電圧レギュレータ考 2008.4.24

コンデンサ考の最後で電圧レギュレータの評価が中途半端になってしまいましたが、
ここで電圧レギュレータについて、もうすこし整理してみようと思っています。
電圧レギュレータといってもたくさん種類があるので、ここでは下記について調べてみることにしましょう。

評価候補
1.3端子レギュレータ
 これはいわずとしれたレギュレータです。電子回路の自作を手がけたことのあるひとなら
 かならず一度はつかった経験があるかと思います。発振防止用のパスコンが必要な場合もありますが、
基本的には外付け部品不要なのでとても簡単に利用できます。生産量も多いので値段が安いのも特徴です。
なぜかオーディオには嫌われている可哀想な石です。



2.LM317
 これも有名な電圧レギュレータです。外付けの抵抗で簡単に設定電圧もかえることができるので、
3端子レギュレータと同様に安価なのも特徴で、電圧レギュレータの万能選手といったところでしょう。
実際には3端子レギュレータも抵抗2本で電圧を可変できますが、多種の電圧値のレギュレータがあるので、
わざわざ抵抗をつかう必要もすくないでしょう。



3.non-NFBタイプレギュレータ
 いわゆるツエナーでの基準電圧をつかったレギュレータで、負帰還(NFB)をかけていないものです。
というよりかはツエナーの電流ブースターのようなものです。回路も簡単でこれもいろいろなところで使われています。
 とくにツエナーをつけずに、リップルフィルータとしてもつかわれています。
 

4.ディスクリ電源
 名称はいい加減ですが、ここではOPアンプをつかった負帰還をかけた電圧レギュレータのことを指すことにします。

5.MJ記事の回路
 ディスクリート構成で、差動増幅の比較的シンプルな電源回路です。MJの2008/3,4に掲載されたDACの電源
として使われたものと同一です。ちょうどこれについてはMHIさんより基板を頒布してもらったので、これをつかってみようかと思っています。
面倒なので電流リミッタ部は省略しました。



評価用の回路を作成! 2008.4.26

いよいよGWに突入しましたが、残念ながらカレンダー通りの出勤です。
今日も昼から、準業務なので午前中にちょっと半田ゴテを握って評価用の回路をつくってみました。

全部で5種類あります。


作成した電源レギュレータ群

3端子レギュレータについては、とくに基板に組むほどもないので、そのまま放熱板にとりつけておしまいです。
GND線だけはすこし長めほうが便利なので、ちょっとつけたしました。あとは鰐口クリップで挟んでテストができます。
LM317をつかった回路は電源基板Cを流用しました。

3端子レギュレータ(7812)             LM317をつかった電圧レギュレータ

non-NFBタイプレギュレータも電源基板を半分つかってくみたてました。今回の出力電圧は12Vを基準にしようと
おもいましたが、適当なツエナーがなかったので5Vのツエナーを2個直列にして、それにさらに青色(Vf=3.3V)を
つなげたものを基準電源としました。基準電圧源は5+5+3.3=13.3Vになりますが、トランジスタのVbe×2=1.2Vが
引かれるのでちょうど12Vくらいになるはずです。

ディスクリ電源も電源基板(正)を流用です。そのまま組み立てるのではなく、回路安定化のための抵抗などは
ことごとく削除しています。裸での特性の評価用です。基準電圧はTL431(2.5V)をつかっていますが、分圧抵抗を
適当にえらんで出力は約12Vになるようにします。

non-NFBタイプレギュレータ                   ディスクリ電源

最後はMJ回路です。使用部品はパワトラはTIP32Cをつかい、
定電流FETには2SK117、ミラー回路には2SK30A、その他は2SA1015/C1815の汎用部品で組んでいます。
電流リミッタ用の5.6Ωはジャンパーにしています。ツエナーは5Vで、出力が約12Vになるように、分圧抵抗を選定しています。


MJ回路


評価開始!

ここでの評価は電圧レギュレータの性能評価がメインのため、
レギュレータ出側の電解コンデンサは実装していません。

1.電圧レギュレーション
評価回路は出力電圧が約12Vになるように設定します。
そして入力電圧を定電圧電源での18Vとして、無負荷時、小負荷(2kΩ)、中負荷(120Ω)時の出力電圧を測定してみました。
だいたい予想通りの結果ですが、下表にまとめています。

表..負荷による出力電圧変化

順位 レギュレータ 無負荷時
電圧(V)
2kΩ負荷時
電圧(V)
120Ω負荷時
電圧(V)
内部抵抗(Ω)
(100mA時)
1 ディスクリ電源 11.80 11.80 11.80 0
1 LM317 12.00 12.00 12.00 0
3 3端子レギュレータ 12.18 12.11 12.17 0.1
4 non-NFB電源 12.15 11.72 11.58 5.7
5 MJ回路 11.77 12.29 12.59 8.2
(約6mA) (約100mA)


まずディスクリ電源、LM317が好成績です。ディスクリ電源は高ゲインの差動増幅にOPアンプをつかっていますので、
出力電圧の安定性は優れています。LM317も優秀です。
3端子レギュレータは負荷によって、若干出力の非線形がありますが、これも優秀です。

反対に電圧レギュレーションがよくないのはNon-NFB電源とMJ回路です。
non-NFBは最初に書いたようにツエナーの電流ブースタのようなもので、フィードバックはかけていませんから
これは仕方ありません。MJ回路は1段の差動増幅だけですから、ゲインを高くとることができないので誤差増幅
性能はおのずと限界があります。電圧レギュレーションはこんなものでしょう。

まずは基本的な電圧レギュレーションをしらべました。
ディジタルでは電源電圧が変動するとロジックのHighとLowのしきい値が変動するのでジッタの影響がでます。
またPCM1794などのDACでは出力信号レベルは電源電圧に依存するので、電源そのものが変動するようでは高性能は望めません。
ということもありディジタルやDAC回路にはディスクリ電源、LM317、3端子レギュレータが向いているでしょう。

反対にアンプなどの、NFBがかかっている回路では電源電圧が多少変動しても、出力への影響は軽微ですからどの電源をつかっても
いいでしょう。

2.入出力電圧差

これは、一定の出力電圧を得るために、何V以上の電圧が必要かという評価です。定電圧回路には内部回路の
電圧降下がありますので、通常は数V以上高い電圧が必要です。
今回の評価回路についてまとめたのは次の表です。これは電圧レギュレーションとは直接関係ありませんが、
入出力電圧が低いということは、内部損失が低くなるので省エネということです。
ここで、必要な電圧は、入力電圧を高電圧から徐々に下げていき、出力電圧が急激に変化しだす入力電圧を測定しました。

表..入出力電圧差

順位 レギュレータ 入力電圧
(V)
出力電圧
(V)
電圧差(V)
1 3端子レギュレータ 13.70 12.17 1.53
2 LM317 13.70 12.00 1.70
3 non-NFB電源 13.48 11.58 1.90
4 ディスクリ電源 13.74 11.80 1.94
枠外 MJ回路 判定不能
(120Ω負荷)

順位1〜4はいずれも僅差で、大体2V以上の電位差があればよさそうです。余裕をみて3V以上あればいいででしょう。
MJ回路は判定不能でした。というのも、出力電圧が入力電圧によって大きく変わるので、どこを急激に変化する点とすれば
よいかの判定ができなかったからです。次図に入出力の電圧の関係を示しますが、non-NFBと比べています。


                 図 入出力電圧の関係

3.リップル除去性能


電圧レギュレータの入力にリップの大きな電圧を入れて、どの程度リップルが除去できるか測定してみました。
リップルを出すためにトランス出力の整流回路をつかいますが、リップルを大きくするために、平滑コンデンサは
100uF(50V)と比較的小さい値のものをつかっています。この場合、100mA負荷時で約約6V程度のリップルが
でます。
電圧レギュレータの出力には100mA程度の電流が流れるように負荷をかけています。
 
リップルを出すために小さい電コンを使用             入力電圧の波形

リップルの測定結果は次表の通りです。MJ回路だけ縦軸が違うので注意してください。
この結果で意外だったのが、LM317のリップルが少し大きいことです。約8mVくらいありそうです。
この結果では端子レギュレータ、ディスクリ電源が良さそうです。

3端子レギュレータ
(5mV/div)
LM317
(5mV/div)
NON-NFBレギュレータ
(5mV/div)
ディスクリ電源
(5mV/div)
MJ回路
(50mV/div)

表.リップル除去特性まとめ

順位 レギュレータ 入力リップル(V) 出力リップル(mV) リップル除去率(dB)
1 3端子レギュレータ 6 2 -70
2 ディスクリ電源 6 2 -70
3 LM317 6 7 -59
3 non-NFB電源 6 13 -53
5 MJ回路 6 140 -33


4.過渡応答

最後は変動負荷時の出力電圧波形をみてみましょう。これには以前に作った電子負荷を使用します。
ロジックICで矩形波を発生させ、その信号でFETを定電流駆動して電流を消費させるようにしています。
ちょうと1.7kHzで100mAの負荷がかかるようにすることができます。
 
 電子負荷装置                                     負荷の波形(1div=50mAに相当)

電子負荷を接続した場合の各電圧レギュレータの出力は非常に興味深いものです。
ちなみにMJ回路は、リップル除去率評価のときに発振したので出力に0,1uFのパスコンを挿入したのですが、この評価では逆に
パスコンがあると発振する事態になったので、パスコンなしの波形も併記しています。

負荷変動時の過渡応答で、強いスパイクが発生しないのはnon-NFBレギュレータのようです。
その他はすくなからずスパイクが出ますが、LM317が比較的大きいのが特徴です。
3端子レギュレータ、ディスクリ電源、MJ回路(ただし出力パスコンなしの場合)は同じくらいで120mVくらいのスパイク振幅です。
なかでも素直なスパイク形状なのは3端子レギュレータ、MJ回路でしょう。
ディスクリ電源では少しリンギングが残ります。

3端子レギュレータ
(50mV/div)
LM317
(100mV/div)
NON-NFBレギュレータ
(100mV/div)
ディスクリ電源
(100mV/div)
MJ回路(出力パスコン0.1uF有り)
(5V/div)
MJ回路(出力パスコン無し)
(100mV/div)


まとめ
 今回、いくつかの電圧レギュレータの特性を比較評価してみました。
 どれが良いとかというのではなく、それぞれの特徴が把握できたような感じです。
 ものには適材適所があるので、これらの情報をもとに、選択の参考にしていきたいと思います。

 しかしながら、ディスクリ電源が総合的には一番性能がよいような感じです。


ちょっとおかしいな・・・・

電圧レギュレーションの悪いMJ回路で、なぜ変動負荷を与えたときの電圧変動が小さいのか、
ちょと矛盾があります。今一度、MJ回路については波形の確認をしておきましょう。

まずは無負荷の状態

最初は無負荷で測定。このとき、レギュレータ基板にはコンデンサは実装していません。
なんと、無負荷の状態で出力にパルス上のノイズ(発振)がでています。そのレベルは400mV弱
はありそうです。これではだめです。
 
 コンデンサをとりつけていない状態      無負荷状態での出力電圧変動(200mV/div)

ということで、シルクの通りコンデンサを取り付けてやりましょう。47uFの電解コンデンサと0.1uFの
パスコンをとりつけます。そうすると、発振のレベルは大幅に小さくなりました。
 
 コンデンサをつけた状態              無負荷状態での出力電圧(2mV/div)

負荷をとりつけてみる


抵抗による一定負荷と変動負荷を与えたときの出力電圧波形を示しますが、
かなり盛大に発振しています。一定負荷ですら発振しています。
 
抵抗負荷(120Ω)   100mV/div          変動負荷(100mA、1.7kHの矩形波) 200mV/div

こういった出力波形になるようだと、評価以前の問題です。
おそらく指定部品(とくにトランジスタ)を使えば大丈夫なのかもしれませんが、
回路の安定性はあまり高くないようです。
それとも、なんかの弾みで壊したかな?


もう少し調べてみよう!!

定電流用素子のパラ化

MJ回路の名誉のためにも、申し少し調べてみましょう。
もともとオリジナルと違うところは、出力電圧(オリジナルは5Vだが今回の評価では12Vに設定)の違いもありますが、
使用した素子もすこしちがいます。差動増幅段の定電流にはオリジナルでは2SK117BLがつかわれていますが、
ここでつかったのは2SK117GRです。BLとGRでは電流値が2倍ほど違います。トランジスタのランクの違いで
動作に違いがでる回路もどうかと思いますが、2SK117を2個パラにして電流値を増やしてみました。
ついでなので、ツエナーの定電流用の2SK117もパラにしました。

2SK117をパラにして電流値を増やします。

結果は・・・・というとNGです。2SK117をパラにしたら、定電圧電源でなくなってしまいました。
12V出力の設定ですが、18V入力で出力が17.3Vになってしまいました。ほとんどスルーの状態です。

もう1枚作ってみよう!

ひょっとして最初につくった回路は、なんらかの拍子で壊してしまったかもしれないので、
もう1つ同じものをつくってみましょう。素子はパワートラと分圧用の抵抗値が若干違っていますが、
その他は同じにしています。


左:最初につくった基板          右:再度製作した基板

まずは定電圧回路として動いているかどうかを確認するために、
入力電圧と出力電圧の関係を調べてみました。
一応11.5V程度の定電圧機能はあるようですが、入力電圧が高くなった場合にそれに影響をうけて
出力電圧が上昇していきます。

       入力−出力電圧の関係(MJ回路/再製作)

電圧レギュレーションは?

入力電圧を18Vに設定して出力電圧の負荷による変化を再測定。
前作に比べてよくなりましたが、それでも1Ω程度とすこし高めの値です。

順位 レギュレータ 無負荷時
電圧(V)
2kΩ負荷時
電圧(V)
120Ω負荷時
電圧(V)
内部抵抗(Ω)
(100mA時)
1 MJ回路 12.60 121.57 12.50 1

過渡応答は?
変動負荷を与えて、出力電圧の変化を再測定。なんとなくそれらしい波形になっています。
負荷により出力電圧変化が約50mV発生して、スパイク状の信号が150mVくらい発生しています。
電圧レギュレーションとしてはnon-NFBよりよいですね。スパイクレベルは3端子やディスクリ電源と
同じくらいです。

MJ回路(50mV/div) 負荷変動時の出力電圧。

リップル除去性能は?
これは最悪です。ほとんど入力電圧のリップルが1/3程度に圧縮されただけで出力現れています。
これは、上記の”入力−出力電圧の関係(MJ回路/再製作)”のグラフにもあるように、出力電圧の
入力電圧依存性があるので、リップルが大きい入力が入れば、そのまま出力に影響がでてしまいます。
しかし、ほとんど同じ定数でつくっているのに、こうも結果が違うというのは回路自身が素子に敏感ということでしょうか。
 
入力電圧                           出力電圧

いずれにしても

MJ回路の電圧レギュレーションはあまり良くない感じです。

ただし、お断りをいれますが、今回の調査結果で使った定数・素子はMJ誌に記載されたもとのは違いますから、
オリジナルに忠実に作成すれば所望の性能が得られるのかもしれません。あくまでの、ここに記載された評価結果は
小生の備忘録みたいなものですから、参考程度にみておいてください。


私なら・・・・(試作電源)

シンプルな差動増幅での定電圧電源をつくるとすれば、次のような回路にするかもしれません。
オーソドックスにカレントミラーを負荷にしています。またインバーテッドダーリントンもやめて
普通のNPNのダーリントンにします。一度、蛇の目基板でつくってみるかな?


早速つくってみよう!

部品も少ないので、適当な蛇の目基板をみつけて組んでみました。
こういった部品点数が少ないときは、基板の部品面だけをつかって配線すると簡単です。

完成した試作基板

評価してみよう!
一通りの評価をしてみましたが、結構優秀な結果です。


表..負荷による出力電圧変化

順位 レギュレータ 無負荷時
電圧(V)
2kΩ負荷時
電圧(V)
120Ω負荷時
電圧(V)
内部抵抗(Ω)
(100mA時)
1 試作電源 11.61 11.61 11.61 0


   入出力電圧特性(一定電圧以上だと、出力電圧も安定しています)

表.リップル除去特性まとめ

順位 レギュレータ 入力リップル(V) 出力リップル(mV) リップル除去率(dB)
1 試作電源 6 9 -56

10mV/div (負荷120Ω)

表.過渡応答
出力コンデンサ無し(50mV/div) 出力コンデンサ(100uF) 10mV/div

5Vに設定したみたら?

MJ回路はもともと5V出力の設定なので、5Vにしてみたら?というメールをいただいています。
ということで、定数を若干変更しました。
まずツエナーですが手持ちで3V程度のものがないのでLED(青色:Vf=3.3V)をつかいました。
あとは分圧抵抗を調整して完了です。


5V用に改造。基準電圧源は青LEDを使用。

そして基本となる入力−出力電圧カーブをとってみました。
ん・・・・あまり変わらないな・・・・・・

 入力−出力電圧の関係(MJ回路/5V出力仕様)


なるほど!!

自分で書いていた内容を読み返していて動作不良のヒントがみえてきました。
差動増幅部に流す定電流FETをパラにしたら、定電圧回路として動作しなくなったというところですが、
カスコード(J3,J2)に流すことのできる以上の電流を定電流部(J4)で作っていたのが原因のようです。
こんな素子選択の余裕のない設計は初めてです。というか、これがこの方式の特徴なんでしょうか。
みなさんが、指定部品を求める理由の一端がみえたような気がします。
ということでJ4をJ2,J3と同じFETに取り替えて、動作電流を下げてやればうまくいきそうです。
ということでFETはすべて2SK30Aに変更しました。

MJ回路

さっそく修正して、入力−出力電圧特性を測定し直しましたが、ようやく見慣れた特性になりました。

入力−出力電圧の関係(MJ回路/5V出力仕様)

12V用に再修正!

では、再度評価のために12V用に再修正します。基準電圧源はLEDをそのまま使用して、
分圧抵抗のみを変更しました。まずは、入力−出力電圧特性を測定して、きちんと定電圧電源
として機能しているかどうかを確認しておきます。大丈夫そうですね。

入力−出力電圧の関係(MJ回路/12V出力仕様)


では早速再評価!

まずは無負荷、負荷時の電圧を測定してみましょう。電圧レギュレーションは優秀ですね。

表..負荷による出力電圧変化

レギュレータ 無負荷時
電圧(V)
2kΩ負荷時
電圧(V)
120Ω負荷時
電圧(V)
内部抵抗(Ω)
(100mA時)
1 MJ回路(修正) 11.70 11.70 11.70 0


つぎは過渡応答をみてみます。電子負荷を接続すると、発振してしまいました。このままでは測定できないので
暫定的に出力に47uFのコンデンサを挿入した状態の写真も載せています。

表.過渡応答
出力コンデンサ無し(1V/div) 発振しています。 出力コンデンサ有(47uF) 20mV/div

つぎはリップル除去性能評価です。この測定時にも47uFのコンデンサを出力にとりつけています。

表.リップル除去特性まとめ

レギュレータ 入力リップル(V) 出力リップル(mV) リップル除去率(dB)
1 MJ回路(修正) 6 16 -51

10mV/div (負荷120Ω) 出力コンデンサ有(47uF)
若干発振が残っています

なんとか、MJ回路も無事評価終了というところです。


全体のまとめ

測定したデータが点在してしまっているので、折角なのでわかりやすいようにまとめておきましょう。
結局途中で作成した試作電源も含めて計6種での比較になります。

1.負荷による出力電圧変化
上位4者はテスターでの測定では差がでませんでしたが、
ディスクリ電源、LM317、試作電源、MJ回路が優秀ですね。これをみるとちょっと
non-NFB電源が負荷変動に対しては貧弱な性能です。

順位 レギュレータ 無負荷時
電圧(V)
2kΩ負荷時
電圧(V)
120Ω負荷時
電圧(V)
内部抵抗(Ω)
(100mA時)
1 ディスクリ電源 11.80 11.80 11.80 0
1 LM317 12.00 12.00 12.00 0
1 試作電源 11.61 11.61 11.61 0
1 MJ回路 11.70 11.70 11.70 0
4
3端子レギュレータ 12.18 12.11 12.17 0.1
5
non-NFB電源 12.15 11.72 11.58 5.7
(約6mA) (約100mA)


2..入出力電圧差

電圧レギュレーションには直接関係しない項目ですが、省エネの点で有効です。
これについてはMJ回路が優秀です。理由は出力にPNPをつかったロードロップタイプになっているからです。
次が試作電源で、それ以降に3端子レギュレータ等がつづきます。

順位 レギュレータ 入力電圧
(V)
出力電圧
(V)
電圧差(V)
1 MJ回路 12.14 11.70 0.44
2 試作電源 12.67 11.61 1.06
3 3端子レギュレータ 13.70 12.17 1.53
4 LM317 13.70 12.00 1.70
5 non-NFB電源 13.48 11.58 1.90
6 ディスクリ電源 13.74 11.80 1.94
(120Ω負荷)


3.リップル除去性能
3端子、ディスクリ電源が優秀な結果でした。3端子が予想以上に優秀だった原因として、
プリント基板に実装していないのでパターン抵抗等の影響がなかったかもしれません。
いずれにしても、リップル除去率としては下記はどれをつかっても問題ない範囲でしょう。
中にはコンデンサなしでは発振するものがありますが、普通はコンデンサは取り付けるでしょうから
気にする必要はないでしょう。

順位 レギュレータ 入力リップル(V) 出力リップル(mV) リップル除去率(dB)
1 3端子レギュレータ 6 2 -70
2 ディスクリ電源 6 2 -70
3 LM317 6 7 -59
4 試作電源 6 9 -56
5 non-NFB電源 6 13 -53
6(*) MJ回路 6 16 -51
(*)出力に47uFコンデンサを追加して測定(コンデンサ無しでは発振)。
3端子レギュレータ
(5mV/div)
LM317
(5mV/div)
NON-NFBレギュレータ
(5mV/div)
ディスクリ電源
(5mV/div)
試作電源
(10mV/div)
MJ回路
(10mV/div)出力コンデンサ有(47uF)


4.過渡応答波形
100mAの負荷を矩形波で加えたときの出力電圧の変化をみています。負荷の急変時にパルス状のノイズが発生します。
このパルス信号の高さを一つの性能として評価すると次の通りです。
これら出力にコンデンサを取り付けない状態での測定ですので、裸の特性が把握できると思います。
一部はコンデンサ無しでは発振したため、コンデンサを追加して撮影しました。
non-NFB電源がもっとも優秀です。気になるパルスノイズはほとんど出ません。
2位から4位はほぼ同じレベルですが、リンギングの仕方に違いがあります。
これらは基板のパターンに依存するものかもしれません。

順位 レギュレータ パルスレベル(mV)
1 non-NFB電源 ほとんどなし
2 試作電源 110
3 3端子レギュレータ 120
4 ディスクリ電源 120
5 LM317 300
MJ回路 発振のため測定不能
NON-NFBレギュレータ
(100mV/div)
試作電源
(50mV/div)
3端子レギュレータ
(50mV/div)
ディスクリ電源
(100mV/div)
LM317
(100mV/div)
MJ回路
(20mV/div)
(*)出力コンデンサ有りの場合。


なお、試作電源、MJ回路の回路図は次の通りです。素子や抵抗は都度変更していますので、回路パターンのみ参考にしてください。

MJ回路(FETは2SK30Aを使用) 試作電源



(これで完了?)