PCM5102を調べてみよう!の巻き。 2014.10.14
こんな書き込みをいただきました。
Paspberry PIについては別のページで遊んでみるとして、ここではPCM5102をすこし調べてみましょう。
PCM5102は16〜32Bit対応のDACですが、ノーケアでした。TI社のPCMシリーズはDIGIKeyサイトで
たまにチェックするのですが、アナログ出力タイプのDACだから思わずスルーしたのか、あるいは
最近DIKIGEYのラインアップにあがったのかはわかりませんが、結構おもしろそうなICです。
なにがおもしろいかをすこしリストアップしてみましょう。
1.32ビット対応
品種的には24ビットが主流の中で、32ビット対応のDACは結構珍しい部類にはいります。
2.システムクロックは3072fsまで対応。
これはすごく珍しいです。いままでのDACは高くても768fs程度が上限でしたが、それ以上のシステム
クロックをうけつけます。通常は512fs程度が常用範囲で、一般的には128fsあるいは256fsをつかう場合
が多いでしょう。たとえば48kHzのサンプル周波数の場合のシステムクロックは128fsであれば6.144MHzで、
256fsでは12.288MHzです。512fsであっても24.576MHzです。これに対してPCM5102は49.152MHz、すなわち
1024fsのシステムクロックをうけつけることができます。ES9018Sではシステムクロックの周波数が高くなるほど
音質がよくなる経験もあったので、このDACでもシステムクロックの高周波数化がどのような効果を出すかが
興味のある点です。
それとシステムクロック自体不要とすることもできるようです。SCKをGNDに落としておけば、DATA、LRCK,BCKの
3線のみの接続でうごきます。これがRaspberryPIとの接続を容易にしているようです。おそらくIC内部でBCKを
逓倍してシステムクロックを生成しているのだと思います。
3.音声出力にカップリングコンデンサが不要。
PCM5102は3.3Vの単一電源で動作させることができますが、おもしろいことに音声出力にカップリングコンデンサ
が必要ではありません。すなわちゼロ電位を基準にして音声出力が得られます。一般的な単電源動作のDACの
電圧出力はVcc/2を基準電位として出力されるので、DC成分をカットするためのコンデンサが必須になります。
ではなぜPCM5102がそういうことができるかといえば、IC内部にチャージポンプ型のDC-DCコンバータがはいって
いて内部で負電源を生成しているからです。そのため、外付けに1本の抵抗と1個のコンデンサでの簡単なLPFを
備えるだけで出力をえることができます。ただしチャージポンプを動かすために、外付けのコンデンサがいくつか
必要にはなってしまいます。
PCM5102はダイレクト出力が可能です。
主たる特徴はこんなものでしょうか。もちろんDレンジやS/Nなどもすばらしい値を示している点も特徴といえば
特徴でしょう。
PCM51XXラインアップ
このDAC群はH/W制御、S/W制御が可能なもの、そしてDレンジの違いなどで次のような表のラインアップが
あります。性能が高くなるほど値段が高いようですが、おそらく選別しているのでしょう。
S/N | THD+N | 参考価格 (DIGIKEY) |
制御方法 | |
PCM5100 | 100dB | -90dB | 361円 | H/Wのみ |
PCM5101 | 106dB | -92dB | 434円 | H/Wのみ |
PCM5102A | 112dB | -93dB | 667円 | H/Wのみ |
PCM5121 | 106dB | -92dB | 436円 | H/W and S/W |
PCM5122 | 112dB | -93dB | 840円 | H/W and S/W |
PCM5141 | 106dB | -92dB | 746円 | H/W and S/W |
PCM5142 | 112dB | -93dB | 926円 | H/W and S/W |
つかうとすれば
すでに販売されている基板などを見ると、PCM5102をシングルで使ったものが多いようです。
でも、折角作るならさらに高性能化を狙って差動構成にしてみたいとおもいます。
差動構成にするには・・・・
一番簡単なのは、1つのPCM5102に非反転のDATAを入力して、もう一つのPCM5102に反転DATAを入力して、
それぞれのLR出力の差動にする方法です。ちょうど下図のような構成です。
この方法の利点は回路構成が簡単なことです。そして2つのDACに共通して乗るようなノイズは差動構成で除去できます。
しかし、実際にはそれぞれのDAC素子から発生するノイズが共通することはないでしょうから、下記の構成がどの程度の効果
があるかはよくわかりません。ちょうどPCM1794などが、DAC素子毎に+出力と−出力が出ていて、それぞれで差動をとっている
ことを考えると、下図はあまり得策でないかもしれません。
簡単な差動方式
差動をとるなら・・・・
すこし面倒ですが、DATAの入力部分に変換回路を挿入して、それぞれのDACがLあるいはRチャンネルの
独立した出力として、DAC素子毎での差動を取れるようにしたほうが原理的には効果がありそうです。
差動にするなら、やっぱりこの構成がいいでしょう。
具体的に実現するには
では、どうやって実現するかを考えると、あまり難しく考える必要はありません。
もとのデータと、32BCK分および64BCK分をシフトしたデータを作っておいて、それらを組み合わせれば
よいことになります。丁度、下の図に概念的なタイミングチャートを示しています。
こんな感じの変換回路を構成します。
具体的な回路は下図のような感じになるでしょう。シフトレジスターをずらりと並べた形になります。
具体的な回路構成です。
実現するかどうかは別として、こういった回路を考えてみるのって結構楽しいです。
回路とパターンを描いてみましょう。2014.10.17
回路図はドラフトですが、こんな感じです。→PCM5102TRANS.pdf
回路はパターンカットで色々と遊べるように、しておきましょう。
PCM5102は20pでPCM5142は28pですが、ピン配置に互換性があるので、
どちらでも使えるようにしてみました。
PCM5122あるいはPCM5142をつかうときはハードウエアモードでの動作になります。
CN1はPaspberry PI TYPE Bと接続し易い配置にしています。
パターンはこんな感じです。こちらも勿論ドラフトです。
PCM5142が到着! 2014.10.18
ハードウエアモードで使うつもりなので、PCM5102でもよかったのですが、あとで色々と遊べるかもしれないと思い
PCM5142をDIGIKEYで購入しました。PCM5102に比べると300円くらい高いかな?
PCM5142が届きました。
いつもの変換基板に取り付けで動作チェックの準備です。チャージポンプ用のコンデンサや
カップリングコンデンサはこの上に載せておきます。そうすれば、ブレッドボードに何回もとりつけても
必要な配線が最小限に抑えることができます。
変換基板に実装して、必要なコンデンサを取り付けます。
まずは単体で動作!
I2S出力に設定したRenew FFASRCのPCM出力を接続して動作をみてみましょう。
まずは単体で動作確認です。
デルタシグマだとはおもいますが、意外と綺麗な波形がでてきます。
ちなみにLPFは入れていません。
単体での出力波形です。LPFはありません。
ロジックの論理回路をチェックしてみましょう!
回路図どおりに組み込んで・・・・といきたいところですが、部品箱のDIPタイプのICはさほど種類がありません。
74LVC125がないので、74AC245で置き換えてつかっています。
ブレッドボードで論理回路のチェックの様子です。
論理回路は大丈夫のようです。
動いているかどうかの確認は、一つのICの左右の出力から、1チャンネル分の位相が反転した信号がでてくるかどうかですが、
大丈夫のようです。
論理回路は問題ないようですね。
パターン完成しました。2014.10.19
こんな感じで完成。
基板もできあがりました。 2014.10.28
新潟、四国に行っている間に基板が出来上がりました。
部品面の様子です。
裏面の様子です。
早速組み立ててみましょう。部品点数は比較的多いところもありますが、ほとんどが表面実装部品ということもあり、
製作にはさほど時間がかかりません。リード部品は部品を取り付けて、基板を裏返して半田付けして、リードを切断する
といった手順が必要ですが、表面実装部品だと基板を裏返すことやリード線を切断するといった作業が不要ですからね。
基板が完成しました。お出かけ用の写真です。あれ?1個抵抗が抜けてる・・・。
動作確認!
この基板の動作フォーマットはI2Sのみなので、そのフォーマットがだせるRenew
FFASRCと接続して動作確認です。
Renew FFASRCと接続して動作確認です。
RenewFFASRCの設定は192kHzに設定です。
で、問題なくPCM5102のLR出力からそれぞれ、モノ信号の正負信号が得られることが確認できました。
PCM入力での動作確認です。
つぎはRaspberry Piに接続してみよう!
ソースをRaspberry Pi TYPE B につなぎかえて、さらのヘッドホンアンプを接続して試聴してみました。
Raspberry Pi → DAC51X2 → EVC1159で接続して試聴です。
接続コネクタはCN1へ。SELとしてP11,P12を短絡させます。
Raspberry PiにはいつものVOLUMIOを搭載して、ネットにつながったPCより音楽を送信します。
ソースはWEBRADIOのジャズ放送を選びました。
クリヤーな音が聞こえてきます。Raspberry PI上に実装したDAC51X2 MINI に比べるとよりクリヤな感じです。
差動による効果かな?それともバッファーアンプが入っている効果かな?
と色々と考えながら、今日も遅いので就寝しましょう。
(つづく、かな?)