おもむろに表面実装部品のPA、の巻き 2016.5.30
いままで色々なアンプを作ってきましたが、結構お気に入りが電流帰還タイプの「お気楽でないPA」です。
これをお気楽につくって、マルチチャンネルのパワーアンプを更新したいな〜という衝動に駆られて、
ほとんど表面実装部品で組み立てられるパワーアンプを作ってみたくなりました。ほとんどいっても、
終段のFETは無理ですが、それ以外はかなりの割合で表面実装部品にすることができるはずです。
というわけで、回路図も再度書き直し。これは、部品番号はいままではすこしばらばらだったので、少し整理しました。
部品番号を再度打ち直しました。
まずは、パターンのドラフト作成です。
まずはここまで描いてみました。
トランジスタはSMDで構成しますが、SMDのトランジスタで秋月で購入できるのは耐圧が50Vのものが多いので、
電源電圧は20V程度を想定したほうがいいかな〜という感じで考えています。
表面実装部品には 2016.6.1
たとえばエミッタ抵抗についても表面実装にしようとすると、いろいろな抵抗に対応できる必要がありそうです。
で、たとえば0.47Ωで1〜2W級の抵抗となるとこんな形のSMD部品がありそうです。
いわゆる普通の抵抗を表面実装用にリードを変形させたタイプ。
厚膜抵抗でいわゆるチップ抵抗の形です。
こんなご指摘も 2016.6.5
そうなんですよね。チップ部品の最大の問題は定格電力が小さいことです。
チップトランジスタで150mW程度。
チップ抵抗もサイズで変わりますが1608サイズで100mW、2012サイズでも125mWです。
ということで、通常のTO-92サイズやリードタイプの抵抗を代替するつもりでチップ部品をつかうと、思わぬ問題と
なることがあります。
ということで、まず消費電力の大きそうな部品をざっと試算してみました。
電源電圧20Vで、入力ゼロで計算しています。
これをみると、チップトランジスタにつては問題なさそうです。チップ抵抗については64mW、80mWのものがありますから、これらについては並列にできるようにしたほうが
よさそうです。もっとも1608でも定格上は大丈夫ですが余裕がほとんどありません。
ということで、
すこし、パターンを見直しです。
一部抵抗を並列に接続できるようにしています。直列のほうがいいかな?
パターン完成
こんな感じでしょうか。
部品面パターン。
半田面パターン
うっかり!!!
こんなご指摘いただきました。
うっかりしてました。ドライバー段のトランジスタが一番消費電力大きいんですよね。
ここは小型のチップドランジスタは使えません。
ドライバー段は最低で200mW、最大で400mWの消費電力なので、チップトランジスタは無理ですね。
すこし、パターンを修正しました。ドライバー段はSC-63あるいはTO-126、220がつかえるようにしました。
少しパターンを修正です。
基板ができました。 2016.7.2
基板ができました。
組み立てるための部品あるかな?
組み立ててみましょう! 2016.7.3
まずは使用するトランジスタを調達です。今回は2SC2712/A1162をつかいました。
その理由はランクにGRのものがあったからです。それと40個で200〜250円と安いですからね。
ちょっと考えどころだったので、終段トランジスタの駆動用のトランジスタです。
もっと大きなものをつかいたかったところですが、秋月で入手することとして、
2SCR533と2SB1260をつかいました。これらはコンプリではありませんが、
よく定格なので問題ないでしょう。このトランジスタはボルテージフォロアで使われるので、早い話が
どんな組み合わせでもいいのかもしれません。
使用したトランジスタです。
小信号NPNとして使いました。 |
小信号PNPとして使いました。 |
Q15のドライブ段につかいました。 |
Q14のドライブ段につかいました。 |
2SCR533の取り付け状況です。もうちょっと大きい表面実装タイプだとしっくりきますが、
まあ、このタイプでも問題なく取り付きます。
2SCR533の取り付け状況です。
どんどん取り付けていきましょう
まずはトランジスタと電解コンデンサをとりつけました。電解コンデンサは秋月電子の店頭でリールを
格安で売っていたので買ったものです。100uF/25V品です。
どんどん取り付けていきましょう!
まずは完成!
表面実装部品が主体なので、組み立ては早いです。なんせ基板をひっくり返してリード線を切る手間がいりませんからね。
抵抗器も極力表面実装品を選択しました。
ただし手持ちの部品にも限りがあるので、ところどころは通常のリード品を用いています。
まずは完成です。
動作させてみましょう!
動作には終段のトランジスタをとりつける必要があります。まずはIRF620(NMOS)とIRF9620(PMOS)を
とりつけました。どちらもIR社のHEX-MOSといわれるものです。
終段のトランジスタを取り付けです。
動作確認&調整
電源を接続してまずはバイアス電流とオフセット電圧の調整です。
最初にオフセット電圧をゼロになるようにVR2を調整して、次にバイアス電流をVR1で調整します。
バイアス電流は10mAに設定しました。エミッタ抵抗に1Ωを用いたので、抵抗器の両端が10mV程度になるように調整します。
バイアス電流を増やしてもオフセットは変化しませんでした。
では調整して動作をみていきましょう!
周波数特性は?
1.無負荷時の特性
まずは無負荷時の周波数と特性をみてみましょう。
ちなみに増幅率は帰還抵抗を1kΩ/100Ωの組み合わせにしているので、11倍です。
もうすこし高い抵抗値にしたほうがいいかもしれませんが、あえて手持ちの表面実装部品にこだわったので
この値になりました。
さて、周波数特性をみてみましょう。
さすがに電流帰還だけあって高域まで延びていますね。1MHzでもほとんど減衰はみられません。
無負荷時の出力 上:出力(5V/DIV) / 下:入力(500mV/DIV) | |
f=1kHz |
f=10kHz |
f=100kHz |
f=1MHz ほとんど減衰ないですね。 |
2.負荷時の特性
つぎに抵抗負荷を接続して特性をみてみましょう。負荷には10Ωのセメント抵抗を接続しました。
負荷抵抗を接続して動作確認です。
負荷をかけた場合には、スピーカの位相補償用にとりつけたL,Rの値が周波数特性に効いてきます。
本来はLについては数uH、Rについては10Ω程度が一般的ですが、手持ちを活用したということで
Lについては10uH、Rについては47Ωをつかいました。
スピーカの位相補償用のLRです。すこし値が高いです。
結果は!
やはり、LRの提供で周波数特性がすこし落ちていますが。
すこし大きなLRをつかいましたが、それでも-3dBにおいて200kHz程度なので実用上はまったく問題ないでしょう。
負荷時の出力 上:出力(5V/DIV) / 下:入力(500mV/DIV) | |
f=1kHz |
f=10kHz |
f=100kHz 少し減衰しています。 |
f=1MHz |
-3dBポイントはおよそ200kHz程度です。 |
念のため、
実測値の妥当性をシミュレーションで確認しておきましょう。
計算すると、-3dBポイントは140kHzですね。200kHzだと-5dBくらいになるようです。
ほぼ実測値は大丈夫ですね。
表面実装品にこだわってみました。 2016.7.11
秋月電子で揃いそうな表面実装部品で極力換装してみました。
コンデンサはこんなもの使いました。カップリングコンデンサは少し豪勢に高分子積層です。位相補償は横着してセラミックです。
電力用の抵抗も2W品も1Ωと10Ωをつかいました。
かなりすっきりします。
早速置き換えてみました。
BEFORE AFTER
BEFORE AFTER
すっきりしました!むちゃくちゃ薄い基板が出来そうな気がしてきました。
リード線の部品はインダクタンスが大きくなり、さらに磁性をもつリードが多いのでさらに大きくなってしまいます。
表面実装品にするとリード線がなくなるので周波数特性も好影響がありそうです。
といっても、耳で聞こえる範囲の世界ではないので、聞き分けることができるかどうかはわかりませんが・・・。
でも、こんなパワーアンプ基板も面白いかもです。
(つづく)