お気楽DAC3とメモリーバッファーDAIの組み合わせ(統合編)

お気楽DAC3の検討記とメモリーバッファーDAI検討記がバラバラだと、どこをどう更新したらいいのか
こんがらがるので一つに集約しました。

74VHC393を試してみよう!
IC自体は少し前に注文していたのですが、PCトラブル等で作る機会を逸してしまっていたのですが、
写真館のPAGE29にあるようにtoshiさんの作例にも刺激されて、試してみることにしました。
本来は私から試さないといけないのですが、反対になっちゃいました(汗)。

74VHC393はどこで買えるかというと、DIGIKEYでも取り扱っていますが、国内の通販では
サトー電気にあるようです。ここでは74AC393もあるので、これを使うのも一つの手かもしれません。

さて、74VHCを試すのはいいのですが、74393をつかっている場所は全部で11カ所あります。
すべてをとりかえるのが本道ですが、11個を取り替えるのは最初からつくるのと変わらない手間ですから
ちょっと萎えてしまいます。ということで、ねらいを定めて交換してみることにしました。

一番の懸案場所はREAD UNITのIC38です。

IC38とその周辺。

改造前に
まずはどんな波形かを記録しておきましょう。ちょうとC16の出側での波形を記録します。
まずC16がないと、大きなグリッジがでています。これではロジックICが誤動作します。
それに470pFのC16を入れるとグリッジが小さくなって、誤動作がなくなりますが容量が大きいので
少し波形も丸くなっています。
 
74HC393+470pF(C16)の組み合わせ          74HC393+C16なしの場合。


いざ交換!
まずは先についていた74HC393を取り去ります。半田をいっぱいに取り付けてピン間をすべてブリッジさせて、
半田ごてで交互に暖めながら取り外します。半田をたっぷり盛りつけて置けば、熱容量が結構ありますから、
両側のピンで半田が溶けた状態になり、素早くICを動かしてやれば簡単にとれます。
 
IC38を取り外し                         74VHC393に取り替え。

さて、取り替えたあとで波形をみてみましょう。
やはり高速なロジックに換えたためか、波形がシャープです。そしてC16がなくてもグリッジは小さくなっています。
C16(47pF)をとりつけても波形はあまり変わらないのですが、オシロの周波数帯が低くて
グリッジが観測できない場合もありますから、47pFのコンデンサはとりつけたままにしておきます。
  
74VHC393+C16なしの場合。                    74VHC393+47pF(C16)

上記は44.1kHzの信号入力時ですが、192kHzの出力を観測しても、波形は結構シャープでこれは期待できます。

VHC393+47pF (192kHz)

実際にBCK信号と併せて観測したのが下図になりますが、設計通りのタイミングになっているようです。
ちなみにBCK信号が鈍ってみえますが、これはオシロの周波数の問題でしょう。なんせ20MHzの一番の
廉価版をつかっています。

VHC393+47pF (192kHz)

ついでなので

192kHzの入力を入れるには、外部のASRCが必要でしたが、配線の取り回しも面倒なので、
お気楽DAC3にASRCとメモリーバッファーDAIを同居させることにしました。
まずはお気楽DAC3の上にASRC基板を配置します。取り付けねじピッチは同じなのですんなり
2階建てになります。この上に、さらにメモリーバッファーDAIを搭載するわけです。


まずはお気楽DAC3の上にASRC基板を配置

接続の順番は
ASRC→メモリーバッファーDAI→お気楽DAC3の順番です。
ASRCにはパルストランスを実装していないので、ディジタル出力をそのままメモリーバッファーにつなぎます。
ただし、レベル差が大きいので1.5kΩの抵抗を介してASRCのデジタル出力をメモリーバッファーDAIの入力に接続します。



動作確認!

ASRCの出力周波数を192kHzに設定して、メモリーバッファーDAIも出力周波数を192kHzに設定します。
ASRCの入力がWaveGeneratorを接続しています。

無事動作?
オシロで波形をみてみましょう。LRCKの出力周波数は192kHzになっていますね。
そしてお気楽DAC3の出力からも、所定の波形(1kHz:正弦波)が確認できました。
192kHzで動作しているようです・・・・・・ん?
しばらく波形をみていると、たまにスパイクノイズのようなものが入ります。
ん・・・1個だけVHCに交換しましたが、toshiさんのようにすべてを取り替えないと動作は安定しないのでしょう。
またロジックにHCをつかっているところは、他にもあるのでできればすべて高速タイプに交換した方がよいかもしれません。
とはいえ、多くを交換するということは、最初から作るのと手間は変わらないので、また別の機会にやってみましょう。
 
       LRCKは192kHzです。                    出力も問題なし?

ASRCをつかうときの問題点

今回の実験でおもしろいことがわかりました。ASRCは入力にゼロ信号が入っても、出力は完全にゼロには
ならないようです。下の波形をみるとわかるように-15から+15程度の出力が常にでているようです。
24Bitに対して4ビット程度の出力ですから、問題になることはありませんがメモリーバッファーではゼロリセットが
効かないことになります。
この影響を概算してみましょう。

計算するパターンは最悪を考えますが、動作周波数を192kHzとします。じつはこの周波数は関係ありません。
そしてASRCとメモリーバッファーDAIとの周波数が1Hzとしましょう(実際には0.1Hzオーダにできることは難しくない)。
そうすると、メモリーがオーバフローするのは17時間という数字がでてきます。
すなわち17時間に1回で音飛びが発生することになります。
でも、これってほとんど無視できる値かもしれませんね。


ASRCを介した出力(ゼロデータ時)


MEMORY BUFFER DAI + DAC1794DwoDAI

この接続の組み合わせは一度確認しているが、試作版でのMEMORY BUFFER DAIをつかっていたので、
念のため頒布版とで組み合わせてみた。


動作確認の組み合わせ(左:MEMORY BUFFER DAI v.2, 右:DAC1794D-woDAI v.2a)

DAI側:
5V電源はDAI側に接続。P10-12,P9-11は接続して1電源構成である。
ディジタル入力はP1,2に入力してセレクト端子(P7,8)は解放のまま。
周波数セレクトのP13-14も解放のままで44.1kHz設定。
CN1を介してDAC側に電源を供給するためにJP2は接続している。

DAC1794DwoDAI側:
電源は10Pのフラットケーブルから供給させるので配線なし。そのためJP1は接続。
ただし、PCM1794に5Vを供給しないといけないのでP4-P8は接続している。
ここでP4はディジタル電源入力端子でP8はDAC用のアナログ電源入力端子。
またリクロックは使用しないので、P1-P2は接続。水晶の搭載もなし。

  
MEMORY BUFFER DAI側            DAC1794DwoDAI側

結果は問題なく信号出力が確認できました。


信号確認。手持ちで撮影したので画像はブレブレ。

ついでに制御信号の電圧値を測定してみた。
まずはDAI単体(DAC1794Dとは未接続)の場合、
CN1-1P(DATA) 約2.4V
CN1-3P(LRCK) 2.476V
CN1-5P(BCK)  2.509V
CN1-7P(SCK)  3.071V
といったところ。

つぎにDAIとDAC1794Dを接続し、DAC側のCN1で電圧を測定。
CN1-1P(DATA) 約2.4V
CN1-3P(LRCK) 2.475V
CN1-5P(BCK)  2.507V
CN1-7P(SCK)  3.064V

という風にごくわずかですが電圧降下が生じていますが、これはダンピング抵抗のためでしょう。


ストレス解消? 2007.10.7

最近どうもストレスが溜まってきたようで、体が少しだるい。
3連休もほとんど休めず、工作が進まないせいだろうか・・・・。
こんなときには、ちょっと気力を出して半田ゴテでも握ってみよう!
というわけで、メモリーバッファーのロジックICを高速タイプに変更したものを
もう一台つくってみようと思う。

頒布の状態のメモリーバッファー基板と部品

所用時間3時間弱で完成。
作りながらパーツ箱から必要な部品を探してくるのだが、3.3Vのレギュレータが最後の1個だった。
危ない危ない! 日本橋にいったらまた買い込んで置かなくっちゃ。

さて変更したICは下記の通り、シフトレジスターのHC166,164については高速タイプの
手持ちがないので、そのままにしました。
なお、C16は22pFにしています。

変更前 変更後 個数 備考
74HC393 74VHC393 11 この変更は重要
74HC20 74AC20 1 この変更も重要だと思う。
74HC153 74AC153 1
74HCU04 74AHUC04 1

すべてを取り替える必要もないのだが、気分的な問題もありできる範囲ですべて取り替えることとした。


完成したメモリバッファーDAC。これで3台目の製作。

いざ動作確認!

目視での半田付けチェックもそここにして動作チェックにはいります。
電源をつなぐまえに、電源ラインがショートしないかだけ確認して定電圧電源に接続。
LEDも点灯し、ディジタル入力をつなぐとLED1,2の点灯間隔がゆっくりになるのでまずは
動いていそうです。

まずはメモリーバッファー単体で動作確認!


ASRC + メモリーバッファー + DAC1794D−2! 

今回のテストの目的は192kHzでの動作確認ですから、ASRCは192kHz出力を得るための変換器として必須です。
ということで、構成は
ASRC(192kHzに変換)→メモリーバッファー+DAC1794D-2
という形になります。それぞれの基板をDAC1794D-2の上に重ねて配置しました。



げ!動かない・・・・

入力にCDの信号を入れて確認してみました。でも波形がおかしい・・・どうも動いていないようです。
なんかむちゃくちゃな信号がでてきます。こりゃ、半田ミスがありそうです。夜中に半田付けしたので、
集中力がきれてへんなことになっているのでしょう。

あれ、動いていないよう〜

SOPパッケージ(1.27mmピッチ)といっても馬鹿にはできません。半田付けのあとはルーペでのチェックが必須です。
ということで、ルーペでチェックすると2カ所ほど半田がついていないところがありました。
それらを修正して、再度電源ON!

今度は無事に動き出しました。
以前は、動かないときがあったりしたら部品の不良を疑ったりもしましたが、経験的には部品の不良は皆無で、
ほとんどの原因は半田不良です。ただ、難しいのは半田不良が原因で部品を故障させる可能性もあるので、
切り分けは実際には難しいところはあるのですが・・・・


動き出しました!

ノイズは大丈夫かな?

しばらく4kHzの正弦波を入力してオシロを眺めます。
眺めること約1分間。だんだん目がつかれてきました。でもノイズらしいものはないので
192kHzでも安定して動いていそうです。
ということで、今回の変更で192kHzに対応できることがわかりました。
実際には、高速タイプに変更しなくても大丈夫なところも多いはずですが、
どこまでがクリティカルポイントかを探すのは大変です。これでよしとしましょう。

192kHzサンプルで波形。きれいに再生できています。

さてケースの実装は?
さすがにDAC、ASRC、メモリーバッファーを3段重ねにすると高さがあります。
これではケースに収まりませんが、一番下のスペーサを5mm程度に変更すれば
総高さ60mmくらいになるのでタカチの70mm高さケースにはいりそうです。

3段積みのDAC。ここまでくるとDACってわからない?

いつもつかうケースはタカチの70-23-37タイプのもので、奥行きが結構ありますから、
基板と電源だけでは結構スペースがあきます。
でも、このスペースに何かをいれようとすれば、それはそれで大変です。
どうしようかな?

このように配置すると結構スペースがあまります。


こうすれば余裕で収まりますが・・・・・・

作業再開 2007.10.20
最初はケースの加工から。ついでなので2台分の穴あけをやってしまいました。
加工作業自体はさほど時間がかかりませんが、準備や後かたづけに結構時間が
かかるので、まとめられるものはまとめて作業したほうがはかどります。



ケースを組み立てて基板を並べていきましょう。

1つめはDAC1794D-2をベースにしたもの。これにはメモリバッファーを取り付けることになりますが、
ASRCをつけるかどうかは考えどころ。

こちらは余裕のある中身

2つ目はDAC1794woDAIをもちいたDACでDAIにはメモリーバッファーを使います。電源はすこし強化しようかと
容量が稼げるように小型コンデンサを複数個搭載できる基板をのせることにしています。
こちらの作成は。基板自体の作成にも時間がかかるので、もうすこし先になりそうです。

こちらはあまり余裕がありません。

1台目完成直前!

構成は
ASRC→メモリバッファー→DAC1794D-2
という信号の流れになっています。ASRCではサンプル周波数を192kHzに上げています。
ASRCをつかうことにより、入力信号は32〜96kHzまで受けることができるので、
いろいろな機器に接続することを考えれば楽です。
ただ、この構成だと今ひとつ面白みにかけるので、全面のスイッチで2つの動作モードを切り替えるようにしました。

モード1:
 ASRC→メモリバッファー(192kHz)→DAC1794D-2
 上記で述べたようにASRCで192kHzにアップサンプルしてメモリバッファーを通してPCM1794を動作させます。

モード2:
 ASRC(スルー)→メモリーバッファー(44.1kHz)→DAC1794D-2

 ASRCのスルー機能をつかいます。こうすれば、44.1KHzのCD専用になるという制約がでますが、
 ASRCに信号を通さずに済みます。


モード1,モード2のどちらでつかうかは気分次第でしょう。


完成したASRC+メモリーバッファー+DAC1794D-2。ネーミングはどうしよう?


基板はトータル4段重ねになっています。それぞれのスペーサは15mmで、一番下のみ5mmです。


背面はすっきりと入力は同軸1系統のみ。


前面の右側はモード切替スイッチ。

あとは、レタリング(というかシール?)して完成です。

2台目にとりかかり!

まずは簡単な電源基板から作成開始します。このくらいなら
平日にでもやろうという気がおこります。


2007.11.3
遅々とは進みますが、ようやく電源基板も完成。
整流ダイオードは不要なのでジャンパーをとばしています。

レギュレータ基板が完成。整流ダイオードはありません。

電源基板が完成したところで、ケースに収めてみます。
だんだん、それらくしなってきました。


2階立てになっているスリム電源は単電源仕様にしていますので、ブリッジのリードは
曲げて取り付けています。


DAC基板の組み立ても完了。オペアンプにはOPA134を取り付ける予定です。
PCM1794周辺にOSコンをつかった以外は、普通の工業品をつかっています。


完成!
 DAC基板とメモリーバッファー基板を組み込んで完成です。






(つづく)