ちょっとお茶目に”お気楽DAC3.5”の巻き! 2008.2.14
お気楽DAC3 vs DAC1794-3
私自身、最近お気に入りでつかっているDAC-ICはPCM1794です。
おそらく通販で手軽に手に入るICの中では最も高性能なDACと思われます。価格もDIGIKEYでは
2000円弱ときわめて手頃です(国内通販ではその倍くらいしているようですが)。というか、この性能が
2000円弱で手にはいるということは大変喜ばしいことです。この値段の御陰で、PCM1794をモノラル使用
としても、さほどお財布はいたくありません。
そして、DAIについてはCS8416をよくつかいます。ジッタの性能ではDIR9001に比べて劣りますが、
192kHzまで動きますし、なんといっても入力が4chあるし、外付け部品も少なて済む点が最大の魅力です。
それにSOICパッケージですから半田付けも簡単です。
ということでPCM1794(モノ)+CS8416が定番の組み合わせになっている今日この頃です。
ちょうど最近発売されたMJ無線と実験(誠文堂新光社)3月号(VOL.95,No.3)p.29にもPCM1794(モノ)+CS8416
の組み合わせの自作DACの記事もでていますし、DAC製作ではスタンダードな組み合わせになってきていると
おもわれます。ちなみに、この記事の回路ではDAC1794-3と同じくディスクリートでIV変換と差動増幅器が組まれて
いますが、DAC1749-3に比べるとシンプルな回路構成ですので、部品点数も少なく作りやすそうです。
さて、現在でPCM1794+CS8416の構成としているDACはお気楽DAC3とDAC1794-3になりますが、
それぞれの構成にはかなり差があります。ちょっと比較してみましょう。
お気楽DAC3とDAC1794−3比較 | ||
DAC名 | お気楽DAC3 | DAC1794−3 |
DAI | CS8416 | 同左 (SN75157レシーバー受け) |
DAC | PCM1794×2個 (モノラル使用 |
PCM1794×4個 (モノラル使用×2パラ) |
アナログ回路 | オペアンプ×6個 | ディスクリート構成 (トランジスタはなんと74個!) |
電源回路 | オンボード LM317/337使用 |
別基板 アナログ:無帰還電圧レギュレータ DAC:OPアンプ使用帰還型レギュレータ ディジタル:LM317使用 |
基板枚数 | 1枚(145×175mm) | 2枚(198×198mm) |
上の表であたらめて比較すると、DAC1794-3はおいそれと作る気がおきないですね。
大量の半田付けを無性にしたくなったらいいかもしれませんが(笑)。ちなみに、私の場合は
試作も含めて都合3セットを作りましたが、もうお腹一杯です。
その点、お気楽DAC3はそのネーミングからも、部品点数もさほど多くなく、
お気楽に作れるDACの1つです。オペアンプの選定により自分の好きな音づくりも
できますし、なによりも1ボードで作れるというところが配線も少なくて作りやすいのでは
ないかと思っています。ただ、ちょっと趣味性に薄いかなという気がしないでもありません。
ということで、ちょうどお気楽DAC3とDAC1794−3の中間規模のDACについて検討してみましょう。
部品点数でいえば、ちょうどMJ誌の自作記事と同程度のものになるでしょう。
アナログ回路の見直し!
DAC1794-3のアナログ回路は、カレントミラー回路が多く使われているのでかなりのトランジスタを
消費します。トランジスタだけならいいのですが、それに付随する抵抗も増えますから、結局は部品点数の
大幅な増大が生じます。できるだけシンプルな回路を検討ということで、ディスクリオペアンプ基板で検討した
A1基板をベースとして、ちょっとお茶目な回路構成にしてみました。
1アンプあたりのトランジスタは7個です。DACには全部で6個のアンプが必要ですが、それでも必要な
トランジスタは42個に抑えられます。DAC1794-3の半分強です。抵抗の数も半分程度になりますから
かなりの部品点数の削減になります。
A1基板の回路をベースに簡略化。
1つのアンプを切り出すとこんな感じのパターンになる。
大きさははおおよそ50mm四方。密度を上げることは可能だが、ゆったりとさせるのもいいだろう。
アンプのブロック
このアンプをつかってPCM1794のアナログ部を描いてみる。大きさはASRCやメモリーバッファーと同じサイズにしてみた。
さすがにこの大きさだと1ch分しか収まらないが、2枚でステレオになる。PCM1794のCHL端子を切り替えられるようにしておいて、
右あるいは左チャンネルを選択できるようにすればいいだろう。
大まかなパターンレイアウト。ここから微調整をおこなっていく。
だいたい部品配置はこれでほぼ決定かな。
ベタをのぞくアートワークはほぼ完了です。
あと一息(クリックスするとPDFファイルが立ち上がります)。
アートワークと併せて回路図も全体図をつくりましょう。
アナログ部の回路図(クリックスするとPDFファイルが立ち上がります)。
回路図とアートワークの部品番号がバラバラになっているので、アートワーク上の
番号を打ち直し(めんどうだな〜)。あわせてパターンチェックもしておきましょう。
結構、間違いがあることがわかりました。さて、これでほぼベタを塗る前の最終形かな?
一応チェックしたパターン(クリックスするとPDFファイルが立ち上がります)。
今回のお気楽DAC3.5のアートワーク上で、すこし工夫したところは
1.差動増幅部はバイポーラトランジスタとFETが両方つかえるようにした。
すなわちBCEとDGSのピン配置が両方使えます。
2.出力段はTO-220タイプとメタルカンタイプの両方がつかえるようにした。
メタルカンは絶滅危惧種ですが、1W程度の容量があるので、出力段に使えれば便利です。
メタルカンは私も少々持っています(といっても誰かからの貰い物ですが・・・)。
パターン完成?
ベタ塗り作業が完了して、こrてでひとまず完成です。
あとは、シルクの見栄えを修正していきます。修正のためには画面ではつらいので、一旦印刷します。
ベタの印刷はトナーの消費も大きいので、あまり何度も印刷すると精神衛生に悪いです(笑)。
一応完成(クリックスするとPDFファイルが立ち上がります)。
<各層のパターン>
シルクパターン 部品面パターン 半田面パターン
シミュレーションでの動作確認!
考えてみれば、A1回路を簡略化したといいながら動作確認をしていませんでした(笑)。
シミュレーション上で動作確認をしてみましょう。定数はあまり動作電流が大きくならないように設定してGo!
まずは上のような定数設定をしてみました。
周波数特性上はまったく問題ないようですね。
周波数特性
動作電流をみてみましょう。
まずは2段目のQ4を流れる電流ですが、だいたい4mAくらいになります。
ということはR8の消費電力は160mW(4mA×40V)ですから1/4Wでなんとか持ちそうです。
2段目のトランジスタに流れる電流(1kHz 電流振幅10mA)
最終段のトランジスタの電流をみてみましょう。
Q6に流れる電流ですが0mA以上を保っているのでA級動作になっているようです。
出力負荷がかかると、AB級になりますからA級を保持するためにももう少しバイアス電流を
流した方がよいようですが、省エネの点ではこのくらいかな?
バイアス電流の調整はR13,14を小さくすれば任意に設定できるので使い方にあわせて
調整すればいいでしょう。ただし、電源電圧が高いと出力段のトランジスタが加熱しやすくなるので
バイアス電流をたくさん流す場合は放熱板等の取り付けが必要です。
出力段のトランジスタに流れる電流。(1kHz 電流振幅10mA)
派生タイプ?
アナログ部分だけ抜き出してみました。これで他の差動出力型のDAC等とも接続できるでしょうか。
汎用性をもたせるために、入力部は+−入力端子を出しています(IV変換につかう場合は+入力端子は
GNDに接続されていますが、電圧入力などでは+入力端子が必要なため、引き出してみました。)
また、ちょっとだけ回路が組めるように蛇の目スペースも確保。数本の抵抗くらいなら実装可能です。
アナログ部だけだと、デジタル部だけも描いてみました。
どうしようかな〜、組み合わせが発散してしまいそう・・・・・・
ちょっと電源系を修正しました。
というのもDAC部分ですが、必要な電源は5Vと3.3Vが必要です。
完全に分離すならなば3.3Vと5V×2が必要になるわけですが、
外部でそれだけ準備するのも面倒です。ということで
オンボードで3.3Vもつくれるようにしておきます。そうすれば
5V電源1つあれば大丈夫ですし、分離したければレギュレータをはずして3.3Vの電源を
用意すればよいことになります。
ということで、書き足したのがこんな感じです。
ただ、一杯つくっても全部つくるのも大変だし、どうしましょう?
ちょっと脇道へ 2008.2.21
久しぶりの秋葉原、じゃなかった東京に出張。といっても、神田なので秋葉原は目と鼻の先。
昼すぎからの会議なので、まずは秋葉原に直行(こらこら)。
久しぶりといっても、2週間前にいったところなので、あまり変化は期待していない。というか、これより変わると
いったい秋葉原ってどんな場所になるのといった感じです。
それはさておき、あまり時間もないのでまずは秋月に直行。別にお目当てのものがあるわけではないのですがが、
秋葉原の散策コースとしては、一番奥に位置しているのでまずはそこから訪れるわけです。
今日は木曜日、ということは店は臨時開店の状態。すなわち、店は開いているが、
レジに人がいるだけで値札のついているものしか扱っていません。
いつも店員さんの前に並んだ細かいパーツがほしいとしても、ちゃんと撤去してあります。
でも、さきほど書いたようにとくにお目当てはないので、店内をブラリして、なんか使えそうで、かつ安いものをゲットしましたし。
1つは、アンプ。720mW×2のステレオアンプ。ちょうど、USB-DACのアンプにいいかもしれないと思い手にとりました。
説明書を見ると標準で40dBの増幅率ですが、外付け抵抗でゲインは下げられそうです。これは1個100円なり。
TA7368FG 少ない外付け部品でステレオアンプになります。
さて、次に手にとったのはコンデンサマイク。4個で100円なり。
とくに決まった使い道はないけど、なんとなく面白そう。家のスピーカの特性を調べるのにも使えるかもしれません。
周波数特性は広域は16kHzで-6dB、低域側は20Hzでもフラットです。これだけの性能があれば十分でしょう。
使いかたが説明書になかったけれど、ネットを探せば色々とでてくるはずです。
たぶんFET1個くらいでアンプがくめるはずです。
これはパーツボックスで死蔵しそう・・・
つぎに手にしたのが3.3Vの表面実装のレギュレータ。4個200円だったかな。1個50円なので、
通常のTO-220のものに比べて約50円安い。それになんといっても小型です。
ちょうど、家のパーツボックスの3.3Vレギュレータも少なくなっているので、
これがつかえるようにDAC1794-3.5基板のパターンも工夫しようかと思っています。
もっと安くしてよ〜
さて、最後は47kΩの抵抗。1/6W。これが100本で100円。
本当は1/4Wのものが欲しかったのですが、店頭にはありませんでした。
やむなし小型のものを入手。CS8416をつかいだしてから、やたら47kΩの
抵抗が減るので、ちょっと補充の意味で購入しました。いつもは金属皮膜のものを
つかっていますが、ディジタル回路ですから炭素皮膜で十分です。
1/6Wのもので妥協しました。
秋月での買い物はこんなものかな?しめて500円なり。
さて、そろそろ仕事場にいかないといけないのですが、もう1件だけ寄り道。
海神無線に向かいました。欲しいものはすこし(サイズが)大きめの抵抗。現在設計している
お気楽DAC3.5では、IV抵抗やフィルタ回路に(サイズが)大きめの抵抗をつかえるようにしているので、
そのサイズに比較的あいそうなものをセレクト。
IV抵抗には330Ωのカーボン抵抗をセレクトしました。フィルタ回路には2kΩの、金属皮膜の抵抗をセレクト。
値段はそれそれ@90円と@60円だったかな。いつもつかっている@3円の1/4Wの金属皮膜抵抗に比べるとはるかに高い価格です。
それだけのパフォーマンスを見せてくれればいいのですが・・・
抵抗といっても高いものです。
すくなくとも見かけだけは満足できそうです。しめて800円ちょっとなり。
ちょっとした息抜きの買い物でした。
完成?2008.2.24
基板のパターンを少し見直しました。たぶんこれで最終形かな?
さてどこが変わったでしょうか(笑)。
メモリーバッファー等などのDAIとつなぐには上側のDACとアナログ部が一体になったものが便利そうです。
DAIから準備する必要があるなら、DAI&DACユニットとアナログユニットの組み合わせ(下側)が便利かもしれません。
あ、アナログ部を色々といじるのなら下側の方が便利かな〜?
完成かな〜?(クリックするとPDFファイルが立ち上がります)。
|
なるほど、折角ですから左右独立給電用にパターンを変更してみましょう。
こんな感じかな?共有電源に簡単に変更できるようにジャンパーもつけておきましょう。
PCM1794の電源供給の左右独立化
とりあえず基板発注!2008.2.24
最後にチェックをしたら、何カ所かバグがありました。まだ探せば出てきそうですが
きりがない(不安になるだけ)ので、とりあえず基板の発注をかけましょう。
早ければ3月6日頃に到着するでしょう。
さて、部品集めをしなくっちゃ!
(後編へつづく)