か開始のパルスを示しているでしょう。
     ということで変換速度は約28kSPSというところでしょう。


PIN22・・・・約380kHzのパルスがでています。PIN1の28kHzに対して約13倍ですので、12ビットでの
     変換パルスでしょう。結構鈍った波形ですね。



PIN1の様子です。


PIN22の様子です。

その他のピンは?

Pin2〜7 : ピン(Pin8〜Pin11)の並びからみてAD変換出力と考えていいでしょう。
            オシロの出力もVRを回せばH/Lで変化します。

PIN17 : VCCからダブルのダイオードクランプでつながっています。VCCとの電位差があってはならないということで
    つけていると思われます。ということで、おそらくはアナログのVCCでしょう。

PIN:19 :  アナログVCCからR1とR2で分圧されてつながっているのでVREFでしょう。AVCCからわずか0.1V程度ですが
   低い電圧を供給しているのは、変換値が最大で確実に4095になるようにしていたと思われます。

ということで、ここまででわかったことを整理すると下図のようになります。


まずはここまでわかりました。

ここまでわかれば、なんとか使えますが、現状では残りの5つのPINがGNDに接続されています。
これが何かがわかればなおいいですね。

残りは?
 あと推測がつかないのが5本ほどあります。とりあえずGNDに接続しておけばフリーランのADCで使えますがが、
もうっちょっと調べることもできるでしょう。
 考えられる機能はいろいろあります。

 ・AGND(アナロググランド)
 ・FULL−SCALET(最大値のオフセット)
 ・OFFSET(ゼロオフセット)
 ・変換開始ENABLE
 ・ほんとうのNC
 ・ etc


一度、ブレッドボードに搭載して、GNDとは異なる電位を入れてみたときにどのように動くか調べてみましょう。


PIN23・・・・1kΩの抵抗でGNDに接続すれば0V、Vccに接続すれば5Vになるだけです。
        VRを回してもどちらでも同じように変換されます。なにも影響がありません。
        ただし、変換パルスの周波数が微妙(0.3%程度)に変化します。
        なんだろう?とりあえずGND固定としましょう。NCでもいいかもしれません。

PIN21・・・・・変換ENABLEの様子です。
        Lレベルで変換開始

        Hレベルで変換停止(値保持)
         これは変換値を読み出すときにつかうことになるでしょう。12ビットの出力を8ビットで2回に分けて読み出すときに
         途中で値fが変わると困るので、読みだし時は値保持です。
         RD端子ということかもしれません。(ACTIVE HIGH)


PIN20・・・・RESETかな?OEかな?
       Hレベルにすると出力がすべてゼロになります(LEDが非点等)。
       Lレベルでは通常動作(AD変換開始)です。
       Hレベルにすると動作電流が2.8mAから2.2mAに下がります。下がり具合も小さいのでパワーダウンとは違うようです。

        でもADCにリセットなんて必要かなあ〜?
        ひょっとしてOUTPUT ENABLE なんかがあるのかも。出力が3STATEになるかどうかは未確認。

残りは帰ってきてから再開しましょう。

話変わって・・・・
 明日(9/3)から週末にかけて、九州に出張です。
 ちょうど台風9号と10号の間隙を縫うような形のお出かけですが、交通機関に支障がなければいいですが・・・・


面倒になってきた・・・・ 2020.9.6

とりあえずいままでわかったことだけでも、使えるので下記のようにまとめることにしました。
間違っているかもしれませんが・・・・

Pin 機能 説明 Pin 機能 説明
1 CC CONVERSION CLOCK 出力
(変換周期約28KHzでパルスが出力される)
24 DVCC(5V) ディジタル電源(5V)
2 D0 ADC出力D0(LSB) 23 NC GNDへ接続
3 D1 ADC出力D1 22 CLK-OUT 内部クロック出力(13×CC)
4 D2 ADC出力D2 21 RD 読み出し入力(Hレベルで値保持) 通常はGNDで可
5 D3 ADC出力D3 20 #OE 出力イネーブル(LでACITVE、Hで3STATEになるかは未確認)
6 D4 ADC出力D4 19 VREF 基準電圧入力
7 D5 ADC出力D5 18 AIN アナログ入力
8 D6 ADC出力D6 17 AVCC アナログ電源(DVCCと同電位)
9 D7 ADC出力D7 16 GND とりあえずGNDへ(多分AGNDあたり)
10 D8 ADC出力D8 15 GND とりあえずGNDへ
11 D9 ADC出力D9 14 D11 ADC出力D11(MSB)
12 DGND ディジタルGND 13 D10 ADC出力D10


しかし、昔のADCはパラレル出力が多かったです。CPUが遅かったので、すこしでも転送速度を上げるために
パラレルにしたのでしょう。いまは、CPUIが早くなったので使用ピン数が少ないシリアル転送が主流なのかな〜とおもったりです。

Z80あたりで使うなら、パラレル転送ですね。

(おしまい。備忘録です)