冬休みの自由研究(放熱板を調べる) 2019.1.3

実験用の電源を作ろうと考えていますが、構成する要素の中で結構重要なのが放熱です。
たとえば、0~20V1A程度の電源を作ろうとした場合、ドロップ型の定電圧電源の場合、
出力段のトランジスタの消費電力は20Wにものぼることになります。
 この20Wという電力は大きくて、自然対流だけで放熱を行おうと考えると、相当に大きな放熱板が必要になります。
おそらく放熱板のお化けみたいになるでしょう。
 ということで、小さな放熱板がつかうためにもファンでの強制空冷をおこなった場合にどの程度の効果があるかを
調べてみました。実は、電源回路だけでなくアンプ回路にも応用してはどうかな〜とも考えています。
ただ、ファンの騒音があるのでかなり使用できる範囲は限定されそうですが。

部品を集める
 帰省先なのでいろいろと探して実験に使えそうなな部品を探しだしてきました。あたらに買ったのは小型のファンです。
秋月で安く売っていました。25mmの大きさなので放熱板とほぼサイズが合致します。

必要となる部品をあつめてみました。

温度計MCP9701
 温度計はMCP9701です。これは温度感度19.5mV/℃のもので3.1--5.5Vで動作しますので、PICのADに
直接接続することができます。だいぶ昔に秋月で買ったものですが、ほったらかしにしてあったので、
この機会に活用することにしました。出力感度は19.5mV/℃で、PICのADの分解能が10ビット(およそ5mV)なので
温度分解能としては0.2〜0.3℃といったところです。まあ、精度自体が4℃くらいあるので、絶対精度はあてしていませんし、
その必要もないかと思っています。必要なのは温度変化ですから。


実験に用いた温度センサです。

放熱板
 放熱板は下図のようなものです。ただ、今回つかったのはL=25mmではなくて、L=30mmのものです。
どこで買ったかあまり覚えていませんが、やはり通販で買ったとおもいます。

これもよく使う放熱板です。


熱容量としては20℃/W程度でしょう。


放熱板に組みこむ
 放熱板に負荷となる電圧レギュレータ(3.3V)とファン、ならびに温度センサをとりつけます。
簡単に結束バンドをつかってとりつけです。温度センサは平たい面にシリコングリスをあらかじめ塗りつけておきます。

放熱器に必要な部品を装着します。

熱源は
 熱源は3.3Vの電圧レギュレータです。この出力に15Ωの抵抗をとりつけて、
電圧レギュレータには15Vの電源を加えます。
どのくらいの消費電力になるかといえば、レギュレータの電圧が3.3Vで負荷抵抗が15Ωなので
流れる電流は220mAになります。
そのためレギュレータでの損失は(15-3.3)*0.22=2.57Wになります。


レギュレータに負荷抵抗を接続して、レギュレータ自体を熱源にします。

測定には
 放熱板の温度計測にはPICをつかいました。単にMCP9701の出力を温度換算してLCDに表示させます。
MCP9701の出力電圧をテスタで測るようにしてもよかったのですが、
やはり温度が直読できるとわかりやすいのでひと手間かけました。

測定実験の様子です。

実験結果は・・
 実験のやり方はいたって簡単です。まずファンを動作させずに通電します。すると放熱板の
温度が上がってきますので、頃合い(熱平衡?)をみてファンを動作させて、また熱平衡になるまでを待ちます。

(1)2.57W負荷の場合
 レギュレータに接続する負荷抵抗(15Ω)が1つの場合です。この場合の熱源(レギュレータ)の
発熱は2.57Wになります。この場合の結果は下図になります。


ファンを動作させなかった場合の温度情報は約63℃まで上がることは確認しました。
まだまだ上がりそうでしたが、レギュレータが壊れるのも嫌だったので途中でファンを動作させました。
おそらく熱平衡点は70℃くらいと予想されます。そしてファンを動作させると一気に温度が下がり
約26.5℃で熱平衡にたどり着きました。外気温14℃(冬場なので寒いのです)を考えて計算すると

放熱器の熱容量(ファンなし):21.8℃/W
放熱器の熱容量(ファンあり): 4.8℃/W

となりました。ファンがあると5倍以上熱容量がアップします。

(2)5.14W負荷の場合
もうすこし熱源の負荷を上げてテストしてみましょう。レギュレータにとりつける負荷抵抗を
もう1個パラに接続します。これで流れる電流は倍になります。


さすがに熱源を倍にすると温度上昇率も大きくなります。60℃のラインをあっという間に超えてきます。
おそらく熱平衡点は120℃くらいかな〜と想像しましたが、怖いので途中でファンを起動しました。
そして、その場合の熱平衡温度は35.5℃でした。放熱器の熱容量を計算すると

放熱器の熱容量(ファンなし):20.6℃/W
放熱器の熱容量(ファンあり): 4.1℃/W


となりました。ほぼ熱源2.57Wのときと同じになりました。今回の実験で、このような小型放熱板でも
ファンをとりつければ4〜5℃/W程度の熱容量の放熱板として使えそうなことがわかりました。

(3)5.14W負荷の場合(放熱板を大きくしてみましょう)
 もうすこし、条件を変えてテストしてみるということで放熱板を大きくしました。大きくしたといっても知れていますが、
このくらいの放熱板をつかえばどこまで改善するかを知りたかったところです。

大きな放熱板をつかってみました。


大きさ的にはこのくらいのものに近いです(実際のものはもう少し大きい)。


温度センサの取り付けの様子です。レギュレータの直近の温度を測定します。


放熱板の上にファンを設置して冷却します。一部のフィンにのみ空気の流れが作用します。

ここからは、少し面倒なこともあり温度上昇・下降のデータはとっておらず、
熱平衡(およそ10分経過時)時点の温度のみを測定しています。で、その結果ですが

放熱器の熱容量(ファンなし): 7.5℃/W
放熱器の熱容量(ファンあり): 3.8℃/W


という感じです。ファンなしの場合の熱容量は、当然のことながら放熱板を大きくなった分、
改善していますが、ファンを動作させた場合の熱容量はあまり改善していません。
この理由はファンによる空気の流れが一部の放熱板にしか作用していなので、
結局効果がでているのは小型の放熱板と同じ面積の部分だからでしょう。

(4)5.14W負荷の場合(放熱板大。空気流を改善)
上記の結果を改善すべく、ファンによう空気の流れをすべてのフィンに作用するように紙で
超簡単なダクトをつくりました。その結果はかなり改善しました。平衡時の温度は28℃程度です。

放熱器の熱容量(ファンあり): 2.4℃/W


ファンの空気をダクトをつかってすべてのフィンに作用するようにします。

再度結果をまとめると、こんな感じです。



放熱容量を稼ぐためには、放熱器自体を大きくしてもいいですが空冷用のファンをうまくつかうことでも対応できそうです。
ファンの騒音は避けられませんが実験用機器を小さくするにはファンをうまくつかいたいものです。

 10Wくらの熱の放散であれば17PB46あたりをつかって、もっと大きなファンを取り付ければ大丈夫そうな感じです。

放熱板の向きでどのくらい変わるのかな?
 つぎは放熱板(大きい放熱板の場合です)の向きの影響をみておきましょう。
放熱板は原則として放熱板を縦に配置し、自然対流で放熱を促すようにしますが、あえて放熱板のうつ伏せにして熱がこもる場合と、
通常の使用方法で比較してみました。なお、いままでは温度記録は紙に手書きしていましたが、すこしプログラムを修正してPIC内の
EEPROMに保存するようにしたのでデータ点数も増えています。
結果としては、放熱版を縦にすると、うつ伏せにした場合より8℃ほど低くなるようです。それでも、50℃は超えてきます。

放熱板は大きい場合です。負荷(発熱)は5.14W。

そよ風をあててやると
 ファンを4cmほど離して配置して風を吹き付けてやります。その結果は次のようになります。


放熱板の温度も30℃を超えることはないようです。ちなみにファンの電圧を15Vにしています(定格は12Vです)。
でも、なんでデータががたがたするのかな?これはおそらく実験用電源の容量ぎりぎりでつかっているところに、
ファンを追加したものだから出力電圧が不安定になっているのかもしれません。
ということで、念のためにファンは別電源(12Vバッテリーを使用)にした場合のデータを再度取得しておきました。
このくらいのばらつきならいいでしょう。そもそも分解能が0.2〜0.3℃しかありませんから。

放熱板は大きい場合です。負荷(発熱)は5.14W。ファンでそよ風をあてています。


結論
 放熱効果を挙げるにはファンがとても役に立つことが確認できました。
気をつけないといけない点は、ファンが停止することですね〜。ファンをつかう場合は
温度をモニターする機能をつける必要がありそうです。

追加実験 2018.1.10

秋月で売っているやや大きめの放熱板でもすこしデータをとってみることにしました。


秋月で売っている、やや大きめの放熱板。130円です。

放熱板も大きいので熱源もパワーアップです。7805(5Vのレギュレータ)をとりつけて、そこに負荷抵抗10Ωを2個パラで接続しました(合成抵抗5Ω)。
そうすると、抵抗には1Aの電源が流れます。レギュレータには18Vの電圧をかけますので、(18−5)×1=13Wがレギュレータの発熱になります。


熱源をとりつけます。13Wの消費電力を発生させます。

ファンについては、PCからとりはずした12Vのファンをつかいました。ファンには12Vではなく15Vの電圧をかけています。


こんな配置でファンからの風を放熱板にふきつけます。

測定結果は

測定結果は下図のようになります。

・熱源をONにすると、グングン温度が上昇します(FANはまだ動作させていません)。
 40℃を超えてくると、結構熱いな〜と思える温度になってきます。
 さすがに50℃を超えてくると、だんだん不安になってきます(体感的には60℃くらいに感じる)。
 ということで、50℃をこえてきたあたりでFANをONにします(450秒あたり)。
 ファンONと同時に温度がグングンさがってきます。およそ28度あたりで平衡になりそうでした。
 そこで、熱源をOFFにしました(650秒あたり)。ファンはまわしたままです。
 そうすると、当然ながら温度もどんどん下がってきて約18度くらいで平衡になりました。
 これが室温に近い値でしょうね。


 追加実験の結果です。


(備忘録:実験装置)
 追加実験用にPICのテストベンチをつくりました。40PのPICにLCDとI/O類、そしてPCとの通信用にRS232(USB接続)をとりつけています。
上記の実験では1秒毎に温度を測定して、その結果をPCに流すようにしています。


PIC用のテストベンチです。


I/O類のピンアサインです。備忘録です。VDD=5V。

備忘録その2 2019.1.15

ちょっと気になることがあったので、PICでの演算速度をしらべました。

PICでの加減乗除の時間
クロック32MHz(1命令8MHz=125nS)

int(8ビット)
加算 370nS
乗算 470nS
除算 13uS

int16(16ビット)
加算 770nS
乗算 4uS
除算 38uS

int32(32ビット)
加算 1500nS
乗算 28uS
除算 130uS

float(int32とほぼ同じ時間)
加算 1600nS
乗算 28uS
除算 130uS

printf関数
int表示 22uS
int16表示 34uS
int32表示 2.4mS (mS)
float表示 2.5mS


何が気になっていたかといえば、int32すなわち32ビット変数をLCDに表示させると
とたんに速度が落ちるので、なにが原因かをしらべたかったわけです。どうやら
普通の演算においては変数サイズが大きくなるとそれなりに演算時間はかかるようですが、
printf関数については32ビット型になると、とたんに速度が落ちることがわかりました。

なにがしたかったかといえば
入力にエンコーダを取り付けようと考えていましたが、エンコーダが動くたびにLCDの表示を更新していたので
エンコーダの入力を取りこぼす恐れがあります。そのため、LCDの表示速度がどの程度になるかを調べたかったのですが、
やはり32ビット変数を扱いだすと、とたんに速度が落ちるようです。
 ということで、対策としてはLCDの表示については、割り込みをかけて1秒間に10〜20回程度に抑えて
できるだけエンコーダ出力の監視にCPUを割り付けたほうが良さそうです。

エンコーダの読み取りはこぼさないようにしたいものです。

ちなみに、エンコーダ回転速度はどのくらいになるかを計測してみました。極力エンコーダを早くまわしたときの状態ですが
パルスが10mSぐらいで出力されます。このエンコーダは24パルス/回転ですので、およそ4回転/秒という感じでしょうか。

エンコーダの出力の様子です(かなり早くまわしています)。0.1msでサンプリングしています。チャタリングはほとんど出ていないようです。

(おしまい?)