面白そうなレギュレータ?の巻き 2013.1.6
昨年の年末にちょっと気になる書き込みがありました。なにやらTPS7A47という電圧レギュレータの
ICが性能よいとのことです。
DIGI-KEYでデータシートをみてみると、パッケージは裏にサーマルパッドのある四角いICです。
これって、半田付けに苦労するのですよね〜・
TPS7A47のパッケージ
データシートのヘッドラインにはやはり低ノイズであることが謳われています。4.17uVRMSですから相当なものです。
データシートのヘッドラインにも低ノイズを強調
それと面白いのが、外付け抵抗なしに電圧調整ができます。およそ1.4Vから20Vまで0.1Vステップで配線パターンの設定
で電圧調整ができます。それと、電圧レギュレータにしては珍しくセンス端子があります。これを負荷直近に接続しておけば、
負荷までの配線による電圧ロスなどの影響を受けずに電圧の帰還制御ができます。まあ、もっとも配線長が短ければ
出番の少ない機能ではあります。
内部の構成
どのくらいいいの?
さて、このICがどの程度の性能なのか、他のレギュレータと比較してみました。
とくにノイズが1桁近く低いのが目につきます。またリップル除去性能も他にくらべても低いですね。
TPS7A47 | KA7805E (3端子レギュレータ) |
LM317 (可変電圧レギュレータ) |
|
ノイズ | 4.17uV (3Vin,1.4Vout) |
42uV/Vo | 0.003%/Vo (1V出力で30uV) |
リップル除去 | 78dB | 73dB | 75dB (Cadjあり) |
難点は
このICの最大の難点はパッケージサイズが小さいです。外形で5mm四方です。
0.65mmピッチのQFPで、裏面に放熱用のサーマルパッド
もあります。ジッタクリーナなどではこの半田付けに苦労される方も多いようです。
パッケージサイズは小さいです。
あと、出力コンデンサは50uFのセラミックが推奨されています。
これについては秋月電子で積層セラミックコンデンサが色々と売られているので、
これらを使うの便利でしょう。
秋月電子 チップ積層セラミックコンデンサ10μF50V 3225 (10個入250円)
基板にしてみると
配線パターン自体は難しいところはないので、電源基板のTYPE-Gをベースにパターンを書いてみました。
できるだけパターンでの放熱面積を稼ぎたいので、配線パターンを部品面にして、裏面はほぼ前面放熱パターンです。
こでだけあれば、相当の発熱にもたえられるはずです。さらに、熱の拡散も考慮して、前段に3端子レギュレータを配置
してTPS7A47に加わる電圧をできるだけ低くできるような配慮もしてみました。
部品面のパターンの様子
半田面のパターンの様子
これらの基板も何かの試作のついで作ってみましょう。
リクエストに応じ
電圧設定端子は半田ジャンパーだけでなく、ピンも立てられるようにというリクエストもあり、
若干パターン変更しました。
部品がとどきました。 2013.1.11
まずはICがとごきました。意外と大きな感じで安心しました。これなら半田付けはできそうです。
一緒に写っているのは爪楊枝の先。TPS7A47
チップC部品も
このレギュレータICのパスコンにはセラミックのコンデンサが推奨されています。おそらく高周波特性を重視してのことでしょう。
ということで、推奨パーツをそろえるべく、秋月から必要な積層チップコンデンサを購入しておきました。
必要な容量は1uFと10uFです。
秋月で購入したチップコンデンサ。
明日には基板も届くことでしょう!
基板到着! 2013.1.12
週末のお楽しみの基板が到着しました。
基板が到着。こんな感じで包装されています。
早速実装!
まずは、肝心のTPS7A47から半田付けです。サーマルパッドのところには
半田の流れを考慮して大きめのランド穴をあけています。
サーマルパッドは大きな穴です。
このICのピッチは0.65mmと比較的広いので、とくにテープで固定しなくても位置あわせならびに半田付けが
可能でした。フラックスの粘度だけで仮固定をして、どれか一ビンだけでも、半田付けをして固定できれば、
反対側から一気に半田づけです。
ピンの半田付けが終われば裏面から半田を流し込んでサーマルパッドと基板ベタ面を熱的に結合させます。
このときは容量の大きな半田ゴテを使用しました。
部品面の半田付けの様子。 裏面(サーマルパッド)の半田付けの様子。
ICの半田付けが終われば周辺のチップコンデンサをとりつけます。
今回は取り付けた容量はデータシートの推奨値そのままです。
Ca=10uF(25V)×5
Cb=10uF(25V)
Cn=1uF(100V)
としました。いづれも秋月電子から調達しています。
チップコンデンサの取り付け。
動作確認!
とりあえずチップコンデンサをとりつけた状態で動作確認です。
最寄の端子から電源を供給して出力電圧を確認します。
とりあえずの動作確認の様子。
電圧はジャンパーで設定できますが、どの程度の出力電圧になるか確認してみました。
ほぼ設定値と同等の電圧が出ます。誤差1%以下といったところです。
ジャンパー設定 | 出力電圧(V) | 電圧増分値 |
無接続 | 1.394 | - |
100mV | 1.494 | 100mV |
200mV | 1.595 | 201mV |
400mV | 1.796 | 402mV |
800mV | 2.198 | 804mV |
1.6V | 3.001 | 1.607V |
3.2V | 4.61 | 3.21V |
6.4V | 7.82 | 6.42V |
6.4V | 7.81 | 6.41V |
負荷状態で3.3Vで動かしてみよう!
動作確認ができたところで、3.3Vに設定して負荷をかけてみまし。
3.3Vに設定するには
1.4+1.6+0.2+0.1=3.3V
ですから、1.6Vと200mV.100mVのところを接続します。
3.3Vに設定した様子。
無負荷での電圧の確認です。ちょうど3.3Vです。
負荷には5.1Ωの抵抗を接続します。この場合負荷電流は約650mAになります。
負荷時の電圧は約3.302Vでしした。
実際に負荷をかけた様子。
発熱は?
入力電圧を5Vに設定して出力3.3V650mAとすると、ICの消費電力は(5-3.3)*0.65=1.1Wになります。
かなりの発熱になりますが、直接チップを触るとジンワリと熱が伝わってきますが、1時間程度通電しても
とくに出力は問題ありません。
さらに入力電圧を6.6Vまであげました。このときのICの消費電力は2.1Wになりますが、このときでも
熱くなりますが、触れないほどではありません。ということは温度としては60度くらいかな?
サーマルパッドから裏面ベタへの放熱が有効に働いているようです。
完成!
最後に、トランスに接続できるように必要部品を搭載しました。
型番はPOWER−Hです。
お出かけ用の写真です。
効果のほどは?2013.1.13
さて、この電源の効果はどのくらいあるのか試聴してみましょう。
まずは、どの装置構成で試すかですが、ちょうどDAC1794-6がバラックで組んだ状態のものがあったので
これを利用することにしました。DACにアンプも接続されているので、ヘッドホンを接続して試聴です。
このDAC基板は3.3Vのみで動作することができ、消費電流も約300mAなので、POWER−Hの電源基板
1枚で対応ができます。
まずは比較用に汎用の実験用電源に接続して試聴です。
これでも、全然不満はありません。ソースにピアノ協奏曲のNO.5"EMPEROR"を使いました。
試聴につかった構成。DAC1794-6とA12アンプ。電源は汎用品。
つぎに、DACの電源をPOWER−Hに交換です。
ををを!
オーディオは主観の塊なので、プラシーボ全開ですが音の粒立ちがよくなった気がします。
原因はよくわかりませんが、電源のノイズが減ったので、アナログ系よりディジタル系の方が
効果がつよく現れたのかな?すなわち、スレッショルレベルの変動が少なくなって、クロックが
より正確に伝達できるようになって、音の”正確性”があがったのかもしれません。
ジッタクリーナと同等の効果ですね。
といっても、前述のようにプラシーボ全開です(笑)。
電源をPOWER-Hに変更。音の正確性があがったような気がします。
とはいえ、これは簡単に電圧が変更できる電源基板としても重宝しそうです。
負電源も試してみました。 2013.2.2
ディジキーでの買い物ついでにTPS7A33を買ってみました。これはTPS7A47の負電源版です。
TPS7A33です。
ノイズ性能は16uVとTPS7A47に比べると劣りますが、一般のレギュレターに比べるとはるかに
ローノイズとなっています。
ちょっと調べてみるとこんな感じです(TPS7A33を−15Vにしたらどのくらいのノイズになるか
わかりませので正確な比較にはなりませんが)。
TPS7A33 | KA7915 (3端子レギュレータ) |
LM337 (可変電圧レギュレータ) |
|
ノイズ | 16uV (−3V入力、REF電圧出力 |
250uV (-15V出力) |
0.003%/Vo (15V出力で450uV) |
リップル除去 | 72dB | 60dB | 60dB 77dB(Cadjあり) |
ピン配置は?
ありがたいことにTPS7A47とTPS7A33は電源の入出、GND位置などが一致しています。
ということはTYPE−Hの基板をそのままつかうことができます。
TPS7A47(正電源レギュレータ) TPS7A33(負電源レギュレータ)
異なる点は
TPS7A47での電圧設定は外部ジャンパで行いますが、TPS7A33では外付け抵抗にて行います。
今回は-15Vを得たかったので、抵抗値はR1=130kΩ、R2=11kΩとしました。
このときの出力電圧の計算値はVout=((R1/R2)+1)*Vref=((130/11)+1)*1.171=15.01Vです。
電圧の設定は外付け抵抗で行います。
さっそく組んでみましょう
TYPE−H基板に同じように取り付けます。
ICの周りは正電源と同じです。
分圧用の抵抗を取り付けた様子。
問題なく動きました。
電源に−18V程度を加えて出力電圧を測りましたが、問題なくー15Vがでています。
問題なく動作しました。
負電源をつかうときもTYPE−H基板がつかえそうです。でも、コンデンサやダイオードの向きは
気をつけないといけません。
TYPE−I電源も作りましょう! 2013.2.17
折角なのでTPS7A47とTPS7A33を使った正負電源もつくってみましょう。
ICのピンパターンが両者とも似通っているので、基板パターンとしてはTYPE−Hを流用ができます。
放熱効果をあげるために、両面ともほぼ前面ベタGNDになっています。また、放熱分散のために
上流側に3端子レギュレータをつけられるようにしています。
3端子レギュレータはあまり必要ないかもしれませんが、ひとつの応用としては3端子レギュレタで正負15Vをつくり
OPアンプ用の電源として、TPS7A××で正負7Vの電源を作成して、電子ボリュームに使うということを考えています。
というのも秋月電子で売っている電子ボリュームはMUSESを除くと7V程度が動作電圧になっているので、
これらに使えるかな〜っと思っています。
もっとも正負5VにしてPCM1704用の電源にするのが、本命の使い方かもしれませんが・・・・。
出来上がったTYPE−I基板の部品面パターンです。
出来上がったTYPE−I基板の半田面パターンです。
間違えないように!!
さて基板も出来てきたので、さっそく組み立てです。
製作上で間違えないようにしないといけないのが、TPS7A47とTPS7A33の付け間違いです。
どちらのパッケージも同じですし、それに部品名も記載が省略されています。
TPS7A47の方はパッケージにPXSQ、TPS7A33の方はPXQQと記されています。
負側のTPS7A33はPXQQと記載があります。
正側のTPS7A47はPXSQと記載があります。
電圧設定は正負5Vに!
まずは電源電圧の設定は正負5Vに設定します。正側はジャンパーで設定ですが、負側は抵抗値で決めます。
正側は5Vなので3.2V+1.6V+200mVで合計5Vです。
計算式から10kΩと33kΩの抵抗を使うことにしました。
動作確認の様子。
あれ?
電源を入れてみて、電圧を確認してみると負側は-5.05Vと計算どおりですが、正側は6.4Vあります。
ん? あ! そうか!
忘れてました。正側には1.4Vの下駄が最初からのっているのでした。
ということで正5V側の設定は3.2V+400mV(=3.6V)にしないといけません。
設定しなおして再測定したら5.03Vになりました。
めでたしめでたし。
正側を5Vにした時のジャンパー設定です。
一応すべての部品を搭載!
全体の動作確認も含めて、搭載できる部品はすべて載せてみました。
電源とはいえものすごくシンプルです。これで3端子レギュレータがなければ
電源基板ってわからないかもしれません。
一応完成しました。
最後に通電して動作確認です。
これは小型のアンプの電源に使おうかな〜〜。
(つづく?)
(つづく?)