ディスクリ回路でOPA627を越えるか? 2006.7.8
まあ、実際に越えれるかどうかは別として、ドリフトを抑えるための初段の2素子FETなどについてBBSに活発に意見が交換されています。
高性能にするためには、それなりに素子の選定や回路の吟味とかが必要なのは確かです。
かといって、あまりに度がすぎるようなことだろ、素人には手を出しにくいのでバランスが難しいところです。
そうこう言っている間に、R.さんから回路をいただきました。
(詳しくは図をクリックしてください)。
電圧降下を得るために各所にLEDが使われています。全部で19石+10Diと結構な規模になっています。
問題は初段のFETをどうするかということだけで、あとは2SC1815/A1015などの廉価な石が使えるとのことです。
さて、これのアートワークを描いたらどのくらいの大きさになるでしょう。
トランジスタのパターンはどれがいいかな?
トランジスタの足に当たる気流もドリフトの要因になるらしいので、出来るだけ足が短く実装できる方が望ましいとのこと。
いつもは3番のパターンにしていますが、これだと2SC1815などでは足が長くないと入りませんから性能の面からよくありません。
それとBCEを間違い易いことも問題。しかしながら、色々なトランジスタ(たとえばTO-220タイ)にも対応できる点は捨てがたい・・・・
やはり2番のパターンかな?これだと足の長さをゼロにすることができます。
問題点はピン間が狭いので半田付けが少し難しい。
1番は足が三角形に広がるので安定感があるのと、ピン間が広いので半田付けもし易いでしょう。
さて、どれにしましょう?
小型トランジスタのパターン例
BBSでさっそくご意見いただきました。結論からいけば、1番がよいとのことです。
ただ熱結合したいQ4と5、Q10と12、Q11と14および終段の電流が流れるQ15、16が3番がよいだろうとのことです。
なるほど!
(2006.7.10)
で、さっそくアートワークを描いてみましょう。これ単体でも使えるように入力にコンデンサを入れました。
あとは帰還回路も組めるようにしています。ついでなのでEQ回路にもなるようにしてみました。
ベタを塗るのが大変ですが、ここまでは割とすんなりできます(意外と楽しかったりする)。
(画面をクリックするとPDFファイルが立ち上がります)。
サイズは89×64mmと結構なサイズになってしまいました。肝心の入力FETは2SK150を想定しています。
ただ、普通のFETも挿すことはできます(足の配置はDGS)。
さっそく突っ込み!
さっそくR.さんから突っ込みがはいりました。
帰還回路のCですが、パッシブDCサーボで電解コン使用しなくてもOKなようにしてもらった方がうれしいかも?
→お気楽PAを参考ににしてパッシブDCサーボ構成にしました(これでいいのかな?)
IN-よりは、反転増幅器としても使えるようにR27の先を伸ばして、パターンカットかジャンパーでR27に信号入力できるようになっているとよいかも?
→少しパターン変えました。
パスコンに0.1uのマイラーをパラに入れられるようにしてもらうと安定動作によいです。
Q16に放熱板をつけるとQ19に干渉しそうです。
→放熱板は右側に出っ張るので大丈夫のはずです。
R14のアースとR27のアースは極力違い方が理想なんですが、これは難しいですよね。
→無理矢理変更しました。
今回も抵抗の大きさは500milですか?
→残念ながら400milです(ちょっと小さい字で。。。変更難しいので・・・)
下が修正バージョンです
(画面をクリックするとPDFファイルが立ち上がります)。
最終パターンはこんな感じ!
まあ、試作だからこんな感じでいいでしょう。最終の土壇場でジャンパーを無くしてスッキリさせました。
さらに、ハンダゴテさんのご意見をとりいれR4にパラにCを入れられるようにしています。
Cの追加で周波数特性がよりフラットになるようです。
#もう少しミスも含めて見直さないといけないのですが、別件トラブルもありこのデータでさっそく発注しました。
#来週末(7/22)頃にできあがりそうです。
最終の回路図はここです。
(画面をクリックするとPDFファイルが立ち上がります)。
部品も入手!
このアンプ基板のポイントは初段のペアFETになりますから、この入手がカギです。
この基板を発注できたのも、部品が手に入ることが確認できたためです。さて、使う石はこれです。
2SK150のデータシートはR.さんが探してきてくれました。有り難うございます。
さて、組み立てたらいくらかかるか?
OPA627を買うとどのくらいの値段がかかるかですが、DIGI-KEYをみてみると
OPA627APで1808円(1000個)〜2262円(1個)です。
# 海外オークションを利用すると1000円程度でも購入できますが、これは一般的ではないかな?
では、このオペアンプ基板を組み立てるとどのくらいかかるでしょう?
ええっと、一般工業品をつかうことを前提に1枚組み立てるといくらかかりそうか試算してみましょう。
一応、部品は袋単位で買うことを前提としています。
トランジスタ類
入力FET 200円×1 =200円
その他(2SC1815,A1015) 5円×17=85円
抵抗(金属皮膜) 3円×30=90円
コンデンサ(フィルム) 30円×7 =210円
ダイオード 5円×10=50円
VR 50円×1 =50円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
計 685円
最低でもこれだけかかりそうです。問題は基板の値段ですね。OPA627を使う場合でも結局基板が必要なので
単純な比較は難しいのですが、この基板で組み立てたものを1つのオペアンプと見なした場合でも、
トータルでOPA627購入を上回っても面白くないで、ちょっと検討必要です(要はどのくらい数を作るかですが・・・・)。
さて試作してみよう! 2006.7.21
秋葉原東京出張から帰ってきたら基板が届いていました。早速組み立ててみましょう。
届いた基板です。結構大きい感じがします。
まずは抵抗の取り付けから行います。これが一番面倒です。使う抵抗値はいくつもあるので、
パーツ箱から探し出さなくてはいけません。そして、探し出しては生け花よろしく基板に次々と挿していきます。
そして、おもむろに部品面から半田付け!
部品面から半田をすることには賛否あるかと思います。最大のデメリットは素子の熱影響が大きいということですが、
メリットである半田付けのしやすさの前には勝てません(→まねしないほうがいいかも)。
半田付けのあとは、剣山のように生えた余分なリードをブチブチ一気に切りおとします。
抵抗を次々と挿して、最後に部品面から一気に半田付け!
余ったリードはニッパーで一気に切り落とします。
沢山のLEDが必要です。
今回のプリアンプ基板では1枚あたりLEDを8個つかいます。今後たくさん消費しそうなので秋月で500pcs入りを買いました。
2000円だったかな?直径φ3mmで色は赤色で順方向電圧は1.6Vとちょうどいいくらいです。
青とか白とかのLEDをつかうと順方向電圧が3V近くあったりするので気をつけてくださいね。
いづれにしても赤のLEDが一番安いのでつかいやすいです。
しかし500個なんて使い切れるでしょうか?いざとなったらクリスマスのデコレーションでしょうか(笑)。
でも、今頃赤色なんて冴えないな〜(汗)。
今回使ったLED。500個入りだけど使い切れるかな?
LEDを実装した様子。LEDは基板の根本まで挿入できるローハイトです。
完成!
あとはトランジスタやコンデンサを挿して完成です。意外と早くできたかな。
ん?よく見ると位相補償用のコンデンサがすべて抜けています。
面倒なのですべて22pFのコンデンサを挿してあげましょう。
なおNFBの定数は10kΩと1kΩになっていますので仕上がりゲインは11倍になっています。
完成しました。何か抜けている?
試作基板なのでバグありました。
今回の基板は試作なので、バグが一カ所ありました。ジャンパー配線で直しています。
勿論頒布版では、このバグは取り除きます。
一カ所バグがありましたが、簡単に修正できました。
電源投入!
いや〜LED明るいです。実際にはこんなに明るくは見えませんけどね(写真に撮るとこうなります)。
でも、点いていることはすぐにわかる明るさです。反対に点灯していないLEDがあれば、取り付けミスであることがすぐにわかると思います。
写真に撮ればクリスマスデコレーション?
オフセット調整
この基板の調整箇所は出力オフセットのみです。VR1個をいじるだけですが、意外と感度が低いのでゼロ調がしやすいです。
VRの位置もほぼ真ん中で0.0mVまで合わせこめました。
この位置で調整完了!ほっとしてVRはいらないかも。
信号波形をみてみましょう!
まずは無負荷の状態で発振器につないで入出力波形をみてみましょう。
オシロの画面を写していますが、下段(ch.2)が入力で上段(ch.1)が出力になります。
ゲインだけで見れば1MHzまでほぼストレートに伸びていますね。2MHzとなる、発振器の出力が減衰してきます。
周波数と位相特性は何かの機会に正確に計ってみましょう。しかし、かなりの高特性です。
OPA627を越えるかな?
f=10kHz f=100kHz
f=300kHz f=1MHz
f=2MHz
負荷をつないでみよう
出力に610Ωの負荷抵抗をつないでみました。基板自体には100Ωの保護抵抗が入っているので実際の負荷は710Ωになりますが
パワーアンプを想定した場合、この負荷値であれば低すぎるくらいです。出力端子でモニタしているので、出力電圧は610/710に分圧されています。
さて、いきなり100kHzで入力1V(グロスの出力は11V)をいれてみます。すると、電圧値の高いところで少し歪みがでていますね。
さすがに低い負荷抵抗をつないでレールtoレールみないなまねごとは難しいようです。
f=100kHz 信号レベルの高いところで歪み有り。
でも、ほんの少し出力レベルを下げてやると歪みは解消します。
下の図では出力を上図から10%ちょっと(15Vppネット値:グロスで約18Vpp)まで落とした場合、
歪みはとれています。この状態で500kHzまで上げても振幅値はほとんど低下していないですね。
f=100kHz f=500kHz
振幅値を少し抑えるだけで、歪みはなくなるようです。
とりあえずホッ!
まずはアンプとしての動作は確認できました。また特性もかなり期待できそうです。
実際にはアンプとして組み込んで耳で確認してみないといけませんが、なんとなくワクワクしてきました。
ぼちぼちと進めていきましょう!あ、オフミまでに間に合うかな?
現象調査!
ここでR.さんからコメント。
ヒロさん
放熱板つけて、アイドリングを増やしたら、100kの歪解消しませんか?
重い負荷でもガンガンいけるように25mAくらいは流したい感じです。
終段部分で歪が発生していてNFB量が低下しているので、観測されているっぽいです。
ヒロ回答:
おはようございます。
終段のアイドル電流を倍にしても現象は同じです。それと、あの歪みは負荷ゼロでも発生しているのを確認しました。
シミュレーションとも比較しているのですが、D4,D5での電圧降下が大きいので正側出力で約10Vを越えるあたりから
回路図のR5の上側の電圧に変動がでてきます(実測もそうです)。その変動に吊られるのとNFBが不足して歪みがでていると思います。
すなわちこの回路構成だと電源電圧から5Vを差しいひいた電圧を有効振幅とみたほうがよいかも知れません。
より高い電圧を得るなら電源電圧を上げることが解になると思います。 というのは合ってるかな?
波形信号を少しみてみましょう。
上段がCh1.で出力振幅でDC信号、下段がR5抵抗の上側の電圧(D4,D5で電圧ドロップしたところ)でAC信号(B点)。
振幅が10VだとOK 振幅をさらに上げるとB点で歪みがでてきます。
さらに上げるとB点で歪みが明確になります。
R.さん:
なるほど。
この回路構成は性能優先で電源電圧の利用率が悪いので、20Vくらいで動作させるのが良さそうです。
15Vで使用するなら、Q10、Q12にVceの飽和電圧が低いA1015を使用している場合にはD4をバイパスしてもよいですね。
今回は歪率が低くなるように回路を工夫しているので、歪率の比較ができないのが残念です。
大飯喰らい(な基板)でも、仕事をきちんとしてくれれば嬉しいです(笑)。
本チャン用はバッファーアンプ兼ヘッドホンアンプ! 2006.7.22
ヘッドホンアンプとしても、上述の基板で対応できるはずなのですが、少し定数を変更してバッファ兼ヘッドホンアンプを作りました。
主な点は
1.終段のトランジスタには2SC3421/A1358(Yクラス)を使用
2.エミッタ抵抗R11,12は4.7Ω
3.D5,6はダイオードではなく抵抗(16Ω)。アイドル電流は約10mA狙い。
4.帰還抵抗は1k/3.9kΩとして仕上がりゲインは約5倍に設定
としました。あとは同じです。
あ、入力のカップリングコンデンサとDCサーボ用のフィルムコンデンサ(赤茶色)は1uFですが、
これは1wbyさんから頂いたものです。
ヘッドホンアンプバージョンのできあがり。
トランジスタの熱平衡
Q10,12およびQ11,14の熱平衡をとるためトランジスタの回りに銅箔テープを巻いたのち、熱収縮チューブをかぶせています。
単純に接着剤で固定する手もありますが、銅テープを巻いた方は熱伝導がいいかなと思っての処置です。
まずは銅箔テープではちまき その上から収縮チューブで2重のはちまき
完成した基板。ちょっとお出かけ用にパチリ
DAC1794D&ASRCに組み込み。
最後の仕上げはDAC1794D&ASRCに組み込みました。このアンプはヘッドホンアンプとしても使いますし、可変出力バッファーアンプとしても使います。
ちょっと失敗したのはゲインが高すぎました。ちょっと不細工なのですが、基板の入力の所に分圧抵抗を入れています。これで総合ゲイン1としています。
ヘッドホンもアンプ直結ですが、いつも聞く音量でボリュームの位置も12時くらいにきていますからいい具合です。
DAC1794D&ASRC完成!
標準回路でヘッドホンアンプに使えるか? 2006.7.23
最初(標準としましょう)の回路図ではエミッタ抵抗は47Ωですが、これでどこまで負荷をつなげられるか試してみましょう。
いつものごとく、実験用電源と発振器(DDS)に繋いでテスト準備です。
出力に負荷抵抗をつないで、出力に歪みが出ない最大の振幅値を計測する。周波数は20kHz
といった感じです。
測定の様子。机の上でこじんまりとやっています。
負荷抵抗R=100Ω 最大振幅 7.5V 出力 281mW |
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負荷抵抗R=50Ω 最大振幅 5.6V 出力 313mW |
|
負荷抵抗R=33Ω 最大振幅 4.4V 出力 293mW |
測定結果としては約300mWの出力が得られます。ヘッドホン用としても標準回路で十分なような気がしてきました。
(続く)