電子ボリューム(その5) 2006.10.2

さてNOSDAC3の発送も一段落ついたので、電子ボリュームの検討も本格再開しましょう。
すでに、基板についてはすこしミスをチェックした上で試作に出しています。

(クリックすると大きくなります)

右上の基板は6chの入力切り替え用のリレー基板です。
これらを使えば、プリアンプを構成することができます。試作はこんどの週末にでもできるかな?

レビンソンのプリの仕様をみてみよう。

いまのうちにソフトの構成も考えようと思っています。今回のR-2R型の電子ボリュームを採用している
レビンソンのプリの仕様をみて参考にしてみようと思います。ハーマンインターナショナルのHPからレビンソンの
ラインアップをのぞくことができます。しかし、レビンソンの仕様を見るのは今回が初めてです。
なんせ、高すぎるので小生の守備範囲外です(笑)。No32Lというのが、ハイエンドモデルのようです。
なんと価格は320万円!ウギャー


レビンソンのNO32L(出典:http://www.harman-japan.co.jp/product/marklev/no32l.html)

ええっと、電子ボリュームに関する記載を抜粋してみると、


プリアンプの最重要機能であるボリュームコントロール部に、マドリガル独自のディスクリート構成ステップアッテネーター・ボリュームを採用。
チャンネル当たり66個のビシェー製プレシジョンレジスターを組み合わせることで、実に65,000段階の音量調整能力を実現。さらには、
通信衛星用に開発された最新素材“Arlon N-25”プリント基板の採用と、独立した専用レギュレータの装備により、
ノイズレベルを測定限界値とされる-140dB以下にまで低減しています。0.1dBステップの細かさで、
驚異的レベルでの高純度かつ高精度な音量調整が可能な、まさに究極のアナログボリュームを備えています。」

ボリュームコントロールレンジ 80.0dB(594ステップ)
ボリューム解像度 目盛り23.0(-57dB)以下:1.0dBステップ
目盛り23.0(-57dB)
以上:0.1dBステップ

といった感じです。
さて、興味を引くのはなぜ-57dBを境にして0.1dBと1dB刻みを変更しているかという点と、
減衰量がなぜ-80dBまでなのかという点です。
これは16ビットのR-2Rラダー方式での減衰量を計算してやればすぐにわかります。

下図の横軸は全体減衰量、縦軸は1ステップあたりの減衰量変化を示しています。

 
 -90〜-40dBの減衰量と減衰量ステップの関係         -65〜-45dBの減衰量と減衰量ステップの関係

すなわち上図(左)からわかるように、減衰率1dBを実現するには-80dB以上が必要です。

#厳密にいえば-80dBでは1.2dBステップ程度ですからカタログ値の1.0dBというのは間違いですね。有効数字を考えて1dBと書くのが正しいでしょう。
#まあオーディオ装置ですから計測装置のような精度に対する厳密な保証は不要ですし、適度なリップサービスも重要ですからね(笑)。

さて同様に上図(右)からわかるように、減衰率0.1dBを実現するには-57dB以上が必要なことがわかります。

#これも厳密にいえば0.1dBとあっても実際には0.06〜0.14dBくらいまでステップ分解能はばらつきます。

こまかいことはさておき、実用域の音量はおそらく-50dB以降でしょうから分解能的に約0.1dBもあれば十二分です。
人間の耳では0.1dBの音量差(約1%)なんてわからないでしょう。
そして-57dBあたりを境に1dBと0.1dBの分解能の変化をつけているのは、ダイナミックレンジを広くとりつつ分解能を稼ぐやり方としてはいいですね。
これはいただきです。実際には
 -80〜ー57dB 1dBステップ
 -57〜-0dB  0.25dBステップ
として全体を256ステップ程度に抑えようかと思います。あ、でもつかうマイコンのAD変換精度が10ビットあるから0.1dBステップでも出来ますね。
でも実際には0.5dBステップもあれば十分なんだけどな〜・・・・ブツブツ。

もう一つ気になるところはプレシジョンレジスターという表現もあります。日本語にすれば「精密抵抗」といったところですが、
どの程度の精度をつかっているのでしょうね? R-2RラダーをDACにつかった場合は抵抗値の精度がモロに音質に響きましたが、
電子ボリュームにつかった場合にどの程度影響があるかは気になるところです。ということで、抵抗の誤差がどの程度影響を与えるか
考察してみましょう。0.5dBの減衰ステップを規定したときの、設定減衰量における誤差について、
抵抗値の誤差が0%のときと「1%抵抗誤差+アナログスイッチの抵抗誤差」を比較してみました。
その結果は下図のようになります。

 
          抵抗値誤差1%+アナログスイッチ抵抗値誤差               抵抗値誤差ゼロ+アナログスイッチ抵抗0Ω

なんじゃ、ほとんど変わらないよ〜
0.5dB程度のステップを与えるのなら、精密抵抗なんて必要なさそうです。懐に優しい@3円の1%金属皮膜がベストかな?
ちなみに、0.1dBステップで計算し直しても下図のとおり、ステップ減衰量にほとんど差はありません。
ということで高価な精密抵抗をつかう意味はまったくなさそうです。
もっとも、結果的に精密抵抗が音質的にもよかったことがあるかもしれません。

          抵抗値誤差1%+アナログスイッチ抵抗値誤差               抵抗値誤差ゼロ+アナログスイッチ抵抗0Ω

基板到着 2006.10.6

いつものP-BANに発注していた基板が到着。品質はよいし、クリアランスがルール以下の小さいところはいつも連絡もらえるし、
頼んでおいて安心である。もちろん不具合が生じる場合もあるが、そのときの対応も丁寧なところだ。
しかし少量作る場合はちょっと高い。いや、少量でも安いと思っていたが、最近知ったPCBCARTなるところが少量でも安いらしい。
試作レベルならそちらをつかうことも今後は考えていくひつようがあるでしょう。
まあ、それは次回以降の話しということです。

到着した試作基板群

さて、目の前に基板があるので早速部品を実装していきましょう。

コントローラ基板を組み立てる。

まず組み立てるのはコントローラ基板からです。これはほとんど挿す部品もないので、あっというまに完成します。
使う機能によって必要な部品点数も変わりますが、今回は試作ということもあり、すべてを実装しておきます。
なお、コントローラのモード切替用に実装しているDIPスイッチですが、とりつけるスペースななくてCPUボードの下になっています。
実用時には切り替えることもないのでこの位置でもいいのですが、今回は試作ということもあって色々とテストすることになりますから、
切り替えやすいように基板の裏側にとりつけておきましょう。

ほぼ完成したコントロール基板


DIP−SWは基板の裏側に実装

つかうCPUボードは秋月のものですがH8/3048あるいはH8/3052のどちらも試したいので、
取り付けるレギュレータは12Vのものとしました。それに12Vをつかっておくとリレーを動作させる電圧を得るのも便利です。

さて、CPUボードがまずきちんと動作しているかを確認してみましょう。
まずは液晶をつないで、テストプログラムを書いてみましょう。
#H8/3052マイコンの使い方については別途詳しくかいてみたいと思います。
あ、その前に液晶をつながないといけないですね。ここで使う液晶は秋月のグラフィックタイプのものです。
液晶モジュールを基板にとりつけるためには端子を取り付けておく必要があります。


液晶モジュールにとりつけた端子

液晶の接続は2パターンあります。
ひとつはコントローラ基板に直接的に接続する方法です。もうひとつは、フラットケーブルをつなぐ場合です。
コントローラボードに直接つなげるのは最終的にLCDは使わず動作確認のためだけにつけるのはよいでしょう。

        
コントローラ基板に液晶モジュールをとりつける場合     液晶モジュールをとりつた状態

もうひとつはフラットケーブルで接続する場合です。この場合、液晶の後ろ面から端子を取り付けて配線ケーブルを延ばすことになりますから、
端子のPin1とPin2が入れ替わることになります。
これは何をいっているかわからないかもしれませんが、実際に取り付けて配線が正しいかどうかを確認しようとしたらすぐにわかることです。
そのため、CPUボードのLCD端子にはPinの偶数列と奇数列が入れ替えられるようにパターンを描いています。

        
フラットケーブルで液晶モジュールをとりつける場合     液晶モジュールをとりつた状態

さて適当なテストプログラムを書いて、動作確認。無事LCDに文字が出ましたので動作はOKです。


まずは液晶が動くことを確認しました。

仮のソフトを書いておこう!
ボリューム基板の動作確認にはコントローラが必須ですから、まずは簡単にAD変換器の出力をそのままシリアル変換して出力するプログラムを書いておきます。
AD変換器自体の分解能は10ビットなので6ビット分を上位にシフトして16ビットで出力します。
下位6ビットについてはわかりやすいように101010のコードを与えておきます。
ボリューム用のAD入力には10kΩのBカーブ可変抵抗器がとりついています。


AD変換値の表示.上から10進、上位2進、下位2進

電子ボリューム基板製作に突入!
では、つぎに組み立ててチェックするのはいよいよ本丸の電子ボリュームです。
これも部品点数はさほど多くはありません。小さい部品から粛々ととりつけていきます。
チップコンデンサの取り付け数はおおよそ20個程度です。
あ、最初はディジタル部の動作チェックが必要ですから、まずはその部分(ロジックiC)のみ組み立てます。


ディジタル部のみが組み上がった電子ボリューム基板

コントローラ基板とは10Pのフラットケーブルで接続します。
シリアルデータ転送なので、少ない配線で接続することができますから、ケース内での配置の自由度は高いでしょう。

テストの様子。

この状態で液晶の表示とボリューム基板のアナログスイッチをコントロールする74HC4094の出力が一致することを確認します。
ふうー、問題ないようです。

肝心のアナログ部の実装!
これで心配なくアナログスイッチ、R−2Rラダーおよびアナログ部の組み立てができます。
では、一気にくみたてましょう。部品点数は多いのですが、同じ値あるいは同じ種類の素子をつかうので、
あまり考えずに半田付けしていけますからそれほど時間はかかりません。
R-2Rラダーの抵抗値は1.8kと910Ωをつかいました。完全に2倍になっていないのはアナログスイッチの抵抗値を考えているからです。
ほんとうはアナログスイッチ抵抗を加えても完全に1R、2Rにはなりませんが、少々の誤差があっても問題ないことは、
いままでの検討で判っています。


動作確認のための最小構成の実装が終わった状態。


抵抗は1.8kと910Ωを使用

この段階ではまだミュート用のリレーはとりつけていまません。
なんせ、このリレーもソフトで動作させることになりますから、まだそこまでは手が回っていません。
まずは。最大のチェックポイントである電子ボリュームとして動作するかどうかです。
入力に適当な正弦波を入れて、出力を確認します。わくわくどきどき。

動作確認

ボリュームを操作したときに、出力の波形が無事大きくなったり小さくなったりします。
これが確認できるとホットします。どうやらボリュームとしての動作は問題ないようです。
また100kHz入力時でも振幅減衰も有りませんから、周波数特性も問題なさそうです。

 
         −0dB時 1kHz                     約-20dB時 1kHz


         −0dB時 100kHz


さて、残りの部品を実装しよう!

1枚つくるのも、2枚つくるのもさほど手間も変わらないので一気に2枚つくりました。これでステレオ分です。

ステレオ分できあがり

一気に音だし!
基板ができあがったことなので、一気に音だしに入ります。
入力にはNOSDAC-ORINALをつないで、出力は電流アンプ(お気楽でないアンプ)に接続します。
そして、おそるおそる電源ON!無事音が鳴り出しました。
気になるノイズもなく、いい感じです。音量変化もなめらかです。
と、しばらく聞き入ってしまいました。


まずはバラックで音だし!

つぎはソフトの充実だ!
さて、音がでることも確認できました。あとは、使いやすいようにソフトを充実させていきましょう。
あとボリュームにロータリーエンコーダも試してみたいと思います。
表示についてもLCDは表示できる情報量は多くてよいのですが、なんとなく無機質な感じがします。
ニキシー管あたりでデコレーションでいればおもしろのですが、結構高いこともありLEDあたりをつかって
レトロっぽくしてみようかとも思っています。
16Bitマイコンをつかっていますから、いろいろな処理が出来るでしょう。
でも、当面は基本機能の充実が先決です。

秋月で買った電子ボリューム用の部品たち

なかなかうまくいかないな〜2006.10.9

週末の各種行事も終え、再び電子ボリュームの検討に着手していますが、ちょっと重たい課題に直面。
音楽の再生時はもったく問題ないのですが、ボリュームを動かすと「チリチリ」としたノイズが入ります。
波形をみてみると、アナログスイッチの切り替わり時にグリッジがでていいるようです。
ノイズの要因が、このグリッジが原因かどうかは直接的には確認できていませんが、原因としては濃厚です。
ボリュームを動かしたときにでるノイズの量はほぼ一定しているようです。
無音時にも出ますから、ひょっとしてアナログスイッチの中に溜まったチャージの放出かな?
ボリュームを動かしたときに「チリチリ」としたノイズは抑制できるかな?


アナログスイッチ動作時のグリッジ(下)。上はアナログスイッチの状態(とあるビット)


原因探り開始!

グリッジの発生特性をしらべていきましょう。フル実装のボリューム基板で試行しだすと
ぐちゃぐちゃになるので、シンプルにアナログスイッチ1個だけの回路でチェックしていきます。
本来はユニバーサル基板で組めばいいのですが、試作基板もまだあるので時間が勿体ないのですが、
そちらをつかいます。


テストのための回路。シンプルに1回路のみ。


テストの様子。もったいない基板の使いかたですが時間(手間?)短縮です。

1.ノーマル状態

単独の回路の状態でもグリッジがでています。結構リンギングが多いことを考えると、やはりどこかでCR共振しているのでしょう。
下図の上側はアナログスイッチの切り替え信号で、下側が出力です。アナログスイッチはLOWレベルでスイッチONになりますから、
OFF→ON次に高いレベルの短いグリッジがでています。

R1=1kΩ、R2=360Ω、R3:なし、C1:なし (100kHzで切り替え)

2.試しにC1を追加
IV抵抗にパラレルにC1(1000pF)をついかしてみました。グリッジレベルは1/5程度に小さくなります。
(オシロのCH.2の縦目盛りが1V→200mVになっている点に注意)
ちょうどLPFが入った状態ですが、問題なのは右側のグリッジの裾野が広がっています。
これでは可聴域の信号となってしまいます。これが主な問題でしょう。

R1=1kΩ、R2=360Ω、R3:なし、C1:1000pF(100kHzで切り替え)

2.試しにR3をいれてみる。
アナログスイッチ内のチャージが問題なら、それを放出させるためにR3(100Ω)を追加してみました。
もともと部分の電位は0Vなので、抵抗にはほとんど電流は流れないはずですがスイッチの出力インピーダンス
を低くする効果があるかもしれません。
おもしろいことにグリッジは正のみであることがハッキリわかります。すなわちアナログスイッチ内で正電圧の
チャージが溜まっているということなんでしょうか?いずれにしてもON時に大きなグリッジがでます。
でも、本当にこのグリッジは聞こえるのだろうか?

R1=1kΩ、R2=360Ω、R3:100Ω、C1:なし(100kHzで切り替え)

3.もうひとつ気になるところは
スイッチの切り替わりで500uV程度のレベル差があります。これはアナログスイッチ内の抵抗値ばらつきに起因
するものです。この差であればボリュームを動かしたときに、ノイズとして聞こえる可能性はありますが
あまり大きなノイズにはならないと思われます。

R1=1kΩ、R2=360Ω、R3:なし、C1:なし (1kHzで切り替え)


判ったことは
(1)アナログスイッチ単体でもグリッジノイズがでる。それもON時に大きい。
(2)グリッジにLPFがはいると、波形の裾野が広がって可聴域になる可能性がある。

といったところでしょう。やはりグリッジそのものを減らす工夫をしないといけないようです。

こんな手は? 2006.10.12

森さんからこんな投稿をいただきました。
「5612 電子ボリュームのノイズ;1つ調べて欲しいのですが 森 秀樹 - 2006/10/12 22:14 -
ちょっと気になったので、1つ簡単に実験出来ればやってほしいのですが、
チャージインジェクションの問題かもしれないので、制御信号を正弦波にして
試すのは難しいでしょうか。 」

なるほど、急にON/OFFをするからチャージの放出が早いわけでグリッジが立つわけで
ゆっくりON/OFFすれば徐々にチャージが放出されるわけでグリッジが低くなるということでしょうか。
でも、制御信号が正弦波波になると内部のFETをアナログ的にスイッチするのかな?

論より証拠、ちょっとやってみましょう。
入力に発振器の正弦波を入れるので負側に振れないように入力をダイオードでクランプしておきます。

ちょっと入力部分を修正

では波形を矩形波、三角波、正弦波と変えて入力してみましょう。


矩形波の制御信号の場合。


三角波の制御信号の場合。


正弦波の制御信号の場合。

ん・・・どれも変わらないですね。次の手を考えましょう。

次の手は?
ミューティング回路の定番のこの石を使ってみようと思います。
ソフトでグリッジの立つ間をこれでマスクしてやろうという手です。でも、これで駄目ならお手上げかな〜


この石の手持ちは内ので通販で購入。@15円でした。
送料のほうが高かったけど、買いに行く時間と交通費を考えると通販の方が安上がりです。

通販で届いた現物。

取り付け場所は、IVとバッファーの間に挿入しました。
マスクゲート信号は予備の制御線があったので、間にHC04を入れてバッファしたのち、
トランジスタを駆動します。追加したデバイスはユニバーサル部に組みました。こういったときに
ちょっともでユニバーサルスペースがあると便利です。
 
                 取り付け図                      トランジスタのドライブ用(74HC04+2kΩ抵抗)デバイスを追加

トランジスタは未実装のコンデンサのランドを利用してとりつけました。
エミッタはベタアースに落とせばいいのですが、基板の銅箔が70umと厚く熱が伝わらず難儀しました。

Tr基板の空き部品の位置に取り付け

MUTE制御の効果は?
まずMUTE制御しない状況でのグリッジを確認しておきました(トランジスタOFF)の状態。
最大レベルで3.8Vくらいのグリッジがでていますね。この状態でアンプに接続してボリューム最大にすると
ピーという音が聞こえます。


1:上段、アナログスイッチ制御信号 2:下段、出力
まずはMUTE制御ない状態(盛大なインジェクションノイズがでています)。

上図の様子からグリッジをゲートする区間を設定します。マスクゲートはソフトで適当に遅延させて
信号をつくってやりました。

ノイズを消すためもマスクゲートを設定(時間はソフトで調整)

そして、マスクゲートをかけた状態(トランジスタON)にするとグリッジノイズが大幅に減少していることがわかります。
ただし、トランジスタがON/OFFするときにすこしグリッジが残っています。しかし、これは聞こえないので大丈夫でしょう。
問題はそのグリッジ間で少しレベルが下がっている点です。これは矩形波上になりますから聞こえる可能性があります。
なぜレベル差があるかというと、MUTEをかけている箇所は数mVのオフセットがのっているためです。
出力自体はDCサーボがかかっているのですが、途中段階でMUTE回路を挿入しているのでこのようになっています。

MUTE制御ONの状態。グリッジ自体は160mVになっているので1/20以下に。
でも、信号にオフセットがあるところでMUTEをかけているのでレベル差がある。


あれ?
よく見ると、トランジスタが動作している期間はマスクゲートより長いですね。
とくにトランジスタがOFFになってから5uSくらいしてOFFになっているようです。
これはベースに溜まった電荷が抜けていないためですね。スピードアップコンデンサを追加してやりましょう。

もっと拡大してみると10mVくらいの段差ある。この幅マスクゲートより大きいな?

その前に、音楽信号を入れてみて、ちゃんと動作しているか確認しておきましょう。

とりあえず音を入れた状態。MUTE動作している様子がわかります。

スピードアップコンデンサを挿入!
挿入箇所はここです。スピードアップコンデンサの容量については、
チリチリ音の大きさを確認しながら調整していきました。代替1000pFくらいでよさそうです。
スピードアップコンデンサを入れる前に比べて、大幅にチリチリ音が小さくなりました。


スピードアップコンデンサを入れて聴感上は大幅に改善

聴感レベルは?
チリチリ音はヘッドホンで小さく聞こえる程度でスピーカだとわからないレベルかもしれません。
最初に比べると大幅に改善しました。実用上は問題ないかな?
ただ、音楽の音量が大きくなると、ボリュームを回したときに今度は信号がブツッとMUTEされるので、
そのときのノイズが顕著になってきます。まあ気にならないかもしれませんが・・・・

さて、これでOKかな? ン?ガビーン!!!!!

チリチリ音対策もこれで完了と思いきや、問題があることがわかりました。
(あまりにショックで写真撮るのわすれてしまいました)

1.音のレベルが負側で-600mVまでしか振れない。
 
正側は数Vまで問題なく動きますが、負側はトランジスタの特性からクリップしたようです。
対策として、トランジスタのベース電位にオフセットをかけて動作範囲を拡大させてやりました。
ただ、この対策のため少しチリチリ音が大きくなってしまいました。でも、まだ大丈夫・・・・



2.大振幅の時に波形がひずむ
 正負とも1.2Vを超える振幅にすると波形はひずんできます。ちょうど正弦波の頭が三角波ポクなってきます。
なぜだろう?MUTEトランジスタをはずすと波形のひずみはなくなるので、トランジスタが原因なのは確かなようです。
ひずみといってもわずかなので、聴感上はわかりにくいのですがこれはHiFi装置としては致命的な問題です。

ん・・・・MUTEトランジスタ方式は企画倒れです。

次の手は?

やっぱり次善はあの手かな〜?? かなり大幅な変更になるのでやりたくなかったのだけれど・・・・
奥の手はサンプルホールドICを使う手もあったのですが、やっぱり音が通過するところに能動素子を追加したくなかったことが最大の要因です。

次善策は、差動化だ!

差動の手法はDACではいつもつかっている方法ですが、今回もこれをつかってみましょう。
問題になっているチリチリ音はアナログスイッチのチャージインジェクションが原因ですが、
デバイスが同じならその特性もほぼ同じとおもわれます。
実際に2枚(ステレオ分)のチリチリ音の要因となるノイズをみてみましょう。
ほぼ両者とも同じレベルですね。

2枚のインジェクションノイズの出方を比較。かなり似ています。

あわせて波形の細かいリンギングの様子をみても、ほぼ同じ形態です。
完全に同じではないですが差動をとれば、かなりノイズが減りそうでう。すなわち、
片側の基板はノイズを作り出すために使うという贅沢な構成です。


波形レベルでもほぼ重なりそうです。差動の効果は高いかな?

実際に差動構成にしてみましょう。
構成は下図のようになります。R-2Rとアナログスイッチの部分をもう1つ用意しますが、
この部分が一番基板の中で面積をとり、かつ高価なところなんですよね(汗)。


差動の効果は?
ノイズレベルは1/10以下になっています。それ以上に聴感上のチリチリ音はかなり小さくなっており、
ヘッドホンでも遠くで聞こえるような感じですから、スピーカだとわからないかも。
それに、音楽が鳴っているときにボリュームをまわしても、スムーズに音量が変わる点がいいです。
これはMUTE方式だと途中でゼロレベルまで信号が変化しますが、この差動方式だと単に次のステップの
音量に変化するだけなためです。

差動直後。レベルとしては1/10以下になっています。
これに200kHz程度のLPFをかけると、グリッジははほぼ消えてしまいます。

方式は差動化に決定しましょう。しかし基板アートワークは大幅変更です。
差動化分についてはドータボードにして面積を抑えるようにしないといけない感じです。

基板は2枚に分割!
こんな感じに2枚に別れることになりました。

(クリックすると大きくなります)


ちょっと一休み。2006.10.16

基板のアートワークが出来てp-banに発注しようと思ったら面付け基板種が6種以上の場合は別途見積もりに変更になっている。
私のような、少量多品種を発注するようなひとは手間ばっかり喰って、儲からないということなんでしょうね。
プロダクトミックスの改善を計っているのでしょうか・・・・まあ、一度見積もりに出してあまりにも高ければ違うところを探しましょう。

で、ちょっと一休みで小物をつくってみました。
LCDの表示は情報量が多くてよいのですが、いまいち素っ気ない感じもするのでLEDを点灯させてみましょう。
秋月で買った4個100円の2連のLEDをつかってみました。@25円の激安ですね。
で、基板の端くれと合わせてこんな感じでくみたてました。74HC4094を2個つかってスタティック点灯にしています。
シリアル−パラレル変換ですので制御線は3本で、電源線をふくめてすべてで5本で駆動できます。
H8マイコンをつかっているため、このくらいの表示を付け足すのであれば容量的に心配する必要もありません。

ただスタティック点灯なので抵抗本数は16個必要です。今回は470Ωをつかってみました。
明るさは十分です。しかし抵抗が一杯はえることになるので配線がしづらい。
 
     表面の様子                         裏面の様子


 後ろからみたところ。

で、早速点灯させてみましょう。ボリュームの値を0〜99に変換して表示しています。

こんな感じです。

なかないい雰囲気ですが、やっぱり3桁くらいあったほうがいいかな?
せっかくの電子ボリュームの分解能を生かして0.0〜80.0の表示ができるとかっこいいでしょう。

基板にするとこんな感じです。チップ抵抗と表面実装ICをつかって組めば、シンプルにできそうです。
両面実装ですのでパターンはぐちゃぐちゃに見えますね。切断して2桁分だけつかえるようにも工夫して見ました。
また左右のどちらからでも配線ができます。


さて、次はロータリーエンコーダで遊んでみましょう!2006.10.20

つかうエンコーダは(たぶん)アルプスのものですが、秋月で200円で買える安いものです。
24パルス/回転と分解能は低めですが、これでも十分です(なんたって安い)。
数千円だす気があれば100パルス/回転以上のものが手に入りますが、音質には関係ないところなので安いものをつかいましょう。
といっても、操作感にはおおいに響くので、やっぱり質感にあふれたもののほうがいいかな〜


秋月で売っているRエンコーダ。安い!

エンコーダだけを取り付けてテストしてもよかったのですが、いっそのことすべての可変抵抗器も取り付けて
ソフトの開発も一気にやってしまいましょう。
必要な可変抵抗器はボリューム、バランスそして4WAYのマルチアンプ用を睨んてプラス4個の抵抗器がつきます。
そして、ボリュームは可変抵抗あるいはエンコーダのどちらも使えるようにしたいと思っています。
そこで、それらのテストを進めるためにテスト盤を作成します。

手元に適当な板がなかったので、勿体ないとはおもいつつコントロール基板に穴をあけて可変抵抗器をとりつけました。
試作でつくったもので余る運命にありますから、活用するに越したことはないのですがやっぱり勿体ない気もします。
しかしコントロール基板とネジピッチが同じ(あたりまえ)なので、2段重ねにするにはもってこいです。

可変抵抗器がとりついた基板(勿体ない?)


テストのときはこんな感じでコントロール基板の上に2段重ねにしています。
液晶表示も近くに取り付けてコンパクトにまとめています。なんせ机の上がちらかっているので、
できるだけテストターゲットを小さく納めないと、キーボードすら置くスペースがなくなってしまいます(汗)。

テストの様子。

さて、上からのぞくとこんな感じです。それぞれの抵抗器には間違わないようにラベルがついています。
右上の少し大きめのツマミがついているのがロータリーエンコーダになります。

上から覗くとこんな感じのテスト風景。

ソフト作成!

できあがったソフトは別途ULするとして、基本的な部分は作成しました。
ちょっと素っ気ないのですが、こんな感じにしました。

VOL:メインの音量値 0.0〜80.0(dB)
S1〜S4:スピーカユニット1〜4の減衰量:0.0〜-20.0(dB)
バランスは中央にあればNTR(NUTRAL)を表示し、左右に偏れば”L−3.3”などと表示しています。
この意味はL側が-3.3dBということです。

表示例1



表示例2

エンコーダの加速制御

音量自体は0.0〜80.0(dB)で可変できるようになっていて、全体で558ステップになります。
こんな中途半端な数字になる理由は0〜27は1ステップ、27.0〜80.0は0.1ステップになるためです。
このあたりは完全にレビンソンの真似です。

で、この558ステップを24ステップ/回転のロータリスイッチでカバーするとなると、23回転もさせる必要があります。
これは、実用音量まで回すのに疲れてしまいます。そこで、レビンソンと同様に加速制御もいれました。
すなわち早くエンコーダを回すと、ステップ量が早く増大するというものです。もちろん、回す速度に依存してステップ量
を可変していますので、スムーズにかつ早く目的の音量設定が可能です。
目一杯に早く回すと、1回転で最大音量までもっていくことができます。
現在はCPUにH8/3048(16MHz)をつかっていますが、実用時にはH8/3052(25MHz)をつかうことになるので
加速制御の定数はチューニングが必要なところです。

しかし素っ気ないな〜

折角グラフィックタイプのLCDをつかっているのに英数字だけの表示では、なんか素っ気ないですね。
ボリュームくらいはバーグラフにもなるうに変更してみましょう。
どのようにデザインすればいいか、難しいです。センスのなさを露呈してしまいそう・・・・


ちょっとセンスないな〜


まだこの方がいいかな?


(つづく)