電子ボリュームの巻き

ハムさんの日記にもあったように電子ボリュームを搭載されたアンプの新製品がでるようです。
ハムさんの日記 → http://d.hatena.ne.jp/hamtaro/20060825
メーカサイト   →  http://www.marantz.jp/ce/news/press/2006/20060725sc7s2.html

価格はなんと70万円以上もします。私のオーディオシステムが丸ごと買えそうな値段でしょうか(笑)。
このような値段のアンプには全然触手が動かないですね。え、なぜかって?
だって4000万円もするようなフェラーリをみても物欲が全然沸かないのと同じことですよ。私の守備範囲外です(爆)。

ちなみに私のシステムで一番高いのがスピーカです。というのもエンクロージャーをタテマツ音工さんで作ってもらったので、
一気に価格が高くなっています。やはりプロに作ってもらうと塗装も良好で、長く使いたくなる仕上がりです。
もし箱も自作なら、ほんとに全体はプアーなシステムなんです。でも価格はプアでも、中身はかなり充実しているとは本人は思っています。

もっともコストがかかったスピーカ。塗装はプロだけあって綺麗です。

電子ボリュームを使うきっかけ
さて、電子ボリュームは私も以前に色々と試したことがあります。
もともと、いわゆる普通の2連のボリュームのギャンギングエラーを避けるために採用したのがきっかけです。
というのも日頃は小さい音量で使うので、ボリュームをほとんどまわさないのですが、
最初につかったコスモの通信用VRは最初に左から音がでて、次に右から音がでてといった感じです。
音そのものはよいとしても、音量差には我慢できないものがありました。

最初の電子ボリューム(VCAタイプ)
最初につかった電子ボリュームは三菱のもので、電圧コントロールタイプ(VCA)のものです。
もともとの用途は廉価オーディオ用でしょう。音はそれなりでした。
ただ問題は電源を切ると制御電圧がゼロに近くなりボリュームが最大になってしまいます。
そのため音楽をならしながらアンプの電源を切ろうものなら音が突然大きくなって(烈しい騒音)、びっくりしてしまいます。
MUTE回路なしでは使えない状態でした。まあ、これについては音があまりよくなかったのですぐにやめました。



    三菱M5241L。VCAタイプの電子ボリュームで廉価でした。



 電圧−減衰特性。電圧ゼロでボリューム最大になるなんて、つかいにいぞ!

次なる電子ボリューム(アナログSW+抵抗アッテネータ方式)

市販の電子ボリュームは諦めて、次に取り組んだのがアナログスイッチと抵抗で組んだディスクリートの電子ボリュームです。
アッテネータを2段に分けて、前段を8dBステップの8段階、後段を1dBステップの8段階にして8×8=64ステップとしました。
マイコン制御は面倒だったので、12BitのAD変換器の下位6ビット出力をそのままアナログスイッチのデコードとして入力しています。
これでー63dB〜0dBまで1dBステップにて調整できる優れものの完成です。
とくに不自由な点はなかったのですが、なにぶんAD変換器の出力を直接つないでいるのでビット境界になると1dBの差で音量が変わります。
音量が変わるだけなら大丈夫ですが、切り替わるときのグリッジ音がノイズのように発生してしまいます。
ほんのすこしボリュームを動かせばノイズは消えますが、やはり面倒です。
それにつかったアナログスイッチが悪かったのか、音にすこし劣化を感じました。
まあ、機会があれば部品の交換でもみようとは思っていましたが、グリッジノイズだけはどうしようもありません。
これは一時期にヘッドホン用のボリュームとして使っていましたが、しばらくして使わなくなってしまいました。

自作のディスクリート電子ボリューム。部品を奢れば、もっと高音質がねらえたかな?

やっぱり普通のボリュームに戻る(抵抗アッテーネータ方式)
この時点で電子ボリュームはやや諦めモード。で次に取り組んだのは原点復帰というか、
23接点のロータリースイッチと固定抵抗を組み合わせた抵抗アッテネータです。
これは、音の劣化もなく音質面ではよかったのですが、いかんせん操作フィーリングが悪いのです。
とにかくスイッチが硬い。ボリュームをまわすににしっかりとつまみを握らないといけないなんて・・・・。
スイッチの板バネの強度等を調整しましたが、やわらかくしすぎると、逆にスイッチの接点の摩擦する感じがつまみに伝わってきて、
これまた雰囲気がよくありません。

最後はこれかな?(普通のボリュームに戻る)
そうこういいながら、秋葉原でアルプスの標準サイズのデテントボリュームをみつけそれに交換して、
今にいたってます。このボリュームで特段不満はありません。


これはミニデテント。標準サイズは生産中止の様子。

最近の電子ボリュームは高機能
さて、話がそれましたが電子ボリュームのよいところはなんといっても、ギャンギングエラーがない(厳密にはあるが、無視できるレベル)点と、
設計に自由度がでる点でしょう。とくに後者は重要な点です。
通常のボリュームをつかうと、どうしてもシャフトを延長したり、あるいはアンプ基板から配線を伸ばして全面パネルまでもってこなくてはいけません。
とくに配線を伸ばすとS/N劣化の要因になってしまいます。電子ボリュームならアンプ基板の入力から最短位置におけますから、S/Nの点でも有利です。
それにICの内部で音量変化時にノイズがでないように、入力信号のゼロクロス時に音量が変わるような工夫もしてあります。
また、ホームシアターなどをしようものなら6連くらいのVRが必要ですが、電子ボリュームなら複数チャンネルの同時調整もいとも簡単にできます。
音質については、色々な意見があるので省略しますが、カタログ値はすばらしいものがあります(PGA2310でD-rageが120dB)。
HiFi用にも十分に、というより実装のメリットから考えると普通のVRよりも高性能かもしれません。
それと電子ボリュームの最大のメリットとして、オーディオにはあまり関係ないかもしれませんが、ゲインの設定が定量化でき、
同じ数値に再設定できるます。そしてPGA2310のゲインエラーはなんと0.05dBです。
ちなみに普通のAカーブのボリュームをつかって同じ出力値に再設定するのはほとんど不可能です。
すこしのつまみのずれでも出力が10%程度は簡単に変わってしまいます。

まあこのようにメリットの多い電子ボリュームですが、難点といえばマイコンが必要になる点でしょうか・・・・

PGA2310をつかってみた



PGA2310はDigiKeyで容易に入手できます。使い方はマイコンと3線シリアルで接続すれば、C言語で10数行のプログラムで動作可能です。
周波数帯域も1MHzくらいまで延びていますから、前述のようにD-rangeおよび歪率の点からも、低周波数の計測器にも十分につかえます。
とくに電子ボリュームの特徴である、「同じゲインに再設定ができる」という利点が大きいです。
これをロータリースイッチで組もうと思ったら出来ないことはないのですが、抵抗値選びや配線が大変です。
それに配線が複雑になればなるほど外来ノイズに弱くなってしまいます。

で、実際に作った計測器のプロトタイプ(これは趣味で作ったもの)はこれです。

用途が判らないようにしています(ごめんなさい)。


一応中味は公開します。でも主要なICは判らないようにしています

この計測器の中には3個のPGA2310が入っています。1つはセンサ信号を増幅するメインの役割。
残りの2つは、勿体ないつかいかたですが、ヘッドホンのボリュームとアラーム音のボリュームとしてつかっています。
とくにヘッドホンやアラーム音のボリュームは普通のAカーブのボリュームでよかったのですが、
パネルの配線数を極力減らすことを目的として、あえて高価なPGA2310をつかっています。信頼性重視です。


真ん中のPGA2310がセンサ信号増幅用。右のPGA2310はアラーム音量の調整用。


PGA2310のプリには高性能なOPA627を使用。ここでのゲインは60dB

PGA2310はゲインがおおよそ-90dB〜30dBですが、1以上の増幅率とするため0〜30dBの範囲をつかっています。
そして2ch分をカスコード接続することによって0〜60dBの増幅器としてつかっています。
ゲインはロータリーエンコーダをつなげて0.5dB単位で調整できるようになっています。

Gはセンサゲイン。SPはアラーム音レベル。HPはヘッドホンレベル。
とくにアラーム音の調整にPGA2310をつかうのは、完全なオーバークオリティです。
LCDは秋月のドットマトリクスタイプです。バーグラフを書くのが便利です。

計測器という用途からわかるように、その前段にはプリとしてオペアンプがはいっています。PGA2310自体の入力インピーダンスが高くないので、
バッファーは必要なわけですが、初段でゲインを稼ぎたかったので前段のオペアンプで60dBのゲインを得ています。
ちなみに、そのオペアンプはOPA627をつかっています。
最初はもっと安いものをつかっていたのですが、さすがに総合ゲイン120dBにすると、ちょっと粗がでてきたのでOPA627をつかいました。
これはとても安心して使えるICです。お値段はすこし高いのですが、計測器の心臓部だと思えば納得できるC/Pです。
(オーディオ用にはもったいない気がいつもしています・・・・)

話はオーディオとは関係ない話になってしまいましたが、PGA2310は高性能で計測用途にも十分につかえます。
いづれオーディオ用にもつかってみようかと思っていますが、マイコンプログラム(PICアセンブラなど)が下手なのでなかなか取り組むきっかけがありません。
H8くらいのマイコンならC言語をつかって組めるのですが、それではオーディオ用としてはたいそうですからね。

それよりMy any style さんのところでWM8816をつかった企画が進行中のようですから、こちらに期待です。

(おしまい)